読売日本交響楽団第31回大阪定期演奏会
|
|
|
2021年12月24日(金)19:00開演
フェスティバルホール
ジョン・アクセルロッド指揮/読売日本交響楽団
中村恵理(ソプラノ)、藤木大地(アルト)、小堀勇介(テノール)、妻屋秀和(バス)
新国立劇場合唱団
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」
座席:A席 3階2列38番
|
年末に当たり前のように演奏されて、当たり前のように聴かれていたこの作品が、合唱団を必要とするために、昨年はまったくと言っていいほど聴けなくなりましたが、今年はどのオーケストラでも第九演奏会が開催されました。
本公演の指揮者は2回変更されました。当初は、フランチェスコ・アンジェリコ(カッセル州立歌劇場音楽監督)が指揮する予定でしたが、政府の入国制限などにより来日できなくなり、11月にアレホ・ペレス(ベルギー王立フランダース歌劇場音楽監督)に変更されました。その後、政府による新型コロナウイルス感染症のオミクロン株に対する水際措置の強化により、アレホ・ペレスも来日できなくなり、12月にジョン・アクセルロッドに変更されました。読売日本交響楽団を指揮するのは今回が初めてで、東京で5公演、大阪で1公演(=本公演)を指揮しました。
2020年度から首席客演指揮者を務めている京都市交響楽団よりも先に、読売日本交響楽団で第九を指揮することになりました。
京都市交響楽団第592回定期演奏会の感想で、ジョン・アクセルロッドの指揮で第九が聴きたいと書きましたが、まさか別のオーケストラで聴けるとは思いませんでした。どんな演奏になるのか気になったので、12月になってチケットを購入しました。
ジョン・アクセルロッドは、11月27日(土)・28日(日)に、京都市交響楽団(第662回定期演奏会)を指揮するために来日し、12月5日(日)の「オーケストラ・ディスカバリー2021「発見!もっとオーケストラ!!」第3回 物語とオーケストラ」でも京響を指揮。続いて、12月12日(日)に、広島県廿日市市で兵庫芸術文化センター管弦楽団を指揮しました(オーケストラ・キャラバン〜オーケストラと心に響くひとときを)。
ここまでが当初予定されていたスケジュールと思われますが、その後、来日できなかった他の指揮者の代役を指揮することになり、12月15日(水)に東京都交響楽団をサッシャ・ゲッツェルの代役で初めて指揮(第938回定期演奏会Aシリーズ)した後、上述したように12月18日(土)から読売日本交響楽団を指揮しました。12月はなんと4つの国内オーケストラを指揮することになりました。しかも、どうやら日本で年越しするようです(詳細は後述)。
チケットは読響チケットWEBで購入。すでにS席はいい席がなかったので、A席にしました。コンビニ発券だと手数料は有料ですが、郵送を選択するとチケット配送料は無料でした。なお、読売日本交響楽団は2019年度からセバスティアン・ヴァイグレが第10代常任指揮者を務めています。
検温、消毒、チケットはスタッフがもぎって、台に置かれたプログラムを自分で取ります。クロークは営業していましたが、場所を忘れてしまい、エントランスホワイエの左側にあったのを見逃してしまいました。18:00に開場しましたが、舞台の最終調整とのことで、各階ロビーで待たされました。18:15にホールに入場。3階席は初めてで、視野いっぱいにステージが広がり、視覚的にはいい席ですが、前の列に人が座ると見えにくくなります。1列目がベストですね。客は9割の入り。換気を強化しているため肌寒く感じられるかもしれないというアナウンスがありましたが、客席内は熱気で暑かったです。
オーケストラの人数は多くなく、第1ヴァイオリン10、第2ヴァイオリン8、チェロ6、ヴィオラ8、コントラバス5の編成。ソロ・チェロ奏者で遠藤真理が出演(
オープニング・ガラ・コンサート?で聴きました)。コンサートマスターは林悠介。その隣に長原幸太。長原が大阪フィルの首席コンサートマスターだった頃に、旧フェスティバルホールで、
大阪フィルハーモニー交響楽団創立60周年記念公演 ベートーヴェン交響曲全曲演奏会?(大植英次)を聴いたのを思い出しました。ヴァイオリンの後ろにトランペット2、その後ろにティンパニを配置、木管の左にホルン4、トロンボーン3はトランペットの対極でコントラバスの左に配置しました。
ジョン・アクセルロッドは、メガネをかけて指揮。こんな有名な作品なのに、スコアをめくりながら指揮しました。両腕を広げて弱奏でも大きく指揮。弱奏や細かな音符(冒頭の三十二分音符)もしっかり指揮棒を動かしてキューを出します。音楽の方向性が分かりやすい。左に固めたトランペット、ホルン、ティンパニを強調。外面的な効果だけでなく、メリハリのある演奏でした。
読売日本交響楽団は、人数は多くないですが音量は十分。弦楽器は重みのある音色ですが、しっかり芯があるので、だらだらと重くはなく、響きはスマートでシャープ。アンサンブル力も高い。
第1楽章は、トランペット2とホルン4がバリバリ言わせて、音符が飛び出すような楽しさがありました。299小節のティンパニは、八分音符+八分休符+八分音符+八分休符を、八分音符×4にして演奏。301小節からのティンパニは豪快に鳴らせました。513小節からもティンパニとホルンを強調。
第2楽章もトランペットとホルンの爆発力がすごく、コロナウイルスを撃退できるのではと思えるほど。 61、65、69小節の頭の四分音符にアクセント。木管楽器の音色が渋く、弦楽器の響きに映えます。483小節から音量アップ。ラスト3小節は柔らかく余韻を響かせました。
第3楽章の前に合唱団が入場。ステージ後方に3列で、左から、ソプラノ、アルト、テノール、バス。女声22名と男声18名の総勢40名。入場時に珍しく拍手がありませんでしたが、関係者が来てないということでしょうか。第3楽章は、ゆったりしたテンポでお互いの音色を聴きあいながら進めるようなアンサンブル。25小節からのAndante moderatoからもテンポを速めずに、ヴァイオリンの細かな音符も丁寧に気持ちを入れて弾きます。チェロとコントラバスがしっかり響いて、ハーモニーの基礎になります。合唱の前座のような扱いでちゃっちゃと流す指揮者もいますが、こんなにしっかり聴かせるとは意外で、ゆっくり時間をかけて演奏しました。第3楽章を一番練習したのかもしれません。
第4楽章は、冒頭からホルンがすごい。92小節からのメロディーが流れたときに、この曲が普通に聴けるとはなんとすばらしいことかと目頭が熱くなりました。179小節でトランペットを強調。独唱者がなかなか登場しないので、どうなることかと思いましたが、ギリギリのタイミングでバス独唱の妻屋が上手から走って登場。合唱団とオーケストラの間の雛壇でオペラのように歌います。237小節から合唱が「Freude」と歌い出すと、残りの独唱3名も反対側の下手から登場。アルトパートの独唱はカウンターテナーの藤木大地。男性ですが、目をつむって聴いたら分からないでしょう。この作品の独唱でスーツを着ている男性が3人並ぶのは珍しいでしょう。
合唱団はマスクなしで歌います。新国立劇場合唱団は初めて聴きましたが、大人のサウンドで、スウェーデン放送合唱団(
京都市交響楽団第10回名古屋公演)に似ていて、点や線でなく、面で響きます。330小節のフェルマータで間を置きました。525小節からのホルンはタイが独特でリズムがユニーク。
合唱団が加わるとオーケストラは温和な表情になりました。603小節からは弦楽器がパートごとに分離して聴こえました。何を演奏しているか分かり、ここまではっきり聴こえた演奏は初めてでした。アクセルロッドの耳がいいのか、ホールがいいのかどちらかでしょう。ラスト2小節はティンパニ5発がクレシェンド!
カーテンコールでは、独唱4名と合唱指揮(冨平恭平)が一人ずつ登場して、拍手を受ける演出が珍しい。20:25に終演しました。時差退場が行なわれて、3階席は一番最後でした。密を避けるためか、エスカレーターの稼働台数を減らしていました。
アクセルロッドは読売日本交響楽団を初めて指揮したとは思えない(本番は6回目ですが)相性のよさで、オーケストラのカラーにも合っています。首席客演指揮者を務める京都市交響楽団も、アクセルロッドを捕まえておかないと他のオーケストラに逃げられそうな気がします。アクセルロッドも出席して11月26日(金)に行なわれた「京都市交響楽団2022年度ラインナップ記者発表」(ニコニコ生放送でオンライン配信)のような通訳を用意しないような記者会見はダメでしょう。
アクセルロッドの今後の予定は、NHK交響楽団を指揮します。2022年1月8日(土)と10日(祝・月)に、ケリ-リン・ウィルソンの代役で指揮(第117回オーチャード定期、2022サンシティ・ニューイヤーコンサート)。続いて、1月21日(金)・22日(土)と26日(水)・27日(木)に、トゥガン・ソヒエフの代役で指揮(第1949回定期公演 池袋Cプログラム、第1950回定期公演 Bプログラム)。さらに、1月29日(土)に菊川文化会館アエルで、京都市交響楽団を指揮します(京都市交響楽団名曲コンサート)。これで日本への滞在は2ヶ月を超えそうです。