井上道義 ザ・ファイナル・カウントダウン Vol.5【最終回】~道義のベートーヴェン!究極の「田園」「運命」×大阪フィル~ありがとう道義!そして永遠に!
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2024年11月30日(土)14:00開演 ザ・シンフォニーホール 井上道義指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団 ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」 座席:A席 1階L列27番 |
井上道義の引退まであと2公演となりました。最後の演奏会となる「第54回サントリー音楽賞受賞記念コンサート」(2024.12.30 サントリーホール)を聴きに行く予定はないので、井上道義が指揮する演奏会を私が聴くのは最後となります。
「井上道義 ザ・ファイナル・カウントダウン」は全5公演で、本公演が最終回です。井上が2014年4月から2017年3月まで首席指揮者を務めた大阪フィルハーモニー交響楽団を指揮して、Vol.2~道義 最後の第九~、Vol.1~道義×小曽根×大阪フィル ショスタコーヴィチ&チャイコフスキー~(2024年3月に振替公演)、Vol.3~道義×絶品フレンチと和のコラボ×大阪フィル~、Vol.4~道義×大ブルックナー特別展×大阪フィル~<ブルックナー生誕200年記念>の順に、約1年間をかけて開催されました。Vol.1~道義×小曽根×大阪フィル ショスタコーヴィチ&チャイコフスキー~は、井上の体調不良のために延期になり、前回のVol.4~道義×大ブルックナー特別展×大阪フィル~<ブルックナー生誕200年記念>は、前半のモーツァルトが第1楽章のみになってしまいましたが、なんとかここまでたどり着きました。
最終回が、ベートーヴェンの「田園」と「運命」は意外な選曲でした。ブログ「Blog ~道義より~」には、「この二曲を正面から指揮するのは人にとって真のチャレンジ。体力的に今の道義には特に。」と綴っています。井上道義が指揮するベートーヴェンは、交響曲第9番「合唱」しか聴いたことがありませんでした(京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」、井上道義 ザ・ファイナル・カウントダウン Vol.2~道義 最後の第九~)。また、井上道義が指揮したベートーヴェンの録音も、オーケストラ・アンサンブル金沢との「交響曲第1番」と「交響曲第4番」があるだけで、「運命」も「田園」も録音していません。
「田園」は弦8型で、「運命」は弦16型で演奏すると予告されました。ブログ「Blog ~道義より~」で「外に向かう大きな編成と、内なる世界を表現する室内楽的編成ではっきりとコントラストを表現しました。」と説明しています。大阪フィルハーモニー交響楽団のX(@Osaka_phil)によると、リハーサルは11月28日から始まりました。
チケットは7月26日のザ・シンフォニーホールの優先予約で購入しましたが、激しいチケット争奪戦となりました。いつもの2階席ではなく、なんとか1階席を確保できました。本公演のみが原因かは分かりませんが、ザ・シンフォニーホールのホームページへのアクセスが集中して、チケットシステムに障害が発生して、WEB販売が一時停止になりました。過去の4回の公演ではなかったことで、本公演への注目と期待の高さがうかがえました。ひさびさのザ・シンフォニーホールの1階席でしたが、ステージに近くていい席です。マイクやカメラが設置されていました。プログラムには「14才! 道義。ふふふ。」のキャプションとともに、井上道義の若かりし14歳の写真が掲載されました。この写真は井上の著書『降福からの道』にも掲載されています。
プログラム1曲目は、ベートーヴェン作曲/交響曲第6番「田園」。左から、第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリンの対向配置で、コントラバスはチェロの後ろに3人。コンサートマスターは崔文洙(ソロ・コンサートマスター)。ステージの照明を少し暗くしました。井上は指揮台も指揮棒もなしで指揮。立ち位置を変えて踊るような指揮で、指揮が表情豊かで見とれます。フレーズの方向性を両腕で表現しました。この指揮が見られなくなるのはさみしい。譜面台にスコアは置かれていましたが、めくらずに指揮(「運命」も同じ)。これくらいの中編成で十分だと感じました。
第1楽章「田舎に到着すると呼び起こされる、楽しく大らかな気持ち」は、ステージに近いせいか、第1ヴァイオリンの音程の甘さが目立ちました。井上は両肩を左右に揺らして、ウキウキしながら歩く素振りを見せました。422小節からのスタッカートは、テンポを少し遅くして強調するように演奏。第2楽章「小川の畔の情景」は、弦楽器がビブラートが少なめで、より古風で落ち着いた響き。オーケストラにいろんな指示を出して調整しました。第3楽章「農民たちの愉しき集い」はやや遅めのテンポ。63小節からのsfはテヌート気味に演奏。165小節(a tempo Allegro)で井上が上手に向かって敬礼すると、ティンパニ、トランペット×2、トロンボーン×2、ピッコロの奏者が上手から入場。コントラバスの後ろに置かれたコントラバス奏者用の椅子に座りました。トランペットは出てきてすぐに演奏開始です。井上道義 ザ・ファイナル・カウントダウン Vol.2~道義 最後の第九~の「第九」の第5楽章でも演奏中に奏者を入場させましたが、井上らしい演出です。第4楽章「雷雨、嵐」のティンパニは強打で、膜が破れるかと思うほど。井上も力がこもった指揮。第5楽章「牧人の歌。嵐の後の嬉しく、感謝に満ちた気持ち」は丁寧な演奏でした。
カーテンコールで井上は「アンコールに休憩をはさんで5番をやります」と笑わせて休憩に。男性トイレの最後尾が、階段の下まで続くほど長い行列でした。
休憩後のプログラム2曲目は、ベートーヴェン作曲/交響曲第5番「運命」。指揮台が設置されて、弦16型の大編成に。弦楽器は倍の人数になって、コントラバスも8人です。井上はこの曲は指揮棒を使って指揮。低音がしっかり響いて、オーケストラを見渡しながら指揮しました。来月に引退する指揮者の演奏とは思えないエネルギッシュな指揮で、オーケストラも一心不乱に演奏しましたが、運命はこれよりもいい演奏は他にあったので、感動するレベルには至りませんでした。
第1楽章はやや速めのテンポでしたが、運命の動機の音符の粒がはっきりせず、揃って聴こえません。「田園」とは一転して荒々しく、井上のテンションはいいですが、オーケストラの精度が追い付いていないのが残念。第2楽章もやや速めのテンポ。最初から音量が大きめ(スコアではp)。150小節などでティンパニがトレモロのあとの八分音符を叩きませんでしたが、なぜでしょうか。井上の指示かどうか不明です。第3楽章は速いテンポでスピード感があります。強奏もよく鳴ります。アタッカで第4楽章。86小節での繰り返しはなし。
カーテンコールでは京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.5「井上道義×ブルックナー交響曲第8番」と違って、自然とスタンディングオベーションが起こりました。大阪フィルの事務局長の福山修ともう一人の男性から花束贈呈。井上は受け取ると、第2ヴァイオリンの女性二人に渡しました。井上は指揮台で「もうアンコールはありません。長い間ありがとうございました」と簡単にあいさつ。クルクル回転しながら退場しました。オーケストラが退場してからの一般参賀は2回。2回目は第2ヴァイオリンの二人を連れてきて、二人から花束を受け取りました。16:00に終演。
大阪フィルのパワフルなキャラクターはよく出た演奏でしたが、前週の京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.5「井上道義×ブルックナー交響曲第8番」のほうがはるかにいい演奏だったので、期待が大きすぎたのかもしれません。なお、私の席の近くで、Vol.1~道義×小曽根×大阪フィル ショスタコーヴィチ&チャイコフスキー~で共演したピアニストの小曽根真が聴いておられました。どうやら「運命」を聴いたのは今回が初めてだったようです。
井上道義オフィシャルウェブサイトのX(@michiyoshi_web)には、「大フィルとは1980年から、ABCとは1983年からの付き合い。たくさん楽しかった!」と綴りました。また、ブログ「Blog ~道義より~」には「このような作品のためにこそ建てられたようなホール。いままた、変貌を告げている大阪の北のさらに僻地でまだ建てられたままの形で、佇んでいるシンフォニーホール。ありがとう。心から温かく迎えてくれたお客様一人一人に、また大阪という商業中心の街の中に人間が成せる最も高潔な灯台に明かりを絶やさない関係者の皆様に感謝します。」とザ・シンフォニーホールへの謝辞も綴っています。なお、本公演のチラシの井上道義からのメッセージには「残念なのは、大阪には待遇が良くない交響楽団が4つもあるのに、クラシックができる公的なホールが一つもないことだ」と大阪のオーケストラ事情を分析しています。さらに、「大阪での有難い賞は幾つも頂いているが、妻と遭遇したという事以外、「真に係わった」とは言えない関係だったのは、道義らしいな。ふふふ。」と記していて、京都よりも関わりが薄いことを井上も認識しているのか、ブログのコメントも京響よりは短めでした。
ラストコンサートの「第54回サントリー音楽賞受賞記念コンサート」(2024.12.30 サントリーホール)は、本公演と同じ曲目に、ショスタコーヴィチ「祝典序曲」を加えたプログラムの予定でしたが、7月頃に曲目変更が発表されて、「運命」の代わりに、メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」(指揮者のキャリア初期によく取り組んだ曲)とシベリウス「交響曲第7番」に変更されました。なお、当初はメシアン「トゥーランガリラ交響曲」の提案があったが、指揮する体力がないので断ったことを渡辺和彦とのインタビューで明かしています。3000円でライブ配信もされます。本公演からラストコンサートまでに1ヶ月も間が空くのが不思議に思いましたが、12月18日に仲道郁代がモーツァルトのピアノ協奏曲2曲を録音したことを自身のX(@Ikuyo_nakamichi)で明かしています。オーケストラはN響で、スタジオ録音だったようです。
井上道義の指揮で聴いた演奏会を数えてみたら、本公演を含めて24公演でした。意外に多い。なかでも印象に残ってるのは、日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト2007 コンサート8、東京芸術劇場マエストロシリーズ 井上道義&読売日本交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団第575回定期演奏会、2024年度全国共同制作オペラ 歌劇「ラ・ボエーム」、京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.5「井上道義×ブルックナー交響曲第8番」などが挙げられますが、第9回現代日本オーケストラ名曲の夕べ「道義の一押し」やマエストロ井上道義によるスペシャルトークイベントなどのユニークな企画も記憶に刻まれます。また、練習風景を4回も見学することができてラッキーでした。特に、京都市交響楽団練習風景見学では予定外の練習も見学させてもらえました。本当に感謝です。