京都市交響楽団第705回定期演奏会


  <京都市交響楽団第705回定期演奏会ホールリハーサル公開>

2025年10月9日(木)11:45開演
京都コンサートホール大ホール

ピエール・デュムソー指揮/京都市交響楽団

ショスタコーヴィチ/交響曲第10番第1楽章、第3楽章

座席:自由


<京都市交響楽団第705回定期演奏会>

2025年10月11日(土)14:30開演
京都コンサートホール大ホール

ピエール・デュムソー指揮/京都市交響楽団
上野耕平(サクソフォン)

ピエルネ/「ラムンチョ」序曲
トマジ/バラード―サクソフォンと管弦楽のための
ショスタコーヴィチ/交響曲第10番

座席:S席 3階C2列27番


ピエール・デュムソーが初めて京都市交響楽団を指揮しました。デュムソーは1990年にフランスで生まれて、まだ35歳。2026-2027シーズンから、ノルマンディ・ルーアン歌劇場管弦楽団の音楽監督に就任します。デュムソーの来日は意外にも5回目で、これまでに東京シティ・フィルハーモニー管弦楽団、紀尾井ホール室内管弦楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢を指揮しました。京都市交響楽団にとっては、第704回定期演奏会から始まった国内ツアー(9月19日~28日)ぶりの演奏会です。

本公演は、11日(土)昼の1回のみの公演ですが、同一プログラムが翌々日の13日(祝・月)に「オーケストラ福山定期Vol.10」(ふくやま芸術文化ホールリーデンローズ大ホール)と、その翌日の14日(火)に「中学生招待公演」(同)で演奏されました。中学生招待公演では福山市とその周辺の中学生が無料で鑑賞できるようです。

京都市交響楽団のX(@kyotosymphony)によると、本公演のリハーサルは、8日(水)から京都市交響楽団練習場で始まりました。2日目の9日(木)から京都コンサートホールでの練習でした。


<京都市交響楽団第705回定期演奏会ホールリハーサル公開> 10月9日(木)11:45~12:45

6月の京都市交響楽団第701回定期演奏会ホールリハーサル公開に続いて、今年度から始まった京都コンサートホールでのリハーサル公開の第2回目です。今回もリハーサル2日目の9日(木)の昼間に開催されました。
今回も定員は200名で、小学生以上が対象です。申込期間は9月1日~24日で、京都市交響楽団のホームページから申し込み。応募者多数の場合は抽選でしたが、9月29日に当選のメールが届きました。

当日は11:00から2階の大ホール入口で受付開始。当選番号を伝えて、入場料の500円を現金で支払うと、「公開PASS」が渡されました。そのまま大ホールのロビーで待機。お客さんは沖澤のどかが指揮した前回(京都市交響楽団第701回定期演奏会ホールリハーサル公開)と同じくらいの人数が来ていました。「公開PASS」には「リハーサル公開で取り扱う曲目は演奏会プログラムの一部です。」と書かれているだけで、リハーサル公開で何の曲が演奏されるかは今回も記載されていませんでしたが、ロビーに待機している間に、ホールの演奏がちょっと漏れ聴こえて、ショスタコーヴィチ「交響曲第10番」の第1楽章を練習中でした。

11:30にホール客席に入場。「公開PASS」の裏面に着席位置が図示されていて、前回と同じく1階席18列~31列の座席に着席するようにとのこと。ステージではリハーサルがいったん終わったので、団員はほとんどいなくなりました。
次第に団員が集まり、11:45にコンサートマスターの泉原隆志が立ち上がってチューニング。デュムソーはジャケット姿で登場。アゴヒゲがすごいので、35歳には見えませんが、写真よりも若く見えました。デュムソーが後ろを振り返って、客席に向かって英語で「ショスタコーヴィチ交響曲第10番を練習する」とあいさつして、リハーサルがスタート。第701回定期演奏会ホールリハーサル公開と同様に、マイクの使用はありませんでしたが、デュムソーは沖澤よりも声が大きい。立って指揮しました。

デュムソーの練習は、演奏を細かく止めて、気になったところを繰り返し練習しました。よく止めてよくしゃべりますが、ほとんど間を空けないので、演奏を聴いてから方針を考えるようなことはなく、演奏のイメージは頭の中にすでにできているのでしょう。早口で英語で話してどんどん進みますが、オーケストラが置いてきぼりになっている感じはありません。フランス出身ということで、音程や和音の正確さに対する要求レベルが高い。音程が気になるようで、後述するように随所でパートごとにゆっくり演奏して音程を確認しました。指揮棒なしで指揮しましたが、ダイナミックな指揮で振りが大きい。フレージングを歌って指示しました。すごくいい声です。

休憩前の続きの第1楽章練習番号46から開始。よく鳴ります。練習番号49から金管楽器のみで練習。前屈みになって腕を動かして、フレーズの方向性を全身で表現。練習番号53から第1ヴァイオリンのみ取り出して、ゆっくり演奏して音程を確認。10小節からのチェロも同じくゆっくり演奏。ゆっくり演奏して音程を合わせる練習は珍しい。ここはスコアではmfですが、強めに演奏。練習番号55もトロンボーンの和音の音程を合わせました。練習番号59のチェロとコントラバスのスタッカートつきの八分音符は「ソフトネス、ショートネス」と指示。練習番号63はヴィオラのみで練習。練習番号65はオーボエとクラリネットのみで練習。練習番号68はヴァイオリンとヴィオラのアンサンブルが美しい。練習番号69はピッコロ×2の音程を調整。デュムソーはピッコロの演奏に満足したようで、オーケストラからも足踏みで拍手。
12:20に第1楽章の練習が終了。次は第2楽章と思ったら、第3楽章の練習。デュムソーは第3楽章は指揮棒を使って指揮しました。練習番号105は「ワン オー ファイブ」と指示しました。練習番号104からのティンパニは曇った音でしたが、まさにスコアの「coperti」の指示通り。練習番号111の打楽器はpですが、はっきり聴かせました。練習番号114からのホルンソロ(E-A-E-D-A)はまろやかに響かせました。練習番号133から速めのテンポ。金管楽器はffですが、軽く鳴らします。直線的に鳴らさないで、速めのテンポであっさり。練習番号143も速めで終わりました。「ありがとうございます」と日本語であいさつして休憩へ。スタッフから客席に向けて、公開リハーサルの終了と本公演のチケットは発売中のアナウンス。客席から拍手。12:45に予定通り終了しました。

デュムソーは手際がよい練習で、和音を非常に重視。楽器のバランスよりもフレーズ感を重視しました。ジメジメせずにカラッと明るいショスタコーヴィチでした。前回の第701回定期演奏会ホールリハーサル公開の沖澤のどかのリハーサルと同様に、この1時間に500円の価値があるかの受け止めは人それぞれでしょう。なお、1階の前田珈琲京都コンサートホール店は、8月から土日祝は10:00~17:00に営業時間が拡大しましたが、平日の営業時間は原則開演2時間前から開演時間までのため、営業していませんでした。 

京都コンサートホールとKTVハウジング京都北山住宅展示場 ホールリハーサル公開受付は2F大ホール入口です ホールリハーサル公開受付京都コンサートホールとKTVハウジング京都北山住宅展示場


<京都市交響楽団第705回定期演奏会> 10月11日(土)

開演前に1階の前田珈琲で、秋限定メニューの「かぼちゃの豆乳クリームスパゲティー」(税込1200円)を食べました。店内が満席のせいか、料理が出てくるのにしばらく時間がかかりました。当日券は全席種が販売されて、お客さんは8~9割の入り。

14:00からプレトーク。デュムソーは「こんにちは」と日本語であいさつした後は英語で話しました。顔が長く、口ひげとアゴヒゲがつながっています。赤いネクタイを着けていました。各曲を解説して、プレトークは15分で終了しました(詳細は後述します)。

コンサートマスターは泉原隆志(コンサートマスター)。客演首席ヴィオラ奏者は木下雄介(元大阪フィルハーモニー交響楽団首席ヴィオラ奏者)。客演首席ヴィオラ奏者は藤原秀章(ベルリン放送交響楽団アカデミー生)。木下も藤原も若い。客演首席トロンボーン奏者は、小田切寛之(元東京都交響楽団首席トロンボーン奏者)。

プログラム1曲目は、ピエルネ作曲/「ラムンチョ」序曲。プレトークでデュムソーは「南フランス、北スペインのバスク地方の曲。若い男性が軍隊に入るので、恋人や母と別れる」とストーリーを紹介して、「聖歌や特殊な5拍子のダンスがたくさん詰め込まれている」と解説しました。1曲目から大編成での演奏。デュムソーは早足で登場して、指揮台の横で短めに礼をするとすぐに指揮を始めました。
スペイン風で、タンバリンやトライアングルが活躍します。フルートとピッコロもよく目立ちます。中間部のヴァイオリンはもう少し分厚さが欲しいです。後半はテンポが独特ですが、スコアを見たところ、フェルマータで4小節ごとに流れが中断するように聴こえます。デュムソーは立ち位置を変えて腕を大きく振って指揮。カーテンコールでも出入りが速い。

プログラム2曲目は、トマジ作曲/バラード―サクソフォンと管弦楽のための。サクソフォン独奏は、上野耕平。上野はThe Rev Saxophone Quartetのメンバーで、避難訓練コンサートで聴きました。京響定期には初めての出演です。プレトークでデュムソーは「トマジの妻の詩がベース。悲しい哀愁のある道化師が偽りの楽しみを感じる。スコットランドのダンスが出てくる。最後はブルースで道化師の失望を表す」と紹介しました。
上野はアルト・サクソフォンを持って登場。ネックストラップが赤色です。単一楽章で約16分の作品。1938年の作品です。サクソフォンとオーケストラのための作品がまず珍しい。もっと現代的な作品と予想していましたが、トマジとタネジと勘違いしていました。民謡風のメロディーのバラードで始まり、デュムソーも指揮台の上でダンスするような動き。中間部はテンポが速いですが、上野はなめらかに吹きます。上野の音量は十分でしたが、息を吸う音がすごく聴こえました。サックスソロが終わって、中間部はオーケストラのみでゆっくりしたテンポ。ここはもう少しオーケストラの響きが分厚くてもいいでしょう。さわやかすぎる印象を受けました。ウッドブロックやグロッケンシュピール(2人で演奏)が使われます。後半にサクソフォンのカデンツァ。オーケストラは表情が多彩で、演奏するのは簡単ではないでしょう。

拍手に応えて、上野がアンコール。ボノー作曲/ワルツ形式によるカプリスを演奏。細かな音符のスケールで音域が広いので、ヴァイオリン曲の編曲なのかと思いましたが、サクソフォンのオリジナル曲のようです。大変な曲ですが、運指が早く、すごく簡単そうに見えるほど上野の技術力が高い。最後の音符はスラップタンギングで音を割りました。

休憩後のプログラム3曲目は、ショスタコーヴィチ作曲/交響曲第10番。プレトークでデュムソーは「ショスタコーヴィチにはいろいろなエピソードがあるが、交響曲第10番には逸話がない。作曲の直前にスターリンが亡くなっている」と指摘。「第1楽章は厳しい恐怖政治の荒廃した様子」「第1楽章は20分ほどあるが、第2楽章は短く3分ほどで、スターリンの残虐さが表された。狂ったようなテンポで、スターリンの肖像と語ったことがある」と解説。「第3楽章は隠された緊密な関係がある。ひとつはレ-ミ♭-ド-シ(D-S-C-H)でショスタコーヴィチ自身を表す。二つ目は若い女性の生徒と手紙に書いていて、公にできないので曲の中に名前を書き込んだ」と説明しました。プログラムの増田良介の解説によると、この若い女性とは、エルミーラ・ナジーノヴァで、ホルンで演奏されるE-A-E-D-Aの音型がそれに当たります。「第4楽章は静かにゆっくり始まって、シベリアの荒涼とした風景」「フルートのメロディーは強制収容所から解放されたよろこびで、よろこびに満ちているが、ふたつの解釈がある。ひとつは圧政の皮肉なパロディ、あるいはついに自由になったよろこび」と説明しましたが、デュムソーがどう解釈しているのかは話しませんでした。

デュムソーはまたもや礼をしてすぐに指揮を始めました。今さらですが、京都市交響楽団の木管楽器のアンサンブルは最高級と再認識しました。特にファゴットがすばらしい。デュムソーは両足を広げたり、右足を上げたり、指揮台の上を忙しく動き回りましたが、オーケストラの演奏は整然と聴こえました。ただし、縦線やアインザッツはちょっと不安定でした。この作品では、ショスタコーヴィチの代名詞ともいえる木琴が意外にも使われないことに気がつきました。
第1楽章はリハーサル公開と同じく、指揮棒なしで指揮。前半はもっと重々しくひきずるように演奏してほしいです。練習番号5からのクラリネットソロが超弱音ですばらしい。オーケストラがホールの響きになじんできたのか豊かに響いて、ヴァイオリンがリードして盛り上げます。練習番号36の5小節からの金管楽器のスタッカートが歯切れがよすぎる。練習番号41から小太鼓が大きく叩かれます(スコアでもff)。リハーサルで練習した練習番号53のチェロの音程や、練習番号55のトロンボーンの音程は直っていました。最後のピッコロソロは難しいですね。とても目立ちます。残念ながらリハーサルのほうがいい演奏でした。
第2楽章は小太鼓が大きく、軍隊の行進みたいです。練習番号79の1小節前で大太鼓が強烈な一発(スコアではfff)。半拍後の打楽器と合わせて雷のような響き。つづく練習番号79の5小節のティンパニのsfffも強烈。この速いテンポで演奏するのは大変で、休符があると乗り遅れそうです。最後のsffffの八分音符の残響が美しく、嵐のように過ぎ去りました。
第3楽章からは指揮棒を持って指揮するのはリハーサルと同じです。練習番号114のホルンソロのややくすんだ音色もリハーサルと同じ。練習番号127からの弦楽器のD-S-C-Hは軽い響きで、タンバリンを聴かせます。練習番号130からの木管楽器がすごいテヌートで演奏しましたが、スコアに指定はありません。その後はスピードアップして、練習番号132はやや速めのテンポ。最後のフルートとピッコロは、この日は残念ながらやや不調でした。
第4楽章の前半は静かな伴奏での木管楽器ソロは聴いている方も緊張します。練習番号153(Allegro)からは速いテンポ。練習番号184からのD-S-C-Hのfffのトゥッティも美しく感じるほどでした。強奏でも京都市交響楽団が持っている長所をぶち壊すほどではありません。最後の練習番号203からのトロンボーン×3とチューバのD-S-C-H×3回も音量が控えめ。ここは血管がぶちギレて失神するほどの音量で吹いて欲しいですが、スコアではmfなので、スコアの指示に従った解釈です。その前の練習番号202からのホルン×4のD-S-C-Hが頑張って吹いた(スコアではff)ので、余計に物足りなく感じてしまいました。

カーテンコールではデュムソーはスコアを高く掲げました。デュムソーが起立を指示しても、オーケストラはなかなか立たないパフォーマンス。デュムソーは最後はランニングのような駆け足で出入りしました。

京都市交響楽団の特長を活かした演奏でしたが、ショスタコーヴィチらしいアイロニーは感じませんでした。京響らしいショスタコーヴィチでしたが、上品に聴こえてしまって、もうすこし大胆にグロテスクに演奏してもらえた方が私の好みに合います。

デュムソーはこの後、上述した京響との福山での2公演に続いて、群馬交響楽団を初めて指揮(「第612回定期演奏会」2025.10.18 高崎芸術劇場大劇場、「東京定期演奏会」2025.10.19 すみだトリフォニーホール)、その翌週にはオーケストラ・アンサンブル金沢を指揮するハードスケジュールでした(「第498回定期公演フィルハーモニー・シリーズ」2025.10.24 石川県立音楽堂コンサートホール)。来年の4月には東京都交響楽団を指揮します(「第1042回定期演奏会Aシリーズ」2026.4.18 東京芸術劇場コンサートホール)。

ちなみに、本公演の翌日の10月12日が、京都コンサートホール開館30周年の記念日でした。30周年おめでとうございます。

なお、京都コンサートホールの北側の京都府立総合資料館の跡地に、10月4日(土)に「Re.Nova北山(リノヴァ北山)」がオープンしました。事業主は日本リグラント株式会社で、官民連携事業による公園型複合施設を謳っていますが、京都府の北山エリア整備計画が目指す芸術拠点施設整備が始まる2032年1月までの期間限定施設とのこと。南側と東側には住宅展示場(KTVハウジング京都北山住宅展示場)のモデルハウス7棟が立ち並びます。中央には「イベントスペース」や「キッズプレイエリア」や「フィットネスエリア」があって、子どもも遊びやすいスペースになっています。西側にできた駐車場「タイムズRe.Nova北山」は92台が駐車できますが、早くもほぼ満車でした。京都コンサートホールに近いので便利ですね。北山通りに面した北側はまだ工事中で、2026年4月に飲食店舗と屋根付き屋外型ドッグランがオープン予定です。オープニングイベントとして、初日の10月4日に「京都市交響楽団によるミニコンサート」が行なわれるとのことだったので、聴きに行こうかと思いましたが、あいにくの雨天のため断念。Re.Nova北山のInstagram(re.nova_kitayama)によると、テントの下で金管五重奏(トランペット×2,トロンボーン、ホルン、チューバ)が演奏したようです。

 

かぼちゃの豆乳クリームスパゲティー ソリストアンコール 大ホールロビーからRe.Nova北山を望む Re.Nova北山 2025年10月4日OPEN 北山通りからRe.Nova北山を望む Re.Nova北山イベントスペース Re.Nova北山アートテラス Re.Nova北山アートテラス キッズプレイエリア フィットネスエリア 駐車場「タイムズRe.Nova北山」から望む

 

(2025.10.27記)


京都市交響楽団第704回定期演奏会 神尾真由子&N響メンバーによるアンサンブル「四季」×「四季」