京都市立芸術大学第151回定期演奏会 大学院オペラ公演「カルメン」


   
      
2016年2月21日(日)14:00開演
京都市立芸術大学講堂

奥村哲也指揮/京都市立芸術大学アカデミーオーケストラ(大学院管弦楽団)
京都市立芸術大学音楽学部合唱団
吉川秋穂(カルメン)、喜納和(ドン・ホセ)、池田真己(エスカミーリョ)、中川郁文(ミカエラ)、朝枝恵利子(フラスキータ)、和田悠花(メルセデス)、蔦谷明夫(レメンダード)、佐野大貴(ダンカイロ)、菅野翔太郎(スニガ)、浦方郷成(モラレス)

ビゼー/歌劇「カルメン」(日本語字幕付き)

座席:全席自由


京都市立芸術大学第151回定期演奏会に行きました。大学院オペラ公演として、「カルメン」全曲が上演されました。なんと入場無料でした。オーケストラ作品を中心に聴いてきたため、オペラ全曲を鑑賞する機会はあまりなく、演奏会で観るのは今回が初めてでした。「カルメン」ももちろん初めてですが、「カルメン」組曲は聴いたことがありました。上演時間は約3時間です。

パンフレットによると、大学院オペラ公演は1987年から始まって、今年で30回目とのこと。「カルメン」に挑戦するのは今回が初めてです。20日(土)と21日(日)の2日公演で、2日目に行きました。ダブルキャストで、1日目と2日目では主要キャストがすべて入れ替わりました。「大学院オペラ公演」と銘打っていますが、学部生も出演しています。ちなみに、京都市立芸術大学音楽学部音楽学科声楽専攻の総定員は56名(1学年14名)、大学院音楽研究科修士課程声楽専攻の総定員は10名(1学年5名)で、少人数教育が行なわれています。意外にも京都府外の出身者が多いようです。

京都市立芸術大学のキャンパスを訪れるのは初めてでした。京都市バスの「国道沓掛口」バス停から徒歩10分でした。会場の京都市立芸術大学講堂のキャパシティは450席で、入場できるのは当日先着400名でした。講堂は1981年に建設されて、入学式や卒業式などの式典が行われます。開場は13:00で、12:20頃に到着しましたが、すでに100人ほどが並んでいました。こんなにお客さんが多いとは予想外でした。長い行列ができたので、10分早く開場しました。
オーケストラは舞台前方のオーケストラピットで音出し中。開場後は客席はすぐに満席になって、補助イスや階段の通路に座る方もいました。パンフレットも足りなくなったようで、コピーを配布していました。予想以上の大入りです。開演前に担当教員の小濱妙美教授(声楽専攻)があいさつ。

パンフレットにはあらすじが掲載されていて、初心者に分かりやすい。幕間に読んで、ストーリーを予習できました。全曲は4幕からなります。すなわち、第1幕「セヴィリアのタバコ工場前の広場」、第2幕「1ヶ月後、セヴィリアの街の外れにあるリリャス・パスティアの居酒屋」、第3幕「山の中の密輸団の休憩地」、第4幕「闘牛場の前の広場」です。幕間に15〜20分の休憩がありました。

開演前の予ベルがユニーク。オーケストラの打楽器奏者の女性が、右手にぶら下げたハンドベルを鳴らしながら、下手側から客席に入場してきます(休憩後の予ベルも同様)。スポットライトを浴びて、指揮者の奥村哲也が登場。オーケストラの譜面台にはライトがついていて、雰囲気が出ます。有名な前奏曲が終わると幕が上がりました。原曲通りのフランス語上演で、日本語字幕(縦書き)は舞台の左右にプロジェクタで投影されました。なお、字幕は21日公演でカルメンを演じた糀谷栄里子(修士2回生)が作成しました。多才です。

演奏レベルが高くてびっくり。予想をはるかに上回る出来でした。オーケストラと声の一体感もすばらしい。キャストおよび合唱団の演技も言うことなし。演出を担当した今井伸昭(非常勤講師)の指導の賜物でしょう。

指揮の奥村哲也は、指揮台に置かれた椅子に座って指揮。白ブチのメガネが特徴的です。京都市立芸術大学非常勤講師で、プロフィールによると、イギリスのLondon College of Music出身で、海外で勉強された後、現在はオペラの指揮者として活躍しています。オーケストラだけでなく、独唱や合唱も大きな身振りで指揮しました。シンフォニックな音楽作りで、長い作品をよくまとめました。ブラボー。

京都市立芸術大学アカデミーオーケストラ(大学院管弦楽団)は2管編成で45名。打楽器と金管楽器を右に、コントラバスを左に配置しました。大編成ではありませんが、音量はじゅうぶんでした。よくまとまっていて、大健闘。クロックタワーコンサート〜京都大学と京都市立芸術大学による交流の午後〜 レクチャー&コンサート「続・オーケストラってなんだ?!〜オーケストラの魅力10倍教えます〜」で聴きましたが、今回のほうがいい演奏でした。大学院管弦楽団となっていますが、ほとんどが学部生でした。京都市立芸術大学音楽学部合唱団は29名。こちらも力量が高い。

キャストでは、カルメン役の吉川秋穂(メゾソプラノ)は、いい声で声量もあります。よく響いて、抜群の安定感。濃いアイシャドーのメイクをしていました。第1幕「恋は気ままなもの(ハバネラ)」では大きな拍手。第2幕の「ジプシーの歌」では扇子を持ってフラメンコを踊りました。ドン・ホセ役の喜納和(テノール)は声量はそんなに大きくないですが、丁寧な歌い方。第2幕から登場したエスカミーニョ役の池田正己(バリトン)はよく通る声。第3幕の「何を恐れることがありましょう」では、ミカエラ役の中川郁文(ソプラノ)が大熱唱。高音がよく伸びました。

舞台は出演者(合唱団)がたくさん出てくると狭く感じました。下手側に花道が作られました。舞台装置も学生が手掛けたとのこと。シンプルですが、芸術性が高い。第3幕の洞窟の美術はよかったです。さすが芸大です。舞台監督・舞台美術および大道具には、それぞれ京都市立芸術大学非常勤講師がクレジットされています。

終演予定は17:10でしたが、少し長引いて17:25に終演しました。カーテンコールでは大きな拍手が送られました。

初めてのオペラ鑑賞でしたが、意外に楽しめました。長い上演時間でしたが、退屈しませんでした。メロディーも親しみやすいからでしょう。オペラはCDで聴くよりも視覚的効果が高く、一生懸命演じてくれると情も湧いて応援したくなります。無料で観られるなんてまたとない機会でした。
京都市立芸術大学は、崇仁地域(京都駅の北東)への移転を予定しています。2020年度に一部移転、2023年度に全面移転という計画で、まだまだ先の話ですが、音楽学部の成果を発表するスペースとして、1000人程度が収容できる大ホールが必要でしょう。

(2016.3.19記)


京都市立芸術大学正門 京都市立芸術大学講堂 公演時間



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