ロームシアター京都×京都市交響楽団 シアターオーケストラ・コンサート 「Oblivion(オブリビオン)―失われた時間と音楽、そして新たな始まりのために」
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2023年1月14日(土)17:00開演 ロームシアター京都メインホール 園田隆一郎指揮/京都市交響楽団 J.シュトラウスⅡ世/ワルツ「美しく青きドナウ」 座席:S席 2階1列32番 |
プログラム3曲目は、ハイドン作曲/交響曲第45番「告別」より第4楽章。オーケストラがチューニングを始めると、出番のない奏者が退場。弦楽器とホルン×2(正面の座席に移動)とオーボエ×2とファゴットのみがステージに残りました。都響プロムナードコンサートNo.309(ベルティーニ指揮)で聴きました。映像は引き続き雑踏の映像の早回しですが、演奏がいいので演奏に集中してしまいます。Adagioの途中から、演奏が終わった奏者がどんどん退場して、メンバーが減っていきます。途中で雑踏の映像も終わって、何も映らなくなりました。最後は、指揮者の園田と第1ヴァイオリン(泉原)と第2ヴァイオリン(首席奏者の安井優子)のみが残りました。曲が終わってからも園田が指揮しましたが二人は弾かないで、マスクをつけて立ち上がって帰ってしまいました。園田は指揮台から手を振って見送り。「休憩」「20分」と字幕が出て、園田もマスクをつけて退場しました。
アフタートークでは、白井が「園田のお芝居がうまい」と賞賛。園田は「奏者が減ってくると指揮者はいらなくなる。この曲の演奏では指揮者が先に失礼することが多いので、先に出て行ったのは初めて。白井の演出指導で、曲が終わってるのにまだやってほしいと言われた。せつなかった」と話しました。
休憩後のプログラム4曲目は、ベートーヴェン作曲/大フーガ(弦楽合奏版)。もともとは弦楽四重奏曲第13番の終楽章として作曲されました。園田のTwitterによるとヴァインガルトナーによる弦楽合奏版とのこと。弦楽器のみの演奏で、チューニングは泉原に合わせました。京響が演奏するのはなんと35年ぶりとのことで、アフタートークで白井は「大好きな曲。リズムの取り方が現代音楽みたい」と語りました。園田も初めて指揮したとのこと。
京都コンサートホールよりもステージとの距離が近いので、音が生々しい。映像は最初は何も映りませんでしたが、途中から三角形の屋根の建物に気球がカラフルに映りました。チラシにも掲載された飛行機も飛びましたが、灰色の色調になり、ちょっと混沌としてきて、〰(波の形)が左右に行ったり来たり。
演奏後は、またガヤの音が聴こえて、「PCR検査」「休校」「中止」「クラスター」「無観客」「緊急事態宣言」「ウクライナ危機」など文字が次々に現れました。「不要不急」などは最近聞かなくなったので、今では懐かしく思えるほどです。
管楽器が入場して、チューニング。プログラム5曲目は、プロコフィエフ作曲/バレエ組曲「ロメオとジュリエット」より抜粋。まず第2組曲より第1曲「モンタギュー家とキャピュレット家」。ステージと客席が近いので、強奏が轟音になります。映像は廃棄された自動車など。サックス奏者もいました。ティンパニの連打から、第1組曲より第7曲「ティボルトの死」後半部。悲劇的な曲調ですが、演奏がうまくて聴き惚れてしまいました。プログラムの白井のインタビュー記事によると、「ロシアのウクライナ侵攻を意識した」と語っています。
プログラム6曲目は、ホルスト作曲/組曲「惑星」より「金星」。わざわざハープを2台を用意。映像は緑の植物と波紋が広がる水面。後半は賀茂川と床、祇園祭の山鉾巡行など。ステージの照明はいつもより暗い。
続けて、京響団員へのアンケート結果が字幕に出ました。コロナ禍では「不安だった」という回答もありましたが、「練習に励めた」「家族との時間が取れた」と意外に前向きな回答もありました。「お客様はありがたい」「演奏会を大切にしていきたい」「皆が揃えることを忘れないように」とコロナ禍で気がついたこともあったようです。
続けて、プログラム7曲目は、ラヴェル作曲/ボレロ。同じ園田の指揮で、京都市交響楽団×石橋義正 パフォーマティブコンサート「火の鳥」でも取り上げられました。速めのテンポ。ステージが暗いためか、アインザッツがやや甘く、音の立ち上がりが遅い。映像は川の空撮(第1曲「美しく青きドナウ」と同じ賀茂川)。水が流れている部分に、雲や船などの別の映像を重ねました。202小節からの木管楽器のメロディーは内声を聴かせました。ステージの両サイドに置かれて5つのスポットライトが明るくなって、ステージ前方の目潰しも明るい。後半は巨大な人間の脚が川を歩いていくアニメーション。サックス奏者も2人いましたが、小太鼓は最後まで1人だけでした(打楽器奏者がさらに必要になるからでしょう)。最後は、1階席前方の扉を開けて、光で照らしてさらに明るくなりました。暗転して「OBILIVION」と「忘却≠忘れること」の字幕が出て終演。1階席で聴いていた白井と宮永が園田に呼ばれてステージへ。
19:00に終演して、そのままアフタートークが行なわれました。ステージに椅子が4つ置かれて、左から、ロームシアター京都のスタッフの女性、白井晃、園田隆一郎、宮永亮の4人が登壇。白井は「兵士の物語」言葉と音楽のシリーズによる三重奏版ではステージに登場しなかったので、このようなアフタートークがあるのはありがたいです。
白井は「1年前にお話をいただいた。演劇はコロナと相性が悪い。今回はオーケストラの人だけと仕事をした。コロナ禍の厳しい環境で悔しさやいきどおりがあった。これを忘れてはいけない、しっかり記憶しておく」と語りました。園田は「曲の提案があったが、リストを見て表現したいことが分かった。コンセプトが見える選曲だった。ただし、「ロメオとジュリエット」はコロナによる対立や分断というコンセプトではなかった(上述したように、ウクライナ侵攻を意識した選曲)。コロナ禍で難しいことをお客さんに伝えない努力やバレないように隠す方向だったが、難しさを表現するのは初めてだったので新鮮だった。指揮者は職業柄、日本中を飛び回って本番の時間も違うが、コロナ禍では逆に規則正しい生活ができた」と語りました。宮永は「コロナ禍で映像は需要が高まった」と語りました。宮永は白井と神奈川で一緒に仕事したことがあるとのことで、「ボレロは人間の意思を出さないとどうにもならないと思った」と語りました。川の空撮はドローンで、賀茂川の京響練習場から上流を撮影したとのこと。園田は「映像があることで力がもらえた」、白井は「通常じゃありえないほど映像を重ねている」と話しました。園田は明るい未来への抱負として、「マスクで顔の表情が分からなくても、相手の気持ちを分かれるようにしたい」と話し、19:40に終了しました。