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2026年5月9日(土)14:00開演 京都コンサートホールアンサンブルホールムラタ 松下仁(アコーディオン) マーラー/交響曲第5番 座席:全席指定 4列13番 |
マーラー「交響曲第5番」の全楽章を、アコーディオン1人で演奏する大変意欲的で珍しい演奏会に行きました。アコーディオン独奏は、松下仁(まつしたひとし)。「アコーディオン松下仁2026年コンサートツアー」と題して、本公演を含めて3公演が開催されました。すなわち、兵庫公演(2026.4.28 兵庫県立芸術文化センター神戸女学院小ホール)、京都公演(=本公演)、東京公演(2026.6.12 浜離宮朝日ホール)です。i-amabile(アマービレ)(https://i-amabile.com/)のコンサート情報には、「マーラー《交響曲第5番嬰ハ短調》全曲をアコーディオン独奏で再構築する演奏会。重厚な管弦楽をアコーディオン1台で展開。壮大なマーラーの傑作を新たな視点でお楽しみください。」とのメッセージが記載されています。本公演の主催は松下仁事務所。電話番号から推測すると大阪市内にあるようです。
本公演のチケットは、早くも昨年11月1日から発売されました。全席指定で5000円で、京都コンサートホールで購入できました。受付でプログラムの配布がなく、そのまま客席へ。そのため松下の経歴等は不明です。びっくりするほどお客さんがいなくて、開場したのに客席にいるのが気まずくなるレベルでした。お客さんは40人くらいでしょうか。完全に通向きの演奏会と言えるでしょう。
松下が黒の半袖Tシャツで登場。短髪で白髪混じりで、ヒゲを生やしています。背もたれがない椅子に座って弾きました。なんと全楽章を暗譜で演奏したので、すごいと思いましたが、アコーディオンは両手で演奏するので、譜面台があっても譜めくりの時間がないので、暗譜が基本になるのでしょうか。
アコーディオンにもいろいろ種類があるらしい(それすら知らなかった)ですが、右手が鍵盤になっているピアノ・アコーディオン(鍵盤アコーディオンとも言う)で演奏。黒色でやや大型です。右手で鍵盤を弾いて、左手でベースボタンを押します。クラシック音楽でアコーディオンが使用される作品は、武満徹の「系図」くらいしか思い浮かばなかったのですが、アコーディオンの魅力を実感しました。まず、強弱やアクセントがはっきり表現できます。また、左手で内声が豊かに響きます。ただし、左手は音量が小さい。蛇腹(フィゴ)を伸縮させて楽器を揺らしながら弾きますが、蛇腹の伸縮で強弱が分かるので視覚的にも楽しめます。ミスタッチも目立ちましたが、もともとオーケストラのスコアのすべての音符をアコーディオンで再現するのは不可能なので、あまり細かな音符にはこだわっていないようです。どの音符を演奏するかの取捨選択はかなり考慮が必要ですが、松下はそういったことを感じさせないくらいスラスラと弾きました。
第1楽章は三連符から始まりますが、アコーディオンで同音を連打するのは意外に難しいようです。アコーディオンの音域は幅広いですが、さすがに第1楽章のチューバソロなどの低音は出ません。また、アコーディオンは音色が明るいので、葬送感はありません。練習番号7(Plötzlich schneller Leidenschaftlich Wild.)から速いテンポで躍動感がありました。第1楽章が終わると拍手する人がいましたが、チラシに「楽章間の拍手はご遠慮ください」とわざわざ書いてあったので、松下はやや驚いた表情を見せました。楽章間ではタオルで鍵盤を拭きました。
第2楽章は速いテンポ。右手で演奏するメロディーは即興的な弾き方です。練習番号27(Pesante(Plötzlich etwas anhaltend))からややのけぞりながら蛇腹を大きく伸縮させて大きな音量で演奏しました。
第3楽章は映画のワンシーンのように農村などのメルヘンチックなシーンを連想させて、アコーディオンと親和性があります。速いテンポで、淀みなくメロディーが流れます。練習番号28の5小節前からのホルンのソロは左手だけで演奏。
第4楽章の冒頭は、弱音からクレシェンド。複数の鍵盤を同時に弾くことが増えましたが、多くの空気を送り込む必要があるので、それだけ蛇腹の伸ばしが多くなりました。パイプオルガンのように荘厳です。音符を減らして聴くと、マーラーの和音の進行が独特なのがよく分かります。
続けて第5楽章。Allegro giocoso.Frisch.からの旋律が民謡風に聴こえて、アコーディオンで弾いても違和感がありません。速いテンポで進み、後半はさすがに疲れが見えてミスタッチが増えましたが、ラストは大きな音量で締めくくりました。15:00に終了。あっという間の1時間でした。
拍手に応えてアンコール。松下が「ワーグナー ローエングリン」と自分で話して、ワーグナー作曲/歌劇「ローエングリン」第1幕前奏曲を演奏。すごい静寂から始まりました。笙みたいな音色が聴けました。「最後の曲 チャイコフスキーアンダンテカンタービレ」と話して、アンコール2曲目は、チャイコフスキー作曲/アンダンテカンタービレ(弦楽四重奏曲第1番第2楽章)を演奏。左手の対旋律を聴かせました。15:15に終演。
プログラムの配布がなかったので、松下の学歴や経歴等は不明ですが、インターネットで確認できた範囲では、2006年11月には某博物館で「アコーディオンコンサートの夕べ」を開催されているようなので、少なくとも20年前から活動されているようです。それ以外に演奏会を開催した情報もネット上にはなさそうで、そういう意味でも衝撃的な演奏会でした。松下がマーラーに取り組もうと思った動機について知りたいですね。マーラーをアコーディオンで演奏している奏者は、世界的に見ても数少ないでしょう。マニアックすぎるかもしれませんが、YouTubeなどを活用すれば、注目は集まるでしょう。ぜひ第5番以外の交響曲の演奏にも挑戦して欲しいです。いかんせんアコーディオンの知識が少ないので、楽器の構造などの紹介を加えてもらえるといいかもしれません。