京都市少年合唱団第69回定期演奏会


   
      
2018年8月19日(日)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

全員合唱 指揮:加藤完二 ハープ:緒方妃香
 ブリテン/「A Ceremony of Carols(キャロルの祭典)」より

新団員 指揮:原理津子 ピアノ:山口敦子
 信長貴富/やなせたかしの詩による二部合唱曲集「ひざっこぞうのうた」より

京桜 指揮:藤谷奈都 ピアノ:小林千恵
 沖縄県民謡(瑞慶覧尚子編曲)/てぃんさぐぬ花
 鈴木輝昭/曙
 松下耕/一詩人の最後の歌

みやこ光 指揮:大谷圭介. ピアノ:今西陽子
 高嶋みどり/混声合唱組曲「風に鳴る笛」より
 荻久保和明/混声合唱組曲「季節へのまなざし」より

都紅葉 指揮:津幡泰子 ピアノ:西村彩
 松下耕/Everyone Sang
 松下耕/今、ここに
 松下耕/女声合唱曲集「そのひとがうたうとき」より

全員合唱 指揮:加藤完二 ピアノ:小林千恵
 ムソルグスキー(甲田潤編曲)/少年少女合唱組曲「展覧会の絵」より  

座席:全席自由


京都市少年合唱団が「展覧会の絵」の合唱版を歌うというので行ってきました。京都市少年合唱団を聴くのは今回が初めてでした。主催は京都市教育委員会。

プログラムによると、京都市少年合唱団は1958年(昭和33年)に創設され、京都市内在住の小学4年生から中学3年生までの221名が所属しています。全国屈指の規模を誇るとのこと。「少年合唱団」と名付けられていますが、男声だけでなく女声もいます。むしろ女声のほうが圧倒的に多く、団員名簿によると、小学4年生21名、小学5年生40名、小学6年生33名、中学1年生42名、中学2年生41名、中学3年生44名です。2010年度(平成22年度)から、卒団生の加藤完二が音楽監督に就任しました。京都市立京都堀川音楽高校で毎週土曜日に練習しているとのこと。また、グループ編成を学年による「横割り」から「縦割り」に変更し、「京桜(みやこざくら)」、「都紅葉(みやこもみじ)」、「みやこ光」の各グループを創設したとのこと。

当日先着順で入場無料でした。13:15開場でしたが、12:50頃に着くと、スロープに行列ができていました。スロープの下まで行ったので、スタッフが円柱が立っているエントランスホールの周囲に並ばせました。時間通りに開場しました。

さっそく13:30から、新団員によるウェルカムロビーコンサートが大ホールホワイエで行なわれました。新入団員が階段に4列で並び、原理津子の指揮と、キーボードの伴奏で、諸井三郎作曲/京都市歌を合唱。1951年(昭和26年)に制定されたようで、39年間京都市民ですが、初めて聴きました。聴く機会もめったにないでしょう。1曲だけなので、5分ほどで終わりました。

プログラムは二部構成で、グループ別に登場します。合唱団は全曲で譜面を持たないでの合唱(つまり暗譜)でした。第1部の最初は「全員合唱」。全員と言っても新入団員は含まれていません。ステージは扇形のひな壇でセットされ、中央に指揮台が置かれました。客席はほぼ満席でした。ジェイコムのカメラが撮影していました。

曲目は、ブリテン作曲/「A Ceremony of Carols(キャロルの祭典)」より。児童合唱のために書かれた名曲とのことで、伴奏がハープなのが珍しい。ハープは指揮台の左に置かれ、マイクがついて、音量を増幅していました。合唱団がステージに5列で並びました。
11曲からなりますが、そのうち8曲が演奏されました。歌詞は古い英語やラテン語で書かれているとのことですが、原語での歌唱でした。「1.Procession(入堂)」は、グレゴリオ聖歌で無伴奏による女声のみの合唱。男子の団員がキャンドルサービスのように灯りを持って、通路を通ってステージへ歩きました。「2.Wolcum Yole!(うれしい喜びの日よ!)」から全員合唱となりました。すごい大人数ですが、がなることなくよく揃っています。「4b.Balulalow(子守歌)」は、本来はソプラノ独唱で歌うパートは、最前列のうち6名が前に出てきて、ソリ的に合唱。「9.Spring Carol(春のキャロル)」もソプラノとメゾソプラノの二重唱ですが、同様に最前列の10名が前に出てきて歌いました。「10.Deo Gracias(神に感謝します)」はオルフ「カルミナ・ブラーナ」のように原始的なリズムで「Deo Gracias!」の歌詞が繰り返されました。迫力はありますが、雑な印象を与えません。加藤完二は指揮棒なしで指揮しました。

続いて、「新団員」による合唱。39名が3列で並びました。入団して4ヶ月で、低学年のためか、身長が低い。曲目は、信長貴富作曲/やなせたかしの詩による二部合唱曲集「ひざっこぞうのうた」より。分かりやすいメロディーと歌詞で、歌詞はしっかり聴き取れましたが、音程やアインザッツはやや不安定。「愛するネッシー」の間奏では、団員が身体を使って波の動きを表現。「ありがとう野菜」は、「キュウリトマトホーレンソウ」の歌詞が繰り返されます。両手を頭の上で動かす動きも見せました。

第1部の最後は、「京桜(みやこざくら)」による合唱。女声のみのグループで、出演したグループの中でもっとも印象に残りました。「ひとの生死」をテーマに選曲したとのこと。1曲目は、沖縄県民謡(瑞慶覧尚子編曲)/てぃんさぐぬ花。遅いテンポで無伴奏での合唱。2曲目は、鈴木輝昭作曲/曙。本格的な合唱曲で、「鳥はなぜ飛びますか」「魚はなぜ泳ぎますか」「人はなぜ恋をしますか」など、宗左近による歌詞も哲学的。中盤からピアノが勢いよく入ってきます。3曲目は、 松下耕作曲/一詩人の最後の歌。ラストへ向かっての高揚感がすごい。最後の高音も決まりました。

20分間の休憩中に、京都市少年合唱団OB会合唱団によるロビーコンサートがホワイエで行なわれました。昨年度末で卒団生は2311名を数えるようで、指揮者の佐渡裕も卒団生とのこと。京都市少年合唱団OB会合唱団は、京都市少年合唱団の修了生で構成され、毎月2回練習しているとのこと。約50名が出演されましたが、かなり年輩の方が多いです。キーボード伴奏で2曲を披露。成田為三作曲(林光編曲)/浜辺の歌(指揮:真辺智貴)とBEGIN作曲(横山潤子編曲)/涙そうそう(指揮:村上英明)で、伸びやかな歌声を聴かせました。村上英明の指揮が表情豊か。

第2部は「みやこ光」による合唱からスタート。男声のみで構成され、40名が3列で並びました。指揮は大谷圭介.。「.」は誤植ではなく、本田美奈子.の「.」と同じ意味でしょうか。1曲目は、高嶋みどり作曲/混声合唱組曲「風に鳴る笛」より。「未来」は高いパートは女声のような声。「地球があんまり荒れる日には」は照明が消える演出。2曲目は、荻久保和明作曲/混声合唱組曲「季節へのまなざし」より「ゆめみる」。もともと混声合唱曲ということもあって、高音の音程が不安定でしたが、女声のような響きが聴けました。

続いて、「都紅葉(みやこもみじ)」による合唱。女声のみで人数が多い。「仲間と歌える喜びと平和への祈り」をテーマに松下耕の作品を選曲したとのこと。1曲目は、松下耕作曲/Everyone Sang。英語の歌詞です。さわやかな歌声でした。2曲目の松下耕作曲/今、ここに。無伴奏合唱で、「今 ここに 私は居て 今 ここで 私は歌う」などシンプルな歌詞。 3曲目は、松下耕作曲/女声合唱曲集「そのひとがうたうとき」より。谷川俊太郎の作詞で、「信じる」は「信じることに理由はいらない」などすがすがしい歌詞。指揮の津幡泰子は譜面台なしで指揮しました。

最後は、「全員合唱」。新団員も含めて5列で並びました。すごい大人数です。曲目は、ムソルグスキー作曲(甲田潤編曲)/少年少女合唱組曲「展覧会の絵」より。7曲の抜粋でした。過去の定期演奏会でも数曲ずつ取り上げられています。日野秀夫作詞の歌詞は平易で分かりやすい。タイトルに関係のある歌詞がつけられています。歌詞の都合などで、たまに原曲のメロディーが変更されています。ピアノが演奏するパートは、ムソルグスキーの原曲とほぼ同じでした。
「プロムナード」は、「夢はふくらみ 心はずむ展覧会」など展覧会の絵を観る期待感が歌われます。「テュイルリーの庭で」は、この曲を歌わない多くの団員がその場に座りました。「サミュエル・ゴールデンベルグとシュミール」の前半は、全員でユニゾンで歌います。61小節からラヴェルの編曲でトランペットで演奏される細かな音符は、女声が高音で歌いました。最後は「神に感謝」の歌詞で締めくくります。「リモージュの市場」は、「わいわい がやがや」の歌詞で、市場の喧騒が歌われます。「カタコンブ(ローマ風の墓場)〜死者とともに死者の言葉をもって」を経て、「鶏の足の上の小屋(バーバヤーガ)」は「不気味な妖怪」「恐ろしい妖怪」と歌われます。「キエフの大きな門」は堂々たる合唱。「平和の鐘を打つ カラン コロン」の歌詞が印象に残りました。

カーテンコールでは、指揮者とピアニストが全員登場しました。拍手に応えて、全員の合唱でアンコール。葉加瀬太郎作曲(増田真結編曲)/組曲「もうひとつの京都」から第1曲「茶かほる〜「お茶の京都」のテーマ〜」。京都出身のヴァイオリニスト葉加瀬太郎が、京都府のキャンペーン「もうひとつの京都、行こう。」のために作曲しました。短い曲ですが、さわやかな名曲です。

終演後は、大ホール出口に加藤も出てきて、お見送り。白髪なので強面かと思いましたが、近くで見るとメガネが個性的で、きさくな性格のようです。新団員が整列して「展覧会の絵」の「プロムナード」を歌いました。

京都市少年合唱団は多くの団員を擁していて、レベル的にも高い合唱でした。ただ、男女構成では男声団員が少ないのが気になります。合唱団のステージということで、ソロはありませんでした。

(2018.9.10記)


新団員によるウェルカムロビーコンサート 京都市少年合唱団OB会合唱団によるロビーコンサート



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