大阪交響楽団第107回名曲コンサート「ラプソディー」(夜の部)


  2019年8月31日(土)17:00開演
ザ・シンフォニーホール

外山雄三指揮/大阪交響楽団
津田裕也(ピアノ)

リスト(ベルクハウス編)/ハンガリー狂詩曲第2番
ドヴォルザーク/スラヴ狂詩曲第3番
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
外山雄三/沖縄民謡によるラプソディー
エネスク/ルーマニア狂詩曲第1番
シャブリエ/狂詩曲「スペイン」

座席:S席 2階CC列15番


大阪交響楽団の演奏会に初めて行きました。外山雄三の指揮を聴くのも恥ずかしながら初めてです。外山は今年で88歳の現役最高齢指揮者で、2016年4月から大阪交響楽団のミュージック・アドバイザーに就任しました。広上淳一の師匠で、以前は京都市交響楽団にも客演していましたが、なぜか聴く機会がありませんでした。今回のコンサートは、ラプソディー(狂詩曲)ばかりを6曲並べたユニークなプログラムです。

大阪交響楽団名曲コンサートは、年5回開催され、「昼の部」(13:30開演)と「夜の部」(17:00開演)の1日2回公演です。チケットの発売開始がものすごく早く、2019年度名曲コンサートの5回セット券は、2018年6月14日から発売されました。ちなみに、2020年度名曲コンサートの5回セット券は2019年5月19日から発売中です。

大阪交響楽団のホームページに、今回のコンサートの「曲目解説」と「シェフからのメッセージ」が掲載されました。また、前日の8月30日(金)には、「無料公開リハーサル」が、LICはびきの(羽曳野市立生活文化情報センター)ホールMで行われました。株式会社みのりの里(LICはびきの指定管理者)の主催で、入場無料ですが、LICはびきので配布される整理券が必要で、すでに配布枚数に達したとのこと。リハーサル終了後に外山のトークがあったようです。

今回の1回券は、オンラインで決済ができ、チケットはセブンイレブンで発券できました(発券手数料108円)。「夜の部」の開場は16:00でしたが、「昼の部」が長引いたようで、建物の前で待たされて、15分遅れの16:15に開場しました。プログラムは『PROGRAM MAGAZINE』という冊子になっていて、7月〜9月の主催公演のプログラムが掲載され、読み物も掲載されています。今年5月に亡くなった大阪シンフォニカー(当時)創設者で、大阪交響楽団永久名誉楽団代表の敷島博子の追悼文も掲載されていました。

この日のメンバー表が1枚挟み込まれていました。二管編成で楽団員は51名のため、ほとんどのパートでエキストラで増員 しています。小谷康夫(首席ティンパニ奏者、西宮市吹奏楽団常任指揮者、近畿大学附属高等学校吹奏楽部指導員)、花石眞人(首席パーカッション奏者、大阪学院大学吹奏楽部常任指揮者、吹奏楽団ハイブリッド指揮者)、潮見裕章(チューバ奏者、A-Winds奈良アマチュアウィンドオーケストラ ミュージックアドバイザー、大阪府立市岡高等学校吹奏楽部指導者)など、吹奏楽関係者にはなじみのある名前があります。今回はトランペットのエキストラで、高木宏之(ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団トランペット奏者、大阪工業大学文化会ウインドアンサンブル音楽監督、M's Sound Factory指揮者)も出演しました。

客の入りは5割ほどで、意外なほど少ない。早い時期からチケットを発売しているのに、この入りは意外でした。1階席は入っていましたが、2階席と3階席にかなりの空席があって残念。昼の部のほうが多いのでしょうか。 外山がしっかりした足取りで登場。ホルンを向かって左ではなく右に配置しているのが特徴的です(どうやら外山が指揮するときはこの配置のようです)。

プログラム1曲目は、リスト作曲(ベルクハウス編)/ハンガリー狂詩曲第2番。弦楽器と管楽器の音色がうまくブレンドされていて、ハーモニーの内声もよく聴こえます。強奏ではトランペットとトロンボーンがよく鳴りました。外山雄三はスコアをめくりながらの指揮で、基本的に下を向いて指揮が多く、あまり立ち位置は動きません。派手なアクションはなく、堅実な演奏です。

プログラム2曲目は、ドヴォルザーク作曲/スラヴ狂詩曲第3番。有名な「スラヴ舞曲集」ではなく「スラヴ狂詩曲」です。3曲ありますが、ほとんど演奏される機会はありません。ハープソロからはじまります。二管編成のためか見通しがいい。ラストのトランペットが強力。

プログラム3曲目は、ラフマニノフ作曲/パガニーニの主題による狂詩曲。ピアノ独奏は、津田裕也。津田は1982年生まれ。2007年の第3回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門で優勝し、東京藝術大学音楽学部准教授を務めています。津田は譜面なしで演奏。遅めのテンポで開始。第2変奏はオーケストラ伴奏が控えめ ですが、その次の第3変奏は第2ヴァイオリンなどをよく聴かせて、オーケストラの伴奏が何を演奏しているかよく分かります。津田のピアノはやや硬めの音質。第9変奏もやや遅め。外山雄三は、各変奏の間は間を開けずに続けて演奏しました(第10変奏「怒りの日」の後も)。ピアノソロから始まる第15変奏は、津田がすごく速く演奏。外山はやや大きめのアクションですが、淡々と指揮。オーケストラ伴奏は、ティンパニと小太鼓が強力。第17変奏のトランペットとフルートの高音の長い音符の音程が合わないのが気になりました。過去の京都市交響楽団の3回の演奏(京都市交響楽団第527回定期演奏会オーケストラ・ディスカバリー2012 〜こどものためのオーケストラ入門〜 「名曲のひ・み・つ」第1回「作曲家に隠された真実(作曲家編)」京都市交響楽団大阪特別公演)では感じなかった部分です。最近テレビCMでも使われている第18変奏は美しく聴けました。難局の第22変奏も事故なく演奏。第23変奏に入る前のピアノソロに入る前に間を置きましたが、スコアに全休符の指定がありました(楽譜に忠実です)。最後の第24変奏でもクラリネットやフルートのリズムが難しい装飾的な音符を強調しました。

拍手に応えて、津田がアンコール。メンデルスゾーン作曲/無言歌集第2巻より「ベネチアの舟歌」第2番を演奏。自分で紹介しましたが、早口で聞き取れませんでした。津田はドイツ系の曲が似合うかもしれません。ステージマナーはまだ若いです。

休憩後のプログラム4曲目は、外山雄三作曲/沖縄民謡によるラプソディー。自作自演です。1964年に作曲されました。『PROGRAM MAGAZINE』の「シェフからのメッセージ」で、外山は「正直に申せばゾルタン・コダーイの「孔雀は飛んだ」の主題による変奏曲がモデルである」と明かしていますが、主題の展開のさせ方がかなり似ています。冒頭はティンパニと低弦で始まります。主題のメロディーはあまり馴染みがなく、「めんそーれ」のような雰囲気の曲ではありません。不協和音もあってシンフォニック。フルートに尺八のような奏法があり、祇園祭でも使われる締太鼓やチェレスタも使用します。

プログラム5曲目は、エネスク作曲/ルーマニア狂詩曲第1番。ゆったりしたテンポで優雅な雰囲気。ティンパニの小谷と打楽器の花石がうまい。ズンチャズンチャのリズムに乗って踊りたくなりました。トランペットとホルンのゲシュトップ奏法も楽しい。弦楽器も磨かれています。最後は全員で強奏。

プログラム6曲目は、シャブリエ作曲/狂詩曲「スペイン」。これは有名な作品です。色彩感があり、ソロをしっかり目立たせます。引き締まった響きもいい 。

拍手に応えてアンコール。拍子木の連打からはじまって、まさかの外山雄三作曲/管弦楽のためのラプソディーを演奏。アンコールで演奏するとはいい意味で反則で、完全に不意討ちでした。「ラプソディー」と言えばやはりこの作品ですね。大植英次が「大阪フィルハーモニー交響楽団星空コンサート」などでよく演奏しましたが、こちらが正真正銘の自作自演です。ただし、Kin(キン)の代わりに鰐口(わにぐち)のような青くて丸い金属を叩いたので、客席から少し笑い声が起こりました。134小節からの「信濃追分」のフルートソロがすばらしい。ちょっと泣けました。165小節の「八木節」が始まる前の掛け声はなし(楽譜通り)。外山は自作でもスコアをめくりながら指揮して、楽譜に忠実な演奏を目指していました。まさに非の打ち所がない演奏で、もう一度聴きたいです。この作品を外山が指揮した録音は、正指揮者を務めているNHK交響楽団と、音楽監督を務めた仙台フィルハーモニー管弦楽団との録音がある程度のようです。ぜひ大阪交響楽団との演奏もCD化を希望します。

19:15に終演。2時間を超える演奏会になりました。「昼の部」が長引いたのも、アンコールの1曲が多かったからですね。

外山雄三は、カーテンコールではオーケストラの後ろ(ほとんど舞台袖の近く)で拍手を受け、オーケストラを立たせる謙虚な姿勢が見られました。「ラプソディー」なので、もう少し暴れてもよかったかもしれません。大阪交響楽団は二管編成ですが、音量に不足はなく、むしろ重量感がありました。

なお、今回の演奏会のアンケートに回答し、新たにダイレクトメールの郵送登録をした人に、定期演奏会で使用できるA席50%割引券を郵送するとのこと。S席が対象ではありませんが、すごい特典です。2週間ほどで、「特別割引優待券」が届きました。割引対象公演は、第233回定期演奏会(10月11日(金))か第234回定期演奏会(11月21日(木))のどちらかで、A席が2500円で購入できます。ただし、当日券窓口(当日17:30~)のみの対応で、満席の場合は使用できないとのこと。

大阪交響楽団の本拠地は堺市にあるので、今年オープンするフェニーチェ堺(堺市民芸術文化ホール)で今後公演を行うかどうか気になるところです。ちなみに、10月2日(水)に大ホールで開催される「オープニング記念コンサート」は、なぜか広上淳一が指揮する京都市交響楽団が出演します。申し込みましたが、抽選の結果、落選でした。残念。

上福島北公園から望む 開場前

(2019.9.15記)


大阪交響楽団第107回名曲コンサート「ラプソディー」(夜の部) アルカイック防災フェスティバル 避難訓練コンサート