フェスティバルホール
大植英次指揮／大阪フィルハーモニー交響楽団
スザンネ・ベルンハート（ソプラノ）、スザンネ・シェファー（アルト）、シュテファン・ヴィンケ（テノール）、クリストフ・シュテフィンガー（バリトン）
大阪フィルハーモニー合唱団
ベートーヴェン／交響曲第９番「合唱付き」
座席：Ｂ席 １階Ｂ列Ｌ２番
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２００７年１２月３０日（日）19:00開演 フェスティバルホール 大植英次指揮／大阪フィルハーモニー交響楽団 ベートーヴェン／交響曲第９番「合唱付き」 座席：Ｂ席 １階Ｂ列Ｌ２番 |
2007年最後の演奏会は、大阪フィルハーモニー交響楽団の「第九」演奏会です。大阪フィルは毎年末に「第９シンフォニーの夕べ」と題して、「第九」演奏会を開催しています。今年は、大阪フィルハーモニー交響楽団が2007年４月で創立60周年を迎えることを記念して、「大阪フィルハーモニー交響楽団創立60周年記念公演 ベートーヴェン交響曲全曲演奏会」が、３回に渡って行なわれました（6/5：第１番〜第３番 8/31：第４番〜第６番 11/29：第７番、第８番）。今年の「第九」演奏会は、「ベートーヴェン交響曲全曲演奏会」の第４回として、１２月２９日（土）と３０日（日）の２日間行なわれました。大植英次が大阪フィル音楽監督就任後初めて「第九」を指揮することでも注目を集めました。第３回までの会場はザ・シンフォニーホールでしたが、第４回の「第九」演奏会は、かつての本拠地であるフェスティバルホールで行われました。「第九」演奏会はフェスティバルホールで行なうのが大阪フィルのしきたりのようです。チケットは全席完売でした。
フェスティバルホールでクラシックの演奏会を聴くのは、2003年の大阪フィルハーモニー交響楽団第９シンフォニーの夕べ以来です。そのときは１階席のBox席の後ろの席で聴きましたが、ホールが響かなかった印象が鮮明に残っているので、今回は思い切って１階席の前から２列目の席を購入しました。しかし、実際に行ってみると、座席とステージがあまりにも近すぎました。座席のイスに座ると、目線の高さがちょうどステージの床で、指揮台が目の前にありました。詳細は後述しますが、聴こえる楽器が限られるので、演奏の全体像や細かな演奏バランスがよく分からない部分もありました。また、前方の席で聴けば気になったことでも、後方の席ではまったく気にならなかったかもしれません。演奏について正確な感想ではないかもしれませんが、あらかじめご了承ください。
開演前のアナウンスで、携帯電話電波抑止装置を作動させることが告げられました。サントリーホールだけだと思っていましたが、フェスティバルホールも導入したんですね。
開演に先立って、合唱団が入場。ステージ最後列に５列で並びました。後ろ２列が男性、前３列が女性でした。男性の左半分がテノール、右半分がバス。女性の左半分がソプラノ、右半分がアルトでした。
続いて、団員が入場。オーケストラは第１ヴァイオリンと第２ヴァイオリンを両翼に配置する対向配置でした。首席コンサートマスターの長原幸太が入場。チューニングの後、大植英次が入場。長原氏と長原氏の隣のヴァイオリン奏者に何か言葉を交わしながら握手しました。いつもの２段式の指揮台に上がって、聴衆にゆっくり深々と一礼しました。
大植英次は譜面台なし、指揮棒なしで指揮しました。ひざを曲げて両腕を大きく広げて指揮していました。両腕を上から下に置くような動作で、音符の重さを表現しているようでした。指揮法がずいぶん変わったようでびっくりしました。演奏は比較的無難で、挑戦的な解釈はあまりなかったように感じました。
前から２列目だと、大植英次は見上げる角度になります。首が少し痛くなりました。コントラバス奏者や金管楽器奏者はまったく見えません。また、座席に近い第１ヴァイオリン、第２ヴァイオリン、チェロがよく聴こえますが、強奏でもヴァイオリンとティンパニしか聴こえません。しかし、ヴァイオリンのパート内で乱れが目立ちました。音量、音程、音色が、奏者によって個人差があります。ステージの近くで聴いたからかもしれませんが、かなり耳につきました。もう少しパート内で合わせてほしいです。
首席コンサートマスターの長原氏のボウイングの力強さは別格です。また、長原氏はフレーズのはじめなどで、鼻で大きく息を吸っていました。呼吸してソルフェージュしながら演奏することを心がけているのでしょう。また、楽章間では客席を見回して、遅刻してきた客が座席に座るのを確かめて、次の楽章に入るタイミングを大植英次に目で合図していました。長原氏は1981年生まれなのでまだ26歳。私よりも年下です。堂々としていてびっくり。
第２楽章はやや重い。また、148〜150小節などの全休符はやや長めに取っていました。なお、プログラムに掲載された小石忠男氏の曲目解説でベーレンライター原典版が使われていることが紹介されていますが、151小節付近で数小節を追加しました。読売日響第473回名曲シリーズでのスクロヴァチェフスキと同じです。
第３楽章の前に、独唱者４人が入場。オーケストラと合唱団の間のイスに座りました。第３楽章の途中で、大植英次が指揮しながら２回咳払いしました。指揮者が本番中に咳をするなんて珍しい。大植氏は体調が万全ではないのでしょうか。
休みなしに第４楽章に突入。全体的にやや遅めのテンポで演奏しました。合唱団はあまり大声で歌わず無理なく自然に歌声を響かせていました。逆にテノール独唱は声を張り上げてやや絶叫気味の歌い方でした。843小節からのPoco Allegro,stringendo il tempo,sempre piu Allegroは、かなり遅いテンポの弱奏から始まり、徐々に音量を増してテンポを速めました。
演奏終了後は、大植英次が前列の弦楽器奏者と握手。カーテンコールが何回かあった後、長原氏が一礼して解散しました。続いて合唱団も退場しましたが、客席からステージに大植英次を呼び寄せる拍手が起こりました。拍手に応えて、大植がステージ下手に登場し、客席に手を振って応えました。
前から２列目の席を購入したのは大失敗でした。オーケストラが下手に聴こえてしまいます。演奏の全体像もよくつかめないので、ステージに近い座席を購入することは二度とないでしょう。いい教訓になりました。強奏でもヴァイオリンが埋もれずに聴こえるので、ヴァイオリンを堪能したい人にはお勧めの席でしょう。また、演奏は二の次で、とにかく指揮者やコンサートマスターの表情を見たい人には最適でしょう。
なお、フェスティバルホールは、2008年秋頃から改修工事のために閉鎖されることが発表されています。賛否両論あるようですが、1958年に建設されたホールなのでそろそろ改修してもいい時期だと思います。残響が豊かに響くホールになることを期待しています。
(2007.12.31記)
