小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅦ


   
      
2006年7月23日(日)15:00開演
京都コンサートホール大ホール

小澤征爾指揮/小澤征爾音楽塾オーケストラ
松田奈緒美(ソプラノ)、ナタリー・シュトゥッツマン(アルト)
小澤征爾音楽塾合唱団

マーラー/交響曲第2番「復活」

座席:S席 3階 C−3列13番


帯状疱疹を患い1月から休養していた小澤征爾が、音楽活動を再開しました。新聞やテレビでも大きく取り上げられており、小澤征爾に対する注目の高さがうかがえました。
復帰公演となったのは、小澤征爾音楽塾オーケストラとの公演。4ヶ所(名古屋、京都、浜松、東京)で演奏しました。このうち、京都公演以外は平日公演。京都公演は日曜日だったので、かなりのチケット争奪戦が予想されました。5月13日のチケット発売日には、朝早く起きて京都コンサートホールのチケットカウンターに並びました。発売時間30分前に着きましたが、すでに30人ほどが列を作っていました。人気の高さにびっくり。本当にチケットが取れるのか自信がなかったので、列に並びながら京都コンサートホールチケットカウンターに電話するという二重作戦を敢行。偶然にも電話がつながって、チケットを確保することができました。チケットは即日完売。

小澤征爾音楽塾オーケストラは、小澤征爾の長年の夢だったという教育プロジェクト「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト」のために2000年に結成されたオーケストラで、オーディションによって選考された若い奏者が所属しています。ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第17回で名演を聴かせた滝千春も名を連ねていました。7回目の公演に当たる今回は、オペラではなく交響曲に取り組みました。プログラムに掲載された小澤征爾のメッセージによると、「「交響曲とオペラは、車の両輪のようなもの」−かつてカラヤン先生が言われ、いま僕が持論として音楽塾をはじめるきっかけにした言葉ですが、今年はいよいよ交響曲を取り上げ、(後略)」ということで、満を持して交響曲を演奏することにしたようです。マーラー作曲/交響曲第2番「復活」は合唱も加わるため、オーケストラと合唱団を有する小澤征爾音楽塾にとって好都合だったのでしょう。小澤征爾はマーラーの「復活」を2回録音しています(1986年 ボストン交響楽団、2000年 サイトウ・キネン・オーケストラ(ナタリー・シュトゥッツマンも共演))。小澤征爾の得意な作品と言えるでしょう。

ホールの入口で配布されたチラシのなかに「お客様各位」から始まるメモがはさみこまれていました。「若い音楽家がより多くのことを学ぶために、オーケストラ奏者の配置が楽章間で変わります。多少のお時間をいただきますが、なにとぞご了承くださいますようお願い申し上げます。」とのこと。パンフレットは有料(1,000円)で、ほとんどの国内のオーケストラでパンフレットを無料で配布しているので少しびっくりしましたが、チケット価格が安かったので許容範囲でしょう。

いよいよ開演。オーケストラ団員と合唱団員が同時に入場。合唱団はステージ後方に4列で並びました。聴衆から拍手で迎えられましたが、突然拍手の音量が大きくなりました。ステージをよく見ると、オーケストラ団員に混じって小澤征爾が入場しました。びっくり。ものすごい拍手でした。小澤征爾は、弦楽器と管楽器の間のスペースに立って、団員全員が登場すると、客席に向かって一礼。チューニングのあと、指揮台に上がり演奏が始まりました。

オーケストラの演奏ですが、率直に言って、もう少し上手に演奏すると思っていましたが、それほどでもありませんでした。やはりプロのオーケストラと比較すると、聴き劣りがしました。縦線が乱れたり、音程が甘かったりで、ちょっと期待外れ。また、内声とのバランスも悪い。目立ちたがり屋が多いようで、あまり周りの音を聴いていないようでした。それでも、尻上がりに調子を上げました。
楽器別に書くと、弦楽器は音の密度が薄く、響きません。もう少し音量が欲しいです。木管楽器は音程が残念。金管楽器は若々しくよく鳴りましたが、吹き捨てるような息の使い方で吹き方が粗い。ステージ向かって左に配置された打楽器は、全体的に音量が大きい。

小澤征爾は譜面台は置いてありましたが、譜面はなし。また、指揮棒も使っていないようでした。病み上がりとはまったく思えないほどの元気な指揮ぶりで、息を吸う音やうなり声がたまに聴こえました。また、第1楽章の中盤では速いテンポでオーケストラをリードするなど、精力的に指揮。完全に「復活」したと言える指揮ぶりでした。

予告通り、第1楽章と第2楽章の間、第2楽章と第3楽章の間で、団員の座席の入れ替えがありました。第3楽章が始まる前に、独唱の2人が入場。小澤征爾の前に置かれたイスに座りました。第4楽章「原光」のナタリー・シュトゥッツマンの独唱は、手振りを加えながら歌いました。この楽章は、これくらい感情移入をしてくれたほうが私は好きです。第5楽章は、舞台裏に配置されたホルン、トランペット、ティンパニがものすごい張り切り方。客席から見えない分気合いが入るのでしょう。ちょっと笑えました。402小節で合唱団が一斉に起立。472小節からはじまる合唱は、小さな音量からスタート。ただし、その後のオーケストラによる伴奏が大きすぎ。ここはもっと厳かに聴きたいです。712小節からオルガンが加わり、大きく盛り上がりました。奏者が若いだけあって、最後までバテませんでした。京都コンサートホールのオルガンはひさしぶりに聴きましたがいい音がしますね。

演奏終了後は大きな拍手が送られました。カーテンコールが何度かあって団員が退場。客席はスタンディング・オベーションで、小澤征爾を呼び戻す拍手が続きました。それを受けて、退場していた団員が続々と舞台に戻ってきました。全員が登場し客席に一礼。振り返ってポディウム席にも一礼していました。団員は再び退場しましたが、その後も拍手は続き、またまた団員全員がステージに集結。今度は、小澤征爾や独唱者も登場。全員で一礼しました。小澤征爾が客席に手を振って退場して、長いカーテンコールが終わりました。客席からカメラのフラッシュが光りまくっていました…(おいおい)。

今回の小澤征爾の指揮を見る限りでは、健康状態に問題はないでしょう。やや早めのテンポでオーケストラをリードするなど精力が衰えた様子は感じませんでした。カーテンコールではステージと袖を走ったりして、予想以上に元気な姿が見られたので安心しました。小澤征爾も若い奏者と共演したことによって、新たな英気が注ぎ込まれたことでしょう。このあと、8月には「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」に出演します。ちなみに、音楽監督を務めるウィーン国立歌劇場への復帰は、来年3月とのことです。
小澤征爾音楽塾オーケストラは、個々の団員の技術は高いですが、合奏となるとバランスの悪さが目立ちました。もっと周りの音を聴いてアンサンブル力を身につけて欲しいです。ちなみに、来年の「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅧ」は、ビゼー作曲/歌劇「カルメン」を取り上げるようです。

(2006.7.31記)




京都大学交響楽団第179回定期演奏会 ブラスト?:MIX MUSIC IN X-TREME