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2003年9月3日(水)19:00開演 京都コンサートホール大ホール 佐渡裕指揮/京都市交響楽団 ドヴォルザーク/チェロ協奏曲 座席:S席 3階 C−2列37番 |
パリのコンセール・ラムルー管弦楽団の首席指揮者を務める佐渡裕ですが、京都出身ということあってか、毎年のように京響に客演しています。人気の指揮者だけあってチケットは完売でした(実際は空席がそこそこありました)。それもポディウム席が真っ先に完売したということで、京響よりも佐渡目当てに来た方も多いようです。プログラムを300円で購入してホール内へ。座席は3階席中央でステージ全体がよく見渡せました。
プログラム1曲目は、ドヴォルザーク作曲「チェロ協奏曲」。チェロはダニエル・ミュラー=ショット。ミュンヘン生まれの26歳です。佐渡とミュラー=ショットが登場。佐渡は背が高くて足が長く、上下とも黒で統一していました。CDジャケットとかではもっと太っているように思っていたので少し驚きました。
演奏は、やはりオーケストラが少し弱いと感じました。音があまり客席に飛んでこない、鳴っていない感じがしました。音色も洗練されておらずクリアでないのが残念。また、佐渡の音楽作りは、全体的なサウンドよりも個別の楽器を重視しているように感じられました。いろいろな旋律を並列的に扱っている感じで、主旋律が埋もれがちになるのが気になりました。管楽器を強調していましたが、鳴らしすぎでやや趣味が悪く感じることがありました。特にトランペットは少し鳴らしすぎ。これは佐渡が吹奏楽団を指揮していることと無関係ではないでしょう。
第1楽章のオーケストラの前奏では低音がさびしいのが惜しい。ミュラー=ショットは、音程など技術的には安定していて、きれいで明るい音色を聴かせました。チェロとは思えないような軽いタッチでしたが、チェロ独奏がオーケストラと同化していて、時には線が細く音量が小さいようにも感じました。また、速く弾きたがる傾向があり、指揮とズレることがありました。佐渡の指揮も意外にオーバーアクションではありませんでした。
第2楽章は、かなり大きめの音量でスタート。中間部は開放的な音楽を期待しましたが、やや期待外れ。チェロ独奏ももう少し聴かせてほしいと思いました。弱奏で響きが薄くなるのが惜しい。
第3楽章も、オーケストラは強奏が混濁気味。弱奏でも音程がかなり怪しい部分がありました。チェロ独奏と掛け合うヴァイオリンソロの音程がひどかったです。
演奏後は、拍手に応えてミュラー=ショットがアンコールを披露。ブロッホ作曲「プレイヤー(祈り)」。幅広い音程を駆使する作品でしたが、正確で表情豊かな美しい演奏を聴かせました。少し長い作品でした。さらになんともう1曲披露。アンコール2曲目は、ツィンツァオツェ作曲「ショングリ」。ピツィカートのみで演奏する作品で、舞曲系の快活なリズム感が楽しめました。ダニエル・ミュラー=ショットは、「超」がつくほどのチェリストでありませんでしたが、今後の成長がじゅうぶん期待できる演奏家だと思います。
休憩後のプログラム2曲目は、ベートーヴェン作曲「交響曲第7番」。佐渡は譜面台も指揮台も使用しませんでした。譜面台を使わないのはよくあることですが、指揮台も撤去したのは佐渡の全身を使った指揮は指揮台の上では狭いということでしょう。ベートーヴェンにふさわしい指揮なのかは少し疑問ですが、指揮棒なしの飛んだり跳ねたりダイナミックな指揮で、主に聴かせたい楽器を指示していました。この作品でも細部にこだわりがありうるさく感じられやや耳につきました。オーケストラは指揮に対して反応がよくなってきました。ボリューム感のあるアクセントを強調した力強い男性的な音楽でした。ただし、音程や音の長さなどが不安定で全体的な統一感に欠けました。楽器間の音の受け渡しも問題が多いです。
第1楽章の序奏では、エネルギーの持続を指示していました。反復記号もスコア通り行っていました。
第2楽章は、弦楽器による旋律を強弱を付けたり表情を変化させたりおもしろく聴けました。
第3楽章は、やや雑然とした印象。各旋律の性格付けを明確にさせて欲しいです。もっとスマートでクリアな音響が求められるでしょう。特にトランペットが少し汚く感じられました。この楽章でも反復記号をスコア通り行なっていましたが、少し長く感じられました。ここは繰り返しなしでもいいですね。
第4楽章は、快速テンポで進みました。熱狂的興奮気味の演奏で力のこもった指揮・演奏になりました。聴いているほうも血圧が上昇するようでした。パワーで押し切ったようなところがありましたが、ホルンが鳴らないのにはがっかり。
演奏後はブラボーの声があちこちからかかりました。アンコールはありませんでした。ロビーでアンケートを提出し、この演奏会のポスターを無料でいただいて帰路に就きました。
佐渡裕は、華やかな作品で実力を発揮する指揮者だと感じました。パワーあふれる指揮でしたが、もっとオーバーアクションかと思っていたので、予想していたよりは一般的な指揮法でした。細部を聴かせるなど工夫が見られましたが、個人的には少し違和感を感じました。他の作品もいろいろ聴いてみたいです。
京都市交響楽団は、今まで聴いてきたオーケストラに比べると技術的に落ちるようです。音程や音の長さが不揃いなのが気になりました。高校時代にお世話になった松原和男氏や、吹奏楽で活躍されている若林義人氏など楽団員には親しみを感じますが、もう一段レベルアップを望みたいです。
(2003.9.7記)