大阪交響楽団第129回名曲コンサート「モーツァルト・ア・ラ・カルト」(夜の部)
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2023年11月11日(土)17:00開演 ザ・シンフォニーホール
柴田真郁指揮/大阪交響楽団 中川郁文(ソプラノ)、山際きみ佳(アルト)、渡辺康(テノール)、田中大揮(バス) 大阪響コーラス
ミヒャエル・ハイドン/交響曲第39番 モーツァルト/交響曲第25番 モーツァルト/死者のためのミサ曲「レクイエム」(レヴィン版)
座席:S席 2階CC列33番
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2022年度から大阪交響楽団のミュージックパートナーに就任した柴田真郁(まいく)を初めて聴きました。メインのモーツァルト「レクイエム」は、独唱者をなんとオーディションで選ぶという珍しい方法で決定されたので、逆に興味を持ちました。チラシは「ソリスト=調整中」のまま作成されました(右)が、独唱者が決定してから4人の顔写真が入ったチラシ(左)が新たに作られました。オーディションについては後述します。
柴田真郁はバルセロナのリセウ大劇場でセバスティアン・ヴァイグレ(現読売日本交響楽団常任指揮者)のアシスタントを務めました。ミュージックパートナーは、大阪交響楽団では常任指揮者(山下一史)に次ぐナンバー2のポジションです。なお、お母様はパキスタンの出身とのこと。
なお、大阪交響楽団名誉指揮者の外山雄三が7月11日に92歳で亡くなりました。私は大阪交響楽団第107回名曲コンサート「ラプソディー」(夜の部)と大阪交響楽団第234回定期演奏会で聴きましたが、どちらの演奏会も強く印象に残っています。プログラムの「PROGRAM MAGAZINE」の「私から見た大阪交響楽団史」第11回で、首席ソロコンサートマスターの森下幸路が外山の思い出(厳しいリハーサルなど)を回想していて読みごたえがあります。大阪交響楽団は滋賀銀行創立90周年記念ガラ・コンサートのしがぎん90周年記念スペシャル・オーケストラの母体として出演していました。
名曲コンサートは昼夜1日2回公演で、いい席が残っていた「夜の部」を聴きに行きました。チケットの発売は、7月11日の00:00からスタート。セブンイレブン発券で、発券手数料が110円かかります。余談ですが、阪急大阪梅田駅からザ・シンフォニーホールに歩いていく時によく通っていた梅北地下道が11月7日に閉鎖されました。約100年の歴史があったということを知ってびっくり。この日に行ったときは地上に迂回ルートができていて、地下道の施設には近づけませんでした。
プログラム1曲目は、ミヒャエル・ハイドン作曲/交響曲第39番。有名なヨーゼフ・ハイドンの弟で、半年後に作曲されたモーツァルト「ジュピター」に影響を与えた作品とされます。第1ヴァイオリン8、第2ヴァイオリン6、ヴィオラ5、チェロ4、コントラバス3の編成で、雛壇は一列目左からホルン2とオーボエ2。その後ろがトランペット2とファゴット2。ティンパニはトランペットの左でした。
柴田真郁が颯爽と登場。脚が長い。この日は全曲指揮棒なしで指揮しました。3楽章から成りますが、モーツァルトが影響を受けたということで、確かにハイドンとモーツァルトを足して2で割ったような作品でした。演奏は大きな音量は出さず、それほどシャープな音型ではありません。柴田の指揮はメロディーに合わせてよく動いて、大きな指揮。
プログラム2曲目は、モーツァルト作曲/交響曲第25番。17歳のモーツァルトが作曲。意外にもティンパニがないんですね。管楽器はオーボエ2、ファゴット2,ホルン4だけです。総合力重視で細部のデフォルメはしません。アクセントもきつくない。柴田は楽器が分離して聴こえるのを好まないようです。軽くてフワフワした自然体の響き。
休憩後のプログラム3曲目は、モーツァルト/死者のためのミサ曲「レクイエム」(レヴィン版)。レヴィン版は、アメリカのロバート・レヴィンが1991年に発表しました。有名なジュスマイヤー版との違いは、第8曲「ラクリモーサ(涙の日)」の後に、モーツァルトは失敗作として破棄した「アーメン・フーガ」があることで、柴田はレヴィンの講演を聞いたことがあるとのことですが、レヴィン版を指揮するのは初めてとのこと。
大阪響コーラスを聴くのは初めてでした。大阪交響楽団には十数年前まで専属の合唱団がありましたが、団員の高齢化で解散してしまったようですが、外山雄三(当時大阪交響楽団ミュージック・アドバイザー)が指揮する「第九」公演に合わせて、2019年に再結成したとのこと。左から、ソプラノ(25名)、アルト(23名)、テノール(12名)、バス(17名)の順で、ステージ後方に3列で並びました。黒い衣装です。大阪交響楽団のX(旧Twitter、@osakakyofficial)によると、7月から柴田による合唱練習が開始されたようです。オーボエがいないためチェロに合わせてチューニング。
独唱者は合唱団の最前列の中央に座りました。黒い衣装で喪服のようです。合唱団も独唱も楽譜を持って歌いました。ソリスト4人のオーディションは1月に告知があり、応募資格は「声楽の専⾨教育を受けた⽅、または、それと同等の実⼒を有する⽅」でしたが、150名以上の応募があって、柴田が2月6日に丸一日かけてオーディションをしたとのこと。柴田は「絶対の自信を持っている」と語っています。2月中旬に出演者決定の発表がありました。ソプラノの中川郁文(いくみ)は、
京都市立芸術大学第151回定期演奏会 大学院オペラ公演「カルメン」で聴きましたが、「祝・日比谷野音100周年~SaLaDスプリングコンサート 野音 de オーケストラ」(2023.5.4 日比谷公園大音楽堂)で共演した井上道義は、「中川郁文さん相当よかった!成功成功、期待の新人過酷な野外の条件ものともせず生来の明るさをお客さんに届けた。」と「Blog ~道義より~」で絶賛していました。本公演でも日本人離れした発声と響かせ方で伸びやかに響きました。中川は自身のInstagram(@ikumi_nakagawa)で、「とっても楽しかった……」と感想を綴っています。アルト独唱の山際きみ佳は、びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバーです。
大阪響コーラスは期待以上の出来でしたが、歌詞がぼやけてもやっと聴こえるのが残念。ちなみに、独唱の4人は出番に合わせて立ったり座ったりしましたが、合唱団はずっと立っていました。つまり入場から退場まで一度もイスに座っていません。
弦楽器は10-8-6-6-4の編成でしたが、合唱団よりも人数が少なく、合唱をたっぷり響かせるので、オーケストラは伴奏扱いでした。これは柴田が声楽科出身で、合唱指揮からキャリアをスタートさせたことと無関係ではないでしょう。全体的に速めのテンポ。「キリエ」はやや速めのテンポで、柴田は小刻みに腕を動かしました。「恐るべき王よ」は、「Rex」がスピード感があって短め。「思い起こして下さい」はオルガンが柔らかい響きでしたが、パイプオルガンではなく、チェロの後ろに配置したポジティフ・オルガンで演奏されました。「黙らせるとき」は、テンポが速い。注目の「ラクリモーサ(涙の日)」の後の「アーメン・フーガ」は、ラクリモーサと違ってテンポが速い。モーツァルトが作曲した作品として聴くには響きが新しすぎますが、作品としてはおもしろい。「主イエスよ」は速いテンポ。「サンクトゥス(聖なるかな)」は、後半のAllegroが「ホザンナ・フーガ」が拡張されてちょっと長め。「ベネディクトゥス(ほむべきかな)」も、後半のAllegroがやや長く、突然合唱が始まるので、ジュスマイヤー版に慣れた耳には驚きます。「アニュス・デイ(神の子羊)」の後半で、合唱が「sem-pi-ter」の歌詞を受け渡します。
カーテンコールでは客席から合唱指揮の中村貴志が登場しました。
柴田真郁は大阪交響楽団でオペラを演奏会形式で取り上げていて、声楽入りの作品を得意としているようです。
(2023.12.2記)