大阪交響楽団第124回名曲コンサート「トルヴェール・クヮルテット結成35周年記念」(夜の部)


   
    2022年11月5日(土)17:00開演
ザ・シンフォニーホール

山下一史指揮/大阪交響楽団
トルヴェール・クヮルテット(サクソフォン四重奏)

長生淳/サクソフォン・クヮルテットとオーケストラのための協奏曲《Prime-Climb-Drive》
ガーシュウィン/パリのアメリカ人
ムソルグスキー(ラヴェル編)/組曲「展覧会の絵」

座席:S席 2階BB列33番


 今年4月から大阪交響楽団の常任指揮者に、山下一史が就任しました。「大阪4オーケストラ活性化協議会 2022−2023 シーズンプログラム共同記者発表会」では、山下本人もオファーに驚いたと話していましたが、来日できなかったオーラ・ルードナーの代役で第247回定期演奏会(2021.4.21)を指揮したことが、今回のオファーにつながったようです。今年で61歳。現在は、東京藝術大学音楽学部指揮科教授、愛知室内オーケストラ音楽監督、千葉交響楽団音楽監督、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団名誉指揮者を務めています。山下の指揮を聴くのは、京都の秋音楽祭 練習風景公開以来です。

名曲コンサートは、昼夜2回公演で、1998年から続いているようで、今年で24年目です。今回はトルヴェール・クヮルテットとの共演で、山下曰く、山下と須川展也は同じ年で、トルヴェール・クヮルテットが結成35周年を迎えたので、お祝いのコンサートにしたいとのこと。
トルヴェール・クヮルテットは、1987年に結成されました。トルヴェールの「惑星」を聴きましたが、2016年に亡くなった新井靖志に代わって、2007年からテナー・サクソフォーンに神保佳祐が加わりました。須川展也は、客員教授を務めている第5回京都市立芸術大学サクソフォン専攻生によるアンサンブルコンサート「Saxtation」で聴きました。メンバーは「パリのアメリカ人」と「展覧会の絵」にも出演しました。
 
チケットの発売は、7月5日の00:00からスタート。開始時間は10:00は一般的なので、00:00の開始は珍しい。「夜の部」のほうがいい席だったので購入しました。セブンイレブン発券で、発券手数料が110円かかります。
ザ・シンフォニーホールのカフェ、ショップ、プレイガイド、クロークは引き続き休止中でした。他のホールは再開しているのに慎重です。客の入りは3割程度でさみしい。コンサートマスターは、首席ソロコンサートマスターの森下幸路。別紙で配られた「本日のメンバーリスト」を見ると、木管楽器や打楽器でエキストラが多い。
 
プログラム1曲目は、長生淳作曲/サクソフォン・クヮルテットとオーケストラのための協奏曲《Prime-Climb-Drive》。「プライム・クライム・ドライヴ」と読み、長生によると「円熟、あくなき上昇、ドライヴ感」という意味とのこと。トルヴェール・クヮルテットの委嘱で、2006年に作曲されて、藤岡幸夫が指揮する関西フィルハーモニー管弦楽団第183回定期演奏会(2006.4.29 ザ・シンフォニーホール)で初演されました。長生はトルヴェールの「惑星」や「パガニーニ・ロスト イン ウィンド」など吹奏楽作品が多いので、オーケストラ作品も作曲していたとは知りませんでした。指揮台の周りに左から、ソプラノの須川展也(白シャツ)、アルトの彦坂眞一郎(赤シャツ)、バリトンの田中靖人、テナーの神保佳祐(青シャツ)が座りました。
3つの楽章からなり、25分程度の作品。第1楽章「Prime」はリズムが難しい。サクソフォン四重奏の音量が大きくて存在感があり、サックスのカデンツァは聴きどころが多い。打楽器はティンパニを含めて6人が必要ですが、バランスとして打楽器と金管楽器が大きく、弦楽器と木管楽器があまり聴こえません。第2楽章「Climb」は、テナーサクソフォンのソロから始まって盛り上がります。第3楽章「Drive」は、スウィングのノリ。
演奏後に、拍手に応えてアンコール。トルヴェール・クヮルテットの4人で、J.S.バッハ作曲/G線上のアリアを演奏。ソプラノの須川がメロディーに装飾音を入れました。山下一史は舞台袖で立って聴いていました。
 
プログラム2曲目は、ガーシュウィン作曲/パリのアメリカ人。トルヴェール・クヮルテットの3人が出演。もともとスコアにサクソフォン3(アルト、テナー、バリトン)が書かれています。クラリネットの左に、左からバリトン(田中)、テナー(新保)、アルト(彦坂)の順に同じ服で出演しました。クラクション(スコアではTaxi-Horn)が活躍。弦楽器は透明感がある音色ですが、線が細い。打楽器は強すぎる。396小節からようやくサックスの出番。トランペットソロの対旋律を聴かせます。541小節からトロンボーンの対旋律を聴かせるのがユニーク。山下は譜面台にポケットスコアを置いて指揮。真面目でドイツ音楽のようなアプローチでした。
 
休憩後のプログラム3曲目は、ムソルグスキー作曲(ラヴェル編)/組曲「展覧会の絵」。須川展也が黒い服に着替えてアルトサクソフォンを担当。クラリネットの左に座りました。
山下は譜面台なしで指揮しましたが、ロシア(ムソルグスキー)寄りでもフランス(ラヴェル)寄りでもない演奏。指揮が地味で、魅せる指揮ではありません。冒頭の「プロムナード」は、トランペットソロ以外の他の伴奏楽器は抑えめ。第1曲「グノームス(土の精)」は、練習番号11(Poco meno mosso, pesante)は遅いテンポ。四分音符が4つある小節は、スラー(3つ)とスタッカート(1つ)をはっきり吹き分けるのが特徴。第2曲「古い城」は、須川のソロが柔らかい音色。最後のデクレシェンドが長かったですが、スコアにはデクレッシェンドが2小節書かれているので、むしろ忠実です。第4曲「ビドウォ(牛車)」のテューバソロは、少しサイズの小さいチューバで演奏(ユーフォニアムではなかった)。第5曲「卵のからを付けたひなのバレエ」の小太鼓は、練習番号53からの「sur la caisse」の指示通りに、胴を叩きました。第6曲「ザムエル・ゴルデンベルクとシュムイレ」の弦楽器はあまり濃厚ではありません。「死者の言葉による死者との対話」は速めのテンポ。第10曲「キエフ(キーウ)の大きな門」のラストはよく鳴って、チャイムを強打。
カーテンコールでは山下は走って登場しました。終演後はアナウンスにしたがって規制退場がありました。
 

上福島北公園からザ・シンフォニーホールを望む

 
(2022.11.20記)


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