2024年度全国共同制作オペラ 歌劇「ラ・ボエーム」


       2024年10月6日(日)14:00開演
ロームシアター京都メインホール

井上道義指揮/京都市交響楽団
演出・振付・美術・衣裳:森山開次
ルザン・マンタシャン(ミミ)、工藤和真(ロドルフォ)、イローナ・レヴォルスカヤ(ムゼッタ)、池内響(マルチェッロ)、スタニスラフ・ヴォロビョフ(コッリーネ)、高橋洋介(ショナール)、晴雅彦(ベノア)、仲田尋一(アルチンドロ)、谷口耕平(パルピニョール)
ダンサー:梶田留以、水島晃太郎、南帆乃佳、小川莉伯
バンダ:バンダ・ペル・ラ・ボエーム
合唱:きょうと+ひょうごプロデュースオペラ合唱団、京都市少年合唱団

プッチーニ/歌劇「ラ・ボエーム」

座席:S席 2階1列32番


2024年12月で引退を表明している井上道義が最後に指揮するオペラは、プッチーニ「ラ・ボエーム」です。初めて観ましたが、昨年秋に公開された映画「ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌」で予習しました。全国共同制作オペラとして、全国7ヶ所8公演が開催されました。

すなわち、
9月21日(土)・23日(月・祝) 東京芸術劇場コンサートホール 読売日本交響楽団
9月29日(日) 名取市文化会館大ホール 仙台フィルハーモニー管弦楽団
10月6日(日) ロームシアター京都メインホール 京都市交響楽団
10月12日(土) 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール 兵庫芸術文化センター管弦楽団
10月19日(土) 熊本県立劇場演劇ホール 九州交響楽団
10月26日(土) 金沢歌劇座 オーケストラ・アンサンブル金沢
11月2日(土) ミューザ川崎シンフォニーホール 東京交響楽団
の8公演で、7週間にわたって毎週公演が続きます。この京都公演は4公演目でした。なお、全国共同制作オペラは2009年度から開始されました。井上は「僕が始めた」とぶらあぼのインタビューで語っています。

上記のように毎週指揮するオーケストラが異なります。合唱団も各地で異なるビッグプロジェクトで、同じ曲を演奏するのにすごく効率悪いようにも思えてしまいますが、『ぶらあぼ』2024年4月号のインタビューで、井上は「僕の落とし前のつけ方。オペラは、その街で作って、そこで何かを発見することが大事。結果的にそれぞれへのオーケストラへのお別れになっただけ。ただそういうことをやるのは良いことだと思っていました」と語っています。2023年4月に歌手のオーディションが行なわれました。200人以上の応募があったとのこと。
また、オーケストラだけでなく、合唱団と児童合唱団も入れ替わります。京都公演の合唱団は、きょうと+ひょうごプロデュースオペラ合唱団。佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ(兵庫県立芸術文化センター)に毎年出演しています。ソプラノ、アルト、テノール、バスの各7名で計28名。インスペクターは時宗務。児童合唱団は、京都市少年合唱団。井上とは2004年大阪国際フェスティバル「ラ・ボエーム」以来2度目の共演となりました。総勢で20名で、合唱指導は大谷圭介.。

井上道義は、井上道義 ザ・ファイナル・カウントダウン Vol.4~道義×大ブルックナー特別展×大阪フィル~<ブルックナー生誕200年記念>をなんとか指揮した後、「神奈川フィルハーモニー管弦楽団 みなとみらいシリーズ 第397回」(2024.7.20)を指揮しましたが、「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2024 新日本フィルハーモニー交響楽団 道義Forever 〜ラスト・サマーミューザ〜」(2024.8.2)でマーラー「交響曲第7番「夜の歌」」を指揮する予定でしたが、左急性腎盂腎炎により約1か月間治療に専念すべきとの医師の診断を受けたため降板しました。残念ながら、サマーミューザは2年連続の降板です。代役は、なんと東京交響楽団音楽監督のジョナサン・ノットが務めました。ブログ「Blog ~道義より~」では8月13日に退院したことと、「青春のオペラ、「ラ・ボエーム」無事に終えたい」と締めくくっています。それ以降は出演がなかったので、本オペラの準備にじっくり取り組めたようです。井上がラ・ボエームを指揮するのは、2004年以来20年ぶりの指揮とのこと。なお、井上道義がロームシアター京都で指揮するのは、本公演が最初で最後でした。ロームシアター京都の前身の京都会館は、井上道義が京都市交響楽団音楽監督時代に定期演奏会を開催していました。

演出・振付・美術・衣裳の森山開次は、2019年に井上と組んだ「ドン・ジョヴァンニ」以来、2度目のオペラ演出です。井上とは兵庫芸術文化センター管弦楽団第142回定期演奏会「井上道義 最後の火の鳥」の演出で共演しました。 本公演のポスターなどで使用されたメインビジュアル画は森山が担当。西洋画のような雰囲気でした。

4月11日にミューザ川崎シンフォニーホールで制作記者会見が行なわれました。井上は「「感無量」とか、よくこういう時使うんでしょうけど、僕今回使いたいです」と感慨深く挨拶。また、「やっぱり音楽というのは、青春の息吹とか、言葉を変えて言えば、生きている喜びの発露。僕は舞台で一生を終えたいと思ったの。なぜかというと世の中は虚偽に満ちているから。(略)だったら、思いっきり嘘ついて死んでやろうと思ったんですね。(略)もう思いっきりすばらしい嘘を舞台で作れたらいいなと思って、こんなにうれしいことはないです。(略)自分でやめていいはずだと思っているし、みなさんもきっと自分はどうやってやめようかということは少しは考えると思うから、そのいい例にしたいなとはすごく思っている。それだけです」と語っています。
森山は「「ドン・ジョヴァンニ」が終わった頃、井上さんから2年前に話があった」と振り返り、「井上さんと創作するときには、僕の身体の全神経がビリビリと、僕の全部の経路のツボを全て刺されて、覚醒していつも製作するような感覚です。本当に自分の力を引き出してもらっているなと思っている」と笑顔で語りました。また、「日本人から見た視点をラ・ボエームに少し加えさせていただきたいという思いがある」と語り、「少し時代が「ラ・ボエーム」よりは後になるが、藤田嗣治という日本人画家がフランスに行き、ラ・ボエームに重ねあわせていきたい。画家マルチェッロに藤田の視点を掛け合わせていくということを考えている」と構想を語りました。
ミミ役で出演する予定だった髙橋絵里は「井上と森山のプロダクションのドンジョヴァンニで「ドンナ・アンナ」を歌った。ミミは大好きな役。大事な役。ミミは一番多く歌ってきた役かもしれない」と笑顔で語りました。後述するように降板することになってしまいましたが、このときは体調が悪いようにはまったく見えませんでした。ロドルフォ役の工藤和真は井上道義が作曲した「A Way from Surrender ~降福からの道~」でタロー役で出演したときの思い出を語りました。ムゼッタ役を歌う予定だった中川郁文は、「普段オペラをやるときに死ぬ役が多いが、今回のムゼッタは最後まで生きて終われる」と語っていましたが、後述するようにミミ役にコンバートされたので、結果的に今回も死ぬ役になってしまいましたね。「A Way from Surrender ~降福からの道~」では、鳥の声1(A)と久美役で出演したと誇らしげに話しました。マルチェッロ役の池内響は、「フジタを意識した衣装では、カツラ、メガネ、ヒゲは欠かせない」と語りました。

『音楽の友』2024年6月号表紙の井上道義と森山開次が登場。なんとポスターの絵の実写化のように、井上道義がロドルフォに、森山開次がミミに変奏して撮影されました。井上道義オフィシャルウェブサイトのX(@michiyoshi_web)によると、「特殊メイクでボエームのチラシを具現化しようと挑戦!!見た人は忘れられないと思う!ハハハ😆これは芸術として大成功と呼ぶ条件だ。」とのこと。なお、ポスターにはクロネコが描かれていますが、音楽の友の表紙はアヒルのぬいぐるみに代わっています(井上道義はかつてアヒルを飼っていました)。略年表や関係者へのインタビューが掲載されていて永久保存版です。インタビューで井上は、モーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」の男女を入れ替えて上演も候補として考えていたことを明かしています。ラ・ボエームについては、舞台のパリのカルチェ・ラタンでアパートを10年も所有していたことがあるとのことで、「僕がオペラを真剣に勉強したくなったきっかけの曲。若々しく青春真っただ中のような演奏をしたい」と語っています。『ぶらあぼ』2024年9月号のインタビューでも、「ラ・ボエームには宗教も政治も社会問題も登場しない、とても人間らしい作品」と語っています。渡辺和彦(音楽評論家)とのインタビューでも「僕はもうジジイなので、思いっきりノスタルジーを込めて、若い青春ものをやりたかったんです。僕自身の青春への思いを込めてね」と語っています。

8月16日に、後半の4公演でミミ役を務める予定だった髙橋絵里が、医師の診断により早急な入院治療が必要となり回復までに一定期間を要することが判明したため、降板が発表されました。東京芸術劇場マエストロシリーズ 井上道義&読売日本交響楽団井上道義 ザ・ファイナル・カウントダウン Vol.2~道義 最後の第九~でもソリストを務めて、上述の記者会見でも元気に話していました。
髙橋の代役は、前半でムゼッタ役を務める予定だった中川郁文がミミ役に昇格することになりました。ミミもムゼッタもソプラノだからなせる業でしょう。中川は2015年度に京都市立芸術大学大学院を修了してから大出世で、近年の活躍は目を見張るものがあります。ミミもムゼッタもソプラノ歌手なので可能でした。その玉突きで、本公演を含む前半のムゼッタ役が、中川郁文からイローナ・レヴォルスカヤ(後半のみの予定が全公演に出演)に変更になりました。そのため、本京都公演には中川郁文は出演しなくなりました。大阪交響楽団第129回名曲コンサート「モーツァルト・ア・ラ・カルト」(夜の部)に続いて、中川の出演に期待していたので残念。

本公演のリハーサルは10月1日からスタート。ロームシアター京都のX(@RT_Kyoto)に、京都市交響楽団練習場で練習風景が掲載されていますが、指揮台で指揮しているのは井上道義ではなく、副指揮を務めた瀬山智博でした。

チケットは、S席11,000円(SS席13,000円もあり)。4月14日の京都コンサートホール・ロームシアター京都Club先行発売で購入。9月7日に全席完売しました。字幕や舞台の一部見えない「注釈付き当日券」(3000円)が約80枚発売されましたが、さすがに完売しなかったようです。ロビーではTシャツなどのグッズや、上述の『音楽の友』2024年6月号も販売されました。
プログラムの冊子は全公演共通で、あらすじはごく簡単に記載されているのみです。オーケストラメンバーの記載はありません。井上は「巨匠とおだてられ、爺臭く動きも鈍く、希望は追憶に入れ替わり、過去の自分の中に生きる存在になることを嫌う」「青二才な道義の青春時代の憧れだったオペラ「ラ・ボエーム」を、坐骨神経痛や弱った腎臓のことを忘れ、素晴らしい演出家と歌手達ともう一度花火を打ち上げることが出来るなんて、こんな嬉しいこと……いえいえ、こんな辛いことはありません。頑張ります。」とメッセージを寄せています。また、森山開次も「画家マルチェッロに、1913年にフランスに渡った藤田嗣治(つぐはる)(=レオナール・フジタ)を重ねる。トレードマークのおかっぱ頭、丸眼鏡、チョビ髭」と記しています。

緞帳は降りてないので、ステージの装置が暗い中に見えました。オーケストラはピット内で音出し中。オーケストラピットは前5列ですが、ステージが低くて、オーケストラピットも浅い。2階席1列目からだと目の前の棒が邪魔ですが、井上の譜面台のスコアがよく見えて、オーケストラもよく見えました。京都市交響楽団長(京都市長)の松井孝治がX(@matsuikoji)で指摘していましたが、もう少し深いセッティングが可能なところをあえてオーケストラピットを浅くしたようです。他公演でも同様だったので、このオーケストラピットの設定は井上の意図でしょう。

オーケストラは左側にヴァイオリンと木管楽器とハープとコントラバス、右側にヴィオラ、チェロ、金管楽器、打楽器が配置されました。コンサートマスターは豊嶋泰嗣(京都市交響楽団特別名誉友情コンサートマスター)。その隣は林七奈(大阪交響楽団ソロコンサートマスター)で、まさかの夫婦共演。ちなみに、豊嶋は京都府が主催の「Music Fusion in Kyoto音楽祭」の音楽監督に就任して、翌週から京都府の各地で演奏しました。テューバ奏者のピーター・リンクが、トロンボーンの隣でチンバッソを演奏。見た目はトロンボーンですが、スライドではなくホルンのようにバルブを押して演奏しますが、初めて見ました。なお、今年3月まで首席トロンボーン奏者を務めた岡本哲(相愛大学音楽学部教授)がエキストラでセカンドトロンボーンを演奏しました。
チューニング中にステージにキャストが入りました。井上道義が下手の客席用の扉(1L)から登場(ピット用の出入口がないようで、オーケストラも同様に出入りしていました)。客席前の通路を通って、指揮台の後ろにある扉を開けて指揮台へ。 

字幕は日本語と英語の2ヶ国語対応。ステージ後方に横書きで2行で、左が日本語、右が英語でした。日本語字幕は井上が自ら担当しました。「!」を多用したり、「サムいぞ」など若者向けのユニークな翻訳でした。井上道義の翻訳を出版してほしいくらいです。ステージ、字幕、井上の指揮と、見るところが多くて、二つの眼では足りなくて、もっとたくさん眼が欲しいです。

全体的な感想は、まずダンサーが大活躍。男性2人と女性2人の4人で、梶田留以、水島晃太郎、南帆乃佳の3人は、兵庫芸術文化センター管弦楽団第142回定期演奏会「井上道義 最後の火の鳥」にも出演しました。森山はプログラムで「私はダンサーを、この屋根裏部屋に染みついた「芸術の息吹」と呼んでいる」と記していますが、ダンサー出身の森山開次らしい演出で、視覚的に楽しめました。
演出はシンプルで、舞台装置の移動がなく、大道具は最初から最後までほぼ固定でシンプル(と言ってもこの大道具を各地に運搬するのは大変でしょう)。雪が天井から降ってくる演出もありませんでしたが、これは全ての公演(ホール)で演出を共有化して、最大公約数的な装置にしたのでしょう。幕の上げ下げもありませんでした。
歌手はいずれも健闘で、声量も十分。歌っているのが日本人か外国人か区別がつきませんでした。外国人歌手の3名はいずれも日本初出演でした。ミミ役のルザン・マンタシャンは、アルメニア出身。ムゼッタ役のイローナ・レヴォルスカヤと、コッリーネ役のスタニスラフ・ヴォロビョフはロシア出身。
ステージの照明が暗く、前向きなストーリーではないので、 悲劇なので第4幕はさみしくなってきました。第2幕以外は合唱団が登場しないので、人間関係も単純なので、もう少しにぎやかな作品でもよかったでしょう。
井上は立って指揮。大きな身振りでしたが、ピットが暗いためでしょう。テンポを大きく揺らした躍動的な表現で、オーケストラの演奏も表情豊か。指揮台が置いてあったのかは私の席からは分かりませんでした。

第1幕「パリ。ボヘミアンたちの屋根裏部屋。クリスマス・イヴ。」は、古びた部屋のセットでダンサーがやたら踊っています。ストーブの火を黒子のようなボディースーツを着た女性ダンサーが表現しました。ショナールと一緒に、酒とかの食事をダンサーが運んできました。二人の小僧が金を拾うのもプロット通りで、本公演ではダンサーが拾いました。絵はキャンバスに置いてあるだけで描きません。おうむ(インコのような緑色の鳥の人形)をダンサーが二人で動かしました。大家のベノアがやってきたときは、大きな音量で展開が分かりやすい。ベノア役の晴雅彦のバスがすごく声が通ります。男たちは退場して舞台袖で歌い、ロドルフォが部屋に一人だけになったところに、フルートのメロディーに連れて、下手からミミが登場。ノックしますが、ドアはありません。ミミは床に倒れます。ロドルフォの「今夜は月夜だ」に合わせて、後方の大きな窓から満月が見える細かな演出。ロドルフォのアリア「冷たい手を」は、の高音がよく伸びました。アリアの後に拍手が起こりましたが、歌手は客席に向かって礼はしません。これは全員同じでした。次にミミのアリア「私の名はミミ」。青白い光が当たりました。井上も拍手。下手舞台袖から声が聴こえて、ミミとロドルフォが二人で歌いました。二人で退場。第1幕はここまで。
ここで幕が下りるのが通常ですが、本公演は休憩なしでそのまま第2幕へ。ダンサーとともに、ピエロのような格好のパルピニョール(谷口耕平)が登場。舞台転換の時間を利用したパフォーマンスで、声は出さずにアクションで見せます。女性ダンサー二人と一緒に「だるまさんが転んだ」をしますが、いまひとつ客席の反応が悪くてかわいそう。下手から「Café MOMUS」の表札が運ばれてきて、白い窓枠のオブジェを持った人(=合唱団)が大量に登場。パルピニョールが井上に仕向けると、井上が「京響!」と言って、オーケストラ全員が起立しました。
合唱団の衣装はパリの街並みを表現したとのことで、フランスの詩人ジャン・コクトーの言葉が手書きされていますが、客席からは遠くて見えませんでした。

第2幕「カフェ・モニュス。」はクリスマスイヴ。黒い衣装の児童合唱団がステージ前方に集まって歌います。みんな立っていましたが、いつの間にか円卓が設置されました。持っていた窓枠のオブジェがステージの左右に置かれました。ソリストが歌っている間は、後ろの人が動きを止めています。おもちゃ売りのパルピニョールが登場。クリスマスツリーのような飾り物を背負っています。児童合唱団は膝をついてハイハイして移動します。
カフェ・モニュスの店内には15人くらいの客がいて、メインキャストは上手側の円卓に座っています。店内と言っても段があって少し高いだけで仕切りはありません。ムゼッタが赤いドレスで下手から登場。他の客を追っ払って、左の円卓に座ります。ムゼッタ役のイローナ・レヴォルスカヤは美人で、高音が特徴的でややキンキン気味の声。ムゼッタのアリア「私がひとり街を行くと」で、合唱団のスカートの装飾品が光る仕組みになっていて、クリスマスらしいライトがつきました。ムゼッタが白い上着を脱ぎ、右脚を椅子に乗せて美脚を披露。腕も足も細い。叫んだ後もドラマティックに歌います。下手からバンダが聴こえてきて、青いマーチングの衣装で下手からパレード隊が登場。ドラムメジャー1名、ピッコロ4名、トランペット4名、打楽器(=ドラム)4名の編成でした。ステージの人々はフランス国旗を持って見送り、井上も退場。白い服の二人が小芝居をしてから、第2幕が終わり。幕が閉まることなく、25分間の休憩。

第3幕「アンフェール門の税関所前。翌年2月。」。井上の入場とともにキャストが入場。白い衣装で立っていて、頭もすっぽり白く、全身白づくめです。その中を縫うようにダンサーが踊りますが、照明が暗い。ミミが下手から登場。礼拝の鐘はピットではなく、下手の舞台袖で叩かれました。ミミとロドルフォのアリア「助けてマルチェッロ」。ミミが咳き込み、ステージの後ろでしゃがみこんでいます。ムゼッタの笑い声のみ上手舞台袖から聴こえて、ミミのアリア「よろこんで元のところへ」。ムゼッタが黒い衣装で登場。下手でムゼッタとマルチェッロが口喧嘩。ののしってムゼッタが退場。最後は真っ暗に。音楽が終わると、ミミとロドルフォがゆっくり歩き、ミミは下手に、ロドルフォは上手に別れて退場しました。幕は下りずに、20分間の休憩。

第4幕「屋根裏部屋。数ヶ月後。」は、チューニングと同時にキャストが登場。1幕と同じセットです。マルチェッロは絵を描いています。アリア「ああミミ、君はもう戻ってこない」の最中に、ダンサー2人が白い羽根?を持って踊ります。ダンサーが描かれた絵を客席に見せると、ミミの肖像画でした。4人がニシン持ってくると、照明が少し明るくなりました。フラメンコのような振り付けです。賑やかなところにムゼッタとミミが登場。一気に雰囲気が変わります。ミミはベッドで横になります。コルネーリのいい声外人だったバス 二人だけになり、ミミはベッドに寝たまま歌います(枕は高くしてありました)。オーケストラが繊細な表現で、シンバルのシャーンという音でミミが亡くなり、ダンサーも左右に立ってお祈り。

カーテンコールは写真撮影OKでした。うまく写真に撮れませんでしたが、井上が森山に土下座して称えました。また、児童合唱でソリストを務めた寺前洸音にも拍手。17:10に終演しました。 

中川郁文のInstagram(@ikumi_nakagawa)に、井上道義とルザン・マンタシャンとの3ショットの写真がアップされました。本公演も聴きに来ていたようで、ルザン・マンタシャンが歌うミミは本公演が最後で、翌週の西宮公演からは中川郁文に交代しました。知らなかったのですが、本公演の前週の名取公演では、ルザン・マンタシャンが突然喉がひりひりして声が出なくなったため、公演当日に急遽中川郁文が代役を務めました。中川郁文が歌うムゼッタは幻になってしまいましたが、キャラクター的にはミミよりムゼッタのほうがあっているように思うので、機会があればぜひ聴きたいです。

井上はブログ「Blog ~道義より~」で、「見切れも多く、響き方ももう一つなロームシアターとなってから初めで最後の公演」と綴っていて、ロームシアター京都はあまりお気に召さなかったようですね。

後半でコッリーネ役を演じる予定だった杉尾慎吾が体調不良のため、前半で演じたスタニスラフ・ヴォロビョフと松中哲平に交代することになりましたが、11月2日に無事に大千穐楽を迎えました。全8公演でチケットが完売したとのこと。井上道義オフィシャルウェブサイトのXによると、東京公演の2日目をNHKが収録したようで、12月22日(日)のEテレ「クラシック音楽館」で放送される予定です。

東京公演の前後に、「井上道義 音楽生活写真展」が東京芸術劇場ギャラリー1で開催されました。13日間の会期中に4000人を超える来場者があったとのこと。関西にも巡回して欲しかったですが、「Voyage -音楽という名の通行手形-」のX(@Voyage09170929)で写真が投稿されています。桐朋学園大学の学生の頃に尾高忠明や秋山和慶と一緒に映る写真など、初めて見る写真が多く、貴重です。写真集にして出版して欲しいです。

井上道義が京都市交響楽団を指揮するのはあと1公演で、京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.5「井上道義×ブルックナー交響曲第8番」(2024.11.23 京都コンサートホール大ホール)を残すのみです。京都市交響楽団のX(@kyotosymphony)によると、井上道義が京都市交響楽団練習場でリハーサルするのは10月1日(リハーサル1日目)が最後だったとのこと、ということは、11月のブルックナー「交響曲第8番」の練習は、すべて京都コンサートホールで行なわれるということでしょうか。

(2024.11.3記)


「ラ・ボエーム」上演時間 メインホールホワイエ カーテンコール中の撮影・SNS投稿は大歓迎です! 本日の出演者 カーテンコール(合唱団) 井上道義とルザン・マンタシャン 井上道義と森山開次 カーテンコール(ソリスト) カーテンコール(全景) 井上道義と森山開次



加藤訓子プロデュース STEVE REICH PROJECT「kuniko plays reich ll / DRUMMING LIVE」 京都コンサートホール・ロビーコンサートVol.17「松村衣里 ハープ・コンサート」