京都市交響楽団 プロコフィエフの陣~交響曲全曲演奏会「壱」


  2026年5月3日(日)14:30開演
京都コンサートホール大ホール

沖澤のどか指揮/京都市交響楽団

プロコフィエフ/交響曲第1番「古典」
プロコフィエフ/交響曲第2番
プロコフィエフ/交響曲第3番

座席:A席 3階C3列22番


京都市交響楽団70周年記念事業として、「プロコフィエフの陣~交響曲全曲演奏会」が始まりました。プロコフィエフの交響曲全7曲を3回に分けて、第1番から順番に演奏します。日本でプロコフィエフの交響曲が全曲演奏される機会はめったにないことが、「プロコフィエフ交響曲入門〜琵琶湖疏水を愛したある作曲家の肖像〜」で語られました。京都市交響楽団のX(@kyotosymphony)で、沖澤は「プロコフィエフは私が傾倒する作曲家の一人で、「ロメオとジュリエット」を演奏したときの手応えがかなりありまして(中略)プロコフィエフをもっと演奏したいとそのときに思いました」と関西6オケ!2024での演奏を振り返っています。

本公演は、初回の「壱」で、交響曲第1番、第2番、第3番が演奏されました。京響70周年記念 友の会Special Thanksコンサートで沖澤が明かしたように、4月30日(木)の初日からすべて京都コンサートホールで練習。全3回のコンサートマスターが京都市交響楽団のX(@kyotosymphony)で発表されましたが、これは珍しい。「壱」(=本公演 )は豊嶋泰嗣、「弐」(7月18日(土))が会田莉凡、「参」(11月28日(土))が石田泰尚です。

チケットは3回セット券もありましたが、1回券を購入しました。お客さんの入りは9割ほどで、P席は完売しましたが、満席にはならず。お客さんは男性が多めです。ゴールデンウィーク期間中で遠方から来ている方も多かったようで、座席をスタッフに聞いている方がチラホラいました。

本公演の3週間前に行なわれた「プロコフィエフ交響曲入門〜琵琶湖疏水を愛したある作曲家の肖像〜」で、小味渕彦之と沖澤が全曲の聴きどころを紹介しましたが、このトークの概要をまとめた記事が京都市交響楽団のnote(https://note.com/ckso)にも掲載されました。また、本公演のロビーにも掲示されて、配布もされました。素晴らしい試みです。また、京響70周年記念 友の会Special Thanksコンサートで設置されていた団員メッセージも掲示されました。さらに、京都市営地下鉄烏丸線の車両に掲出する「京響70thヘッドマーク」も展示されました。沖澤も描かれていてかわいいデザインです。デザインしたのは、京都市立芸術大学大学院を修了した日本画家の諫山宝樹(いさやまたまじゅ)で、来年3月末まで運行されます。

本公演はNHK Eテレ「クラシック音楽館」の収録が入っているということでカメラマンが配置されていました。別途音源も収録しているとのことで、ステージにはマイクが立てられていました。本公演のプログラムの曲目解説は、「プロコフィエフ交響曲入門〜琵琶湖疏水を愛したある作曲家の肖像〜」に登壇した小味渕彦之が執筆しています。

コンサートマスターは、上述したように豊嶋泰嗣(特別名誉友情コンサートマスター)。泉原隆志(コンサートマスター)はお休み。ヴィオラの首席客演奏者は、東京都交響楽団首席奏者の篠﨑友美。チェロの首席客演奏者は、櫃本瑠音(ひつもとるね)。美人です。トロンボーンの首席客演奏者は、日本センチュリー交響楽団首席奏者の西村菜月。沖澤は京響70周年記念 友の会Special Thanksコンサートに続いて、後ろがひらひらマントで登場しました。

プログラム1曲目は、プロコフィエフ作曲/交響曲第1番「古典」。今回の3曲のなかで一番演奏し慣れているはずですが、演奏の完成度は一番低い。あまり練習しなかったからなのか、残念ながら前座扱いの演奏でした。繊細さが要求される作品ですが、京都市交響楽団ならもう一段緻密な表現を望みたいです。第1楽章の46小節からのヴァイオリンは弱奏(スコアでもpp)ですが、装飾音のアーティキュレーションはもっと揃えて欲しいです。後半で変な音があるのを強調しましたが、どこだったか忘れてしまいました。第2楽章は5小節からのヴァイオリンのメロディーがまた弱奏(スコアでもpp)。これは京響だからできる芸当と言えます。第3楽章はやや速めのテンポ。29小節からのフルートのメロディーは溜めを作ってテンポを揺らしました。第4楽章はフルートの高音を吹ききって強調しました(スコアではppからffへのクレシェンド)。
なお、本公演の約1ヶ月半前に沖澤がNHK交響楽団を指揮した演奏が、NHK交響楽団のYouTubeチャンネル(@nhksymphonyorchestratokyo-2644)にアップされています(「第13回NHK交響楽団いわき定期演奏会」2026.3.15 いわき芸術文化交流館アリオス アルパイン大ホール)。沖澤は指揮棒なしで指揮しています。録音のせいかもしれませんが、N響の方が京響よりも地に根を張った響きがしますね。

プログラム2曲目は、プロコフィエフ作曲/交響曲第2番。座席を増やして、第2番からは大編成での演奏。第1楽章の冒頭から響きが濃厚になって、鳥肌が立ちまくりでした。「プロコフィエフ交響曲入門〜琵琶湖疏水を愛したある作曲家の肖像〜」で沖澤が「全曲演奏でネックになるのは第2番」と語っていたので身構えていましたが、不協和音は予想していたよりも激しくはありませんでした。京都市交響楽団のXによると、沖澤は「京響のリミッターを外したい」と話したようで、演奏が大変な曲であることは間違いないですが、コネソン/管弦楽のための「コスミック・トリロジー」(第682回定期演奏会)よりはましでしょうか。しかし、予備知識なしで聴いたら衝撃的な作品で、第1番と同じ作曲家の作品とは思えません。「プロコフィエフ交響曲入門〜琵琶湖疏水を愛したある作曲家の肖像〜」で語ったように確かに強奏は多層的に聴こえました。ヴァイオリンがディヴィジョンで演奏するメロディーが美しい。変拍子でテンポの切り替えが激しい。カスタネットのパートをティンパニの中山が担当。吹きっぱなしで嵐が過ぎ去ったような余韻で終わります。
第2楽章は長い。主題と6つの変奏から成りますが、変奏の域を超えていて、ひとつの楽章にいろいろ詰め込みすぎです。メロディーも日本人には馴染みにくいし、親しみにくいでしょう。オーボエが演奏する主題から始まり、ティンパニの先導で盛り上がります。第4変奏はオーボエ×2とトランペット×2のアンサンブル。その後にフルートも加わりますが、不思議な旋律です。第5変奏はピアノが演奏する音型でヴァイオリンがメロディーを歌い、行進曲風に。パウゼで終わったかと思ったら、コントラバスが続いて、第6変奏へ。オーボエ×2のメロディーがパイプオルガンのような音色でした。弦楽器が悲痛な叫びの後、ホルストの「火星」の最後のような硬い響きで強烈なトゥッティ。最後に主題が回帰します。響きの一体感がすばらしく、この演奏クオリティーは世界に誇ってよいでしょう。

休憩後のプログラム3曲目は、プロコフィエフ作曲/交響曲第3番。第1楽章の冒頭は、鐘(本公演では吊るされた金属板×3)をハンマーで叩きます。次々と抑揚の波を作り出しますが、第1楽章が長い。コントラファゴットのソロで終わります。第2楽章は花園にいるような雰囲気。静かな中に大太鼓のアクセントが効かせます。不思議な終わり方です。第3楽章はヴァイオリンがキュンキュンいう特殊奏法(ストラヴィンスキー「火の鳥」序奏を速くしたみたい)。最後のトゥッティは吹きっぱなしで悲劇的な終わり方。第4楽章はヴァイオリンの高音がメロディー。中盤でまた鐘が鳴らされますが、1人が右手で金属板を、左手でチャイムを叩きました。スコアにはCampanaと書かれているだけなので、沖澤が音色を足したかったということでしょう。打楽器が大活躍ですが、ティンパニを含めて4人で担当して、エキストラなしで回しました。最後は轟音で終わります。すごい曲です。名曲だとは思いませんが、すごい名演であることは確かです。16:35に終演。1階で団員によるお見送りがありました。

このような作品が生み出されたソヴィエト(ロシア)の状況について考えさせられました。ショスタコーヴィチの作品から聴こえてくるのとは別の世界が見えてきますね。第2番と第3番は演奏の完成度がすごく、いつもより客席とオーケストラとの距離が近く感じたのは、ホール練習の成果でしょう。ゴールデンウィーク中に大変な難曲の練習をお疲れさまでした。

なお、この全曲演奏会では「「世界にはばたく指揮者」育成プロジェクト」もあわせて実施されていることが、ぶらあぼの記事で紹介されました。京都市立芸術大学(阪哲朗教授)、東京音楽大学(広上淳一教授)、東京藝術大学(酒井敦教授)、桐朋学園大学(沼尻竜典教授)と連携して、若手指揮者がリハーサル見学、パート譜のチェックや沖澤との意見交換を行なうとのこと。今回の「壱」では、京都市立芸術大学指揮専攻の2名が取り組みました。

また、「京都市交響楽団創立70周年記念展示」が京都市役所本庁舎地下通路展示スペースで約1ヶ月間展示されました。ゼスト御池地下街から入れて、全長約30メートルもあって、左右に長い展示です。歴代常任指揮者の練習風景の写真や、最近の演奏会の写真、京響に贈られた表彰状や感謝状が展示されました。旧合奏場での練習風景の写真(1988年撮影)を見ると本当に狭い。井上道義がマエストロ井上道義によるスペシャルトークイベントで触れていたことを思い出しました。 また、昔の演奏会はチケット代が安くてびっくり。現在とは物価が違いすぎますね。第2回演奏会(1956.7.28)のポスターには50円と記載されています。しかも円山音楽堂だったので、雨天の場合は3日後に順延です。第100回定期演奏会(1967.12.9)もS席700円、B席は300円。ちなみに、現在の京響の定期演奏会は、S席6,000円で、一番安いP席でも3,000円です。「おかげさまで ㊗京響創立70周年 ほんま おおきに!」の団員メッセージの写真がここにも展示されていますが、よく見ると松井市長も写っていますね。

北山通りから京都コンサートホールを望む 京都コンサートホール 京響70thヘッドマーク 「おかげさまで ㊗京響創立70周年 ほんま おおきに!」と「プロコフィエフ交響曲入門〜琵琶湖疏水を愛したある作曲家の肖像〜」 「本日の公演はNHK-Eテレ「クラシック音楽館」の取材が入っています」 京都市交響楽団創立70周年記念展示(京都市役所本庁舎地下通路展示スペース) 京都のまちのオーケストラ 京響創立70周年。 旧練習場(撮影時期不明) 旧合奏場での練習風景(1988年1月) 京都市交響楽団第2回演奏会のポスター

 

(2026.5.24記)


京響70周年記念 友の会Special Thanksコンサート マーラー交響曲第5番(全曲)アコーディオン独奏