大阪交響楽団第234回定期演奏会


  2019年11月21日(木)19:00開演
ザ・シンフォニーホール

外山雄三指揮/大阪交響楽団
森下幸路(ヴァイオリン)

チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」
外山雄三/バレエ音楽「お夏、清十郎」より「パ・ド・ドゥ」
外山雄三/ヴァイオリン協奏曲第2番
ショスタコーヴィチ/交響曲第15番

座席:A席 1階T列3番



大阪交響楽団第107回名曲コンサート「ラプソディー」(夜の部)に続いて、外山雄三が指揮する大阪交響楽団の演奏会に行きました。ショスタコーヴィチ「交響曲第15番」をすばらしい打楽器セクションの演奏で聴きたくて、仕事を早退して参戦です。
大阪交響楽団第107回名曲コンサート「ラプソディー」(夜の部)のアンケートに答えて届いた「特別割引優待券」を使って、A席(5500円)が2500円で購入できました(ちなみに2500円はC席と同じ価格です)。当日券が17:30から販売されました。残念ながら座席は選べず、1階席後方左側の雨宿り席でした。ステージは見えますが、客席ノイズが響きやすいのが残念。客の入りはD席が完売で8割ほど。客層はご高齢が多い。

なお、この日に2020年度主催公演のラインナップが発表されました。2020年に大阪交響楽団は創立40年を迎えますが、ミュージック・アドバイザーの外山雄三が来年度から名誉指揮者に退くことになりました。定期演奏会の指揮もわずか1公演となります。現在88歳の高齢で、活動を少し減らしたいということでしょうか。正指揮者の太田弦に期待したいところです。今回の演奏会は、外山がミュージック・アドバイザーとして指揮する最後から1つ前の定期演奏会となりました。ホルンは大阪交響楽団第107回名曲コンサート「ラプソディー」(夜の部)同様にトロンボーンの前に配置されました。コンサートマスターは林七奈。

プログラム1曲目は、チャイコフスキー作曲/幻想序曲「ロメオとジュリエット」。二管編成ですが、弦楽器は多め。38小節からの弦楽器のピツィカートなど構築的というか引き締まった響き。126小節からも低弦のメロディーを聴かせて、ドイツの交響曲を聴くような壮大さがありました。あまりテンポを速くせず、ロマンティシズムにひたらず、弦の音の厚みを聴かせました。213小節からのフルートのメロディーの裏で、ホルンの四分音符+四分音符のスラーの音型を聴かせました。273小節以降もテンポは上がらず、堂々たる演奏。389小節からのヴァイオリンのメロディーでも、テューバとコントラバスがよく効いていて、チャイコフスキーの作品であることを忘れるほどでした。トランペットの音色が汚いのが残念。 外山はスコアをめくりながら指揮しました。

プログラム2曲目は、外山雄三作曲/バレエ音楽「お夏、清十郎」より「パ・ド・ドゥ」。この曲は当初のプログラムにはなく、外山の強い希望で直前に追加されました。プログラムの冊子『PROGRAM MAGAZINE』に、外山本人による曲目解説が別紙で挟み込まれていました。1975年に作曲されました。演奏は弦楽器がかなり減って、他はフルート1名と打楽器1名のみで、全員でも25名程度の小編成でした。大きく分けて3つの場面からなります。日本の民謡が主題となっているようで、フルートパートはもともと尺八で演奏されたとのこと。第3部ではバチで叩かれる丸いウッドブロック?(拍子木のような音がする)がリズムを連打し続けました。ヴァイオリンソロの後、尻切れトンボのように突然終わりました。外山雄三は自作でもスコアをめくりながら指揮しました。

プログラム3曲目は、外山雄三作曲/ヴァイオリン協奏曲第2番。ヴァイオリン独奏は、森下幸路(大阪交響楽団首席ソロコンサートマスター)。弦楽器が少し増えて管楽器も登場しました。ソリストの森下も譜面台を立てて演奏しました。もともとヴァイオリン・ソナタとして1964年に作曲され、1966年にヴァイオリン協奏曲に改編されました。しばらく演奏されていませんでしたが、2012年にひさびさに演奏されたとのこと(外山雄三指揮、松山冴花のヴァイオリン独奏)。3楽章からなりますが、演奏時間は約18分と短い。何とも言えない東洋的な音階。重めの和音で音の跳躍も広い。短いパッセージがどんどん挿入されたような音楽です。オーケストラ伴奏が分厚くかなりにぎやかで、オーケストレーションはおもしろいですが、メロディーの魅力はいまひとつ。
森下のヴァイオリンは線がやや細く、あまり音量が大きくありません。休みなくずっと弾いていますが、オーケストラに埋もれてかえって目立ちません。ヴァイオリン独奏は技術的に難しくないですが、うまく歌って聴かせるのが難しいでしょう。第3楽章はヴァイオリンのピツィカートが三味線のような音色です。ラストはオーケストラとの掛け合いがおもしろい。外山も演奏に満足したようで、笑顔で拍手に応えました。

休憩後のプログラム4曲目は、ショスタコーヴィチ作曲/交響曲第15番。打楽器はティンパニも含めて6名体制。外山はこの曲もスコアをめくりながら指揮しました。アンサンブルが難しく、事故が起こりそうでしたが、はっきりとキューを出していました。オーケストラの精度が試される作品と言えるでしょう。第1楽章冒頭の打楽器はちょっと軽い。強奏はかなりエネルギッシュ。240小節の大太鼓のffの一撃が強烈。255小節からの弦楽器の二連符、三連符、五連符がからみあった後、盛り上がりました。
第2楽章はスコアはmf指定ですが、大きめの音量から開始。チェロソロは高音もきれいな音色。すごく静かな曲ですが、強奏は一音一音かみしめるように演奏。後半はとてもゆっくりしたテンポ。
第3楽章もゆっくりしたテンポ。冒頭のクラリネットソロは一音ずつしっかり響かせました。続くヴァイオリンソロも同じ。
第4楽章は世界的に見てもこの作品の最も遅い演奏に分類されるでしょう。ギネス級かもしれません。不自然な遅さではなく、チェリビダッケのように意味のあるテンポ設定でした。これはただものではない音楽です。プログラムには「約42分」と記載されていましたが、実際には1時間近い大熱演でした。これはぜひCD化してほしいです。
冒頭のヴァイオリンが流麗。ただし、京都市交響楽団のほうが水準は上でした。大阪交響楽団はエキストラが多いのでやむをえません。64小節からのオーボエもゆっくり。177小節からのチェレスタは聴こえなくて残念。強奏も遅いテンポのまま。その後のヴァイオリンのメロディーもしっとり聴かせました。最後の弦楽器の和音も美しい。21:20に終演しました。

団員の外山への敬意が伝わる演奏会でした。オーケストラの技術がさらに向上すればいいですが、外山が今年度でミュージック・アドバイザーを退任するのが本当に惜しいです。外山には余った時間で、ぜひ京響を指揮してほしいです。

ザ・シンフォニーホール

(2020.1.1記)


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