大阪教育大学教育協働学科芸術表現専攻音楽表現コース・教養学科芸術専攻音楽コース第61回定期演奏会


   
      
2017年11月29日(水)19:00開演
ザ・シンフォニーホール

飯森範親指揮/大阪教育大学シンフォニーオーケストラ
上村智恵(ソプラノ)、林真衣(アルト)
大阪教育大学芸音合唱団

マーラー/交響曲第2番「復活」

座席:1階 N列 31番


大阪教育大学シンフォニーオーケストラに飯森範親が客演しました。私がフォローしている「ぴあクラシック」(@pia_classic)のTwitterに、飯森範親(@iimoriconductor)のツイートがリツイートされたことで、この演奏会を知りました。飯森は現在、日本センチュリー交響楽団首席指揮者、いずみシンフォニエッタ大阪常任指揮者、山形交響楽団音楽監督、東京交響楽団正指揮者、ヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団首席客演指揮者を務めています。

大阪教育大学シンフォニーオーケストラは、大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻音楽コースと教育協働学科芸術表現専攻音楽表現コースの管弦打楽器専攻生によるオーケストラで、この定期演奏会はオーケストラの授業として取り組まれたようです。大阪教育大学教育学部は、今年度から教養学科(8専攻)を教育協働学科(6専攻)に改組しました。したがって、1回生は教育協働学科芸術表現専攻音楽表現コース、2回生以上は教養学科芸術専攻音楽コースに所属しています。教育協働学科芸術表現専攻音楽表現コースの定員は40名で、作曲、声楽、器楽(ピアノ、弦楽器、管・打楽器)の専門に分かれています。「音楽教育に関わる課題解決に取り組む人材」を目指していて、教員養成課程ではないため、教員免許を取得しなくても卒業できます。入学試験では実技検査(専門、聴音、ピアノ、楽典)があります。柏原キャンパスの音楽棟にはリハーサルホールという立派な合奏場があって、練習環境には恵まれています。飯森範親のTwitterやInstagramに、練習風景の写真や動画が掲載されました。

チケットは全席2000円で、うち150円は東日本大震災義捐金として桃・柿育英会に寄付するとのこと。当日座席指定です。ザ・シンフォニーホールに行くのは、ウラディーミル・アシュケナージ&ヴォフカ・アシュケナージ ピアノ・デュオ以来3年半ぶりでした。今年が開館35周年ということで、ホールの外にはきれいなイルミネーションで飾られていました。当日券売場で座席券を受け取りました。1階席のステージに近い席でした。3階席のほうが好きなので、自分で座席が選択できたほうがうれしいです。

18:15からロビーコンサートが開催されました。ホールロビーの正面階段の踊り場で行われました。出演した奏者はどうやら楽器編成の関係で「復活」のステージには乗らない奏者のようです。1曲目は、テューバ三重奏で、山岸和正作曲/チューバトリオ。3つの楽章からなる作品でした。2曲目は、フルート七重奏で、マウリー作曲/チェンジズ。指揮の宮本颯斗(大学院芸術文化専攻1回生)が作品解説を説明しました。よく聞き取れませんでしたが、主題と変奏からなり、1つの変奏が終わると、奏者が反時計回りに移動しました。20分で終了しました。

プログラムのメンバー表を見ると、現役学生の他に、大学院生、客演、卒業生、教員、非常勤講師が目立ちました。パートによって差はありますが、弦楽器や男声合唱は現役学生が少ないようです。開演前にポディウム席に合唱団が着席しました。客の入りは7割ほどでした。

オーケストラは健闘しました。強奏の迫力は文句なしで、打楽器が豪快。鳥肌が立った部分がありました。トランペットが強く聴こえるのは、フィンランド・ラハティ交響楽団来日公演と同じで、ザ・シンフォニーホールの1階席の特性かもしれません。ホルンはよく響きましたが、スタミナ切れか後半になるにつれて音を外しやすくなったのが残念。弦楽器は人数が多い割には聴こえません。ヴァイオリンは柔らかい音色への切り替えが上手ですが、細かな音符で乱れるのが残念。また、音符にない音が聞こえたり、カチャカチャというステージノイズが少し気になりました。

飯森範親は両腕を使って大きな指揮。拍をきっちり正確に振りました。メリハリをつけて、テンポを上げられる部分は速く演奏しました。譜面台にスコアが置かれていましたが、必要な部分以外はほとんどめくっていませんでした。

第1楽章は4小節の低弦のフェルマータを長めにとって間を貯めました。第1楽章が終わると、チューニング。飯森はいったん指揮台から降りましたが、チューニングが終わってからもしばらく指揮台に上がらずに長い間をとりました。これはマーラーが「ここで少なくとも5分の休止を置く」とスコアに指示しているためでしょう。実際には5分よりも短かったと思いますが、作曲者の意図を汲んでいました。第3楽章の途中で、アルト独唱が入場。パイプオルガンの前を通って、ポディウム席の最前列に座りました。間を置かず第4楽章へ。アルト独唱にスポットライトが当てられる演出がありました。スコアに「Sehr feierlich, aber schlicht(きわめて荘重に、しかし素朴に)」と書かれていますが、トランペットの音色が開放的すぎて厳かさに欠けるのが残念。

第5楽章では、343小節からの舞台裏からの金管楽器と打楽器は、下手側から聴こえました。「In weitester Ferne aufgestellt.(最も遠い位置に置かれた)」と指示がありますが、音像がはっきりしていたので、ステージにかなり近い位置で演奏したと思われます。途中で、ソプラノ独唱とオルガン奏者が入場。合唱が加わるとポディウム席がライトアップされました。ソプラノ独唱の上村智恵は、教養学科芸術専攻音楽コースの卒業生。アルト独唱の林真衣は、大学院芸術文化専攻音楽研究コース1年次生。ポディウム席からの歌唱だったためか、あまり響かず硬い。もっと声量もほしいです。合唱団は個人の声が聴こえるなど不揃いでまとまりに欠けました。合唱団とオーケストラのバランスが気になったのか、飯森が左手でオーケストラの音量を抑えるような動作を見せました。628小節のフェルマータ2つで間を取りました。720小節からの「Etwas schneller(少し速く)」は逆にテンポを遅くするような堂々たる演奏。以降は完成度が高く、よく練習されたようです。最後の音が響き終わってから拍手が起こりました。

同じ大学オーケストラによる演奏という点では、京都市立芸術大学音楽学部第136回定期演奏会「更なる復活」(広上淳一指揮)のほうが一日の長があったでしょう。上述したように、全員が音楽の先生になることを目指す学科ではありませんが、次月には柏原市民文化会館で開催される「柏原第九フェスティバル」で演奏(指揮は鈴木秀美)するなど、発表の機会も多いようです。また機会があれば聴きに行こうと思います。

(2017.12.3記)


開館35周年イルミネーション ロビーコンサート



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