Kyoto Music Caravan 2023「サクソフォーン四重奏コンサート」


  2023年8月12日(土)18:00開演
壬生寺本堂前

福田彩乃(ソプラノ・サクソフォーン、アルト・サクソフォーン)、松本宗大(アルト・サクソフォーン)、赤瀬有芽(テナー・サクソフォーン)、土屋芽生(バリトン・サクソフォーン)

クライスラー/美しきロスマリン
サンジュレー/サクソフォーン四重奏曲第1番より第1楽章
佐藤直紀/NHK大河ドラマ「青天を衝け」メインテーマ
野呂望/サクソフォーン吹きたちの小さな休日
いずみたく/見上げてごらん夜の星を
石川亮太編/日本の四季によるミニチュアシンフォニー

座席:自由


 
京都市立芸術大学沓掛キャンパスで開催された「ありがとう沓掛キャンパスコンサート」に続いて、Kyoto Music Caravan 2023「サクソフォーン四重奏コンサート」が壬生寺で開催されました。
 
 「Kyoto Music Caravan 2023」は、2023年4月から2024年3月まで京都市内の寺社や観光地などで12公演が開催されますが、本公演は5公演目です。中京区では壬生寺が唯一の開催です。「Kyoto Music Caravan 2023」記者発表(2023.3.29)での壬生寺貫主の松浦俊昭の説明によると、壬生寺は991年の創建で1000年以上の歴史があり、平安時代から続く伝統行事の「盂蘭盆万灯供養会(うらぼんまんとうくようえ)」(8月9日~16日)に合わせての開催となりました。先月にはクラウドファンディングで土方歳三の胸像を設置しました。壬生寺は私の自宅から徒歩圏内で、ここでクラシック音楽が聴けるとは思いませんでした。
 
演奏は、京都市立芸術大学のサクソフォン専攻の4人による四重奏で、京都市立芸術大学サクソフォン専攻生によるアンサンブルコンサート「Saxtation」(第2回第4回第5回)でよく聴いています。福田彩乃(ふくたあやの)は、今年3月に京都市立芸術大学大学院音楽研究科の博士(後期)課程器楽研究領域を修了し、博士(音楽)を取得しました。NOK Saxophone QuartetやSAX PARTY!でも活躍しています。また、京都コンサートホール第2期登録アーティスト(2022年度~2023年度)を務めていて、京都市内の小学校を訪問してのアウトリーチ活動を行っています。京都コンサートホールのオフィシャルブログに掲載されているインタビューによると、福田は愛知県立芸術大学を受験したが不合格で、一浪して新設の京都市立芸術大学サクソフォン専攻の1期生として入学したとのこと。令和3年度に京都市芸術新人賞を受賞するなど大活躍中ですが、人生とは不思議なものですね。アルト・サクソフォンの松本宗大(そうた) のプロフィールに「福田彩乃に師事」と書かれていてびっくり。テナー・サクソフォンの赤瀬有芽とバリトン・サクソフォンの土屋芽生は4回生です。
 
入場無料で、申し込みも不要でした。本堂の正面に1000個の灯籠が設置されました。期間中は日没から21時まで灯籠に火が灯されます。舞台は本堂の前に設置されて、400人以上は集まりました。予想以上に多く、舞台前に用意されたイスでは全然足らず、立って聴きました。開演前に、京都コンサートホールプロデューサーの高野裕子からアナウンス、動画撮影は可能だが、フラッシュは不可とのこと。
 
本堂の中から4人が登場。本公演は盂蘭盆万灯供養会の奉納演奏としての開催なので、まず本堂に礼をしてから、お客さんに礼。左から、ソプラノ・サクソフォン(福田彩乃)、アルト・サクソフォン(松本宗大)、バリトン・サクソフォン(土屋芽生)、テナー・サクソフォン(赤瀬有芽)の順に、座って演奏。
 
プログラム1曲目は、クライスラー作曲/美しきロスマリン。マイクはありませんが、サックス四重奏は予想以上によく響きます。原曲はヴァイオリンとピアノですが、優雅な3拍子です。
 
福田彩乃がMC。落ち着いた声で、すごく話慣れていますが、これは上述したアウトリーチ活動の成果でしょう。4人のメンバー紹介。プログラム2曲目は、サンジュレー作曲/サクソフォーン四重奏曲第1番より第1楽章。福田によると普段学んでいるクラシカルサクソフォンの作品を選曲したとのことで、サクソフォン四重奏曲としては一番最初に作曲された作品とのこと。避難訓練コンサートで、The Rev Saxophone Quartetの演奏で聴きました。弦楽四重奏曲のような素朴さがあって、壬生寺の本堂を背景にしての演奏は違和感なく聴けました。

プログラム3曲目は、佐藤直紀作曲/NHK大河ドラマ「青天を衝け」メインテーマ。メンバーが順番に曲目解説を担当。2021年の大河ドラマで、渋沢栄一が主人公でしたが、壬生寺と縁のある新選組も登場したので選曲されたようです。サクソフォン四重奏のアレンジがあるとは知りませんでした。中間部のトランペットソロは、ソプラノ・サクソフォンが輝かしく演奏。

プログラム4曲目は、野呂望作曲/サクソフォーン吹きたちの小さな休日。野呂望が2013年に昭和音楽大学2年時に作曲して、有名なアンダーソンの「トランペット吹きの休日」とは関係ありません。サックスならではのスウィングが気持ちいい。初めて聴きましたがいい小品です。ソプラノがのびやかに歌うように吹きます。

プログラム5曲目は、いずみたく作曲/見上げてごらん夜の星を。残念ながらまだ空が明るくて、星はまったく見えませんでした。福田はアルト・サクソフォンを演奏。
 
福田が「プログラム上は最後の1曲」と何度も強調して、プログラム6曲目は、石川亮太編/日本の四季によるミニチュアシンフォニー。福田が分かりやすく曲目を解説。第1楽章「春 さくらさくらコラールとフーガ」、第2楽章「夏 我は海の子スケルツォ」、第3楽章「秋 赤とんぼ変奏曲」、第4楽章「冬 たき火フィナーレ」の4楽章で、日本の民謡などがアレンジされています。10分ほどの作品。福田の解説にはありませんでしたが、4人が師事する京都市立芸術大学非常勤講師の國末貞仁が所属するサクソフォーン四重奏団「Quatuor B(クワチュール・ベー)」が委嘱した作品です。福田は「今日は風が吹いているので、楽譜を固定する時間が必要で、温かく見守っていただきたい」などとコメントしましたが、本番慣れしていますね。福田はソプラノ・サクソフォンを演奏。聴いたことがあるメロディーばかりで楽しめました。
 
演奏後は、福田が拍手をあおるようなパフォーマンス。完全に関西人のノリです。アンコールは、タケカワユキヒデ作曲/銀河鉄道999。ジャズ風のアレンジでした。福田はアルト・サクソフォンを演奏しましたが、福田と松本の音色がよく合っていました。18:55に終演しました。
 
帰りは壬生寺道のバス停に人が集まっていたので、このコンサートのために来られた方も多かったようです。野外でサクソフォン四重奏を聴く機会はほとんどありませんが、よく響いて、選曲もすばらしかったです。来年以降も開催していただけたら嬉しいです。
 

壬生寺表門 演奏中 演奏中 千体仏塔(左)と本堂(右)

 

(2023.8.16記)

 

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