Kyoto Music Caravan 2023「スペシャル・コンサート」


 

2024年3月30日(土)15:00開演
京都市立芸術大学堀場信吉記念ホール

大谷圭介.指揮/京都市少年合唱団、小林千恵(ピアノ)
 おんがく(作詩:まど・みちお 作曲:木下牧子)
 春に(作詩:谷川俊太郎 作曲:木下牧子)
 Sing(作詞作曲:Joe Raposo)
 世界に一つだけの花(作詞作曲:槇原敬之)

明石幸大指揮/京都子どもの音楽教室
 ラター/For the beauty of the earth(このうるわしき大地に)

大谷麻由美指揮/京都市ジュニアオーケストラ
 ベートーヴェン/交響曲第1番より第1楽章

明石幸大指揮/京都市立京都堀川音楽高等学校
 ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲

阪哲朗指揮/京都市立芸術大学特別合同ステージ
 ラター/グローリア

座席:自由


 
「Kyoto Music Caravan 2023」の締めくくりとなる「スペシャル・コンサート」に行きました。「Kyoto Music Caravan 2023」は、京都市立芸術大学新キャンパス移転と文化庁京都移転を記念して、2023年4月から2024年3月まで、京都市内の11の行政区すべてで1ヶ所ずつ、京都市立芸術大学在学生や卒業生等による無料コンサートを開催しました。主催は、京都コンサートホール(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)、京都市、京都市立芸術大学、京都市交通局。
これまでの11公演では、7月の「ありがとう沓掛キャンパスコンサート」(西京区・京都市立芸術大学)と8月の「サクソフォーン四重奏コンサート」(中京区・壬生寺)の2公演に行きましたが、他にも仁和寺(右京区)、月桂冠大倉記念館(伏見区)、上賀茂神社(北区)、くろ谷金戒光明寺(左京区)、智慧夢工房(南区)、梅小路公園周辺5施設(下京区)、隨心院(山科区)、泉涌寺(東山区)、北野天満宮(上京区)で開催されました。関係各所との調整が大変だったと思いますが、企画した京都コンサートホールに拍手。フィナーレを飾る12公演目は、10月1日に移転した京都市立芸術大学の新キャンパスで開催されました。5団体の総勢350名が出演しました。
 
入場料はこれまでの11公演は入場無料でしたが、本公演は有料で、全席自由で500円。11月1日から発売開始で、京都コンサートホールのホームページからインターネット予約。当日に大階段の前でチケットを受け取りました。1階の大階段前で開場待ちの長い行列ができましたが、入口で立派なプログラムが配られました。予ベルがハープの音で、先月の京都市立芸術大学第173回定期演奏会 大学院オペラティックコンサート「椿姫」とは違う音でした。

京都コンサートホールプロデューサーの高野裕子が登場。「本公演は即完(即日完売)した」と興奮気味にアナウンス。お客さんもびっくり。
続いて、京都市長の松井孝治が挨拶。前任の門川大作は着物を着ていましたが、松井市長はスーツ姿で地味です。「Kyoto Music Caravan 2023」は初めて聴くとのこと。阪哲朗を「OBで教授」と紹介しました。続いて、赤松玉女(たまめ)京都市立芸術大学学長が挨拶。もともとは美術学部油画専攻教授でした。堀場信吉を「物理科学が専門で、京都大学の先生」と紹介しました。最後に、公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団理事長の堀場厚が挨拶。「このホールは音響がいいとの評判で、私の声もいつもよりいい」と言って笑わせました。
 
1団体目の出演は、京都市少年合唱団京都市少年合唱団第69回定期演奏会で聴きましたが、全国で公立初の少年合唱団(児童合唱団)として1958年に創立されて、小4から中3までの約180名の団員が在籍しています。本公演には選抜ループ「響(ひびき)」が出演。ソプラノ15名、メゾ・ソプラノ19名、アルト14名、バス4名が、ステージ後方に3列で並びました。少年合唱団という名称ですが、男声が圧倒的に少ない。指揮は京都市少年合唱団指導者の大谷圭介.。指揮台はなく譜面台のみで、指揮棒なしで指揮しました。大谷は京都フィルハーモニー室内合奏団創立50周年記念第248回定期公演A「室内オーケストラで聴く大作Vol.5」でバリトン独唱を務めました。
プログラム1曲目は、おんがく(作詩:まど・みちお 作曲:木下牧子)。アカペラでの演奏。透明感のある歌声で、レベルが高く、歌詞もはっきり聴こえます。作詩のまど・みちおは「ぞうさん」や「一年生になったら」の作詞者です。歌詞もぐっとくる内容で、「おんがくをながめていたい」など、音楽を視覚や嗅覚や味覚や触覚で表現した歌詞は、なかなか思いつきません。あまりの名演で拍手が起こりませんでした。
プログラム2曲目は、春に(作詩:谷川俊太郎 作曲:木下牧子)。下手袖に置かれたピアノが伴奏に加わりました。ピアノは、京都市少年合唱団指導者の小林千恵。
プログラム3曲目は、Sing(作詞作曲:Joe Raposo)。カーペンターズの楽曲で、3拍子のアレンジ(編曲は若林千春)。1番は英語の歌詞で、2番は日本語の歌詞。
プログラム4曲目は、世界に一つだけの花(作詞作曲:槇原敬之)。大谷.が譜面台をピアノの近くに移動して、合唱団が手話つきで合唱。ステップを踏むなどパフォーマンスつきで、最後は人文字で花の形を作りました。
京都市少年合唱団は、第692回定期演奏会(2024.8.23&24)で、マーラー「交響曲第3番」を合唱しますが、今から楽しみです。

舞台転換の時間を利用して、下手袖で副学長の大嶋義実と高野裕子がトーク。大嶋は3月31日で定年退職を迎えるため、「沓掛キャンパスで最初に卒業した学生で、崇仁キャンパスで最初に退職する教員」という「ありがとう沓掛キャンパスコンサート」でも紹介したネタを披露。堀場信吉ホールについては「ネーミングライツではない。信吉先生を後世に伝えるために名付けた。信吉先生は京大オケの事務局も務めた。同志社大学で行なわれた信吉の葬儀に京大オケが演奏した」と説明しました。

2団体目は、京都子どもの音楽教室。初めて存在を知った団体でしたが、1953年に京都府音楽教育連盟の主催、京都市教育委員会の後援で、子どもの早期音楽教育を目的に設立されたとのこと。現在は京都市立芸術大学音楽学部の教育研究機関で、京都市立芸術大学音楽学部長が室長を務め、京都堀川音楽高校の教員などが演奏アドヴァイザーを務めているとのこと。大嶋は「信吉先生が作った」と紹介しました。オーケストラは小4から中3までの生徒に、教室研究員や賛助やОBも含めて43名。合唱は、ソプラノ12名と14名で、指揮台の前に集まって歌いました。おそらくはひな壇で歌うことを想定していたものの、聴こえなかったからかもしれません。指揮は明石幸大(京都市立京都堀川音楽高等学校教諭、京都子どもの音楽教室 演奏アドヴァイザー)。ラター作曲/For the beauty of the earth(このうるわしき大地に)を演奏。英語で歌いましたが、合唱があまり聴こえません。まとまりが難しい作品かもしれません。1曲だけだったのがもったいない。

3団体目は、京都市ジュニアオーケストラ。指揮は京都市ジュニアオーケストラ合奏指揮者を務める大谷麻由美京都市交響楽団創立60周年記念特別演奏会を指揮し、今年度の関西吹奏楽コンクールで大津シンフォニックバンドを指揮しました(結果は銀賞)。ベートーヴェン作曲/交響曲第1番より第1楽章を演奏しました。縦線のずれが少し気になりました。大谷は腕が細い。

大嶋は「このホールは傾斜がきついが、壁が近寄ることで豊かな響きが生まれる。本当は敷地がなかっただけ」と笑わせつつ、「このホールを建てたことは後悔させない。血の通った音が将来的に響いてほしい」と期待を込めました。

4団体目は、京都市立京都堀川音楽高等学校。礼服を着ているので、高校生には見えません。指揮は京都子どもの音楽教室に続いて明石幸大。明石は京都堀川音楽高校の音楽科専任教諭で、前身の京都市立音楽高校出身です。若い。ワーグナー作曲/歌劇「タンホイザー」序曲を演奏。前半の遅いテンポは響きが直線的でしたが、後半はよくなりました。この曲は京都市交響楽団常任指揮者の沖澤のどかが1月に訪問した際に指導しました。

休憩後は、京都市立芸術大学特別合同ステージ。京都市立芸術大学の有志メンバーと、前半に出演した4団体の合同ステージで、オーケストラは総勢60名。京都市立芸術大学が32名、京都市立京都堀川音楽高等学校が9名、京都市ジュニアオーケストラが16名、京都子どもの音楽教室が3名の編成。衣装ではどの団体なのか見分けがつきません。合唱団は81名。ソプラノ33名、アルトが30名、テノールが9名、バスが9名で、団体の内訳は、京都市立芸術大学が21名、京都市立京都堀川音楽高校が49名、京都市少年合唱団が7名、京都子どもの音楽教室が4名でした。合唱団は衣装で団体が分かり、雛壇に3列で並んで、楽譜を持って歌います。指揮は阪哲朗。昨年4月から京都市立芸術大学音楽学部指揮専攻教授に就任しました(2017年度から2022年度まで務めた前任の下野竜也は客員教授に就任)。山形交響楽団常任指揮者、びわ湖ホール芸術監督などを務めていて、京都市立芸術大学作曲専修の出身です。

ラター作曲/グローリアを演奏。京都市立京都堀川音楽高等学校第46回オーケストラ定期演奏会で聴きました。合唱団は音量十分で、第1楽章はモティーフが特徴的。第2楽章は中盤から盛り上がます。ソプラノとアルトのソロは中央の4人で分担。第3楽章は華やかで、「Kyoto Music Caravan 2023」を締めくくるにふさわしい演奏。17:20に終演しました。

「Kyoto Music Caravan」は2024年度は実施されないようですが、京都市内の各地で演奏が聴ける取り組みはぜひ継続して欲しいです。なお、前京都市長の門川大作が着物で来場していました。また、4月1日から京都コンサートホール第5代館長に就任する鷲田清一(京都市立芸術大学前学長)も来場していました。3月29日に急に発表されたので驚きましたが、第4代館長の広上淳一はミュージックアドバイザーに就任します。関係者が一緒に写っている写真が、松井市長のX(@matsuikoji)に掲載されています。

 

幸野楳嶺先生像(C棟) C棟とA棟と京都タワー 大階段 堀場信吉記念ホール 高倉跨線橋から望む

 

(2024.4.20記)

 

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