立命館大学交響楽団第128回定期演奏会


   
    2022年12月1日(木)19:00開演
京都コンサートホール大ホール

東孝樹・阪哲朗指揮/立命館大学交響楽団
辻彩奈(ヴァイオリン)

ファリャ/組曲「三角帽子」より抜粋
サン=サーンス/ヴァイオリン協奏曲第3番
マーラー/交響曲第1番「巨人」

座席:全席自由


昨年末の第126回定期演奏会、6月の第127回定期演奏会に続いて、立命館大学交響楽団の定期演奏会に行きました。お目当ては、ヴァイオリン独奏を務める辻彩奈。大学オーケストラがよく呼べたものです。阪哲朗が常任指揮者を務める山形交響楽団での共演機会が多いので、誘われたのでしょうか。京都コンサートホール バックステージツアーですれ違いましたが、演奏を聴くのは初めてです。

3月から団を運営してきた3回生にとっては集大成となる演奏会です。プログラムの出演者に名前が記載されているのは、大学院生1名、4回生18名、3回生34名、2回生35名、1回生38名、他大学6名(同志社大学2、京都教育大学1、京都産業大学1、京都工芸繊維大学1、京都ノートルダム女子大学1)、OB6名、エキストラ5名の143名です。コロナ禍ですが、1回生が多数入団してくれたようです。

チケットは全席自由(前売1,000円)で、京都コンサートホールチケットで購入できて、当日にチケットが受け取りできました。ポディウム席には客入れはなくほぼ満席でしたが、立命館大学交響楽団のTwitterによると、お客様は1290名だったようです。今回はライブ配信はありませんでした。

オーケストラは第127回定期演奏会と同じく対向配置で、広上シフト(と勝手に呼んでいる)雛壇を客席に二人分近づける配置でした。オーケストラも指揮者もマスクなしでの演奏でした。

プログラム1曲目は、ファリャ作曲/組曲「三角帽子」より抜粋。第一組曲から「序曲」「午後」「ファンダンゴ」、第二組曲から「終幕の踊り」が演奏されました。指揮は、学生指揮者の東孝樹(3回生)。「序曲」はもっと音圧が強くてもいいのに、ちょっと優等生的な解釈。「ファンダンゴ(粉屋女房の踊り)」で少しスペインらしくなってきました。「終幕の踊り」は速めのテンポですが、もっと大胆な表現でもいいのに、あっさりした演奏でした。
 
プログラム2曲目は、サン=サーンス作曲/ヴァイオリン協奏曲第3番。ヴァイオリン独奏は辻彩奈。1997年生まれの24歳。黒のドレスで登場。指揮は、2006年からオーケストラアドヴァイザーを務める阪哲朗。ヴァイオリン協奏曲のなかでサン=サーンスはあまり演奏会では演奏されないので、初めて聴きました。辻のヴァイオリンは歌うように弓を動かしますが、あまり音量を出しません。辻は写真ではいつも笑顔ですが、弾いているときは険しい表情でした。オーケストラも大きな音量は出さず、音程にかなり気を使って、室内楽的なまとまりがあって、かなり健闘しました。阪も身をかがめてオーケストラをコントロール。第1楽章のラストも、スコアの指定はfですが、大きな音量を出しません。
第2楽章は辻が芯のある音色。休みなく第3楽章へ。22小節からのヴァイオリンソロの音の跳躍は、辻が鮮やかな弓さばきを見せました。中間部の弦楽器だけのコラールは、オーケストラがレベルアップしたことを感じました。オーケストラの音量は最後までおさえめ。辻は繊細ですが、しっかりした音色を持っています。
拍手に応えて、辻がアンコール。J.S.バッハ作曲/無伴奏パルティータ第3番より「ガヴォット」を演奏。辻のヴァイオリンは、こういう曲が似合います。重音でもそれぞれの声部に生命感がありました。
 
休憩後のプログラム3曲目は、マーラー作曲/交響曲第1番「巨人」。今年3月の京都市交響楽団第665回定期演奏会の印象がまだ強いですが、立命館大学交響楽団では第106回定期演奏会で聴きました。大編成での演奏で、フルート6、クラリネット6、ホルン8など管楽器が多いですが、これはメンバーの乗り番を増やすためでしょう。
第1楽章の22小節からのトランペット3は、下手の舞台裏で演奏した後、ステージに戻ってきました。162小節で繰り返し。ソロが不安定なのが残念。ヴァイオリンパートは確実にレベルアップしましたが、それ以外(チェロなど)の音程などが耳についてしまいました。第3楽章はソロのミスが少し目立って残念。また、奏者の力量で音量が凸凹するので、コントロールできるといいです。休みなく第4楽章へ。やっと第2ティンパニの出番。第1ティンパニと第2ティンパニの距離を左右に少し離していたので、ステレオ効果は楽しめましたが、全体的に打楽器はおさえめ。速いテンポでもオーケストラはついていけています。中間部のヴァイオリンのメロディーをあまり濃厚にしないのは阪の解釈でしょうか。ラストも速めのテンポで、ホルン8、トランペット1、トロンボーン1が立奏しました。
21:20に終演。アナウンスにしたがって、分散退場がありました。
 
協奏曲での繊細な伴奏など確実にレベルアップしていました。今後の演奏会にも期待します。
 
(2022.12.15記)


JUN'ICHI'S Café~京都コンサートホール館長の音楽談義~Vol.3「広上淳一館長の『音楽づくり』に迫る」 京都市立芸術大学音楽学部・大学院音楽研究科第169回定期演奏会