第9回京都市立芸術大学サクソフォン専攻生によるアンサンブルコンサート「Saxtation」
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2026年2月8日(日)18:00開演 京都府立府民ホールアルティ
京都市立芸術大学サクソフォン専攻生 國末貞仁(ソプラノ・サクソフォン)、福田彩乃(アルト・サクソフォン)、黒澤雄太(打楽器)、前川碧音(打楽器)、河内笑佳(打楽器)
チャイコフスキー(中山祐哉編)/弦楽セレナーデより第1楽章 ハス/ヴォルカニック・アッシュ 棚田文則/ミステリアス・モーニングⅡ グラズノフ(福田彩乃編)/弦楽四重奏曲第3番「スラヴ」より第4楽章 グバイドゥーリナ(クーパー編)/2本のバリトンサクソフォンのためのデュオ・ソナタ リムスキー=コルサコフ(中野宏紀編)/スペイン奇想曲
座席:全席自由
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今年も京都市立芸術大学サクソフォン専攻生によるアンサンブルコンサート「Saxtation(サクステーション)」に行きました。昨年の
第8回に続いて通算5回目です。
管・打楽三昧でスメタナ「モルダウ」の名演を聴いて、やはり今年も聴きたくなりました。
今年度のサクソフォン専攻生は10名。院2回生1名、4回生2名、3回生2名、2回生3名、1回生2名。男性が8名、女性が2名です。申し込みはGoogleフォームから入力して、当日現金精算(1000円)でした。京都市立芸術大学サクソフォン科のX(@kcuasaxophone)では、練習風景などを収録したカウントダウン動画が投稿されました。映像編集も凝っています。
この日は朝から京都市に大雪警報が発令されて、今冬初めての積雪(8センチ)がありました。日曜出勤だったので、開演10分前にタクシーで到着。受付で名前を伝えて、現金で1000円支払って、チケットを受け取りました。パンフレットはカラー印刷で立派です。今回も、楽器工房鰐田商店の広告(見開き2ページ!)のセンスが最高。客の入りは6割ほどで、雪の影響があったかもしれません。ちなみに、この日は衆議院議員総選挙の投票日でした。
いつものように、上手でチューニングしてから入場。プログラム1曲目は、
チャイコフスキー作曲(中山祐哉編)/弦楽セレナーデより第1楽章。4回生の中山が編曲しました。10人全員で演奏。左から、ソプラノ×2、アルト×2、バリトン×3、バス、テナー×2。
オータムウィンズフェスト「京芸ウィンズとめぐる東洋と西洋」でお披露目されたバス・サックスを加えての演奏です。楽譜は全員がタブレットを使用しました。演奏はうまいのひとこと。原曲の弦楽五部よりもいい。まろやかにまとまります。34小節からのデクレッシェンドは弱奏の技術力が試されるところで、91小節からのスタッカートもタンギングが大変ですが、安定していてよく表現できています。152小節からの十六分音符の連符の上昇音型は、楽器の音域の問題なのか、途中でオクターブ下がってしまうのが惜しい。原曲同様に、ほとんどが全員ずっと吹き続ける編曲でした。曲間ではメンバーが交代でMC。「バス・サックスが加わって重厚感が増した」と説明しました。
プログラム2曲目は、ハス作曲/ヴォルカニック・アッシュ。2017年の作品で、ヴォルカニック・アッシュとは英語で「火山灰」の意味。左から、ソプラノ、アルト×2、バリトン、テナー×2。6人とは思えない響き。アルトとソプラノがこぶしが効いたメロディーで、変拍子に躍動感があります。右3人(テナーとバリトン)が重厚な低音。とてもよくまとまっている演奏でした。
プログラム3曲目は、
棚田文則作曲/ミステリアス・モーニングⅡ。演奏前のMCで「棚田文則は昨年(2025年)に亡くなったので追悼の意味を込めて演奏する」と説明。
ウエスティ・パフォーマンス広場「CONTEMPORARY SOLO CONCERT」で、ソプラノ・サクソフォンのための「ミステリアス・モーニングⅢ」を聴きましたが、本作品はソプラノ・サクソフォン4本で演奏されるのが珍しい。3~4回生のカルテットで、立って演奏。第1楽章は、弱音で蝶々がヒラヒラ飛んでいるように始まり、音程を変えながら続きますが、いきなり強奏が開始されて、音を割るなど狂気的なサウンド。ソプラノ・サックスでこんなに低い音が出るんですね。サックスの可能性が引き出される作品です。最後は音が出なくなって、キーの音がカパカパします。第2楽章も同じような始まり方ですが、途中で足元に置いてあるアルト・サックス、テナー・サックス、バリトン・サックスにそれぞれ持ち替えて、通常のカルテットの楽器編成に。メロディーらしいものはなく、モヤモヤとトレモロが続きます。バリトン・サックスが弱音で消えるように終わります。この曲は何人かは紙の楽譜を使用していました。パンフレットに特殊奏法(ビズビリャンド、クォータートーン、トリル、マルチフォニクス、フラッタータンギング)が紹介されていて、サクソフォン初心者にも分かりやすい。
休憩後のプログラム4曲目は、グラズノフ作曲(福田彩乃編)/弦楽四重奏曲第3番「スラヴ」より第4楽章。「スラヴの祭典」という副題がついています。後半は白いシャツに着替えて登場。左から、ソプラノ、アルト、バリトン、テナーの4人で演奏。軽やかな響きがすばらしく、もともとサックスのために作曲されたと思うほどです。後半は速いタンギングで、表情豊かに演奏。原曲は聴いたことがないマイナーな曲で、メロディーはあまり魅力的ではありませんが、演奏はいい。スラブらしさは出ました。こんな曲をサックスに編曲した福田もすごい。
プログラム5曲目は、グバイドゥーリナ作曲(クーパー編)/2本のバリトンサクソフォンのためのデュオ・ソナタ。1977年にファゴット2本のために作曲された作品を、4回生の2人がバリトン・サックスで座って演奏。左の奏者が意外に高音で演奏し、右の奏者が呼応して重なり合います。2人で演奏しているとは思えない演奏。左の奏者がが音を割り、右の奏者がリズムを担当。終盤は上昇音階を演奏していきます。簡単そうに見えますが。ごまかしがきかない曲です。
プログラム6曲目は、
リムスキー=コルサコフ作曲(中野宏紀編)/スペイン奇想曲。中野宏紀は作曲専攻修士1回生で、前回(
第8回)の「ローマの祭り」に続く編曲提供です。非常勤講師の2名と、打楽器の客演3名が加わって、総勢15名での演奏です。打楽器の客演奏者は、
第4回で初めて出演して以来、3人は過去最多です。前回も出演した黒澤(4回生)と前川(3回生)に加えて、河内(2回生)が出演しました。
演奏前に非常勤講師の國末貞仁と福田彩乃にインタビュー。福田はメンバーを「個性豊かながんばりやさん」と表現。弦で書かれた曲をサックスで演奏する魅力については「楽譜により向き合える」と話しました。國末は「4回生の色がすごく出る」「サックスは外でも演奏できる弦楽器のような楽器としてアドルフ。サックスによって作られた」と紹介しました。左から、ソプラノ×3、アルト×3、バリトン×2、バス、テナー×3の順。打楽器は後列に3名。左から、スネア&トライアングル&カスタネット、大太鼓&シンバル&グロッケン、ティンパニです。
第1楽章「アルボラーダ」は陽気で明るいサウンドで、内声が豊かです。一番左のソプラノ・サクソフォンの國末が、メロディー(原曲ではクラリネットが演奏)を担当。打楽器の音量がやや大きい。第2楽章「変奏」は打楽器なしでの演奏。第3曲「アルボラーダ」は第1楽章の変調です。第4楽章「情景とジターンの歌」はスネアソロから始まり、國末が原曲のヴァイオリンの装飾音を忠実に再現。続けて第5楽章「アストゥリアのファンダンゴ」へ。打楽器の3人がうまい。原曲では打楽器はティンパニを含めて6人で演奏されますが、今回の編曲では原曲にはないグロッケンシュピールが使用されました。打楽器の多彩な表情に助けられたところがありましたが、打楽器なしでサクソフォンだけだったとしても、表情豊かな演奏になったと思われました。演奏終了後は、客席で聴いていた中野が立ち上がって拍手。
アンコール1曲目は、リムスキー=コルサコフ作曲/くまばちの飛行(編曲者は不明)を演奏。ソプラノとアルトがよく指が回ります。がんばりました。打楽器はなしで、あっという間に終わり。アンコール2曲目は、今年も和泉宏隆作曲(小前奏人編)/宝島。打楽器3人が加わってパワーアップ。客席の照明を明るくして手拍子を促しました。20:00に終演。
今回は4回生の嗜好からか、現代曲が多めのプログラムで、特殊奏法で演奏する作品が多く演奏されました。選曲が凝っていて、編曲も挑戦的でした。例年以上にバリトン・サクソフォンの吹き込みが強くてすばらしかったです。来年のSaxtationはついに10回目の開催ということで、どんなプログラムになるか今から楽しみです。

(2026.3.7記)