京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」


   
      
2014年12月28日(日)14:30開演
京都コンサートホール大ホール

大野和士指揮/京都市交響楽団
リー・シューイン(ソプラノ)、池田香織(メゾソプラノ)、西村悟(テノール)、須藤慎吾(バリトン)
京響コーラス

ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付」

座席:S席 3階C−3列20番


2014年の聴き納めは京響第九コンサートです。今年の指揮者は大野和士。大野はフランス国立リヨン歌劇場首席指揮者およびアルトゥーロ・トスカニーニ・フィルハーモニー管弦楽団首席客演指揮者を務めています。さらに、2015年4月から東京都交響楽団音楽監督、2015年9月からはバルセロナ交響楽団音楽監督にも就任します。主に海外で活躍していますが、京都市交響楽団にたまに客演していて、直近では第548回定期演奏会(2011年7月24日)で、マーラー作曲/交響曲第3番を指揮しました。大野和士は2003年に都響プロムナードコンサートNo.305で聴く予定でしたが、大野が頸部ねんざでキャンセルした(代役は広上淳一)ため、今回初めて聴くことができました。

京響第九コンサートは今年も2日公演で、27日(土)と28日(日)に開催されました。両日ではプログラム1曲目が異なり、27日(土)はバーバー作曲/弦楽のためのアダージョ、28日(日)はラヴェル作曲/亡き王女のためのパヴァーヌが演奏されました。ラヴェルのほうが聴きたかったので、28日(日)の2日目の公演を聴きに行きました。チケットは11月21日に全席完売。なお、ソプラノは松岡万希が出演する予定でしたが、体調不良で出演が不可能となったため、中国人のリー・シューインが急遽出演しました。入場時に途中で休憩がないことが告げられました。ホワイエでは次年度の京都市交響楽団主催公演のパンフレットが手渡しで配られました。

コンサートマスターは四方恭子。第585回定期演奏会の豊嶋泰嗣に続いて、今回も客演です。四方は東京都交響楽団ソロ・コンサートマスター、兵庫芸術文化センター管弦楽団コンサートマスター、京都市立芸術大学教授などを務めています。特別演奏会なので、プレトークはなし。

プログラム1曲目は、ラヴェル作曲/亡き王女のためのパヴァーヌ。ゆったりとしたテンポで心地よい。ハープをはっきり聴かせるような繊細な表現で、音量も抑えめ。冒頭のホルンソロはもう少し響きが柔らかいほうがよかったでしょう。59小節のフェルマータを長めに取りました。大野和士は譜面台なしで指揮。小さな動きで、ほとんど動きません。

プログラム2曲目は、ベートーヴェン作曲/交響曲第9番「合唱付」。オーケストラのチューニング中に、京響コーラスがステージ後部に3列で並びました。左から、ソプラノ、アルト、テノール、バスの順。パンフレットに掲載された出演者名によると、ソプラノ28名、アルト23名、テノール18名、バス19名の編成でした。2010年(小林研一郎指揮、当時は京響市民合唱団)と比べると、合唱団の人数がだいぶ減りました。

演奏はいつもの京都市交響楽団とは違う響きがしました。いつもの見通しの良いサウンドとは違ったので、少し戸惑いました。弦楽器は直接音が少なく、間接音が多めで、ステージ全体が響いている印象を受けました。これは大野がオペラを多く指揮しているからかもしれません。木管楽器は二管編成でしたが、いつもよりよく聴こえて、演奏に華やかさを与えました。

大野和士は曲線的な指揮で、指揮棒を上下に振ることはほとんどありませんでした。大きな振りはなく、両足を広げたまま立ち位置はほとんど変えずに指揮しました。両腕を広げて動かすことが多く、カラヤンによく似ています。日本人指揮者ではあまり見ない指揮です。指揮のスタイルは巨匠の域に入っていると言えるでしょう。強奏では平泳ぎのように中央から上に左右対称に腕をまわしました。アインザッツを合わせたいときは、指揮棒を持っていない左手を高く振り上げました。後ろから見ると「C」のように腕を上げました。 

第1楽章はいつもの京響よりも音色が濁っています。響きも重くて鈍い。第2楽章はイタリアのオーケストラのような明るい音色。大野は大きな振りではありませんが、音楽に波をつけるような指揮しました。第3楽章の前にチューニング。その間に独唱者4人が入場。オーケストラと合唱団の間に座りました。冒頭は遅めのテンポ。木管楽器を伴奏する弦楽器をよく響かせます。25小節(Andante moderato)からはやや速いテンポですが、各声部をゆったり歌わせます。第2ヴァイオリンとヴィオラがよくブレンドされています。42小節からの第1ヴァイオリンのメロディーは、スラーがはっきり分かるほど丁寧なボウイング。大野は第3楽章を緩徐楽章ではなく、聴かせどころが多いと捉えているようです。立派な演奏でした。
休みを取らずに、第4楽章へ。トランペットではなくコルネットを使っているため、強奏でも柔らかい響き。独唱ではバリトンの須藤慎吾の声がよく通りました。330小節のフェルマータはかなり長くとりました。京響コーラスは発音ははっきりしませんが、豊かに響きました。595小節(Andante maestoso)からは力強い歌声で、大野も大きな指揮でリードしました。前述したように、人数は減りましたが、スケール感はすばらしい。大健闘と言えるでしょう。

演奏終了後は、大野和士と独唱者4名と合唱指揮の児玉晃の6名が一列に並んで、オペラのカーテンコールのように手をつなぎ前に進んで礼。 

大野和士は西洋仕込みの指揮スタイルで、いつもの京都市交響楽団とは違った音が楽しめました。こうなると都響プロムナードコンサートNo.305でストラヴィンスキー「春の祭典」を聴きたかったですね。2015年4月から東京交響楽団音楽監督に就任するので、演奏を聴く機会が増えるでしょうか。また京都市交響楽団を指揮してほしいです。

(2015.1.4記)


日本舞踊×オーケストラVol.2 京都市交響楽団第592回定期演奏会