第4回京都市立芸術大学サクソフォン専攻生によるアンサンブルコンサート「Saxtation」


2021年2月27日(土)14:00開演
京都府立府民ホールアルティ

京都市立芸術大学サクソフォン専攻生
國末貞仁(ソプラノ・サクソフォン)、福田彩乃(バリトン・サクソフォン)、丹治樹(打楽器)

J.シュトラウス2世(濱田侑里編)/喜歌劇「こうもり」より序曲
グラズノフ/サクソフォン四重奏曲
ラゴ/シウダデス
レスピーギ(森田拓夢編)/バレエ音楽「シバの女王ベルキス」

座席:全席自由



京都市立芸術大学サクソフォン専攻生によるアンサンブルコンサート「Saxtation(サクステーション)」に行きました。2年前に第2回を聴いて、今回も楽しみにしていました。
現在のサクソフォン専攻生は8名。院2回1名、院1回1名、4回生2名、3回生1名、2回生1名、1回生2名で、全員女性です。1ヶ月前から毎日Twitter(@kcuasaxophone)でカウントダウン投稿が始まり、メンバー紹介や練習風景の写真や動画が掲載されました。

チケットの購入はコロナ禍を意識してかオンラインのみ。11月1日からTIGET(チゲット、https://tiget.net/)で購入できました。料金1000円に加えて、システム手数料が1枚あたり99円かかりました。入口で検温の後、QRコードをスキャンしてもらって入場。全席自由でしたが、前後左右一席を空けた配置で、4割ほどの入り 。なお、前日の26日(金)に京都府に発令されていた緊急事態宣言が28日(日)をもって前倒しで解除されることが決まりました。

プログラム1曲目は、J.シュトラウス2世作曲(濱田侑里編)/喜歌劇「こうもり」より序曲。どの曲も舞台袖でチューニングを済ませてから入場しました。8名全員での演奏で、左からソプラノ2、テナー2、バリトン2、アルト2の順に座って演奏しました。編曲は4回生の濱田侑里。第2回でも福田彩乃がグラズノフ作曲/サクソフォン協奏曲を編曲しましたが、演奏だけでなく編曲もできるとは多才です。
冒頭からじゅうぶんな音量で、オーケストラの音色がイメージできる演奏。ソプラノ・サクソフォンがかなりの高音を使うアレンジでしたが、濱田が自分で演奏しました。バリトンの響きがやや硬いのが残念。また、ソプラノとアルトの座席が離れているので、メロディーがややずれるのが少し気になりました。

舞台転換の間に4回生がマイクで司会。コロナの影響でオンラインレッスンになったり、Zoomで会議をしたが、10月からアンサンブルができるようになったとのこと。

プログラム2曲目は、グラズノフ作曲/サクソフォン四重奏曲。1回生から3回生のアンサンブルで、左からソプラノ、アルト、バリトン、テナーの順。アンサンブルの密度が濃くなって、響きにまとまりがあります。3つの楽章からなり、第2楽章は主題と変奏と構成され、各変奏の間に間がありました。

休憩後のプログラム3曲目は、ラゴ作曲/シウダデス。「シウダデス」とはスペイン語で「都市」の意味。作曲者のギジェルモ・ラゴはサックス奏者で、現在も作曲が続いていますが、現在作曲されている全6曲を演奏しました。11月の京都市立芸術大学音楽学部・大学院音楽研究科 管・打楽専攻生による文化会館コンサートI 「ともしび」〜未来へつなぐ音楽のちから〜"でも、第2曲「サラエボ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)」、第3曲「アディスアベベ(エチオピア)」、第6曲「東京(日本)」を聴きましたが、同じメンバーで演奏。4回生と大学院生のアンサンブルで、4回生の濱田の紹介では「ぱんだカルテット」と呼んでいるようで、1回生から4年間この4人でアンサンブルを組んできたとのこと。充実した環境ですばらしい。ただし、4回生2名は今回が最後のSaxtation出演のようで、このカルテットが解散になってしまうなら残念です。
白シャツから黒シャツに着替えて登場。段違いの完成度で、アマチュア離れした成熟したアンサンブルでした。音質、アーティキュレーション、ソルフェージュの一体感が見事で、4本で1つの楽器のようでした。
第1曲「コルドバ(スペイン)」から始まり、第2曲「サラエボ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)」は11月に聴いたよりも緊迫感があります。第3曲「アディスアベバ(エチオピア)」では、スラップタンギング、フラジオなどの特殊奏法に加えて、グリッサンドもありました。曲間でリガチャーやリードを調整していましたが、特殊奏法の準備でしょうか。第4曲「モンテビデオ(ウルグアイ)」に続いて、第5曲「ケルン(ドイツ)」の冒頭は同じ音を演奏しているようですが、ビブラートとタンギングで違った音に聴こえました。第6曲「東京(日本)」は、やはり踏切の音のインパクトがすごい。

プログラム4曲目は、レスピーギ作曲(森田拓夢編)/バレエ音楽「シバの女王ベルキス」。サクソフォン10本と打楽器のために編曲した森田拓夢は、京都市立芸術大学作曲専攻の4回生。曲名が「バレエ音楽」となっていますが、吹奏楽でもよく演奏されるバレエ組曲の編曲です。
指導している非常勤講師の國末貞仁がソプラノ・サックスを演奏。また、サクソフォン専攻の1期生で、現在は博士(後期)課程1回生の福田(ふくた)彩乃がバリトン・サックスを演奏しました。福田はNOK Saxophone Quartetのメンバーとして、CDもリリースしました。さらにSaxtation初めての試みとして、打楽器を追加。管・打楽専攻4回生の丹治樹が賛助出演しました。
演奏前に國末がマイクで挨拶。「音楽が不要不急と思われることもあるが、不急かもしれないが不要ではない。自宅待機中にYouTube配信を始めた。7月にようやくメンバーと対面でレッスンができた。前期はアンサンブルができないのが大変だった 」と話しました。
全員が青いシャツに着替えて登場。左から、ソプラノ3、アルト2、バリトン3、テナー2の順。打楽器の丹治は後方で立って演奏しました。グロッケン、バスドラム?、ドラ、サスペンテッドシンバル、トライアングルなどの楽器を一人で担当。両手で違う楽器を演奏するなど忙しそうですが、ティンパニはありませんでした。

演奏は、やや速めのテンポ。第1曲「ソロモンの夢」は、Solenneからもう少し遅くして、堂々とした表情でもよかったでしょう。慣例通り第2曲と第3曲を入れ替えての演奏。第3曲「戦いの踊り」も快速で、ソプラノ・サクソフォン3本が強力。第2曲「夜明けのベルキスの踊り」では、丹治が座ってダラブッカを叩きました。原曲の最後のハープとピアノのパートはグロッケンで演奏。第4曲「狂宴の踊り」も速いテンポでしたが、速いパッセージも難なく演奏。途中のAndante lentoでは、ソプラノ・サクソフォンが下手に退場して下手舞台袖で演奏。後半は高揚感で目頭が熱くなりました。
打楽器を追加したのは大正解で、第3曲の「戦いの踊り」で戦太鼓があるのとないのでは大違いで、表現力も増しました。ソプラノ・サクソフォン以外があまり目立たない編曲だったので、他のパートにも見せ場があるとよかったでしょう。

濱田が、サクソフォン専攻が7年目を迎えられたことや、関係者への感謝の気持ちを丁寧に述べました。立派な挨拶で、人間的にも大きく成長できる環境のようです。アンコールは、和泉宏隆作曲(小前奏人編)/宝島。全員が立って演奏。サックスにはやはりノリのいいポップスが似合います。國末のソロの甘い音色がいい。客席から自然に手拍子が起こりました。16:10に終演しました。

プログラムの魅力に加えて、演奏も大変すばらしく、心に残る演奏会となりました。専攻生の人数も多くないので親近感があり、ファンになりそうです。コロナ禍で大変な状況が続くかもしれませんが、来年も楽しみにしています。

京都府民ホールアルティ

(2021.3.8記)

京都市交響楽団×石橋義正 パフォーマティブコンサート「火の鳥」 Osaka Shion Wind Orchestra第135回定期演奏会