Kyoto Music Caravan 2023「ありがとう沓掛キャンパスコンサート」


2023年7月1日(土)14:00開演
京都市立芸術大学沓掛キャンパス講堂

黒川侑(ヴァイオリン)、京都室内合奏団
髙木竜馬(ピアノ)

ブラームス(金澤恭典編)/ハンガリー舞曲第5番、第6番
ブラームス(D.ワルター編)/ハイドンの主題による変奏曲
クララ・シューマン/3つのロマンス 作品22
ブラームス/ピアノ五重奏曲

座席:全席自由


 
京都市立芸術大学新キャンパス移転と文化庁京都移転の記念事業として、「Kyoto Music Caravan 2023」が開催されます。主催は京都コンサートホール(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)、京都市、京都市立芸術大学、京都市交通局の四者で、2023年4月から2024年3月まで京都市内の寺社や観光地などで12公演が開催されます。演奏者は、京都市立芸術大学の卒業生や在学生などです。
「Kyoto Music Caravan 2023」は、すでに「フルートオーケストラコンサート」(2023.4.29 仁和寺金堂&宸殿)と「チェロ四重奏コンサート」(2023.5.28 月桂冠大倉記念館中庭)の2公演が終わり、本公演は3公演目です。本公演は、「ありがとう沓掛キャンパスコンサート」のタイトル通り、今年10月に新キャンパスに移転する京都市立芸術大学の現キャンパスの沓掛キャンパスの講堂で開催されました。
 
京都市立芸術大学は、昭和55年(1981年)から43年間、西京区の沓掛にありますが、今年10月1日に京都駅東エリア(崇仁地域)に移転します。京都市立芸術大学の歴史をたどると、何度もキャンパス移転を繰り返していて、掲示板に貼られていたポスターには、「1880御苑→1885河原町→1890知恩院→1893御苑→1907吉田→1926今熊野→1952出雲路→1956岡崎→1980沓掛」とキャンパス移転の変遷が書かれていました。美術学部と音楽学部の起源は異なりますが、音楽学部は1952年に全国初の公立音楽大学として設立された京都市立音楽短期大学を前身としています。
 
京都市立芸術大学の講堂で聴くのは、京都市立芸術大学第151回定期演奏会 大学院オペラ公演「カルメン」京都市立芸術大学 芸大祭2017「弾丸はチョコレイト」に続いて3回目です。余談ですが、キャンパスに行くのは2019年芸大祭「みうらじゅんのスライドショー」(2019.11.2)に続いて4回目でした。
本公演は入場無料でしたが、定員は当日先着順で300名。当日12:30から整理券が配布されました。自宅の最寄りのバス停からキャンパスまで約40分。市バス73系統は国道9号線をどんどん上っていきます。ひさびさに行きましたが遠いですね。大学最寄りの「国道沓掛口」のバス停から坂道を歩いて10分。無事に整理券をゲットできました。なお、卒業生は事前に申し込んでいるようでした。あいにくの雨模様でしたが、開演30分前に整理券の配布が終了しました。後述の門川市長の挨拶によると、朝10時から並んだ人がいるとのこと。
「←京都芸大」の看板 正門 正門 各棟配置図 中央棟 講堂 講堂
 
この日は京都市立芸術大学同窓会主催のイベント「ありがとう沓掛キャンパス」も開催されていて、13:00から「開会式」が大学会館ホールで行われ、赤松玉女学長や京都市門川大作市長が登壇しました。食堂に設置されたモニターで映像を中継されていました。なお、食堂では、唐揚げカレー(380円)を食べました。学食は安いですねえ。
大学会館 円形ステージ 開会式(食堂のモニター) 唐揚げカレー

開演前に、京都コンサートホールプロデューサーの高野裕子(京都市立芸術大学音楽研究科修了)が趣旨説明。続いて、門川大作京都市長が着物で挨拶。「京都市立芸術大学美術学部は日本初の芸大」と紹介し、文化庁が移転してきたことにも触れながら、「10月1日にキャンパスを全面移転するが、跡地の活用や洛西ニュータウンの活性化に取り組む」と話しました。門川市長は終演まで聴いておられました。72歳ですが、タフです。

続いて、副学長の大嶋義実(フルート)が挨拶。門川市長も大嶋も頭に赤い帽子をかぶっていましたが、「帽子はイベントのシンボル」と説明。大嶋は「沓掛キャンパスの最初の卒業生で、新キャンパスで最初に(定年で)退職する教員」と自己紹介しました。また、卒業生がいることを意識してか、「会議でさまざまな決定をしてきたが、卒業生や退職した教職員などもういない人や、これから来る方も含めて共同体だと思っている。「ありがとう」と同時に「これからも見守ってほしい」という意味もある」と話しました。

本公演の演奏は、京都室内合奏団。2020年に設立された指揮者を置かないアンサンブルで、京都フィルハーモニー室内合奏団とは別の団体です。これまでに、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」、マーラー「交響曲第4番」、ヴィヴァルディ「四季」、ラヴェル「マ・メール・ロワ」、ストラヴィンスキー「火の鳥」「プルチネルラ組曲」などを演奏しました。京都室内合奏団のFacebookによると、「今回は京芸にゆかりのある皆さん(在学中の4回生から卒業生、そして講師の先生ら)による特別編成でした」とのこと。つまり、いつものメンバーと違うようで、本公演のメンバーは、田中志和(ヴァイオリン)、山本由美子(ヴィオラ・元京都市立芸術大学非常勤講師)、佐藤響(チェロ)、山田俊介(コントラバス)、鎌田邦裕(フルート・京都コンサートホール第2期登録アーティスト)、上品綾香(オーボエ)、曽根高潤之助(クラリネット)、佐々木威裕(ファゴット)、山本愛沙子(ホルン)、谷口かんな(打楽器)。京都室内合奏団の代表は、チェロの佐藤響が務めているようです。また、特別ゲスト・コンサートマスターは黒川侑(京都市立芸術大学音楽学部非常勤講師)が務めました。黒川は10年以上前に京都市交響楽団第527回定期演奏会で聴きました。

左から、第1ヴァイオリン(黒川)、第2ヴァイオリン(田中)、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ホルン、ファゴット、クラリネット、オーボエ、フルートで、後ろに打楽器で、総勢11名での演奏。なかなか本格的なプログラムでした。

プログラム1曲目は、ブラームス作曲(金澤恭典編)/ハンガリー舞曲第5番、第6番。金澤恭典(やすのり)は京都フィルハーモニー室内合奏団の元コントラバス奏者で、現在は同団の企画・編曲アドヴァイザーを務めています。第5番は左側の弦楽器がメロディーを担当。右側の管楽器はリズム系で、音量も弦楽器>管楽器。打楽器はシンバルとトライアングル。テンポの落差はあまりありません。第6番は速めのテンポですが、ちょっと乱れました。指揮者なしでは少し難しいでしょうか。打楽器は両手でシンバルとトライアングルが同時で忙しい。

プログラム2曲目は、ブラームス作曲(D.ワルター編)/ハイドンの主題による変奏曲。11人でも十分聴きごたえがあるいい編曲でした。木管楽器がいい響き。打楽器はティンパニのみを使用。

休憩後のプログラム3曲目は、クララ・シューマン作曲/3つのロマンス 作品22。クララ・シューマンの作品がまず珍しい。クララ・シューマンは言うまでもなくロベルト・シューマンの妻ですが、同名の作品が複数あるようです。ヴァイオリンとピアノの二重奏で、ヴァイオリンの黒川は立って演奏。髙木竜馬は今年度から京都市立芸術大学ピアノ専攻の専任講師を務めています。第26回京都の秋音楽祭開会記念コンサートで聴く予定でしたが、降板したので初めて聴きます。
3つの楽章から成りますが、ヴァイオリンもピアノもよく響いて、黒川のヴァイオリンはゆったり伸びやかに歌います。髙木のピアノはソフトタッチで打鍵が強くない。風貌のイメージ以上に表現が繊細でした。
 
プログラム4曲目は、ブラームス作曲/ピアノ五重奏曲。ピアノと、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロが座って演奏。響きが緊密なアンサンブルで、強奏も十分な音量です。第3楽章は緊迫感があり、ピアノ四重奏曲第1番のようにオーケストラに編曲してほしくなります。ピアノの髙木も頭を前後に揺らしてノった演奏でしたが、途中から謎の電子音(携帯電話のアラーム音?)が客席から長い間鳴り響きました。おそらく演奏者も気がついたと思われるほどで、コンディションが悪くて残念。16:00に終演しました。
 
京都市立芸術大学のホームページによると、この日は1,200名以上がキャンパスに来場したようですが、雨だったこともあり、少し盛り上がりには欠ける雰囲気でした。沓掛キャンパスの跡地については、京都市が「京都市立芸術大学移転後跡地活用に係る優先交渉事業者選定委員会」を設置して検討するようです。
なお、「Kyoto Music Caravan 2023」の最後を飾る「スペシャル・コンサート」(2024.3.30)は、新キャンパスの堀場新吉ホールで開催されます。座席数が800席規模の講堂兼音楽ホールです。今から楽しみです。
 

南門 東門からアトリエ棟を臨む

 

(2023.7.13記)

 

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