大阪フィルハーモニー交響楽団第368回定期演奏会
「大植英次音楽監督就任披露演奏会」


   
 
2003年5月10日(土)19:00開演
ザ・シンフォニーホール

大植英次指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団
菅英三子(ソプラノ)、寺谷千枝子(メゾ・ソプラノ)
大阪フィルハーモニー合唱団

マーラー/交響曲第2番「復活」

座席:B席 2階HH列25番


朝比奈隆亡き後、大阪フィル音楽監督に就任した大植英次の就任披露演奏会です。大阪フィルの定期演奏会は、今年から1公演2日の開催になりました。私が聴きに行ったのは、2日目の演奏でした。
新音楽監督の大植英次は、アメリカのミネソタ管弦楽団とハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニーを渡り歩いてきましたが、大阪フィルからどういう音色を引き出してくるのか関心を持って聴きました。

壮絶なチケット争奪戦でしたが、なんとかB席を確保できました。ザ・シンフォニーホールの2階後部座席は、ステージをとてもよく見渡せました。傾斜が急なので鑑賞には最適です。気に入りました。座席指定ができない大阪フィルのホームページから申し込みましたが、ステージ中央のベストポジションで鑑賞することができました。ラッキー。

総勢約180名の合唱団がステージ後部に陣取った後、大植英次が万雷の拍手に迎えられて登場しました。すらっとした体型で、やはり若いという印象を受けました。
演奏曲は、マーラー「復活」。意欲的なプログラムと言えるでしょう。指揮者は譜面台なしでした。

第1楽章がすばらしい出来。「目頭が熱くなる演奏」や「手に汗握る熱演」という表現は、こういう演奏のためにあると思います。冒頭の低弦がドイツのオーケストラと聴き間違うほどの力強い締まった音色を聴かせました。また、ヴァイオリンもクリアで明るい音色でした。日本のオーケストラではなかなか聴くことはできないでしょう。木管楽器は、ふくらみのある音色でこの作品を演奏するには理想的だと思います。打楽器は、音量が大きい反面、音色が軽い。アメリカ風と言えるでしょうか。大植英次の指揮は、全身を使ったダイナミックなパフォーマンスでした。強弱のコントロールや歌い方の方向性や頂点を随時指示していました。
第2楽章は、ヴァイオリンの厚みのある音色にほれぼれしました。よく鳴りますね。緻密さが要求される楽章ですが、音の粒を明確に聞き取ることができました。
第3楽章もパワフルな演奏でしたが、打楽器の音色が弦楽器や管楽器の音色や音量に合っていない点が気になりました。
第4楽章「原光」は、もう少し穏やかなオルガンのような音色が引き出せれば、なおすばらしい演奏になるでしょう。
第5楽章も熱気みなぎる演奏でしたが、さすがにスタミナが切れてきたようで第1楽章の完成度には及びませんでした。しかし、金管のコラールなど重厚に響かせ緻密さも感じ取れました。バンダの効果はいまひとつ。スコアで指定されたように、トランペットを反対の方向から演奏させることは行なっていませんでした。打楽器のパワーは相変わらず強烈でしたが、やはり少しやりすぎの感があります。合唱は、各声部のハーモニーが分離しすぎている印象を受けました。合唱団の人数が多すぎるためでしょうか。ラストの盛り上がりは、オケと合唱の音圧で、2階席が少し揺れました。最後の鐘の無機質的な音色が少し気になりました。

演奏終了後は熱狂的な拍手が巻き起こり、大植英次をはじめ、独唱者と合唱指導者が何度もステージに呼び出されました。大植英次も満足そうな表情を浮かべていました。オケの団員が引き上げた後も拍手は鳴りやまず、客席のスタンディング・オベーションに応えていました。アンコールはありませんでした。

大植英次は、就任間もない演奏会で彼の個性を刻印した演奏を披露したと言えるでしょう。強弱がよくコントロールされており、特にアクセントやスフォルツァンドを強調し句読点をはっきりさせていました。その結果、若々しさを印象づける演奏に仕上がりました。埋もれていたフレーズを浮かび上がらせるなど、新鮮な視点で作品を分析できる指揮者であると感じました。大阪フィルとのコンビネーションもすばらしく、彼の存在が日本のオーケストラに革命的な変化をもたらすことは間違いありません。しばらく大植英次には目が離せそうにありません。

大阪フィルハーモニー管弦楽団は、1ヶ月ほど前に京都で小林研一郎指揮の演奏会(大阪フィルハーモニー交響楽団京都特別演奏会)を聴きに行ったときとは、まるで別のオーケストラのように聞こえました。特に弦楽器の音色と厚さがすばらしく、数段レベルアップしたように感じました。問題なのは打楽器で、もう少し曲想に合わせた演奏が望まれます。

(2003.5.11記)

大阪フィルハーモニー交響楽団京都特別演奏会 ハンブルク北ドイツ放送交響楽団来日公演