京都市交響楽団大阪特別公演


 

2026年7月20日(祝・月)14:00開演
ザ・シンフォニーホール

沖澤のどか指揮/京都市交響楽団
水野優也(チェロ)

ドヴォルザーク/チェロ協奏曲
チャイコフスキー/交響曲第4番

座席:A席 2階BB列21番


京都市交響楽団が年に1度開催している大阪特別公演は、昨年に続いて今年も沖澤のどかが指揮しました。昨年のチャイコフスキー「交響曲第5番」が名演でしたが、今年は「第4番」で期待大でした。

沖澤のどかは、京都市交響楽団第713回定期演奏会の後、翌日のみやこの音楽会Vol.7「「香」の音楽会」を見学。本公演の2日前に「プロコフィエフの陣~交響曲全曲演奏会「弐」」(2026.7.18)を指揮しました。プログラム後半のプロコフィエフ「交響曲第5番」は、アーカイブ配信(777円)がありました。本公演の練習は、前日に京都市交響楽団練習場の1日のみでした。なお、本公演と同一プログラムで、第16回名古屋公演(2026.6.24(金) 愛知県芸術劇場コンサートホール)と、あわぎんホール×京響 徳島スペシャルコンサート(2026.7.26(日) あわぎんホール)が開催されました。沖澤のどかと京都市交響楽団が徳島で演奏するのは初めてです。

本公演のチケットは全席完売しました。なお、京響友の会会員を対象に、特別価格でのあっせん販売がありました。チケットが1,000円安く変えるのは魅力ですが、申し込みが京響友の会事務局への電話しかなく、支払いも現金のみなので、今回も利用しませんでした。

プレトークはなし。コンサートマスターは会田莉凡(ソロコンサートマスター)。コンサートマスターの泉原隆志はお休み。首席客演ヴィオラ奏者は、有冨萌々子(ありとみももこ)。2022~2024年にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団アカデミーに初の日本人として在籍していたとのこと。毎回次々と多彩な方が首席客演で来られますね。特別首席チェロ奏者の森田啓介が出演。プログラムにちゃんとメンバーが掲載されているのは評価できます。

プログラム1曲目は、ドヴォルザーク作曲/チェロ協奏曲。チェロ独奏は水野優也。2025年のプラハの春国際音楽コンクールのチェロ部門でアジア人として初めて優勝しました。コンクールのファイナルで演奏したのが、このドヴォルザークのチェロ協奏曲でした。現在はジャパン・ナショナル・オーケストラのコアメンバーを務めています。水野は特別演奏会「第九コンサート」第703回定期演奏会で、客演首席チェロ奏者を務めました。また、昨年末の「東急ジルベスターコンサート2025-2026」(Bunkamuraオーチャードホール)で、沖澤と水野はこの曲の第1楽章のみ共演しました(京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」の記事を参照)。私がこの曲を聴くのは、京都市交響楽団第457回定期演奏会以来23年ぶりで、本当に久しぶりでした。

水野は正方形の台の上に置かれたピアノ用の長方形のイスに座って演奏。第1楽章9小節からのヴァイオリンが潤いがある音色。チェロ独奏が始まる前の87小節(練習番号3の12小節)の全音符の伸ばしは、スコアではppですが大きな音量で演奏。水野は左右に楽器を揺らしながら弾きます。ピアノ用のイスに座ったのは、左右に動きやすいからでしょう。それほど激しくはないですが、音圧が高い。フルート×2がメロディーを演奏する240小節(Animato)からゆったりしたテンポで演奏。オーケストラは金管楽器がよく聴こえますが、ヴァイオリンが強奏で埋もれがちで弱い。いつもの京都コンサートホールとは聴こえ方が違います。沖澤は細身でひょうひょうとした指揮で、いつもより客席とステージの距離が近いので、逆にそう感じました。
第2楽章は、8小節からのチェロ独奏が大きめ(スコアではp dolce)。43小節からテンポが速い。第1ヴァイオリンが細かな音符を聴かせます。独奏チェロは高音が多く出てきますが音量十分で、オーケストラは音量を落とさずに演奏。
第3楽章は、水野の息を吸う音が荒く大きくなりました。114小節からの木管楽器の細かな音符が京響らしい美しさで、ここだけ何回も聴きたい。最後は元気よく終わりました。

拍手に応えて、水野がアンコール。ドヴォルザーク作曲/4つの歌op.82より第1曲「私にかまわないで」を、水野と京響のチェロ奏者6人で指揮者なしで演奏。森田とアイコンタクトしながら、いいアンサンブルでした。ドヴォルザークとは思えない明るい響きでした。
休憩中は、男性トイレの最後尾が1階の館内プレイガイド前まで続く大行列でした。

休憩後のプログラム2曲目は、メンバーが増えてチャイコフスキー作曲/交響曲第4番。よく鳴りましたが、練習が1日しかなかったせいか、昨年のチャイコフスキー「交響曲第5番」よりも完成度が低く、期待外れ。響きの濃さや密度は十分ですが、ソロの精度がいまひとつ。ミスはありませんが、京響ならもっとできるはずです。
第1楽章13小節や15小節の四分音符は短く切るような表現。27小節(Moderato con anima)からの弦楽器のメロディーはややテンポが速め。ティンパニが加わる70小節からはテンポが速い。第1ヴァイオリンも第2ヴァイオリンもよく歌います。徐々にテンポアップ。92小節からの金管楽器は京都コンサートホールよりも大きな音量で吹いていました。116小節(Moderato assai,quasi Andante)からの第2主題もテンポが速く、徐々にテンポアップ。160小節のティンパニの八分音符を効かせてさらにテンポアップ。コーダは400小節頃でリタルダンドをかけました。最後は悲劇的に終わりました。
第2楽章は速めのテンポ。166小節からヴァイオリンがよく歌ってすばらしい。第3楽章もテンポが速い。349小節からフルートが入ってからテンポアップ。最後を弱音で締めくくるのが心憎い。第4楽章はヴァイオリンの細かな音符をごまかさずに聴かせようという意思を感じました。沖澤は跳び跳ねそうな動きでパワフルな指揮。199小節からトロンボーンとチューバが伸びのある響き。最後はトライアングルが目立つように叩いて盛り上げて終わりました。

拍手に応えて、アンコール。ブラームス作曲/ハンガリー舞曲第5番を演奏。緩急をつけてテンポをよく揺らして、肩の力が抜けた響き。本公演で一番よい演奏でした。
カーテンコールの最後で、沖澤が指揮台の上で白い犬?のぬいぐるみを掲げました。誰かにもらったものなのかまったく分からなかったのですが、松井孝治のX(@matsuikoji)によると、ザ・シンフォニーホールのイメージ・キャラクターの「マエストロ・コール」のぬいぐるみとのこと。2015年に誕生して、2階グランドホワイエのザ・シンフォニーショップで3,000円程度で売っているようです。犬ではなくて、羊のようですね。松井によると「このホールへの感謝とラブコールです!」と記していますが、キャラクターの知名度が低く、私もどこかで見た程度でしか知らなかったので、沖澤の意図が分かった人はほとんどいなかったのではと思います。会田莉凡のX(@violibon)には、マエストロ・コールのぬいぐるみを持っている沖澤の写真が掲載されています。今回もカーテンコールで沖澤の挨拶はありませんでした。なお、ザ・シンフォニーホールでは、1階のホワイエにチラシまとめ用のビニール袋が設置されていましたが、提供を一時中断する旨の掲示がされました。理由は、昨今の中東情勢の影響で、製造元において原料確保の目途が立たないためとのこと。なかなか深刻な状況ですね。

京響らしい長所は明らかに少なかったため、練習量と本番の完成度は比例するという当たり前のことを再認識しました。定期演奏会が京都コンサートホールで3日間練習しているのに対して、本公演は京都市交響楽団練習場で1日だけでした。この後の名古屋公演と徳島公演では、完成度が上がったかもしれません。

なお、沖澤は、本公演の翌日に「令和8年度京都市会議員研修」で「京都市交響楽団と文化政策―70年の歩みとこれから―」のテーマで講師を務めました。議会で議員を相手に話をする指揮者は他にはいないでしょう。どんな話をしたか気になりましたが、京都市会のホームページに動画と資料が掲載されています。 本会議場の演壇で、チーフプロデューサーの髙尾浩一、龍谷大学国際学部非常勤講師(音楽芸術論)の宮崎優也と登壇。京都市交響楽団の取り組みについて、パワーポイントでかなり最近の写真を見せながら紹介。自分が指揮した演奏会以外もきちんと説明しました。「定期演奏会は3年先くらいまでプログラムを練っているところで、ここが一番楽しく重要な期間」「夫は音楽家ではない」「京都に住まいはなく、ホテルや民泊している」「京都はお客さんとの距離が近い」「後ろの奏者も全員がバリバリ弾く全員相撲と、安全運転をしない思い切りのよさが京響のよさで、日本では珍しいオーケストラ」などと話しました。髙尾浩一は、大阪センチュリー交響楽団やオーケストラ・アンサンブル金沢に勤めていたことがあるとのこと。優秀なスタッフがおられますね。
沖澤は「京響の演奏水準はかなり高いが、地元で聴いているオーケストラが世界でみてどの位置にいるかは分かりにくい。京都の規模で同じ市が持っているオーケストラ(例えばバーミンガム市交響楽団)と比べても遜色ないことを誇りに思っていただきたい」と呼びかけました。また、「70周年の企画では、まずは地元の京都の市民のみなさんに聴いていただくべきだろうと思って、プロコフィエフ交響曲全曲演奏会や京(みやこ)の音楽会を企画したが、 この先さらに続けていくためにはここから外に出ていく段階ではないかと感じている 。日本だけではなく海外で演奏することで、京都に戻ってきたときにさらに一回り大きくなっているんじゃないかなと思います」と話し、海外ツアーの必要性について言及しました。最近の京都新聞の報道では、京都コンサートホールは2029年秋から約2年半閉館して大規模改修工事に入る予定で、改修費用は約155億円で、試算時から約2.5倍に膨らんでいるとのこと。京都市の財政状況を考えれば、京響の活動について京都市議会議員の理解と協力をぜひとも得たいところでしょう。松井市長のXによると研修は1時間半実施されましたが、動画は40分ほどで、会田莉凡と尾﨑平(アシスタント・コンサートマスター)のデュオが4曲(15分)も演奏しましたが、残念ながら動画には収録されていません。
その後、沖澤は「ZERO歳からのみんなのコンサート2026「音楽物語「ぞうのババール」」を3公演指揮(2026.7.31 京都市右京ふれあい文化会館、2026.8.1 京都市北文化会館、2026.8.2 京都市呉竹文化センター)した後、札幌交響楽団を指揮しました(「hitaruシリーズ定期演奏会 第26回」2026.8.5 札幌文化芸術劇場hitaru)が、コンサートマスターは本公演と同じ会田莉凡(札幌交響楽団コンサートマスター)でした。そして、首席客演指揮者を務める「2026セイジ・オザワ松本フェスティバル 」オーケストラコンサート(Aプログラム)で、メシアン「トゥランガリーラ交響曲」を指揮する予定です(2026.8.22&23 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館))。

 

ザ・シンフォニーホールを上福島北公園から望む 本日のアンコール曲 チラシおまとめ用ビニール袋の提供の一時中断について

(2026.8.13記)


京の音楽会Vol.7「「香」の音楽会」 石田泰尚&上原彩子 デュオ・リサイタル