京都市交響楽団特別演奏会「ニューイヤーコンサート」


  2023年1月8日(日)14:30開演
京都コンサートホール大ホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団

佐藤直紀/NHK大河ドラマ「青天を衝け」メインテーマ
ヨハン・シュトラウスII世/喜歌劇「ジプシー男爵」から入場行進曲
ジョン・グラム/NHK大河ドラマ「麒麟がくる」メインテーマ
ヨハン・シュトラウスII世/ワルツ「南国のばら」
服部隆之/NHK大河ドラマ「真田丸」メインテーマ
エバン・コール/NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」メインテーマ
ヨハン・シュトラウスII世/ポルカ「ハンガリー万歳」
吉俣良/NHK大河ドラマ「篤姫」メインテーマ
ベートーヴェン/交響曲第8番

座席:S席 3階C1列24番


 
2023年の聴き初めは、京都市交響楽団ニューイヤーコンサートです。今年の指揮は、広上淳一。昨年3月まで14年間にわたって務めた京都市交響楽団常任指揮者を退任した京都市交響楽団第665回定期演奏会の後に広上が京響を指揮したのは、京都大学創立125周年記念音楽会(2022.6.19 ロームシアター京都メインホール)、京都市交響楽団大阪特別公演(2022.10.1 ザ・シンフォニーホール)、京都市交響楽団第12回定期演奏会(2022.10.2 愛知県芸術劇場コンサートホール)だけだったので、京都コンサートホールで京響を指揮するのは退任後初めてです。広上淳一のプロフィールに「現在は日本フィルハーモニー交響楽団 フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)、札幌交響楽団友情指揮者、京都市交響楽団 広上淳一、京都コンサートホール館長。」とあるのですが、広上淳一が「京都市交響楽団 広上淳一」を務めていることになっているので、誤植なのではないかと思うほどです。
なお、広上は昨年の大みそかに、「第20回ベートーヴェンは凄い! 全交響曲連続演奏会2022」(岩城宏之メモリアル・オーケストラ)を初めて指揮しました。11年間務めた小林研一郎の後任です。広上は64歳ですが、精力的に活躍しています。また、第41回(令和4年度)京都府文化賞功労賞を受賞することが発表されました(佐々木蔵之介や石橋義正などと同時受賞)。
 
本公演は、NHK大河ドラマのテーマ曲とヨハン・シュトラウスII世の作品を交互に演奏するような変わったプログラムです。チラシでは、「ニューイヤーにぴったりのワルツやポルカに、広上淳一選曲による大河ドラマメインテーマ集を交え、ミルフィーユに. 仕立てた前半」と紹介されました。なお、当初の発表では、林光/NHK大河ドラマ「国盗り物語」メインテーマが入っていましたが、エバン・コール/NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」メインテーマに変更になりました。広上淳一はこれまでも京都市交響楽団スプリング・コンサート(2010年)やアンコール(京都市交響楽団第527回定期演奏会京都市交響楽団スプリング・コンサート(2011年)、京都市交響楽団第657回定期演奏会)などで、大河ドラマのテーマ曲を演奏しました。本公演で取り上げられたのは、最近放送された作品ですが、私は最近の大河ドラマは観ていません…。
 
チケットは、12月22日に早くも完売しました。演奏会前日に、京都市交響楽団のTwitterで、ロビーで京響グッズの福袋を販売するとのアナウンスがありました。福袋は1000円と2500円の2種類が発売されました。「広上淳一や石田泰尚のサイン入りアイテムが当たるかも」ということだったので、迷わず1000円の福袋を購入しました。30袋ほど用意されたようですが、開演前に完売しました。福袋の中身は後述します。
 
ステージ前方にはニューイヤーコンサートにふさわしく花が飾られていましたが、ウィーンフィルほど多くはありません。半円形の雛壇を客席に近づけるフォーメーション(広上シフトと勝手に呼んでいる)ではありませんでした。特別演奏会なので、プレトークはもともとありません。コンサートマスターは、石田泰尚(特別客演コンサートマスター)で、コンサートマスターの泉原隆志は出演しませんでした。女性メンバーが色とりどりのドレス姿や着物で演奏します。広上はメガネをかけて指揮。
 
プログラム1曲目は、佐藤直紀作曲/NHK大河ドラマ「青天を衝け」メインテーマ。2021年に放送されたNHK大河ドラマ第60作で、主人公は渋沢栄一(吉沢亮)でした。京都市交響楽団第657回定期演奏会のアンコールでも演奏され、広上は「佐藤直紀は私の教え子」と話していました。肩の力が抜けています。
 
広上は退場せずに、そのままプログラム2曲目は、ヨハン・シュトラウスII世作曲/喜歌劇「ジプシー男爵」から入場行進曲。軽やかな響きはウィーンフィルを意識したものでしょうか。
 
プログラム3曲目は、ジョン・グラム作曲/NHK大河ドラマ「麒麟がくる」メインテーマ。2020年に放送されたNHK大河ドラマ第59作で、主人公は明智光秀(長谷川博己)。放送でも広上がNHK交響楽団を指揮しました。ジョン・グラムはアメリカの作曲家です。打楽器に8人を要します。中間部の箏はシンセサイザーで演奏して、ステージ上のスピーカーから聴かせました(シンセサイザーは客演奏者の白石准)。
 
プログラム4曲目は、ヨハン・シュトラウスII世作曲/ワルツ「南国のばら」。ニューイヤーコンサートにふさわしいウィンナワルツ。弦楽器と木管楽器がブレンドされてオーケストラの一体感がすばらしい。まろやかさが京響とは思えないほどで、広上しか出せない音色です。石田と広上が退場。
 
指揮台の横に石田の譜面台が置かれて、プログラム5曲目は、服部隆之作曲/NHK大河ドラマ「真田丸」メインテーマ。2016年に放送されたNHK大河ドラマ第55作で、主人公は真田信繁(堺雅人)。ヴァイオリン独奏は石田泰尚。石田は立って演奏。石田のソロは、細かな音符が多くて難しい。打楽器が特殊で、尺八(ヒューというストローみたいな音がした)や、 ムチが活躍。演奏後は石田がコンサートマスターの席にすぐに座ってしまい、指揮台の広上から立つように何度も促されてようやく立ちました。
 
プログラム6曲目は、エバン・コール作曲/NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」メインテーマ。昨年(2022年)に放送されたNHK大河ドラマ第61作で、主人公は北条義時(小栗旬)。エバン・コールは、アメリカの作曲家ですが、2012年から日本に在住しているようです。尺八や合唱をシンセサイザーで演奏。勇壮です。
 
プログラム7曲目は、ヨハン・シュトラウスII世作曲/ポルカ「ハンガリー万歳」。速いテンポですが、すごくうまい。
 
プログラム8曲目は、吉俣良作曲/NHK大河ドラマ「篤姫」。2008年に放送されたNHK大河ドラマ第47作で、主人公は天璋院(宮﨑あおい)。この曲は広上のお気に入りなのか、京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」(2008年)京都市交響楽団スプリング・コンサート(2010年)に続いて、聴くのは3回目です。石田がコンマス席に座ると、いつもより京響の演奏が繊細になると実感しました。
 
休憩後のプログラム9曲目は、ベートーヴェン作曲/交響曲第8番。チラシでは「広上がベートーヴェンで最も愛する」と紹介されましたが、特に新年と関係ない作品です。ベートーヴェンの交響曲でもあまり演奏されない作品で、ちゃんと聴くのは初めてかもしれません。管楽器と弦楽器は減りましたが、弦楽器は同じメンバー。3拍子の第1楽章も重くならない。第2楽章はやや速め。第3楽章も親しみやすいメロディーにやわらかい雰囲気が新年にふさわしい。第4楽章も繊細。
 
カーテンコールでは広上と石田が何度も握手。広上がマイクで挨拶。広上が「明けまして」と言うと、団員が「おめでとうございます」と挨拶。広上が「大河いいでしょ」と話し、「今年の大河ドラマの「どうする家康」は今晩の初回放送で解禁される。今日は演奏できなかったので、また今度」と話しました。ちなみに音楽は稲本響が担当しています。また、「4月に常任指揮者に就任する沖澤のどかは、北条泰時のような希望の星。日本が誇るオーケストラである京響の沖澤時代を支えていただきたい」とちゃんと後任の沖澤のどかを紹介しました。
アンコールを先に紹介しまい、「また段取りを間違えたみたい」と話しましたが、オーケストラ団員がステージに登場。「3月の定期演奏会(第665回定期演奏会)でお話しした肖像画を、京都市立芸術大学の城愛音(じょうあいね)先生に描いていただいた」とのこと。城も着物姿で1階席で聴いていました。城は2019年に京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画を修了しましたが、今年度から京都市立芸術大学で非常勤講師を務めています。いよいよ肖像画のお披露目。白い幕をオープンすると、ゴッホのようなオレンジ色の西洋画の色彩で描かれた広上の絵でした。指揮棒は持っていますが、指揮をしている姿ではありませんでした。広上は「せっかくだからホールに飾ってください。ここの館長がよければ。館長は誰だっけ」ととぼけました。
 
アンコールは、山本直純作曲/NHK大河ドラマ「武田信玄」メインテーマ。広上は山本を「音楽史に残る大天才。日本のレナード・バーンスタイン」と紹介。2002年に亡くなりましたが、昨年40回を迎えた「一万人の第九」を創始した山本の功績が再評価されているように感じます。1998年に放送されたNHK大河ドラマ第26作で、中井貴一が演じました。まだビデオがない頃に毎週観ていた小学生の頃を思い出しました。冒頭がトランペットソロから始まって、少し放送とは違いましたが、山本がNHK交響楽団を指揮した荒々しい自作自演と違って、京響らしくスマートで上品。中間部だけのために、わざわざチェレスタを置いていました。合唱はシンセサイザーでかなりの音量。最後のフェルマータを長めに伸ばしました。自作自演以外で「武田信玄」が聴けるとは感無量で、胸が熱くなりました。もう一度聴きたいです。
 
終演後に、肖像画(作品名は「広上淳一氏の肖像(2022)」)はロビーに展示されて、黒山の人だかり。ホールのどこに飾られるのか気になりますね。城はTwitterで「広上淳一さんの生演奏、音色、動き、声、テレビ出演映像、色んな写真とみつめあって…まずは、どんな人物像なのかを掴む《取材》が、なにより一番の大切にした部分でした」と綴っています。

さて、上述した福袋の中身は、5種類でした。まず、京響オリジナルクリアファイル(100円)。京都コンサートホールのポディウム席から撮影した集合写真がプリントされていますが、コンサートマスターが渡邊穣なので、2018年3月以前の撮影ですね。広上も指揮台にいます。2つ目は、「京響×SOU・SOU」コラボマスク(550円)。3つ目は京響オリジナル付箋(400円)。4つ目は、黒のトートバッグですが、京都市交響楽団創立60周年記念特別演奏会の後に開催された「京響友の会交流会」で配布されたようで、どうやら非売品のようです。「City of Kyoto Symphony Orchestra」ではなく、2020年3月以前の英語名称の「Kyoto Symphony Orchestra」と印刷されています。そして、5つ目は、石田泰尚のサインが書かれた今年の年賀状で、「組長」のハンコが押されていました。下の写真ですが、これは貴重かもしれません。ラッキー。なお、プログラムに石田泰尚が組長を務める「石田組ツアー2023」のチラシが封入されていました。5月4日についに京都コンサートホール大ホールで開催されます。

京響グッズの福袋 広上淳一氏の肖像 城愛音のサイン 城愛音のプロフィール 城愛音と肖像画 石田泰尚サイン入り年賀状

(2023.1.22記)

 

京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」 ロームシアター京都×京都市交響楽団 シアターオーケストラ・コンサート「Oblivion(オブリビオン)―失われた時間と音楽、そして新たな始まりのために」