京都市交響楽団第704回定期演奏会


  2025年9月20日(土)14:30開演
京都コンサートホール大ホール

沖澤のどか指揮/京都市交響楽団
石田泰尚(ヴァイオリン)

L.ファランク/交響曲第3番
リムスキー・コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」

座席:P席 2階P1列23番


第701回定期演奏会大阪特別公演に続いて、沖澤のどかが3か月ぶりに京都市交響楽団を指揮しました。大阪特別公演の翌週に、沖澤は故郷の青森へ。今年度から始まった「第1回青い海と森の音楽祭」のオーケストラ演奏会(ファミリーコンサート・一般コンサート)で、アオモリ・フェスティバル・オーケストラを指揮しました(2025.7.5~6 リンクステーションホール青森)。沖澤は青森県三沢市出身で青森市育ち。この音楽祭の芸術総監督を務めます。また、青森県からあおもり文化大使を委嘱されています。続いて、2024年から首席客演指揮者を務める「セイジ・オザワ松本フェスティバル」で、ブリテンのオペラ「夏の夜の夢」を指揮しました(2025.8.17、20、24)。9月3日には第698回定期演奏会で演奏した「英雄の生涯」のライヴ録音がCDでリリースされました。沖澤のどかと京都市交響楽団と初めてのCDで、「レコ芸ONLINE」(2025年10月号)で、特選盤に選ばれました。

本定期演奏会は京都では2日公演で、2日目に行きました。両日とも全席完売でした。本公演の後に、国内ツアーが行なわれました。沖澤のどかと京都市交響楽団は初めてのツアーです。京都コンサートホールでの演奏も含めると、9月19日(金)から28日(日)までの全8公演でした(詳細は後述)。

京都市交響楽団のX(@kyotosymphony)によると、本公演のリハーサルは、17日(水)から京都市交響楽団練習場で始まりました。18日(木)から京都コンサートホールでの練習でした。17日(水)には、楽団長(京都市長)の松井孝治も同席して、「京都市交響楽団70周年記念事業」の記者発表が行なわれました。「プロコフィエフの陣~交響曲全曲演奏会(全3回)」はライヴ録音される予定とのこと。「アウトリーチ事業「京(みやこ)の音楽会」」は京都市内10ヶ所でのアンサンブルコンサート。さらに、「ロームシアター京都10周年記念×京都市交響楽団70周年記念共同プロジェクト」、「第717回定期演奏会「70周年記念プレミアム」」、「京響70周年記念「京響友の会 Special Thanks コンサート」」も開催されます。なお、来シーズンから定期演奏会のリハーサルは、練習場ではなく、すべて京都コンサートホールで行われるとのこと。

沖澤の指揮を正面から見てみたいのと、石田泰尚の演奏を間近で見たかったので、今回はひさびさにポディウム席を購入しました。P席はC席よりも安い3,000円です。ポディウム席は、オーケストラ・ディスカバリー2013 〜こどものためのオーケストラ入門〜 「オーケストラ・ア・ラ・カルト」 第3回「和&洋」以来です。ポディウム席はトイレからの距離が遠いのが難点で、この日も休憩中は大行列でした。

14:00からプレトーク。沖澤は「宣伝を先に」と話して、「3月の定期演奏会で演奏した英雄の生涯がCDになった。ホールで3日間練習ができたので、臨場感ある演奏になった。昨日は在庫が売り切れたので、早めにお買い求めください」とPR。続いて、「京響創立70周年でプロコフィエフ交響曲全曲演奏会を指揮する。1年間で全曲を演奏するのはとても稀少な機会で、挑戦的なプログラムと自負している。プロコフィエフは大阪でロメオとジュリエットを演奏した。大胆で緻密な演奏に感銘を受けた」と話して、関西6オケ!2024の演奏を振り返りながら話しました。最後に「京響の演奏の振動を伝えたお酒が発売される。第1弾はベートーヴェン交響曲の抜粋だったが、第2弾はボレロ。本日は売っていない」と話しました。「聚楽第 京乃響」は佐々木酒造とONKYOのコラボ商品で、第685回定期演奏会のボレロを聴かせました。東京公演で発売されました。国内ツアーについては「青森のみなさんはとっても期待している。関西のオーケストラが東北に行くのも稀なので。青い海と森の音楽祭を始めたが、「青森クラシック元年」と言われている」と話しました。各曲の解説は後述します。10分で終了。ポディウム席からだと、ステージマネージャー(日高成樹)の動きがよく見えます。開演前の客席はザワザワした雰囲気がなくて静かでした。

プログラム1曲目は、L.ファランク作曲/交響曲第3番。本公演でも女性作曲家の作品を取り上げました。プレトークで沖澤は「ルイーズ・ファランクって誰?と思ったと思うが、ドイツ古典派のベートーヴェン~ブラームス~シューベルト~シューマンの流れを汲んでいる。彼女はフランス人。演奏は難しい箇所があるが、聴くのには聴きやすい。正統派で躍動感もある」と話しました。

コンサートマスターは石田泰尚(ソロコンサートマスター)、その隣が会田莉凡(ソロコンサートマスター)、石田の後ろが泉原隆志(コンサートマスター)。コンサートマスター3人揃い踏みは、第682回定期演奏会以来ですが、会田と泉原の位置が入れ替わりました。会田莉凡が楽譜をめくるのはめったに見られないので、貴重です。オーケストラは中編成。ソロ首席ヴィオラ奏者の店村眞積と特別首席チェロ奏者の山本裕康がひさびさのご出演。金管はホルン×2だけで、ティンパニが前に。

4つの楽章からなる35分程度の作品です。構造はベートーヴェンで、響きはシューマンの交響曲に似ています。沖澤が指揮する作品は最近は現代曲が続いたので意外な選曲でした。こんなに古典的な作品だとは思いませんでした。こんな曲を指揮するんですね。演奏が難しそうな曲で、緻密さや繊細さが要求されますが、色彩感があって、京響らしい上品さもある優美な演奏。ポディウム席でも演奏の特徴は分かりました。第3楽章は石田と会田が身体を動かして呼応しましたが、二人の動きは同一ではないので、それぞれのポイントは違うようです。石田と会田が隣で弾くのはおそらく初めてではないかと思われますが、楽しそうに演奏しました。沖澤は指揮しながら、奏者とのアイコンタクトをよく取ります。目が合う奏者を探しているようにも見えました。

休憩後のプログラム2曲目は、リムスキー・コルサコフ作曲/交響組曲「シェエラザード」。ヴァイオリンは石田泰尚(京都市交響楽団ソロコンサートマスター)。石田のソロでは、約3年前に京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.3「天才が見つけた天才たち――セルゲイ・ディアギレフ生誕150年記念公演」で聴きました。日経新聞の沖澤と石田の対談記事によると、なんと沖澤はこの演奏会を客席で聴いていたと語っています。まだ沖澤が常任指揮者に就任する前で、石田も知らなかったようです。
プレトークで沖澤は、「ソロの石田さん、チェロの山本さん、名手ぞろいの京響を、全国に伝えるのにはもってこいのプログラム」と紹介。「絵巻を広げるようなスケールの大きな音楽で、各パートがまんべんなく難しい。クリアーしていくとオーケストラからアドレナリンが出てくる。京響は煽るとすぐに飛びつく。小さくまとまってもおもしろくないので、リスクがあっても勢いがある攻めの演奏がしたい」と抱負を述べました。
休憩中にティンパニが雛壇の最後列に移動して、私の席の真下に配置されました。トロンボーンの客演首席奏者は、田中宏史(名古屋フィルハーモニー交響楽団首席トロンボーン奏者)。ハープは上手側(コントラバスとファゴットの間)に配置。こうやって見ると、京都コンサートホールのステージは意外に奥行きがあります。

沖澤の指揮は、立ち位置を変えないので、軸がぶれません。また、テンポの変わり目でも細かく振りません。奏者とオーケストラのアンサンブルに委ねている部分があります。演奏は、ポディウム席で聴くと、打楽器が演奏のキャラクターを決定づける重要な役割を果たしていることが分かります。中山のティンパニはマレットを7セットも用意していて、頻繁に持ち替えました。また、普段はあまり聴こえないチェロ、コントラバスや管楽器がよく聴こえて、新しい発見が多い。また、ハープが大きめに聴こえます。ハープを上手側に配置したのは、石田と松村がアイコンタクトできるようにでしょうか。後ろから聴いても表情が豊かでうまい。以前にポディウム席で聴いた第17回NTT西日本N響コンサートオーケストラ・ディスカバリー2013 〜こどものためのオーケストラ入門〜 「オーケストラ・ア・ラ・カルト」 第3回「和&洋」よりもくっきり聴こました。ただし、ポディウム席は暑い。客席の熱気のせいか、ステージを照らすライトのせいなのか、空調の利きが弱いのか、そのすべてでしょうか。

第1楽章「海とシンドバッドの船」は波が躍動的で、こんなにうねりが見える演奏は珍しい。第1ヴァイオリンが強力で、強奏でもしっかり聴こえます。石田は顎をガクガクさせながら弾きました。休みなく続けて第2楽章「カランダール王子の物語」へ。石田のソロが繊細。続くファゴットソロやオーボエソロは、沖澤はテンポ感をなくすような指揮。108小節からのトロンボーンソロは、客演首席奏者ではなく、その隣の戸澤淳が演奏しましたが、もともとスコアで第2トロンボーン奏者のソロと指定されています。348小節(Con moto)から弦楽器を煽り気味の指揮。最後はトライアングルとシンバルの八分音符の一発で終わりますが、後ろから見るとここを決めるのはものすごい緊張感で、かなりの集中力が必要です。
第3楽章「若い王子と王女」は、69小節からのPocchissimoはやや速めのテンポ。第4楽章「バグダッドの祭り~海~船は青銅の騎士のある岩で難破~終曲」は、石田はさらに力が入ったソロ。強奏は音圧が強くてぼやけません。ホールの響きにオーケストラが馴染んだでしょうか。540小節(Spiritoso)からテンポアップ。今まであまり意識したことがありませんでしたが、タムタム(ゴング)は623小節に一発だけなんですね。最後まで集中力が途切れず、弱奏の安定感もさすがです。

拍手に応えてアンコール。ドビュッシー作曲(カプレ編曲)/ベルガマスク組曲から「月の光」を演奏。フランス音楽で締めくくるとは意外でした。16:25に終演。終演後のお見送りで、松井市長の横で沖澤も参加されていました。こうなったらレセプションを復活してほしいと思うのは私だけでしょうか。

早くも黄金時代が到来したと言える期待以上の演奏で、本公演の演奏もぜひ録音してほしいです。奏者がのびのびと演奏できているのがすばらしい。国内ツアーも大成功間違いなしと太鼓判を押せる演奏でした。お客さんの集中力もすばらしい。

翌日から国内ツアーへ、翌21日(日)の兵庫公演(兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール)は完売。23日(祝・火)の東京公演(サントリーホール大ホール)も完売。松村衣里のブログ(後述)によると、広上淳一からのドーナツの差し入れがあったようです。24日(水)は福井公演(ハーモニーホールふくい大ホール)。京都市交響楽団の福井公演は14年ぶりとのこと。25日(木)は長野公演(長野市芸術館メインホール)。沖澤が長野市で指揮したのは初めてとのこと。
27日(土)は八戸公演(SG GROUPホールはちのへ(八戸市公会堂))。28日(日)は千秋楽の青森公演(リンクステーションホール青森)。八戸公演と青森公演は完売で熱烈な歓迎を受けたようです。京都市交響楽団が青森県で演奏したのは今回が初めてとのこと。27日(土)の夜にホテル青森で行われたレセプションがすごい。「歓迎 ようこそ青森へ!また来いへ♪のどか」の横断幕のインパクトが強烈。まぐろ解体ショーなどもあったようで、これは地元から愛されていないとできません。最終日のリンクステーションホール青森は、2,000人の大ホール。青森にこんな大きなホールがあるとはびっくりです。沖澤は津軽弁でプレトーク。ダブルアンコールとして、千秋楽のみ「ねぶた囃子」を演奏。前日の夜に急遽決まったようです。京都市交響楽団のXで動画が公開されていますが、大盛り上がりでした。まさに故郷に錦を飾りました。28日(日)の最終公演後には、沖澤は会田莉凡とともに青森ジュニアオーケストラを指導。沖澤も小学5年生から高校時代までチェロを演奏していたとのこと。ぜひ京都市ジュニアオーケストラも指揮して欲しいです。

まさに京響の歴史に残るツアーになったと言えるでしょう。京都市交響楽団ハープ奏者の松村衣里のブログ「ファルファーレのお部屋にようこそ! ハープデュオファルファーレの日記」が旅行記になっていてとてもおもしろい。なお、京都市交響楽団楽団長の松井市長は、京都(2日目)、東京、八戸、青森の公演を着た同行したようです。いずれも休日とは言え、京都を留守にしても大丈夫なのか心配になりますね。松井のXによると、国内ツアー8公演をすべて聴いた方がおられるとのこと。確かに8回聴く価値がある演奏でした。

 

北山通りから京都コンサートホールを望む 建設中の住宅展示場 京都コンサートホールと建設中の住宅展示場 アンコール 大ホールロビーから住宅展示場を望む お見送り(沖澤のどか、上野博昭、松井孝治) プロムナード「エコ路地」から住宅展示場を望む

(2025.10.9記)


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