京都コンサートホール バックステージツアー
京都府に発令されているまん延防止等重点措置は2月20日までの予定でしたが、3月6日まで延長されることになり、この日の新規感染者数は1813人でした。
11時に楽屋口に集合でしたが、14時から小ホール(アンサンブルホールムラタ)でヴァイオリンリサイタルを行なう辻彩奈とすれ違いました。お付きの人はおらず、一人で歩いて来られていました。かわいいし、オーラがすごかったです。
楽屋口を入ってすぐの受付で封筒を受け取って、楽屋口のすぐ近くにあるアーティストラウンジで待機。丸テーブルとイスが置かれていました。封筒には案内パンフレットが3種類入っていました(上部の写真参照)。どれも一般に配布されていないようで、見たことがないものでした。参加者の年齢層が意外に高い。もしかしたら私が最年少だったかもしれません。大ホールでは14時開演の「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.69「オルガニスト・エトワール「大平健介&長田真実」」がゲネプロ中で、パイプオルガンの演奏が聴こえて、モニタにステージの様子が映っていました。
11時になって、管理課の若い女性スタッフがマイクで説明。ゲネプロ見学以外は、写真撮影はOKとのこと。京都コンサートホールは、26年前に建築家の磯崎新(あらた)が建設。磯崎は、なら100年会館や水戸芸術館などを手掛けて、2019年にはプリツカー賞(建築家のノーベル賞)を受賞しました。今年で90歳です。
「京都コンサートホールのスロープは、日常から非日常を切り離すためにあえて長くした。エントランスホールに立っている柱12本は、干支十二支の絵がはめこまれていて、幾何学模様の床には風水の絵がある」と説明しました。出演者は先ほどの楽屋口から入って、アーティストラウンジで出演までの時間を過ごすとのこと。なお、小ホールの楽屋には、楽屋口からエレベーターで上がれて、小ホールの楽屋等も4階にあるようです。
ここからは館内を移動して見学。密を避けるために、参加者を半分に分けました。まず、アーティストラウンジのすぐ横に、楽屋A〜Dがあります。全室にトイレとシャワーがあるとのこと。楽屋Aにはグランドピアノがあり、指揮者はこの部屋を使用していると思われます。楽屋Bにもピアノがありました。楽屋Dは大平健介と長田真実が使用中でした。
続いて、ピアノ庫の見学。ピアノ庫は他のホールのバックステージツアーでは見られなかったので貴重です。ステージマネージャーが説明。あまり広くない部屋に、ピアノが4台置かれていました。スタインウェイ3台とヤマハ1台で、もう1台(ベーゼンドルファー)あるが、本日は小ホールで辻彩奈ヴァイオリンリサイタルが使用中とのこと。室内は温度と湿度の管理を徹底しているとのこと。出演者がどのピアノを使うかについては、調律師が選ぶことが多く、選定させて欲しいと言われて弾きにくることがあるとのこと。また、アマチュアの演奏会でも同じ楽器を使用するので、プロと同じピアノで発表会ができるのでテンションが上がるとの声があるとのことです。持ち込みもあり、内田光子やツィメルマンは自分の楽器で演奏したとのこと。ピアノ庫には、他にチェンバロとポジティフオルガン(初めて見ました)もありました。ピアノ庫を出てすぐの対面に大きなエレベーターがあり、これでホールまで運ぶとのこと。
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アーティストラウンジに戻って、パイプオルガンの説明。「パイプオルガンは、ドイツのヨハネスクライス社製で、ドイツ式とフランス式の2つの特徴を持つ。尺八、篠笛、篳篥(ひちりき)など、90の音色が出せる」とのこと。いろんな音色が出せるのは初めて知りました。「パイプオルガンが正面ではなく、左右非対称に配置されているが、オーケストラの配置も左右対称ではないという建築家の考えによるもので、パイプオルガンを上手に寄せたのは風水で東南の方角に音が出るものを置くとよいという考えにより、空いた空間にボックス席を作った」と説明しました。パイプオルガンの配置については、京都市交響楽団練習風景見学でも井上道義がほぼ同じ話をしていました。
大ホールの客席に移動して、14時開演の「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.69「オルガニスト・エトワール「大平健介&長田真実」」のゲネプロを見学。1997年にスタートしたオルガンコンサートで、今年で25年69回を数えるとのこと。ステージ脇の通路を通って、ホワイエに出て、1階席後方から入場して、後部座席で聴きます。ポディウム席の後ろにあるオルガン本体の演奏台ではなく、ステージ上から演奏する「リモート式」の演奏台で演奏していました。ステージには大平と長田の他には誰もおらず、二人だけでゲネプロを進めます。サン=サーンスの「死の舞踏」を連弾。低音がよく響きます。演奏が終わると二人で会話して、次の曲へ。一人で弾く曲は、もう一人がすぐそばで立って聴いています。お互いに数曲を演奏して、長い間見学しました。本番は3階席の座席を取ったので、どう聴こえるでしょうか。
ゲネプロを一時中断して、参加者がステージ上に移動。京都コンサートホールのステージに上がるのは、高校生で出場した京都府吹奏楽コンクール以来、25年ぶりでしたが、普段客席から見ていて感じるよりも、ステージがあまり広いと思いませんでした。ステージの床にケーブルがあるので踏まないようにとのこと。大平と長田にスタッフがマイクでインタビュー。
パイプオルガンの魅力について、長田真実は「一台として同じ楽器はないところ」、大平健介は「7000本のパイプを使うが息が足りなくなることはない、風の楽器」と話しました。京都コンサートホールのパイプオルガンについては、長田は「温かい深い包み込まれる音色」、大平は「音色の選択肢が多く幅が感じられる。いろいろできるので、音作り(レジストレーション)に時間をかけた」と答えました。
参加者から質問に答えて、「リモートコンソールで弾いているが、演奏台に近いと残響がありすぎる場合は演奏が逆に難しいことがある。調律は演奏会前に必ずしている。パイプがケースの中に入っている扉が開閉できて、パイプオルガンは音量が変えられないので、
鍵盤の左右にある白いボタンで音色を変化させる。このホールの楽器はメモリーカードで覚えさせられるが、かつては両脇にアシスタントがいて操作していた。ストップの指定がある曲とない曲があり、指定がない曲は自分で考えて決め、ある曲でも作曲された国のオルガンの特徴や使用するオルガンによって変えているとのこと。楽譜にも付箋で貼っている」と話しました。尺八、篠笛、笙の音色を、左右のボタンを押して演奏しました。
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ゲネプロ見学が終了し、ステージ脇を通って、アーティストラウンジへ。ステージ脇(出演者溜まり)のスペースはもっと広いと思っていましたが、意外に狭い。オーケストラの団員が開演前に続々とステージに入場してくるのは、アーティストラウンジで整列しているということなのでしょう。
最後にアンケートを記入して、お土産(「京都の秋音楽祭」第25回開催記念のメモ帳)を渡されて、12:40に終了しました。
パイプオルガンを紹介するために、オルガンが使われる公演がある日の午前中に、このバックステージツアーを企画したということでしょう。普段公開されない楽屋やパイプオルガンの演奏台が近くで見れて楽しめました。次はステージのセリのアップダウンを見たいですね。カメラマンが帯同していたので、私が写っているかもしれません。
14時の「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.69「オルガニスト・エトワール「大平健介&長田真実」の開演まで、1階のカフェテリア「カフェ コンチェルト」でランチ。2018年2月にオープンして、京都コンサートホール会員は、5%割引で購入できます。2016年3月に閉店したビストロ「ラミューズ」とは違う業者で、現在はホールで公演がある日のみ営業しています。
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