サントリーホール大ホール
ユベール・スダーン指揮／東京交響楽団
澤畑恵美（ソプラノ）、小川明子（アルト）、高橋淳（テノール）、久保和範（バス）
東響コーラス
ブルックナー／交響曲第９番（ノヴァーク版）
ブルックナー／テ・デウム
座席：Ｓ席 ２階Ｃ ７列２３番
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２０１０年７月１１日（日）18:00開演 サントリーホール大ホール ユベール・スダーン指揮／東京交響楽団 ブルックナー／交響曲第９番（ノヴァーク版） 座席：Ｓ席 ２階Ｃ ７列２３番 |
東京交響楽団の2010-11シーズンは「After Schumann」と題して、シューマン以降の作曲家が取り上げられます。ブルックナーはその中核をなす作曲家で、今回の７月定期では、音楽監督のユベール・スダーンがブルックナー「交響曲第９番」を取り上げました。ちなみに、スダーンは１１月にも「交響曲第８番」を指揮します。
ブルックナー「交響曲第９番」は、昨年１年間で３人の指揮者で聴きました。スクロヴァチェフスキ（読売日響第114回東京芸術劇場マチネーシリーズ）、井上道義（京都市交響楽団第529回定期演奏会）、金聖響（立命館大学交響楽団第102回定期演奏会）の演奏を聴きましたが、ユベール・スダーンの斬新なアプローチを期待して聴きに行きました。この日は、参議院議員選挙の投票日でしたが、期日前投票を済ませて東京に向かいました。スダーンの演奏を聴くのは、京都新聞トマト倶楽部 京響コンサート ユベール・スダーンのフランス音楽 IN KYOTO以来です。
また、今回の演奏会ではブルックナーが生前に語ったように、「テ・デウム」が第４楽章として演奏されるのが注目されます。「テ・デウム」は合唱と独唱を必要とするので、経費的にも「テ・デウム」が演奏されることはほとんどありません。なんとも贅沢な演奏会です。
あいにくの雨でしたが、いつものように開演前のパイプオルゴール演奏がありました。３月の都響プロムナードコンサート��337のときに、アーク・カラヤン広場にあった植物のオブジェ「Bridge of Plants」はなくなっていました。期間限定だったようです。
ロビーの掲示と開演前のアナウンスで、「途中で休憩がないこと」と「「テ・デウム」のソリスト入場の際に、拍手を遠慮いただきたいこと」が告げられました。客の入りはほぼ満席。Ｐブロック（ポディウム席）には合唱団が入るため、客を入れていません。
ポディウム席に東響コーラスが入場。後方のＰ１扉とＰ２扉から入場しました。混声四部合唱で、左からソプラノ、テノール、バリトン、アルトの順に着席しました。座席がほぼ埋め尽くされたので、200人近い人数です。続いてオーケストラが入場。コンサートマスターは、以前京都市交響楽団で活動していたグレブ・ニキティンでした。なつかしい。
スダーンは、指揮棒なしで指揮。弱奏でも動きが大きい。腕を左右に流したり、回転させたりして、オーケストラをリードしました。演奏はもっと新しいアプローチを期待していましたが、それほどでもありませんでした。テンポ設定も、東京交響楽団川崎プレ定期演奏会第１回「音楽監督就任記念 ユベール・スダーンへの期待」での「第九」のように快速でもない。第３楽章がやや速い程度で、３楽章まで聴き通すには少し飽きてしまいました。目立ったのは、第３楽章172小節のオーボエとクラリネットの八分音符はリタルダンドさせる程度で、標準的な演奏解釈でした。
遠近感に乏しく、どの楽器も並列的に鳴ります。強奏でもあまり鳴りません。トゥッティでは各楽器は響きが濁ってしまってよく分かりません。弦楽器が埋もれがちで残念。もっと音色も洗練されてほしい。
原因のひとつとして、スダーンの音楽を表現するにはサントリーホールはホールの容積が小さいことが挙げられるでしょう。サントリーホールは音の分離が難しいようです。ミューザ川崎シンフォニーホールなら、もっと立体的に響いたでしょう。同一プログラムでは、前日に第６０回新潟定期演奏会がりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館コンサートホールで開催されましたが、ミューザ川崎シンフォニーホールでは開催されませんでした。残念。
第３楽章199小節からは、トロンボーンやホルンに比べると、トランペットがもっと出ていいでしょう。トランペットとトロンボーンを後列に一列に並べる楽器配置で、トランペットは私の座席から近いのにやや埋没気味でした。なお、ティンパニはコントラバスの後ろに配置されていましたが、バランス的に中央のほうがいい気がしました。
第３楽章が終わると、客席から拍手は起こりませんでした。事前のアナウンス通りで、理解のある聴衆です。パイプオルガンの音色でオーケストラがチューニング。続いて独唱者が入場。オーケストラの最後列のイスに座りました。
続いて、第４楽章としてテ・デウムを演奏。全５曲からなりますが、続けて演奏されるのであまり意識されません。第１曲「神よ、私たちはあなたをたたえ」の冒頭からオルガンが鳴り響いて宇宙的な広がりを感じます。合唱が高らかに歌い上げてかっこいい。この冒頭は何回か繰り返し現れました。約20分の作品で、第５曲「主よ、あなたが私の拠りどころです」の最後にはトランペットのファンファーレも鳴り響きます。ブルックナーにしては明るい曲想で、テ・デウムを第４楽章とすると、第３楽章で静かに終わる交響曲第９番の作品全体の印象や性格も変わってしまいます。
演奏も本編の交響曲第９番よりもずっといい。オーケストラも体力を残していたのかもしれません。特に東響コーラスが大健闘。力強く情熱的に歌いました。迫力があって音量も十分。技術的な弱さを感じさせることなく、実力を見せました。独唱ではテノールが感情的に歌いました。
演奏終了後は、盛大な拍手が送られました。スダーンは最後にスコアにキスをして去りました。
スダーンは、東京交響楽団音楽監督の任期を2014年9月まで延長しました。まだ３年半も任期があるので、これからもいろいろな演奏が聴けることを楽しみにしています。
(2010.7.17記)
