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2016年12月23日(祝・金)14:00開演 京都市勧業館みやこめっせ第3展示場 広上淳一、高関健、下野竜也、大谷麻由美、水戸博之指揮/京都市交響楽団 シュトックハウゼン/3つのオーケストラのための「グルッペン」 座席:全席自由 |
京都市交響楽団創立60周年を記念した特別演奏会が開催されました。なんと京都市交響楽団常任指揮者陣の3人(広上淳一(常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー)、高関健(常任首席客演指揮者)、下野竜也(常任客演指揮者))がそろい踏みをするというまたとない豪華な出演者で、文字通り特別な演奏会となりました。第12代常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーを務めている広上淳一は、2017年度から3年契約を結び4期目となることが発表されました。2008年度に就任してから10年を超えることになり、井上道義(音楽監督・第9代常任指揮者)を抜いて、京響常任指揮者として最長の在任期間になります。また、2017年度からは、常任客演指揮者の下野竜也が常任首席客演指揮者に昇格し、高関健とあわせて2名体制となります。
プログラムは、シュトックハウゼン作曲/3つのオーケストラのための「グルッペン」 が3人の指揮者で2回演奏され、間に挟まれるようにジョン・ケージ作曲/5つのオーケストラのための30の小品が5人の指揮者で演奏されました。チラシに「一生に一度?!」の文字が躍るほど演奏機会が少ない作品で、「第九」シーズン真っ盛りなのに、すごい選曲です。「グルッペン」が2回演奏されるのは、シュトックハウゼンが推奨しているためのようです。
なお、当初はケージの代わりに、モーツァルト作曲/セレナード第8番(4つのオーケストラのためのノットゥルノ)が予定されていましたが変更になりました。インターネットから予約したチケットをロームシアター京都のチケットカウンターで受け取りました。座席は全席自由でした。当日券が若干枚数発売されました。
京都市勧業館(みやこめっせ)は、ロームシアター京都の向かいにあります。第3展示場は3階にあり、広さは4000�屐�式典としての使用なら5000席が設置できる柱のない広い空間です。超マイナーなプログラムにも関わらず場内は満員だったので驚きましたが、京響友の会会員(定期会員)は無料で招待されたようです(終演後には、1階の第2展示場で交流会がありました)。京都新聞の記事によると、入場者は約1600名だったとのこと。
プログラムに会場図が挟み込まれていました。オーケストラは客席を取り囲むように5ヶ所に配置されました。奏者は客席に背を向けて、壁に向かって演奏するように配置されています。また、テレビカメラが複数台設置されていました。指揮台の上部にはマイクも設置されていて、映像が収録されたようです。自由席なので、中央のやや左側の座席に座りました。客席の照明は暗く、オーケストラの付近のみ照明がついていました。
プログラム1曲目は、シュトックハウゼン作曲/3つのオーケストラのための「グルッペン」 (1回目)。1957年に作曲されました。「グルッペン」とはドイツ語で「群」の複数形の意味とのこと。広上淳一、高関健、下野竜也のいずれも指揮するのは今回が初めてで、京都市交響楽団オフィシャルブログ「今日、京響?」には、京響2017年度自主公演ラインナップ発表の前日(11月30日)に、3人が頭を抱えながらスコアリーディングしている様子が掲載されました。
NHK京都放送局アナウンサーの岩槻里子が登場。プロフィールによると、ヴァイオリンが趣味とのこと。「京都市交響楽団創立60周年記念のハイライト」「指揮者が3人いないと演奏できない曲」「作曲家の指示でオーケストラがステージを取り囲むように配置されている」と紹介しました。広上淳一が登場して対談。「常任指揮者3人のそろい踏みは初めてで、いろいろ探したのですが、モーツァルトは無理していてあまりおもしろくない」「グルッペンは下野先生の発案で、高関先生も「いいね」ということだったのですが、私だけが「何それ?」という感じでした」と話しました。「日本のオーケストラ史上で3回目だそうです。1回目は岩城先生がされて、2回目はN響が演奏した」と話しました。調べてみたところ、1回目(日本初演)は、1974年2月13日のNHK交響楽団第623回定期公演(NHKホール)で、岩城宏之、尾高忠明、小松一彦の指揮。2回目は、2009年8月31日のサントリー音楽財団創設40周年記念サマーフェスティバル2009<MUSIC TODAY 21>(サントリーホール大ホール)で、スザンナ・マルッキ、パブロ・ヘラス=カサド、クレメント・パワーの指揮で、NHK交響楽団が演奏しました。今回はこれに次ぐ3回目で、東京以外の場所で、もしくはNHK交響楽団以外のオーケストラで初めて演奏されます。「音の空間を味わっていただきたい」「聴こえ方の違いを体感して、聴きくらべていただきたい」と話しました。また、岩槻アナから、「2回目の「グルッペン」の前で、座席の移動をお願いします」と協力の依頼がありました。
オーケストラ配置は、左がオーケストラ�機聞�上淳一)、中央がオーケストラ�供聞盍愀髻法�右がオーケストラ�掘焚写醂橘蕁法�シュトックハウゼンは「平らな床で据え付けの座席やステージのない正方形のホールで演奏するのが望ましい」としていたようですが、「正方形」以外の条件は満たしています(第3展示場は長方形)。団員が入場。オーケストラ�供蔽羆�)の人数が、�気鉢靴茲蠅眤燭ぁ�チューニングは、オーケストラ�供蔽罅泡�オーケストラ�機丙検泡�オーケストラ�掘扮Α砲僚腓如△修譴召譴離�ーボエに合わせてチューニングしました(逆に言うと、3つのオーケストラで揃ってチューニングはしませんでした)。指揮者が入場。団員は客席が見えるように後ろ向きに立って、拍手に応えました。広上淳一と下野竜也は向かい合う位置。コンサートマスターは渡邊穣に加えて、��谷直人(神奈川フィルハーモニー管弦楽団第1コンサートマスター)と釋伸司(モーツァルト室内管弦楽団コンサートマスター)が客演コンサートマスターとして演奏しました。
演奏は、左(オーケストラ�機法�中央(オーケストラ�供法�右(オーケストラ�掘砲僚腓忙呂泙蠅泙靴燭�、楽譜通り演奏できているのかよく分かりません。メロディーはなく、断片的なパッセージが続きます。3つのオーケストラがトゥッティで演奏することはあまりありません。指揮者の役割が極めて大きく、休符が多いので、入りのタイミングを振り間違えたら致命傷です。3人とも指揮棒なしで指揮しました。打楽器を多く使用する作品で、打楽器奏者は客演奏者8名を増強して13名での演奏でした。オーケストラ�供蔽羆�)からエレキギターソロが聴こえました。中盤は各オーケストラの打楽器のタイミングのずれがおもしろい。その後、各オーケストラのトランペットが細かな音符がからみあい、金管楽器全体に発展。クレシェンドをオーケストラで受け渡し(応酬と表現したほうが適当でしょうか)。打楽器連打と金管楽器が激しくなり、ほぼ騒音状態。弦楽器はほとんど聴こえません。オーケストラの配置がいつもと逆なので、客席から遠いためかもしれませんが、この作品では重要ではないということでしょうか。
最近リリースされた自作自演のCD(シュトックハウゼン、マデルナ、ブーレーズ)よりもテンポが遅い。CDのほうが細かな音符がはるかに鮮明で、チェレスタも聴こえますが、これはマイク位置の問題でしょうか。京響のほうが上品な音色で、前衛性は後退しました。
休憩後に、高関健が登場してプレトーク。先ほどの「グルッペン」については「けっこううまくいったんじゃないですか。初めて指揮したが、楽譜は10年前から持っていた。さっきまで三人で反省会をやっていた」「この作品が60年近く前に書かれたとは思えない」「指揮者は必死だが、聴いている人は素敵と思う」と話しました。オーケストラが客席に背を向けて演奏することについては、「最初は逆だったができなかった。指揮者が見えないと演奏できなかった」「オーケストラ�兇了愆�台から、広上さんと下野さんの両方は見れなかった。どちらの指揮者を見て合わせるか決めてないといけない」と話しました。
プログラム2曲目は、ジョン・ケージ作曲/5つのオーケストラのための30の小品。1981年に作曲されました。高関健は「「グルッペン」と違ってストレスがある曲ではない。チャンスオペレーション(偶然性)があり、演奏者に自由裁量がある。どう指揮するかも自由で、5つのオーケストラは合わない。自分のオーケストラしか分からない。他のオーケストラのスコアも持っていない」と説明しました。なお、高関健は日本初演を指揮した指揮者の一人でした(1993年8月24日 サントリーホール 高関健、佐藤聡明、西村朗、松下功、細川俊夫、東京交響楽団)。指揮の大谷麻由美と水戸博之については「広上さんと下野さんのお弟子さんで、京都市ジュニアオーケストラを指揮されている。有望な指揮者」と紹介しました。プロフィールによると、大谷麻由美は京都市立芸術大学卒業で、下野竜也に師事。2017年から上野財団アーティスト・イン・レジデンスおよびNew Orchestra of Washingtonアシスタントコンダクターに就任予定です。水戸博之は東京音楽大学大学院修了で広上淳一に師事。オーケストラ・トリプティーク常任指揮者および東京混声合唱団コンダクター・イン・レジデンスを務めています。
オーケストラ配置は、左がオーケストラ�供並臙�麻由美)、中央がオーケストラ�后聞�上淳一)、右がオーケストラ�掘平絽庸酣掘法∈幻緤�がオーケストラ�機聞盍愀髻法�右後方がオーケストラ�検焚写醂橘蕁法�それぞれのオーケストラは15〜17名で編成が小さい。後方のオーケストラ(高関健と下野竜也)は客席からは見えません。指揮者はヘッドホン?を頭につけて指揮しました。1曲の長さが45秒程度と指定されているためでしょう。いずれも指揮棒なしでした。
プログラムに掲載された柴辻純子の解説によると、「会場の外にひとつまたは複数のラジオが置かれ、音量は小さいが、曲の休止部分でははっきり聞こえるように調整し、ラジオのスイッチが入るところで音楽は始まり、スイッチが切られて終わる(時間は0'00''と30'15''と指定)」とのこと。ラジオは、当日(15:00頃)にNHKラジオ第一で放送されていた「シェイクスピアが教えてくれた〜ヴェニスの商人」が天井のスピーカーから流れました。このラジオはシェイクスピアの「ヴェニスの商人」をラジオドラマで再現する番組で、たまにBGMも流れました。この選局も作品が持つ偶然性を補完するものでしょう。演奏中もずっと流れっぱなしで、静かなときに聴こえました。
5人の指揮者は、「グルッペン」とは違って、他の指揮者を見ることはありません。各指揮者は中央を向いていますが、各オーケストラが何を演奏しているか意識することなく、それぞれの指揮者が勝手に演奏しているといった感じです。他のオーケストラと合わせる必要がないので、練習も別々にしたほうが効率的でしょう。基本的にゆっくりしたテンポで、あまり大きな音量は出ませんが、後方のオーケストラ�機聞盍愀髻砲肇�ーケストラ�検焚写醂橘蕁砲蓮�金管楽器と打楽器が強力。中央のオーケストラ�后聞�上淳一)はあまり聴こえません。オーケストラがたまに呼応することがありましたが、このタイミングはケージの綿密な計算なのか偶然なのか考えさせられました。偶然性とは、すごい世界です。作品は30曲が休みなく演奏され、今何曲目なのかは分かりません。オーケストラ�兇鮖愆�した大谷麻由美は、1曲終わるごとにオーケストラに対してうなづいていました。演奏が終わるとラジオも切られました。
演奏後は、冒頭に予告されていたように、座席の移動がありました。岩槻アナに促されて、聴衆は全員がいったん退場。合図で再び入場して休憩に入りました。2回目の「グルッペン」は、オーケストラ�機聞�上淳一)の近くの席で聴くことにしました。
休憩後のプログラム3曲目は、シュトックハウゼン作曲/3つのオーケストラのための「グルッペン」(2回目)。岩槻アナが「1回目から席を変えた人」を尋ねると、ほとんどの人から手が挙がりました。また、遠方から来た人に挙手してもらいましたが、関東から来ている人が多くいました(音楽評論家の満津岡信育氏も来場していました)。下野竜也が登場してプレトーク。「グルッペン」の演奏を発案したことについて聞かれると、「たくさんの方にお越しいただいて、言いだしっぺとしてはありがとうございます。「グルッペン」は初めて指揮したが、10年前のサントリーホールでの演奏は客席で聴いていた。いつかやりたいと思っていた」と話しました。作品については、「きちんと計算されている」「オーケストラによって拍子も違う」「「○秒くらい休みになるはず」とスコアに書いてある」「いろんな楽器と対話する」と魅力を説明しました。「広上先生と高関先生に対して、念を発しながら指揮した」と話しました。
下野から聴衆に対して「いつものホールの椅子と違って、今日はパイプ椅子でいい椅子ではない。設営の関係で申し訳ない」「1回目の演奏で私を横目で見ていた方もおられたので、提案ですが、次が最後のプログラムで、あとは片付けるだけなので、椅子をフレキシブルにしていただいてもいい。お隣とケンカしない程度に椅子を動かしていただいてもいい。みんなで「グルッペン」ですから」と話しました。私の周囲の人は、広上淳一がよく見えるように椅子を動かしました。下野竜也は細かな心配りができる方ですね。
チューニングは1回目と同じで、オーケストラ�供蔽罅泡�オーケストラ�機丙検泡�オーケストラ�掘扮Α砲僚隋�2回目の演奏はオーケストラ�気剖瓩鼎い燭里埜抗擺錣�よく聴こえました。木琴のリズムがかなり難解。また、ずっと演奏しているわけではなく、意外に休符も多い。広上淳一は拍を声に出して数えました。
カーテンコールでは、広上淳一、高関健、下野竜也の3人が一列に並んで礼。それぞれが指揮したオーケストラを順番に立たせましたが、オーケストラ単位で指揮者と団員に一体感が生まれていました。最後は、大谷麻由美と水戸博之も登壇して、5人で拍手を受けました。
複数の指揮者による共同作業が珍しいので、同じ曲で指揮者の比較ができて興味深かったです。客席から指揮者がよく見えるので、指揮のアクションの違いもよく分かりました。下野竜也の大きな振りの指揮が演奏しやすいかもしれません。広上淳一が現代曲を指揮するのも京響では珍しい。
高関健と下野竜也は2014年度から京響指揮者陣に加わりましたが、広上淳一がカバーしていない作品も取り上げてくれたおかげで、京響のレパートリーが広がりました。高関健は2015年度から東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団常任指揮者を務めていて、下野竜也は2017年度から広島交響楽団音楽総監督に就任予定で、忙しいところ京響を定期的に指揮してくれるのはありがたいことです。収録された映像を見るのも楽しみにしたいですが、マイクは各指揮者の上部に設置されていたので、会場で聴いた音響とはおそらく異なるでしょう。
(2016.12.31記)