京都市交響楽団第711回定期演奏会


  <京都市交響楽団第711回定期演奏会ホールリハーサル公開>

2026年5月13日(水)13:45開演
京都コンサートホール大ホール

シルヴァン・カンブルラン指揮/京都市交響楽団

マーラー/交響曲第6番「悲劇的」から第3楽章(スケルツォ)

座席:自由


<京都市交響楽団第711回定期演奏会>

2026年5月16日(土)14:30開演
京都コンサートホール大ホール

シルヴァン・カンブルラン指揮/京都市交響楽団

マーラー/交響曲第6番「悲劇的」

座席:S席 3階C3列26番


京都市交響楽団第705回定期演奏会以来、約半年ぶりの京響定期です。沖澤のどか常任指揮者4年目のシーズンとなる2026-27シーズンプログラムのテーマは「イズムに誘う(いざなう)」。11回開催される定期演奏会のうち、金陽夜と土曜昼の2回公演が、9回に及んで、過去最高となりました。京響70周年記念 友の会Special Thanksコンサートで楽団長の松井孝治が話したように、今年度の定期演奏会は、最初から京都コンサートホールでの練習となります。また、創立70周年を記念して「2026年度 京都市交響楽団 市民招待」が行なわれます。金曜日夜の公演に150名程度が無料で招待されます。

プロコフィエフの陣~交響曲全曲演奏会「壱」を終えて間もない5月定期は、マーラー「悲劇的」。京都市交響楽団では、約3年前に「マーラー・シリーズ 沼尻竜典×京都市交響楽団」(2023.3.19 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール大ホール)で演奏していますが、定期演奏会では「第599回定期演奏会」(2016.3.12&13)で高関健(常任首席客演指揮者(当時))が指揮して以来、約10年ぶりの演奏です。私がこの作品を聴くのは、兵庫芸術文化センター管弦楽団第155回定期演奏会「カーチュン・ウォン マーラー6番「悲劇的」」で聴いて以来2回目です。

指揮はシルヴァン・カンブルラン。77歳で、ハンブルク交響楽団首席指揮者、読売日本交響楽団桂冠指揮者を務めています。京都市交響楽団への客演は第684回定期演奏会以来、2年半ぶりです。


<京都市交響楽団第711回定期演奏会ホールリハーサル公開> 5月13日(水)13:45~14:45

昨年度から始まった「ホールリハーサル公開」ですが、昨年度は年間5回でしたが、今年度は年間6回に拡大します。今年度2回目のホールリハーサル公開が行なわれました。今回も定員は200名で、小学生以上が対象です。申込期間は4月1日~14日で、京都市交響楽団のホームページから申し込み。応募者多数の場合は抽選でしたが、4月29日に当選のメールが届きました。

京都市交響楽団のX(@kyotosymphony)によると、本公演のリハーサルは12日(火)から京都コンサートホールで始まったので、この日はリハーサル2日目です。これまでのホールリハーサル公開は、11:45~12:45の時間帯が多かったですが、今回は13:45~14:45と遅い時間帯です。松村衣里のX (@MieldOr8)によると、午前中は第4楽章のリハーサルだったようですが、公開リハーサルでのハンマーのネタバレを防止したということでしょうか。
13:00から2階の大ホール入口で受付開始。当選番号を伝えて、入場料の500円を現金で支払い、「公開PASS」を受け取りました。今回はロビーでの待機はなく、そのままホール客席へ。昼休憩中で、ステージではわずかなメンバーが音出ししていました。半円形の雛壇を客席に近づけるフォーメーション(広上シフトと勝手に呼んでいる)での配置で、ステージはティンパニ×2などぎっしりです。客演奏者が多く、休憩終了5分前から一気に人数が増えました。お客さんは200人はいませんでした。おそらく曲目がマニアックなのと、外国人指揮者で通訳がないためでしょう。

カンブルランが登場。メガネはかけていません。コンサートマスターは泉原隆志。最初に「Slowly」と言って、練習がスタート。イスは使わずに立って指揮。指揮棒なしで指揮しました。公開リハーサルで「悲劇的」のどの部分を練習するかの事前アナウンスはありませんでしたが、スケルツォの楽章を演奏。この作品は、第2楽章と第3楽章の演奏順に議論があるので、どちらか分かりませんでしたが、後述するように本番は、アンダンテ・モデラート(第2楽章)→スケルツォ(第3楽章)の順で演奏しました。

最初は通して演奏。やや遅めのテンポで演奏。ヴィオラの首席奏者(村上淳一郎)がよく頭を上下に動かして弾きます。弦楽器と木管楽器の音色がよくブレンドされています。この日はリハーサル2日目ですが、すでにかなり仕上がっていると言えます。テンポの切り替えが多い楽章で、スコアを見ると1小節ごとに拍が入れ替わる緻密に作られた作品ですが、そんな複雑なリズムとは感じさせない演奏でした。98小節からのAltväterisch(Poco meno mosso.)からの中間部は、ゆっくりしたテンポ。変拍子ですが、ウインナワルツのような雰囲気でした。176小節からホルンの音型を強調。211小節からは木琴が目立ちました。232小節からのチューバとコントラバスの低音がうなり声のよう。418小節からクラリネットが全員でベルアップ(スコアでは1番クラリネットのみ)。
通しが終わると、カンブルランは英語で話しました。声が高い。歌って指示することが多い。なお、持ち込んだポケットスコア(オイレンブルク)は、スケルツォ(第2楽章)→アンダンテ・モデラート(第3楽章)の順なので、カンブルランの指示とは、練習番号が違って、17ずれていてます。88小節からのオーボエソロにクレシェンドの指示。メロディーの歌い方を指示して練習。123小節で「プリーズ、アクセント」。182小節から木管楽器だけ取り出して練習。その後もかなり頻繁に止めて気になるところをクリアしていきます。特にフレーズの方向性を合わせたいようで、歌って指示。パズルのようにピースを当てはめていく作業です。343小節からのコントラバスのフレージング。353小節からのクラリネットの音程を合わせるなど細かな調整。頭から通し演奏。途中で3回止めました。時間が来たためか、最後まで演奏しませんでしたが、「サンキュー!グレート!」と言って、14:45に終わり。事務局から、土曜日の公演はほぼ完売だが、金曜日は残席があるとのアナウンスがありました。
充実した練習で、あっという間の1時間でした。なお、松井市長も来ていたようです。 


<京都市交響楽団第711回定期演奏会> 5月16日(土)

2日公演の2日目を聴きました。今年度も「セレクト・セット(Sセット)」を継続したので、一般発売日の3日前に購入できます。本公演のチケットは前日に完売しました(1日目の公演は当日券発売)。

14:00からプレトーク。カンブルランはメガネをかけていました。英語の通訳つきでした。カンブルランは「マーラーの交響曲で最も印象深い曲。108人がステージに立つ。ホルン8、トランペット6、打楽器はステージの両方に見えない楽器を置いている。遠くからベルが鳴る。第1楽章は行進曲、第2楽章はとても甘い歌、第3楽章のスケルツォはユーモラスで皮肉がある、第4楽章は30分あって、最もドラマチックで悲劇的をよく表している。世の中の大惨事を表している。巨大なハンマーによって2回運命を遮断される。これは10年後に何が起こるかのアナウンスである」と予知めいたコメント。また、「マーラーのオーケストレーションはすばらしい。静かなところと激しいところでこんなに落差が大きい曲はない。pppppとfffの間を行ったり来たりする。チェレスタやハープ×2はこどもが小さなピアノを弾いてるような繊細な音がする。ティンパニが刻むリズムは踊るようにロマンティック。1時間20分あるが、透明感があって素敵。大曲で多彩な音色が美しくてパワフル」と魅力を語り、最後に「初演では音楽評論家に理解されなかった。100年経って、みなさんがひどい音楽評論家ではないことを願っている」と話して締めくくりました。1906年5月27日にマーラー自身の指揮で初演されているので、もうすぐ初演から100年です。プレトークは15分で終了。なお、プログラムの増田良介の解説に、中間楽章の順序について書かれていますが、現在ではマーラー自身がスケルツォ(第2楽章)→アンダンテ(第3楽章)の順で演奏したことは一度もないと考えられているため、アンダンテ(第2楽章)→スケルツォ(第3楽章)が正しいとのこと。また、その理由として、マーラー自身が初演を含めて3回しか指揮しなかったことや、マーラーの弟子(ワルター、クレンペラー、メンゲルベルク)が録音を残していないため、演奏伝統がほぼ断絶してしまったことを挙げています。

コンサートマスターは、泉原隆志(コンサートマスター)。客演首席ヴィオラ奏者は村上淳一郎(NHK交響楽団首席ヴィオラ奏者)。特別首席チェロ奏者の藤原秀章が出演。藤原は2026年4月から山本裕康の後任で着任しました。客演首席トロンボーン奏者は、桒田晃(くわたあきら、読売日本交響楽団首席トロンボーン奏者)。ハープ×2は松村姉妹。木管楽器は各5人で大人数です。

カンブルランはリハーサル同様に指揮棒なしで指揮。メガネはかけていません。京響の美感を活かした演奏で、細部も丁寧に演奏しましたが、細部のデフォルメはなし。プロコフィエフの陣~交響曲全曲演奏会「壱」でも感じましたが、オーケストラとの距離が近く感じたのは、4日間のホール練習の成果でしょう。集中力を保ってミスなく演奏しましたが、カンブルランが桂冠指揮者を務める読売日本交響楽団だったら、もっとかちっとした演奏になったでしょう。リハーサル同様に、ヴィオラ首席の村上がすごく前屈みになって弾きました。

第1楽章の冒頭はコントラバスのアクセントが強め。ヴァイオリンが潤いある音色で、「悲劇的」どころかすごく美しく、京響らしい演奏。兵庫芸術文化センター管弦楽団第155回定期演奏会「カーチュン・ウォン マーラー6番「悲劇的」」と違って、59小節から60小節にかけて、トランペットの和音が変わるのを強調しません。練習番号16で変調してから澄みきった濁りのない音響。203小節からのカウベルは、ステージから打楽器奏者2人が移動して、ステージ裏の上手と下手の両方で演奏しました。遠方からの指示ですが、けっこう近い場所で演奏しているように感じました。スコアには左右に分ける指示はないので、カンブルランの解釈でしょう。チェレスタも加わって夢見心地のような雰囲気。演奏が終わると奏者はふたたびステージに戻りました。練習番号38から、マーラー特有のRute(ルーテ)が登場。「auf Holz(木の上で)」の指示があるので、大太鼓の上で演奏したようです。練習番号44からのトライアングルを2人で演奏しました。

第2楽章(アンダンテ・モデラート)は、ゆっくりしたテンポ。静寂の中で展開されて、マーラーの作品とは思えません。89小節からステージ上で2人がカウベルを両手に持って揺らしました。チェレスタも加わって神々しい響きで、天に召されそうです。154小節からカウベル×2が大きめに鳴らしました。173小節からのヴァイオリンのメロディーがいい。

第3楽章(スケルツォ)は、リハーサルよりテンポが速い。リハーサルの冒頭でカンブルランが「Slowly」と言ったのは、練習用のテンポだったということでしょう。肩の力が抜けた演奏で、スラーをねっとり気味に演奏。響きの一体感がすばらしい。最後はコントラファゴットのアーティキュレーションを聴かせました。

第4楽章は、16小節からのチューバソロがよく通ります。29小節からまた打楽器奏者がステージから移動して、今度は低音の鐘(=金属板、スコアではTiefes Glockengel.)をステージ裏の上手と下手の両方で左右で叩きました。78小節からのハープは琴みたいな音色でしたが、「Mediator(爪で)」の指示があります。98小節からのヴィオラとチェロが盛り上げていき、162小節からヴァイオリンがクレシェンドとデクレシェンドのトレモロの波。目まぐるしいですが、自然な音楽運びで淀みなく流れます。オーケストラがのびのび歌っていてすばらしい。239小節からまた左右からカウベルに続いて金属板。注目のハンマーは打楽器奏者の宅間斉が担当。チューバの後ろに置かれていて、踏み台に乗って早めに構えて、正方形の木製の箱にハンマーを振り下ろしました。1回目は336小節で、大きなドンッという音で意外に金属音でした。なお、ハンマーは第701回定期演奏会のG.レンツ「ヴァイオリン協奏曲」でも演奏されましたが、写真を見るとハンマーが違って、今回は直方体の頭の部分が長く、構えただけで迫力がありました。385小節からホルンとトランペットが連符を聴かせます。ハンマー2回目は479小節。549小節からまた金属板からのカウベル。終盤はヴァイオリンがちょっと疲れたのか音量がダウン。774小節のシンバルをなんと3人で演奏しました。もともとシンバルには「数人で」の指示があります。

16:00に終演。珍しくカンブルランのソロカーテンコール(一般参賀)がありました。1階のエントランスホールで、演奏で使用したハンマーが展示されました。第702回定期演奏会でのティンパニと同様に大勢の人が集まりました。演奏した宅間斉がハンマーを構えるパフォーマンスで写真タイム。掲示によると、ハンマーは京都市交響楽団の所有ですが、ハンマー台は大阪フィルハーモニー交響楽団から借用したとのこと。お見送りの立礼は松井孝治も参加。
また、京都市交響楽団のXでは、「舞台袖で演奏していたカウベルとプラッテングロッケン」の写真が掲載されました。舞台裏で演奏した楽器がどんなだったか気になっていたので、かゆいところに手が届く情報発信がすばらしい。カウベルは大小5つ並べて吊るして、プラッテングロッケンは3つの金属板を吊るしていました。

カンブルランは、打楽器の数の追加などおもしろい解釈がありましたが、あまり悲劇的ではない演奏で、もっとアーティキュレーションがきつめで、トゲトゲした演奏のほうが好みです。この作品を初めて聴いた兵庫芸術文化センター管弦楽団第155回定期演奏会「カーチュン・ウォン マーラー6番「悲劇的」」のほうがハンマー台の位置や大きさを含めてインパクトが強烈でした。

終演後、演奏に使用したハンマーを1Fエントランスホールに展示いたします 使用したハンマー 1階エントランスホール ハンマーとハンマー台 ハンマーを構える宅間斉

 

(2026.6.7記)


マーラー交響曲第5番(全曲)アコーディオン独奏 京(みやこ)の音楽会Vol.5「「菓」の音楽会」