京都市交響楽団第671回定期演奏会

  
    2022年9月24日(土)14:40開演
京都コンサートホール大ホール

ジョン・アクセルロッド指揮/京都市交響楽団
テオドラ・ゲオルギュー(ソプラノ)、山下牧子(メゾ・ソプラノ)
京響コーラス

マーラー/交響曲第2番「復活」

座席:S席 3階C1列21番


 
京都市交響楽団首席客演指揮者のジョン・アクセルロッドが、ひさびさに京響を指揮しました。2日公演の1日目です。
 
アクセルロッドは京都市交響楽団第662回定期演奏会(2021.11.27&28)を指揮した後、水際措置の強化により来日できなかった他の指揮者の代役を務めることになり、年末には読売日本交響楽団第31回大阪定期演奏会で第九を指揮。そのまま日本で年越しして、2022年1月29日(土)に菊川文化会館アエルで「京都市交響楽団名曲コンサート」を指揮しました。日本に長期滞在したため、都内のスーパーで買い出しして自炊しているという記事が静岡新聞にも掲載されました。本公演は、それ以来となる約8ヶ月ぶりの京響指揮です。なお、ジョン・アクセルロッドは、2022年9月からブカレスト交響楽団の首席指揮者に就任しました。
 
本公演のマーラー「復活」は、もともとは2年前の第649回定期演奏会(2020.9.12&13)で、アクセルロッドの首席客演指揮者就任披露として指揮する予定でしたが、水際対策の強化によって来日できなかったため、常任指揮者兼芸術顧問の広上淳一が代役を務め、オール・チェコ・プログラムに変更されました。
京響がコロナ禍以降で大編成の作品を演奏するのも本当にひさびさです。ちなみに、「復活」を演奏会で聴くのは、大阪フィルハーモニー交響楽団第368回定期演奏会「大植英次音楽監督就任披露演奏会」小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅦ京都市立芸術大学音楽学部第136回定期演奏会「更なる復活」(広上淳一指揮)、大阪教育大学教育協働学科芸術表現専攻音楽表現コース・教養学科芸術専攻音楽コース第61回定期演奏会(飯森範親指揮)に続いて、5回目です。
 
ロビーに「京都市交響楽団 「復活」 定期・特別演奏会における演奏の歴史」として、過去のポスターが展示されました。それによると、京都市交響楽団の定期演奏会・特別演奏会で「復活」は4回演奏されています。まず、山田一雄(音楽監督・第6代常任指揮者、正指揮者)の指揮で2回(第165回定期演奏会(1974.5.18)、京響創立25周年記念演奏会(1981.5.29))、小林研一郎(第8代常任指揮者)の指揮で1回(京都市交響楽団創立30周年記念コンサート(第285回定期演奏会))(1986.6.18)、井上道義(音楽監督・第9代常任指揮者)が「第329回定期演奏会」(1990.11.15)の1回で、本公演はそれ以来の演奏で、自主公演ではなんと32年ぶり5回目の演奏です。会場はいずれも京都会館第1ホールだったので、京都コンサートホールではまだ演奏されていなかったのが意外です。
 
この日の京都府の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は839人。第7波も次第に減少してきて、岸田総理大臣は来月11日から1日あたり5万人の入国者数の上限撤廃などの水際対策をさらに緩和することを表明しました。なお、「本日の公共交通機関のダイヤの乱れを鑑み、開演時間を10分遅れの14:40に変更いたします」との案内がありました。前夜の台風15号の影響で、東海道新幹線(三島~名古屋)が正午まで運転を見合せていたためでしょう。
 
14:00からプレトーク。ジョン・アクセルロッドと通訳の女性が登場。アクセルロッドはメガネをかけていて、「こんにちは」と日本語であいさつ。その後は英語でゆっくり話したので、聞き取りやすい。「同じプログラムを2020年に予定していたが、キャンセルになった。「復活」を復活させるのに長い時間がかかった。コロナも台風も私たちの復活を止められない」と話しました。また、「キリスト教の復活だけでなく、人間と精神性の愛が描かれている。すべての宗教に一貫したものだが、もう一度生きるために死ぬ」などと作品の哲学的な部分に言及。さらに、「謝らなければいけないのは、合唱団はマスクをして歌うことで、口元は見えないが心から歌っていると感じる」「ソプラノ独唱は天使の声、オルガンは我々が天国に到着したときに鳴る音楽」と説明しました。また、1955年には長崎の原爆投下50年で小澤征爾が指揮したことも紹介しました。20分で終了しました。
 
本公演は途中で休憩がないことが繰り返しアナウンスされて、開演前のトイレは大行列でした。当日券はごくわずか約50枚程度発売されたようですが、完売にはならなかったようです。意外にも空席があるのは、企業などの定期会員が来られてないからでしょうか。
コンサートマスターは、特別名誉友情コンサートマスターの豊嶋泰嗣。隣にコンサートマスターの泉原隆志。ソロ首席ヴィオラ奏者の店村眞積がひさびさに出演しました。ホルン10、トランペット10、ティンパニ2などまさに大編成です。京都市交響楽団第665回定期演奏会以来の広上シフト(と勝手に呼んでいる半円形の雛壇を客席に近づける配置)でした。
 
演奏は、完成度は高いですが、テンポが少し落ち着かないのが気になりました。アクセルロッドがテンポをリードするのではなく、オーケストラのアンサンブルを尊重していますが、演奏解釈ではないところでテンポが走ったり遅くなったりしました。私の体内のメトロノームがおかしいのでしょうか。大阪フィルハーモニー交響楽団第368回定期演奏会「大植英次音楽監督就任披露演奏会」での大植英次のドイツ仕込みの彫りが深い演奏が印象に残っているせいか、アクセルロッドはくっきりはっきり明瞭に聴かせる演奏ではなく、細部にこだわらずに流しながら味付けするタイプでした。もっとド派手に金管楽器と打楽器を鳴らすかと思いましたが、この作品の性格を意識してか、それほどでもありませんでした。舞台裏の金管楽器などは、京響ならもっと精緻な演奏ができるはずで残念。

第1楽章から、アクセルロッドのシューという息を吸う音が聴こえました。やや遅めのテンポで、メガネをかけて、スコアをめくりながら指揮。ヴァイオリンは人数が多いのに、音色が軽くてなめらか。管楽器は音色を融合させずに、生音をぶつけます。196小節(Vorwärts)から速いテンポで駆け抜けます。254小節(Sehr langsam beginnend)からはゆっくりしたテンポで始めました。441小節(Tempo I)からは速めのテンポで締めくくりました。
第2楽章の前に合唱団がポディウム席に入場。左側が女声、右側が男声です。プログラㇺによると、ソプラノ39名、アルト24名、テノール22名、バス27名の編成。ここで合唱団を入場させたのは、スコアに「ここで少なくとも5分の休止を置く」と書かれていることを意識した解釈でしょう。オルガン奏者(桑山彩子)も入場。オーケストラもチューニング。
第2楽章は冒頭の弦楽器のアンサンブルがすばらしい。日本のオーケストラとは思えないほど上質で、一気にマーラーの世界に連れていかれました。対旋律が入る245小節からも同じ。第2楽章最後のピツィカート2発は間を置きました。
第3楽章は、上述したテンポの不安定さが特に目立ちました。第3楽章の演奏中の終盤で、メゾ・ソプラノの山下牧子が下手からゆっくり入場。白のドレスで、ステージのセリが狭いため、ステージ袖に設置された階段で一度客席に降りて、指揮台付近に設置された階段を上って、ちょうどいいタイミングで指揮台の左横に到着しました。一度客席に下りて移動するので、最前列のチケットを販売しなかったのはこのためでしょう。最後のフェルマータの音符を長く伸ばしました。
休みなく第4楽章。山下の前には譜面台が置かれていましたが、マイクを使っているのではないかと思うほど、お腹からよく響く声です。
あっという間に第5楽章。43小節(Langsam)からのホルンは、上手の舞台裏で4本で演奏(スコアの指示は「できるだけ多数でひじょうに強く吹き、遠くに置くこと」)。84小節からの舞台裏のホルンが遅れてしまい、ステージの木管楽器の三連符と大きくずれました。ここは合わせるのが難しい部分です。その後、舞台裏のホルン×4は下手後方からステージに入場。191小節からと194小節のクレシェンドは、ffを目一杯維持しました。ホルン×4は248小節からのfffを演奏すると、また舞台裏に出ていって出入りが激しいですが、これはスコア通りでした。248小節から鐘(吊り下げた鉄板)を強打。310小節(a tempo Più mosso)から2台のティンパニを3人で叩きましたが、これもスコア通り。343小節(Mit etwas drängendem Character)からの舞台裏トランペットなどは下手舞台裏から演奏。402小節からは打楽器が全開。447小節のホルンは下手の舞台裏から演奏。455小節からのトランペットは、ステージを取り囲むように舞台裏の四方で演奏しましたが、音色が汚くて、神々しい厳かな雰囲気にならず残念。下手舞台裏に配置されたティンパニを大きめに響かせました。
ソプラノ独唱のテオドラ・ゲオルギューが、上手からゆっくり登場。山下と同じようにいったん客席に降りて、指揮台付近の階段を上って指揮台の右側へ。グレーの地味なドレス。472小節からの合唱団は、なんと座ったまま歌いました。合唱団員は、エアロゾルが滞留しないように、肩から扇風機(ネックファンというらしい)をかけているのは、京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」と同じです。立って歌うほうが座って歌うよりも歌いやすいと思いますが、特に歌唱に支障はなさそうでした。ソプラノ独唱のテオドラ・ゲオルギューはルーマニア出身で、山下とタイプが異なり、細身でストレートに口から声を発します。
640小節から合唱団が起立。舞台裏で演奏していたトランペット×4もステージに戻ってきて、最後列の後ろで立って演奏。合唱団はマスクをしているので、歌詞が不明瞭なのが残念。大きく盛り上がって、732小節から鐘を強打。
カーテンコールでは、合唱指揮の浅井隆仁も登場。独唱の二人は、カーテンコールでも客席の1列目を通って入退場しました。開演時間が遅くなったからか、カーテンコールは短めで終了しました。
 
アクセルロッドは読売日本交響楽団第31回大阪定期演奏会が好演で、合唱団の扱いも上手だったので期待値が高すぎたのかもしれませんが、少し残念な出来でした。次回に京響を指揮する第676回定期演奏会(2023.3.10&11)でのストラヴィンスキー「春の祭典」が少し不安になりました。なお、2日目のほうがいい演奏だったようなので、2日目に行ったほうがよかったかもしれません。そう言えば、読売日本交響楽団第31回大阪定期演奏会も6回公演の最終日でした。2日目のカーテンコールでは、アクセルロッドと豊嶋が登場する通称「一般参賀」があったとのこと。広上淳一が常任指揮者を退任した京都市交響楽団第665回定期演奏会でもなかったので、京響では大変珍しいです。
 

京都市交響楽団 「復活」 定期・特別演奏会における演奏の歴史

(2022.10.8記)

 

フィルハーモニック・ウインズ大阪第36回定期演奏会 ロンドン交響楽団 日本ツアー2022