京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」


   
      
2008年12月26日(金)19:00開演
京都コンサートホール大ホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団
釜洞祐子(ソプラノ)、菅有実子(メゾ・ソプラノ)、市原多朗(テノール)、河野克典(バリトン)
京響市民合唱団

モーツァルト/アヴェ・ヴェルム・コルプス
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付」

座席:S席 3階 C−2列27番


年末恒例の第九演奏会ですが、今年は京都市交響楽団の1公演のみです。指揮は今年4月に常任指揮者に就任した広上淳一。広上淳一指揮の「第九」は、大阪フィルハーモニー交響楽団第9シンフォニーの夕べで聴いて以来です。
チケットは当日券なしの全席完売です。定期演奏会では開演20分前からプレトークが行なわれていますが、今回は特別演奏会なのでありませんでした。

プログラム1曲目は、モーツァルト作曲/アヴェ・ヴェルム・コルプス。合唱団がステージ後方に、左から、ソプラノ、テノール、バリトン、アルトの順に4列で並びました。100名以上の人数で、男声と女声は1:2の割合でした。オーケストラは弦楽器のみです。コンサートマスターは、ゲスト・コンサートマスターの泉原隆志。室内楽を中心に活動されているようです。自分のヴァイオリンの音程でチューニングしました。
この作品は東京フィルハーモニー交響楽団「第九」特別演奏会でも聴きましたがあまり印象に残りませんでしたが、心が洗われました。広上も正面の合唱団を向いて指揮しました。5分程度の短い曲ですが、もっと聴きたいです。ただし、指揮棒が完全に止まらないうちに、客席からフライング拍手。残念。

休憩なしでプログラム2曲目は、ベートーヴェン作曲/交響曲第9番「合唱付」。管楽器と打楽器奏者が加わりました。金管楽器は木管楽器の後ろに、左から、トランペット2、ホルン4、トロンボーン3の順。ホルンを中央に座らせるという変わった配置です。打楽器はステージ左にまとめて配置していました。
演奏は全体的にもっと音量がほしいです。音符に中身が詰まっていません。省エネ運転のように聴こえました。京都市交響楽団第511回定期演奏会「第12代常任指揮者就任披露演奏会」でも感じましたが、広上は派手に鳴らす指揮者ではないようです。木管楽器が2管編成なのもさみしい。また、トランペットが突出しすぎてバランスが悪い。ティンパニも大きめ。3階席にしたのは失敗でした。1階席がよかったですね。
第1楽章は513小節からティンパニを強調。第2楽章はやや遅めのテンポ。第3楽章の前に、広上が指揮台を降りて、ピッコロ、コントラファゴット、打楽器の追加メンバーが入場してチューニング。独唱者4人が登場して、指揮台の前のイスに座りました。第3楽章から急に完成度がアップ。冒頭(Adagio molto e cantabile)から遅いテンポで、じっくり美しく聴かせました。広上はゆったりしたテンポの曲が得意のようです。83小節からのAdagioも同様で、この遅いテンポは木管楽器泣かせでしょう。121小節からのファンファーレはスタッカートを意識して短く切りました。あまり間を置かずに第4楽章へ。京響市民合唱団は広上の指揮にのせられるように歌いました。音量は不足ないですが、発声がモヤモヤしていて歌詞が見えてきません。独唱はテノールとバリトンが張りのある歌声でした。330小節のフェルマータは長く延ばしました。
広上淳一は指揮台の上で飛んだりはねたり激しい動き。たまにうなり声が聴こえました。第3楽章以降はよくなったので、ちょっとエンジンがかかるのが遅かったように感じました。第4楽章の途中から指揮棒を使わずに指揮しました。

演奏終了後にカーテンコールが何回か行なわれた後、広上淳一が「もうお帰りになった方がおられるようですが」と挨拶。「今日は特別演奏会なので、プレトークやレセプションはありませんが」と話して、「50年の歴史を持つ京都市交響楽団です」と改めて紹介して団員を起立させました。「第九を演奏してヘトヘトなんですが」と言いつつ、第九演奏会では異例のアンコール。今年のNHK大河ドラマ「篤姫」のテーマ音楽を演奏。「私の7歳になる娘も宮崎あおいや堀北真希の大ファンでして」「京都はよく大河ドラマの舞台になります。テレビではNHK交響楽団が演奏していますが」「今年最後の演奏会なので、心を込めて演奏します。よいお年をお迎えください。」と話して、吉俣良作曲/「篤姫」テーマ曲を演奏しました。「第九」の演奏で使わないドラがステージに置かれていた理由が分かりました(冒頭に一発鳴らすだけ)。広上はこういうゆったりした曲が得意ですね。いい演奏でした。
終演後は、コロンバス交響楽団と録音した「チャイコフスキー/交響曲第5番」のCDを購入した人を対象に、広上淳一のサイン会が開かれました。
広上淳一は話すのが好きですね。アンコール、プレトーク、レセプションなど、ファンサービス旺盛です。コロンバス交響楽団音楽監督を今年11月に辞任しましたが、京都市交響楽団とは末永い関係を築いて欲しいです。次シーズンはもっと登場回数を増やして欲しいです。

(2008.12.29記)


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