京都市交響楽団スプリング・コンサート


   
      
2011年4月10日(日)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団
高橋多佳子(ピアノ)、千住明(ナビゲーター)

宮川泰/交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」から「出発」
久石譲(松岡洋二編)/おくりびと〜memory〜
千住明/「砂の器」(TBS日曜劇場)から〜ピアノ協奏曲「宿命」
早坂文雄(松木敏晃編曲)/交響組曲「七人の侍」から、怯える村・練達の士
芥川也寸志(中田潤編曲)/映画音楽組曲「八つ墓村」から〜青い鬼火の淵(道行のテーマ)
武満徹/「3つの映画音楽」から 訓練と休憩の音楽(「ホゼー・トレス」から)、ワルツ(「他人の顔」から)
伊福部昭/SF交響ファンタジー第1番

座席:3階C−4列19番


京都市交響楽団2011年度最初の自主公演です。広上淳一は常任指揮者就任4年目を迎えました。
スプリング・コンサートは、2009年度から始まりましたが、すっかり定着してきたようです。2010年度はNHK大河ドラマのテーマ曲を集めたプログラムでしたが、今回は「日本の映画音楽特集」をテーマにして行なわれました。本番前日には毎月恒例の「京都市交響楽団練習風景公開」が練習場で行なわれましたが、抽選で外れました。残念。
スプリング・コンサートは全席1500円と格安です。2010年度は全席完売となりましたが、今回は空席が多く、入りは7割ほどでした。ポディウム席の入りがさびしい。

プログラム1曲目は、宮川泰作曲/交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」から「出発」。この曲は京都市交響楽団 at 円山公園音楽堂!でも演奏しました。軽快で空間的な広がりを感じる演奏です。勢いだけで押さないので、木管の細かな音符など隠れた聴きどころも分かります。

ナビゲーターの千住明がマイクを持って登場。広上淳一と対談しました。「東日本大震災を受けて、今回の演奏会をチャリティーコンサートにした。チケット収入を全額寄付する」と紹介して、客席から拍手。広上は「心が病んでいるが、勇気に変えていただきたい」と話しました。宇宙戦艦ヤマトについては「森雪が好き」と話しました。千住明は本職は作曲家ですが、よくしゃべります。

プログラム2曲目は、久石譲作曲(松岡洋二編)/おくりびと〜memory〜。広上淳一は「泣きますよ」と映画を紹介。チェロ5人とピアノのアンサンブルで、指揮者なしでの演奏です。チェロ独奏は副首席チェロ奏者の中西雅音、ピアノ独奏は佐竹裕介。同じ楽器のアンサンブルなので伴奏がモゴモゴしがちでしたが、いいメロディーですね。

プログラム3曲目は、千住明作曲/「砂の器」(TBS日曜劇場)から〜ピアノ協奏曲「宿命」。「千住明は料理の名手」と広上が紹介。千住は「真理子(ヴァイオリニストの千住真理子)に指を使わせないようにしているので、自分が犠牲になっている」と話しました。また、「「砂の器」は前作(1974年の映画)がある。冒頭の八分音符7つのアーフタクトは、前作のエスプリを継承した。台本の流れに沿った音楽の流れになっていて、第1楽章にはいろいろな人の意見が入っている」と話しました。
ピアノ独奏は、高橋多佳子。水色のドレスで登場。2楽章構成で、25分程度かかります。第1楽章の終盤には短いですがちゃんとカデンツァもあります。第2楽章は千住明のオリジナル。第1楽章とはまったく別のテーマですが、同じテーマが続くのでやや退屈しました。京響の伴奏はヴァイオリンがやや弱い。
演奏終了後は、千住明が「非常に短い期間、3週間ほどで作曲した」と語りました。高橋千佳子は全曲を演奏したのが今回が初めてだったとのこと。また、スコアにコードネームが書かれてあることを紹介したところ、千住明がドラマでは羽田健太郎がピアノを演奏したためと明かしました。

休憩後のプログラム4曲目は、早坂文雄作曲(松木敏晃編曲)/交響組曲「七人の侍」から、怯える村・練達の士。映画に出てきた音楽をつなぎあわせています。「怯える村」はオープニングの音楽で打楽器が重々しい。「練達の士」はゆっくりした行進曲。改めて聴くといいメロディーです。原曲にオブリガードが追加されているようです。千住明は「昔はモノラルでよく聴けなかった」と生演奏を聴いて驚いていました。

プログラム5曲目は、芥川也寸志作曲(中田潤編曲)/映画音楽組曲「八つ墓村」から〜青い鬼火の淵(道行のテーマ)。広上は「芥川也寸志の作品はゴツゴツしてる印象があるが、こんなロマンティックな面があった」と紹介。3拍子が軽やか。今の大河ドラマのテーマ曲でもいけそうです。

プログラム6曲目は、武満徹作曲/「3つの映画音楽」から 訓練と休憩の音楽(「ホゼー・トレス」から)、ワルツ(「他人の顔」から)。武満徹が晩年に3つの映画音楽を編曲した作品です。弦楽合奏のみで演奏されます。広上は「これを聴くと、武満徹の心の奥の本音が分かる」と解説。「訓練と休憩の音楽」は、コントラバスがリズム音型を奏でます。和音の使い方が武満らしい。いったいどんな映画のどういうシーンで使われた音楽なのか気になります。「ワルツ」は、エキゾティックなメロディーで、今聴いても非常にモダンな曲です。

プログラム7曲目は、伊福部昭作曲/SF交響ファンタジー第1番。千住明が「伊福部昭の著書『管絃楽法』はいまだに読まれている」「この作品を録音したときは当時クーラーがなかったので奏者が倒れた」と紹介しました。芸術文化センター管弦楽団第41回定期演奏会「岩村力×林英哲 和洋の響宴」で岩村力の指揮で聴いたばかりですが、京響の演奏のほうが一枚上手でしょう。兵庫芸術文化センター管弦楽団の演奏は一生懸命さや生々しさが感じられましたが、京響は落ち着いていて音響が整っています。打楽器の響きが深い。強奏でも音量はあまり大きくありません。「宇宙大戦争」タイトルテーマの金管ファンファーレは和音のバランスが絶妙。静かな「宇宙大戦争」夜曲はカットして演奏しました。

演奏終了後は、千住明が「昔は夜中に作曲していたが体によくないので、最近は朝に作曲する」「4月からNHKテレビ「日曜美術館」のキャスターになった」と紹介。「日本の映画音楽というテーマだったが、日本のオーケストラ作品を一瞬で振り返れた」と感想を述べました。広上が「自粛モードではあるが、関西は経済を活性化させてほしい。一緒に落ち込んでいる必要はない。支えてくれる人が必要」と語りました。
アンコールは、千住明作曲/風林火山を演奏。2007年のNHK大河ドラマテーマ曲で締めくくりました。

(2011.4.17記)


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