滋賀銀行創立90周年記念ガラ・コンサート


  2023年10月29日(日)14:00開演
滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール大ホール

篠﨑靖男指揮/しがぎん90周年記念スペシャル・オーケストラ(大阪交響楽団に滋賀ゆかりの演奏家達が加わり、本公演のために特別編成)
村治佳織(ギター)
賛助出演:大津児童合唱団、大津ジュニアオーケストラ、威風堂々合唱隊
総合司会:宅間司、中川悠紀

ジョン・ウィリアムズ/映画「ジュラシック・パーク」のテーマ
ロドリーゴ/アランフェス協奏曲
チャイコフスキー/イタリア奇想曲
ヨハン・シュトラウスⅡ世/美しく青きドナウ
ラヴェル/ボレロ
エルガー/行進曲「威風堂々」第1番

座席:指定席 1階1Q列6番


滋賀銀行が創立90周年を記念してガラ・コンサートを開催しました。滋賀銀行は1933年(昭和8年)10月1日に、百三十三銀行と八幡銀行が合併して誕生しました。私も口座を持っていて、給与振り込みに利用しています。

滋賀銀行は1993年の創立60周年以来、10年ごとに記念コンサートを開催していて、社史『しがぎん70年の歩み~共存共栄』によると、創立60周年は「しがぎん共感コンサート」を2日間にわたって開催しました(1993.10.23 近江八幡市文化会館、1993.10.24 守山市民ホール)。オーケストラは日本フィルハーモニー交響楽団で、ソリストとして1日目には前橋汀子(ヴァイオリン)が、2日目には小山実稚恵(ピアノ)が出演しました(指揮者は不明)。この頃は、まだびわ湖ホールはありませんでした。また、創立70周年には「滋賀銀行創立70周年記念ガラコンサート」(2003.10.25 ひこね市文化プラザグランドホール、2003.10.26 びわ湖ホール大ホール)を開催し、佐渡裕が指揮する京都市交響楽団と滋賀銀行70周年記念スペシャル・オーケストラ&コーラスなどが出演しました。また、創立80周年には「滋賀銀行創立80周年コンサート」(2013.9.23 びわ湖ホール大ホール)を開催し、佐渡裕指揮の兵庫芸術文化センター管弦楽団と御喜美江(アコーディオン)が出演しました。

本公演のチケット代は、「創立90周年記念特別価格」で2000円の激安価格。滋賀銀行と関わりがない人でも来場できて、チケットは7月に発売されましたが、あまりいい席がなく、端の席でしたが、そんなに悪くない席でした。全席完売でした。プログラムはカラー印刷で、出演メンバーの名前も記載されています。

開演前に滋賀銀行頭取の久保田真也が原稿なしで挨拶。本公演の「いっしょに未来へ」のコンセプトを説明しました。プログラムにも「音楽を志し、未来に夢を抱く青少年の方々が、プロのオーケストラや日本を代表する演奏家と共演し、その感動体験が将来大きな実を結ぶようにとの願いを込めて企画いたしました」と説明されています。

本公演のオーケストラは、しがぎん90周年記念スペシャル・オーケストラ。「大阪交響楽団に滋賀ゆかりの演奏家達が加わり、本公演のために特別編成」と紹介されました。指揮の篠﨑靖男は55歳。「滋賀ゆかりの指揮者」と紹介されましたが、生まれは京都市のようで、中学生と高校生の頃は大津市に住んでいたようです。2001年から2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者、2007年から2014年までフィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者、2015年から2018年まで静岡交響楽団常任指揮者を務めました。2000年に日野町にオーケストラ・ムジカ・チェレステを立ち上げました。コンサートマスターは、大阪交響楽団コンサートマスターの林七奈。

プログラム1曲目は、ジョン・ウィリアムズ作曲/映画「ジュラシック・パーク」のテーマ。サウンドトラックを持っているほど惚れ込んだ映画ですが、本公演では2つのテーマを続けて演奏しました。ホルンソロからスタート。ホルンは本公演ではステージ上手に配置されていました。オーケストラは演奏慣れしているようで、よく鳴ります。篠﨑の指揮も振りが大きい。プログラムの紹介によると、篠﨑はジョン・ウィリアムズのアシスタントを務めたことがあるとのこと。総合司会の宅間司と中川悠紀(ともにしがぎん経済文化センター)が登場。宅間司は指揮者としても活動しているようです。

プログラム2曲目は、ロドリーゴ作曲/アランフェス協奏曲。ギター独奏は村治佳織。村治佳織は「新イタリア合奏団&村治佳織」(2020.9.27 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール)を聴きに行く予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で中止になってしまったので、初めて聴きます。今年がデビュー30周年で、45歳。私と同い年です。『レコード芸術』(1996年2月号)に、まだ高校生だった頃のインタビュー記事に載っていて、その時の印象がまだ強く残っています。司会の宅間司は「村治佳織はロドリーゴ本人に会ったことがある」と紹介しましたが、1999年にNHKで放送された番組を見たことがあります。水色の柄のロングスカートのワンピースで、指揮台の左横の薄い台の上で演奏しました。
アランフェス協奏曲を聴くのは、京都市交響楽団特別演奏会(朴葵姫)以来でしたが、ギターの音量が小さくて、線が細い。ラスゲアード奏法でも和音をかき鳴らすというよりは、ひとつひとつの音符を丁寧に聴かせるスタンスです。村治の前にスタンドマイクが置かれていましたが、効果があるのか分かりませんでした。オーケストラも音量を抑えていて、繊細な演奏です。第2楽章冒頭のギターのアルペジオは深みがあり、一気にアルハンブラ宮殿が思い浮かびました。村治はメロディーをゆっくりとテンポを揺らして弾きました。琵琶っぽい音色と語り口で、目をつむって演奏。カデンツァが終わる練習番号11から、ギターとオーケストラとのタイミングが少し合わなかったのが残念(篠﨑の指揮の問題)。第3楽章は、21小節のように4つの音を同時に鳴らす「ジャン」が力強くて引き締まります。オーケストラは合いの手を強調していましたが、聴き手を飽きさせないためでしょうか。

拍手に応えてアンコール。「滋賀銀行創立90周年記念スペシャル・バージョン」として、2曲を続けて演奏。マイヤーズ作曲/カヴァティーナは、表情が変わってウクレレのようなかわいらしい音色。休みなくディアンス作曲/タンゴ・アンド・スカイは、楽器を叩くスパニッシュな曲。どちらの曲も10月18日にリリースされたベストアルバム「Canon~オールタイム・ベスト」に収録されています。

休憩後のプログラム3曲目は、チャイコフスキー作曲/イタリア奇想曲。金管楽器のタタタタン(三連符+八分音符)の音型が繰り返し出てきますが、あまりそろいません。打楽器が盛大に盛り上がりましたが、やや腰が重い演奏。ロシアらしくて荒々しくてよいとも言えます。
司会の二人が村治と篠﨑にインタビュー。「アランフェス協奏曲」でコールアングレを演奏した岡山理絵が紹介されました。村治が紫の上着を羽織って登場して、アンコール曲を自分で紹介。上述の通りですが、どうやら主催者かリクエストがあったようです。篠崎は滋賀銀行のカラーの青のチーフを上着のポケットに入れているとアピール。「10年後の夢」を聞かれて、篠崎は「100周年を同じメンバーでやりたい」と熱く語りました。

プログラム4曲目は、ヨハン・シュトラウスⅡ世作曲/美しく青きドナウ。指揮台を客席ぎりぎりまで下げて、オーケストラの前に賛助出演の大津児童合唱団が3列で並びました。大津児童合唱団は1953年にNHK大津放送児童合唱団として発足。その後、NHK機構改革により「大津児童合唱団」と改名し現在に至っています。水色のスカートが映えて、女子のみかと思ったら男子もいて、ハープパンツをはいていました。合唱団が歌う歌詞の作詞は中山知子。創立70周年を記念した第50回定期演奏会(2023.3.26)でも披露したとのこと。メロディーに乗せて歌い、ずっと歌詞が続くので、合唱団は歌いっぱなしです。最後は少し原曲と違いました。演奏後に指導者の田村由美子が登壇。61名のところを48名が出演して、小学校4年生から大学2年生までが在籍しているとのこと。なお、司会の宅間司から、ヨハン・シュトラウスの遺産は、現在の価値に換算すると、遺産は2000億円だったという豆知識が紹介されました。銀行が主催のコンサートにふさわしいネタです。

プログラム5曲目は、ラヴェル作曲/ボレロ。賛助出演は、大津ジュニアオーケストラ。1985年に大津管弦楽団の附属団体として発足し、2002年に独立したとのこと。指導者の杉中博と団員にインタビュー。大津ジュニアオーケストラメンバーの出演は選抜された11名(第1ヴァイオリン5名、第2ヴァイオリン3名、ヴィオラ1名、チェロ2名)で、上が白シャツなので、すぐに見分けがつきます。篠崎は指揮棒なしで指揮。小太鼓は指揮台の前に置かれて、花石眞人(大阪交響楽団首席打楽器奏者)が演奏。知らないうちに髪が白髪になっててびっくり。速めのテンポで、感情なく叩きます。指揮はもう少し遅いテンポで歌い込みたいようでしたが、花石はそうしたくないようで、後半はむしろアッチェレランド気味にどんどんテンポが速くなるのが珍しい。指揮者と打楽器のせめぎ合いが感じられておもしろい。テナーサックスとアルトサックスはクラリネットの左に配置。291小節からの小太鼓の追加はひな壇の最後列で演奏。スコアでは1台ですが、2台追加して、奥村隆雄と中谷満が演奏しました。両名ともスティーヴ・ライヒ/ドラミング 湖国が生んだ打楽器奏者の協演に出演し、演奏後に「滋賀ゆかりの演奏家」と紹介されました。終盤は打楽器が強すぎて、それ以外があまり聴こえないほどでした。

プログラム6曲目は、エルガー作曲/行進曲「威風堂々」第1番。大津児童合唱団がステージ前方に並び、一般公募で募集した威風堂々合唱隊が紹介されて、2階バルコニー席から立ち上がりました。募集は90名でしたが、応募が多かったため112名になったとのこと。参加費は無料で、本番2日前からリハーサルを行なったようです(指導は田中正彦)。合唱隊の位置は私の席のすぐ左上でしたが、私服だったので普通のお客さんだと思っていたので、びっくり。原曲の歌詞(ベンソンの詩「Land of hope and glory(希望と栄光の国)」)を原語で暗譜で合唱しました。篠﨑は後ろを振り向いて指揮しました。演奏終了後に途中からもう1回演奏。最後にステージの左右から金色のテープが発射。カーテンコールでは村治と指導者も登場して、華々しく終演しました。16:35に終演。16:00終演予定だったので、だいぶ遅くなりました。

90周年にふさわしいプレミアム感が出た演奏会となりました。一般企業の周年事業で、演奏会を開催するのは珍しいですが、滋賀銀行では、文化事業を担う株式会社しがぎん経済文化センター(KEIBUN)の存在が大きいでしょう。本公演に賛助出演した青少年にとっては、びわ湖ホールのステージで、プロのオーケストラと共演できたのは貴重な経験でしょう。威風堂々の合唱団を公募した取り組みもすばらしく、「いっしょに未来へ」のコンセプトも共感できました。10年後の創立100周年のコンサートにも期待しています。


びわ湖ホール2階入口

(2023.11.5記)

 
京都市交響楽団第682回定期演奏会 INAMORI ミュージック・デイ