オーケストラ・ディスカバリー2013 〜こどものためのオーケストラ入門〜 「オーケストラ・ア・ラ・カルト」 第3回「和&洋」


   
      
2013年11月24日(日)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

川瀬賢太郎指揮/京都市交響楽団
藤原道山(尺八)、東儀秀樹(笙&ひちりき)
ロザン(ナビゲーター)

中山晋平(宮川彬良編曲)/砂山
宮城道雄(日下部進治編曲)/春の海
東儀秀樹(日下部進治編曲)/越天楽幻想曲
モーツァルト/フルート協奏曲第1番第1楽章
一ノ瀬響(日下部進治編曲)/琥珀の道
東儀秀樹(山下康介編曲)/蒼き海の道
プッチーニ(栗田信生編曲)/歌劇「トゥーランドット」から「誰も寝てはならぬ」
外山雄三/バレエ組曲「幽玄」から「天人の踊り」

座席:自由席


2009年度から始まった「オーケストラ・ディスカバリー 〜こどものためのオーケストラ入門〜」も今年で5年目です。2013年度のテーマは「オーケストラ・ア・ラ・カルト」。チラシによると「クラシック音楽のもつさまざまな可能性を、名曲の演奏と楽しいお話とともにお聴きいただきます。」とのこと。
第3回の今回は「和&洋」。邦楽器とオーケストラが共演する意欲的なプログラムです。指揮は川瀬賢太郎。広上淳一に師事した29歳。2011年から名古屋フィルハーモニー交響楽団指揮者を務め、2014年4月からは神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者に就任する売り出し中の指揮者です。一度聴いてみたかったのでうれしい。ナビゲーターはロザンの2人。
チケットは、4回シリーズ通し券のあとに1回券が発売されたため、指定席の1回券はあまりいい席が残っていませんでした。今回も自由席にしてポディウム席に座りました。客席は7割程度の入り。

プログラム1曲目は、中山晋平作曲(宮川彬良編曲)/砂山。川瀬賢太郎が登場。細身です。後から知りましたが、この曲はもともと北原白秋作詞の童謡とのこと。緩-急-緩からなる構成ですが、宮川彬良の編曲がすごくいい。冒頭はサーフドラムを使って波の音を表現。川瀬の指揮もリズム処理がうまい。一曲目から大熱演でした。もう一度聴きたいですね。
川瀬がマイクでMC。高い声でした。ナビゲーターのロザンを紹介して、ロザンの2人が京響Tシャツを着て登場。宇治原がトークをリードして、菅はボケ役で笑わせます。宇治原が「日本っぽい曲でしたね」と話すと、川瀬は「「ドレミソラド」と4番目と7番目が抜けているので、日本ぽくなる。「ヨナ抜き音階」と言われる」と解説しました。川瀬はとてもよく話します。

プログラム2曲目は、宮城道雄作曲(日下部進治編曲)/春の海。尺八の藤原道山が紋付き袴で登場。今年で41歳とのことですが、若く見えます。尺八は意外に抵抗なくスムーズに音が鳴ります。音色も軽い。
ロザンとトーク。藤原は「尺八は真竹(まだけ)の根っこでできている。穴は5つある。尺八は長さが「一尺八寸」(54センチ)だが、今日使う楽器は「一尺六寸」で短い」「普段は指揮者はいないので、吸った息や鼻息で合わせる」と話しました。川瀬は尺八と共演したのは初めてとのこと。衣裳は「黒紋付き」と言って、正式な衣装とのこと。

プログラム3曲目は、東儀秀樹作曲(日下部進治編曲)/越天楽幻想曲。笙&ひちりきの東儀秀樹が登場。衣裳はなんと烏帽子をかぶってオレンジ色の着物。はじめは笙を演奏。単音も出せるし、強弱もつけられることが分かりました。途中からひちりきに持ち替えました。
ロザンとトーク。まず楽器解説。「笙は竹が17本あって、吹いても吸っても音が鳴るので、呼吸しながら吹ける。パイプオルガンやアコーディオンのルーツになった。穴が開いているのは14本だが、湿気に弱いので火鉢の熱で結露を逃がす。今日のような短い演奏会では大丈夫」とのこと。「ひちりきはオーボエのルーツになった。笙は天から届く音、ひちりきは地上の音、竜笛は天地を行き交う音。これらの楽器で宇宙を表している。日本の楽器がもっと浸透してほしい」と話しました。興味深い話でとても勉強になりました。東儀秀樹は落ち着いた声でよく話します。衣裳は平安貴族の普段着とのこと。ちなみに、オーケストラ団員の衣装は川瀬が「昼と夜で衣装が異なり、昼は黒の蝶ネクタイにタキシード、夜は白の蝶ネクタイに燕尾服で、タキシードよりもしっぽっが長くなる」と解説しました。

プログラム4曲目は、モーツァルト作曲/フルート協奏曲第1番第1楽章を、フルートではなく尺八で演奏。川瀬も「5つの穴で吹くという挑戦」と持ち上げました。藤原道山が登場。今度はタキシードに着替えていました。オーケストラは、弦楽五部とオーボエとホルンで伴奏。川瀬はこの曲は指揮棒なしで指揮。ポディウム席で聴いたため、尺八の細かな表現はよく分かりませんでしたが、原曲の細かな音符もちゃんと演奏できていました。カデンツァは原曲よりも短めでしたが、最後に尺八らしい息の吹き込みも披露しました。
演奏後に、藤原は「尺八では早く吹くことはあり得ない」と話し、「尺八には3つの技がある」として、「息」「穴の開け閉め」「首を動かす」を挙げました。先ほどの演奏では、穴は半分とか1/4とか開けたりして音程を調整したとのこと。また、首を動かすことで音程が変わるため「首が大忙しだった」と話しました。藤原が尺八を始めたきっかけは「実家が琴だったが、好きになれなかった。リコーダーが好きだったので、やってみるかと言われた。最初は音が出しにくかった」と話しました。また、「ちょこちょこ作曲もしている。今の時代の思いを作りたい」と話しました。

プログラム5曲目は、一ノ瀬響作曲(日下部進治編曲)/琥珀の道。引き続き藤原道山が尺八で演奏。大学の友人が作曲した作品をオーケストラ用にアレンジしたとのこと。ドラムセットが入り、マラカスがリズムを刻むなどポップス調の曲でした。

休憩後は東儀秀樹が登場。タキシードに着替えていました。ロザンとトーク。東儀は「父は商社マンで海外に住んでいた。雅楽を始めたのは19歳という異例の遅さ。高校ではロックバンドでギターを弾いていた。オーケストラではチェロを弾いていた」などと話しました。ひき込まれる話でもっと聴きたいですね。東儀が川瀬賢太郎と共演するのは2回目とのこと。
プログラム6曲目は、東儀秀樹作曲(山下康介編曲)/蒼き海の道。ひちりきでの演奏。ひちりきの息遣いがうまく生かされた作品です。演奏後に東儀は「ひちりきはかなり広い可能性を持っている」と話しました。

プログラム7曲目は、プッチーニ作曲(栗田信生編曲)/歌劇「トゥーランドット」から「誰も寝てはならぬ」。「荒川静香がフィギュアスケートで使った曲と言うと分かりやすい」と解説。冒頭は笙。途中からひちりき。オーケストラパートも編曲されていて最後は行進曲風のアレンジです。とてもいい演奏でした。
東儀が退場して、プログラム最後の8曲目は、外山雄三作曲/バレエ組曲「幽玄」から「天人の踊り」。「10年前にベルリンフィルで演奏された曲」と紹介されました。誰が指揮したのか調べてみたところ、2002年にマリス・ヤンソンスがヴァルトビューネ(野外コンサート)で取り上げました。前半はフルートソロ、後半は小太鼓4台が盛り上げます。短い曲でした。

拍手に応えてアンコール。藤原道山の尺八と東儀秀樹のひちりきが共演。ロザンが「知っている曲だったらいいなあ」とつぶやきましたが、一青窈が歌っているマシコタツロウ作曲/ハナミズキを演奏。東儀秀樹はのけぞって気持ちよさそうに演奏しました。

邦楽器とオーケストラとのコラボレーションという珍しい企画でしたが、大成功でした。「こどものためのオーケストラ入門」というサブタイトルですが、今回は大人のほうが満足していたようです。川瀬賢太郎もいい伴奏をつけていました。たまにほっぺたを膨らませます。常任指揮者の広上淳一に師事したためか、京都市交響楽団のメンバーは川瀬の指揮に合わせやすいのかもしれません。今度はぜひ定期演奏会も指揮してほしいですね。
藤原道山はモーツァルトを尺八で演奏するチャレンジ精神に拍手。クラシック音楽の演奏には意欲的なようで、マリンバ奏者のSINSKEと組んで、「ボレロ」や「展覧会の絵」のCDが出ていますが、コンサート会場限定販売で一般発売されていないようです。残念。
東儀秀樹は気持ちよさそうにのびのび吹く姿が印象に残りました。トークも面白かったです。

(2013.12.14記)




京都市交響楽団大阪特別公演 久石譲コンサート2013 in festival hall「第九スペシャル」