大阪フィル✕尾高忠明 マーラー交響曲第2番「復活」
2024年8月2日(金)19:00開演 フェスティバルホール 尾高忠明指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団 マーラー/交響曲第2番「復活」 座席:S席 2階1列51番 |
第62回大阪国際フェスティバル2024で、尾高忠明がマーラー「復活」を指揮しました。尾高忠明にとっては、当時音楽監督を務めていた札幌交響楽団第500回記念定期演奏会(2007年6月)以来、実に17年ぶりに「復活」を指揮します。こんなにも間隔が空いた理由について、尾高は「マーラーの葛藤が詰め込まれてあまりにもすごい作品なので、怖くなって」という理由で、指揮を頼まれても断り続けてきたと朝日新聞の記事で語っています。大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督に就任して7年目になりましたが、大阪フィルがコロナ禍からの復活という思いを込めて選曲して、尾高は「封印を解く一番いいチャンスと考えた」とのことです。
大フィルが「復活」を演奏するのも11年ぶりです。前回は2013年4月に新フェスティバルホールの開館を祝して、桂冠指揮者の大植英次が指揮しました。それ以降に演奏していないのは、やはり上述した尾高の事情によるものでしょう。大フィルの「復活」では、大阪フィルハーモニー交響楽団第368回定期演奏会「大植英次音楽監督就任披露演奏会」をすぐに思い浮かべますが、それ以降に演奏したのは、金聖響指揮(2007.10.27 梅田芸術劇場メインホール)、小林研一郎指揮(2008.5.14 大阪新音フロイデ合唱団)、小松長生指揮(2011.9.25 第8回津山国際総合音楽祭クロージング・コンサート)です。
私が「復活」を演奏会で聴くのは、大植英次(大阪フィルハーモニー交響楽団第368回定期演奏会「大植英次音楽監督就任披露演奏会」)、小澤征爾(小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅦ)、広上淳一(京都市立芸術大学音楽学部第136回定期演奏会「更なる復活」)、飯森範親(大阪教育大学教育協働学科芸術表現専攻音楽表現コース・教養学科芸術専攻音楽コース第61回定期演奏会)、ジョン・アクセルロッド(京都市交響楽団第671回定期演奏会)、井上道義(東京芸術劇場マエストロシリーズ 井上道義&読売日本交響楽団)に続いて、7回目です。
チケットは、フェスティバルホールのインターネットチケット販売から、一般発売で購入。公演当日にフェスティバルホールの窓口で引き取れるのが便利です。大阪国際フェスティバルのX(@osakafes)でリハーサルの動画が公開されました。プログラムに演奏者名が掲載されていなくて残念。
客席はほぼ満席。関西6オケ!2024と同じく、英語のアナウンスがありました。団員の入場時に客席から拍手。コンサートマスターは須山暢大。オルガンの演奏台はチェロの後ろに設置して、天井のスピーカーから流れました。尾高忠明はチラシの写真では指揮棒を持っていましたが、いつものように指揮棒なしで指揮しました。スコアをめくりながら指揮。楽器の役割を整理して聴かせて、すっきり見通しがよい演奏。オーケストラの人数の割にはスマートな響きでしたが、私は大植英次や井上道義のような硬めで鮮烈なアーティキュレーションや濃厚な表現が好きです。後方に合唱団のスペースがあるため、いつもよりも管楽器が客席に近いので、管楽器と打楽器が強力でした。
第1楽章は41小節で大太鼓が連打(スコアではffpのtr)。ヴァイオリンのメロディーをはっきり聴かせました。アインザッツがやや甘く、ちょっとオーケストラが突っ込みすぎるところがありました。第2楽章の前に照明を暗くして合唱団が入場。スコアの「ここで少なくとも5分の休止を置く」の指示を尊重したのでしょう。合唱団は約150人がステージ後方に5列で並びました。女声が左、男声が右です。独唱の2名も入場して、合唱団の最前列の中央に、左がソプラノ、右がメゾ・ソプラノが座りました。オーケストラもチューニング。第2楽章は弦楽器のdiv.で和音が増えても音色の分厚さはありません。むしろこの暑い時期にふさわしい清涼感がある演奏でした。
第3楽章はやや速めのテンポで、Ruthe(ルーテ=むち)は、客席からよく見えるように筒状の木製楽器で木の箱を叩きました。休みなく第4楽章へ。第4楽章の独唱はアルトですが、加納悦子はメゾ・ソプラノです。国立音楽大学音楽学部演奏・創作学科声楽専修教授を務めていますが、けっこうご年輩で、ちょっと声が上ずりがちで、声質も明るいため、もう少し暗いほうがふさわしいでしょう。「ツ」の子音を強調した歌い方でした。
そのまま第5楽章へ。43小節からの遠くから響くバンダのホルンは下手舞台奥に4人で演奏。尾高は見やすくするためか、左手で指揮しました。142小節はスコアの指示通り「G.P.」で、きちんと間を置きました。143小節からトロンボーン×4による厳かなコラール。音量を抑えましたが、確かにスコアでもppです。162小節からバンダのホルン×4が入場。スコア通りの動きです。220小節からのkräftigは速めのテンポで流し、248小節からの3 Glockenは、吊った2枚の鉄板の間に奏者が挟まるようにして、木のハンマーで両サイドを叩きました。バンダのホルン×4がまた出ていって、310小節頃に打楽器奏者がバンダを担当するために2人退場。343小節からのバンダの別働隊は下手から演奏。トライアングルがやたら聴こえましたが、不自然なほど音量が大きかったので、マイクで集音してスピーカーから流したでしょうか。下手から打楽器が1人帰ってきてすぐにステージでの演奏に加わりました。忙しい。402小節のfffのクライマックスで合唱団と独唱が起立。445小節からのトランペット×4は下手からでしたが、音量が大きく音色も汚い。続くティンパニもデカいので、もう少し力を抜いて欲しかったです。472小節の合唱の歌い出しの音程が不安定で残念。ホルン×4と打楽器1人がステージに戻ってきました。合唱がほぼ無伴奏で歌う525小節付近のフェルマータで、絶妙のタイミングで1階席の男性客が大きなくしゃみ。尾高もさすがに気になったようでちょっと間を置いて指揮を続けましたが、演奏が止まってしまうのではないかと客席には緊張感が走りました。バンダのトランペット×4も上手から入場して、テューバの右で演奏。712小節からオルガンが加わって重厚な響き。合唱団は力強く歌いますが、テンポが速め(もう少し遅いほうが私の好み)。752小節からのトランペットとトロンボーンの力強さはさすが大フィルです。
演奏後はブラボーの嵐で、合唱指揮の福島章恭もカーテンコールで拍手を受けました。20:40に終演しました。
尾高忠明と大阪フィルは、この後、「2025年大阪・関西万博プレ・コンサート」(2024.8.6 東京オペラシティ コンサートホール)で、モーツァルト「ジュピター」やベートーヴェン「運命」などを指揮しました。