京都市交響楽団第10回名古屋公演


  2019年11月24日(日)16:00開演
愛知県立芸術劇場コンサートホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団
ケイト・ロイヤル(ソプラノ)、アリョーナ・アブラモヴァ(メゾソプラノ)、オリヴァー・ジョンストン(テノール)、ミラン・シリアノフ(バリトン)
スウェーデン放送合唱団

フォーレ/レクイエム
モーツァルト/レクイエム

座席:S席 3階1列33番



京都市交響楽団の名古屋公演に初めて行きました。2010年から毎年開催されて、今回で10回となりました。毎年広上淳一が指揮しています。今回は、レクイエムが2曲という好プログラムでした。なお、広上淳一は令和元年度京都市文化功労者の表彰を受けることが発表されました。

また、本公演はスウェーデン放送合唱団の来日公演を兼ねています。1925年に創設され、世界最高峰の合唱団と称され、ベルリン・フィルなどとも共演しています。今回の来日公演で、オーケストラとの共演は京都市交響楽団との2日間だけで、あと3日(東京2日、仙台)は単独公演です。京都市交響楽団とスウェーデン放送合唱団は今回が初共演です。なお、スウェーデン放送合唱団音楽監督のペーター・ダイクストラが京都市交響楽団第637回定期演奏会(2019.8.25)を指揮しました。

本公演は京都市交響楽団とスウェーデン放送合唱団の共演の2日目で、この前日の11月23日(土)には、京都コンサートホールで、京響スーパーコンサート「スウェーデン放送合唱団×京都市交響楽団」が開催されました。曲目は、オール・モーツァルト・プログラムで、歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲、交響曲第25番、レクイエムの3曲でしたが、せっかく聴くならフォーレのレクイエムも聴きたいので、名古屋まで出向きました。

チケットは、「クラシック名古屋」のホームページから申し込み。なお、9月に独唱者の変更があり、ソプラノのシルヴィア・シュヴァルツがケイト・ロイヤルに、メゾソプラノのベサン・ラングフォードがアリョーナ・アブラモヴァに変更になりました。両名とも出演不可能となったということですが、詳細な理由は不明です。

愛知県芸術劇場コンサートホールで聴くのは、名古屋フィルハーモニー交響楽団第360回定期演奏会「真夏の夜の夢」以来10年ぶりでした。初めての3階席ですが、目の前の手すりが邪魔なこと以外はステージに近くていい席です。

プログラム1曲目は、フォーレ作曲/レクイエム(ネクトゥー&ドゥラージュ校訂)。プログラムの解説によると、ネクトゥー&ドゥラージュ校訂は、一般的に演奏されているが弟子が加筆したとされている第3稿(1900年版)を、ジャン・ミシェル・ネクトゥーとロジェ・ドゥラージュが校訂・復元した版で、1994年に出版されたとのこと。フォーレによる自筆譜を復元しようとした版になります。

スウェーデン放送合唱団がステージ後方に2列に並びました。入場時の拍手がすごい。名古屋フィルハーモニー交響楽団コバケン・スペシャルVol.16「マイ・フェイヴァリット・マスターピーシーズ4名古屋フィルハーモニー交響楽団第360回定期演奏会「真夏の夜の夢」でもそうでしたが、名古屋の聴衆は温かいです。客席の音が響きやすいホールと言えるかもしれません。 後列が男声、前列が女声。ソプラノ7名、アルト8名、テノール8名、バス8名。プログラムでは32名の名前が記載されているので、ソプラノ1名を除いて全員出演しました。意外に少人数でびっくり。全曲楽譜を持って歌いました。 ソプラノとバリトンの独唱者は指揮台の左右に座りました。前に譜面台がありました。

オーケストラは超小編成。ヴァイオリン8、ヴィオラ3、チェロ3、コントラバス2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ1、ハープ1、オルガン1の編成で、オーケストラより合唱団のほうが人数が多い。もともとネクトゥー&ドゥラージュ校訂はこのような楽器編成のようです。オーボエがいないため、オルガンの音でチューニング。オルガンはステージ上から遠隔操作で演奏しました。なお、第2ヴァイオリンの客演首席奏者として、瀧村依里(読売日本交響楽団首席第2ヴァイオリン奏者)が出演しました。

第1曲「イントロイトゥス(入祭唱)とキリエ」から、オルガンが効いていますが、たまに変な高い音が聴こえたのは気のせいでしょうか。合唱は弱音で、fでも直線的に響きません。 第2曲「オッフェルトリウム(奉献唱)」は、バリトンソロ。36小節からの八分音符のスラーの音型を広上は回転するような動きで指揮。 第3曲「サンクトゥス(聖なるかな)」は、泉原隆志が下手からステージに登場し、 ヴァイオリンソロを立って演奏。泉原は1曲だけで帰りました。第4曲「ピエ・イエス(慈悲深きイエスよ)」は、ソプラノソロがよく響きました。広上は弱奏でも両腕を大きく動かして指揮。また、途中から指揮棒なしで指揮しました。第5曲「アニュス・デイ(神の子羊)」は、アインザッツがあまり揃ってなくて残念。
第6曲「リベラ・メ(私を解き放って下さい)」はバリトンソロ。ようやくトロンボーン3名の出番です。52小節からのホルンのリズムが一般的な第3稿と違います。また、54小節からティンパニがクレシェンドとデクレシェンドをするのもやや違和感があります。 92小節以降は広上が合唱団を大いに盛り上げました。 第7曲「イン・パダデイスム(楽園)」は、オルガンの伴奏音型がよく聴こえました。
カーテンコールでは泉原も登場して拍手を受けました。第3稿を聞き慣れている耳には、初めて聴く第2稿は違和感がありました。もっと直線的に響くほうが好みです。

休憩後のプログラム2曲目は、モーツァルト作曲/レクイエム(ジュスマイヤー版)。広上淳一は京都コンサートホールブログで「京響を指揮してモーツァルトのレクイエムを演奏するのは初めてで、これまでおそらく3回目くらい」「素晴らしい作品ですけど、演奏するのは怖い。怖いというか恐れ多い感じ」と語っています。

オーケストラは、ヴァイオリン16、ヴィオラ6、チェロ4、コントラバス2、バセットホルン2(クラリネット奏者が演奏)、ファゴット2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ(バロックティンパニ)1、オルガン1。独唱者は指揮者の両脇に2名ずつ。譜面台付きで歌いました。

「イントロイトゥス」冒頭から劇的よりも厳かな演奏。合唱団は個人とかパートとかを超えて、空気が響いていると表現できるでしょう。「キリエ」のような声部がからみあう曲のほうが合唱がうまく聴こえました。「恐るべき王よ」は「Rex」の呼びかけが重厚。「主イエスよ」はテンポが速い。「ベネディクトゥス(ほむべきかな)」はアルト独唱のアリョーナ・アブラモヴァはヴィヴラートがすごいですが、発音がはっきりしませんでした。テノールとバリトンがはっきり発音しているのと対照的で、独唱者4名のハーモニーはいまひとつ。広上淳一はこの作品も途中から指揮棒なしで指揮しました。 「コムーニオ(聖体拝領唱)」の最後の音符をフェルマータのように長く延ばしました。

カーテンコールでは広上は満足そうにうなずきました。コーラスマスターのマルク・コロヴィッチも登場しました。一方で独唱者は肩身が狭そうでした。 広上が挨拶。「お腹いっぱいになったでしょ。アンコールはありません。世界屈指の合唱団と共演して触発されました」と話しました。18:20に終演しました。ちなみに、来年の第11回名古屋公演の速報チラシが入っていました。次回も広上が指揮します。

スウェーデン放送合唱団は合唱の響き方が違って驚きました。女声が前列で男声が後列という合唱団の配置に秘密があるかもしれません。オーケストラも合唱団も少人数だったので、この人数ならもう少し小さなホールで聴きたかった気もします。

錦通久屋交差点から愛知芸術文化センターを望む 愛知芸術文化センター 愛知県立芸術劇場コンサートホール(開場前)

(2020.1.12記)


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