都響プロムナードコンサート№337


   
      
2010年3月21日(日)14:00開演
サントリーホール大ホール

エリアフ・インバル指揮/東京都交響楽団
神尾真由子(ヴァイオリン)

チャイコフスキー/幻想的序曲「ロメオとジュリエット」
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー/交響曲第4番

座席:S席 2階LB 9列14番


3月の東京都交響楽団に、エリアフ・インバルが登場。プリンシパル・コンダクター就任2年目を締めくくります。オール・チャイコフスキー・プログラムで、2007年のチャイコフスキー国際コンクールで優勝した神尾真由子が、コンクール本選でも演奏したヴァイオリン協奏曲の独奏を務めるという絶好のプログラムです。
人気の公演のようで、すでに会員券段階で多くのチケットが売れたらしく、一般発売と同時に即完売が確実だったので、イープラスの「座席選択先行」(サービス料500円が上乗せ)で購入しました。先着順なので待ち構えて何とか2階LBブロックのS席を確保。本当は2階Cブロックがよかったですが、発売対象外でした。残念。あっという間に「予定枚数終了」になりました。一般発売でも全席即日完売でした。

サントリーホールで聴くのは、東京都交響楽団第677回定期演奏会Bシリーズ以来1年ぶりでした。ホール前のアーク・カラヤン広場に、知らない間に「Bridge of Plants」というオブジェができていました。文字通り植物でできた橋のような形です。あまりマッチしていない感じでしたが。
2階LBブロックで聴くのは今回が初めてですが、思っていたよりもステージに近く、オーケストラを見下ろすような感覚です。

プログラム1曲目は、幻想的序曲「ロメオとジュリエット」。どのパートもむちゃくちゃうまい。濁りのない澄んだサウンドで、弦楽器の量感もすごい。弱奏では繊細な表情で、音色の引き出しが多い。金管楽器の鳴りも文句なし。38小節からは弦楽器のスタッカートが躍動的。61小節付近のヴァイオリンの神妙な音色もいい。91小節からのホルンも強烈。95小節のティンパニはデクレシェンドさせずに豪快に乱打。150小節からの大太鼓は音符の粒が見えるようなアクセント。192小節からの四声に分かれるヴァイオリンも色彩感があってすばらしい。座席位置のせいか、242小節からのハープがよく聴こえました。509小節からはコントラバスがよく響きます。
インバルは譜面台なしで指揮。第1主題は左手でキューを出しながらたくましい指揮。第2主題では大きく構えて指揮棒をまわすように振ります。
演奏終了後はまだ1曲目なのに拍手の嵐で、インバルは両手を広げて応えました。

プログラム2曲目は、ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は神尾真由子。水色のドレスで登場。神尾の演奏は初めて聴きましたが、よく動きます。特に両ひざを曲げながら弾くのが特徴的。体全体の体重を弓に載せているようです。弦が切れるのではないかと心配になるほどでした。勢いある弓さばきで、のけぞったり、上に飛び跳ねたり、パフォーマンスもすごい。演奏会向けのアーティストでしょう。右肩に負担がかかる弾き方ですが、大丈夫でしょうか。アーティスト写真は女王様のような風貌で写っていますが、イメージにたがわず強気の演奏でした。音量も十分。耳に突き刺さるような音色で、聴いているほうにも緊張を強います。座席が近いせいか、ずっと聴いていると耳がけっこうキンキンしてきます。第2楽章などの息の長いメロディーはフレーズを大きくとらえるよりも、一音一音をはっきり聴かせます。第3楽章もバテるどころか、さらにノッて、がむしゃらに演奏。繰り返しはすべて行ないました。
インバルはこの曲は譜面台が搬入されて、スコアをめくりながら指揮。指揮も小振りで、オーケストラは音量を抑えて伴奏扱いでした。
神尾は今年で24歳。今後がますます楽しみなヴァイオリニストなので、応援したいです。オフィシャルファンクラブがあるようで、プログラムにビラが封入されていました。大阪出身なので、関西でも演奏会を開いてほしいですね。

休憩後のプログラム3曲目は、交響曲第4番。東京都交響楽団のレベルの高さを見せつけました。遊んでいる(演奏に加わっていない)楽器やフレーズがない。すべての奏者が演奏に関わっていて、表情があります。インバルの指揮棒によく応えていました。強奏もよく鳴って力強い。弦楽器が安定した響きで、日本のオーケストラとは思えません。バリバリ鳴る金管楽器も最高。ホルンはスコアの指定では4本ですが、奏者は5人いて部分的に補強していました。
全楽章を休みなく続けて演奏しました。第1楽章冒頭のホルンはよく響きます。特に4小節4拍目から5小節への跳躍がすごい。36小節からの弦楽器のリズム音型は、小節単位でデクレシェンド。70小節からは木管楽器の下降音型を聴かせます。スコアを見ると、弦楽器のメロディーはfで、木管楽器はff。スコアを忠実に再現していて驚きます。78小節からはホルンを響かせます。134小節からのヴァイオリンは2小節目に音量を落とします。381小節(Molto piu mosso)からは速いテンポ。第1楽章を終わると余韻を丸く収めて、指揮棒を止めずにそのまま第2楽章へ。126小節(Piu mosso)からは速いテンポ。クラリネットとファゴットの旋律はスタッカートのように音符を短く処理。続く第3楽章はスタッカートがリズミカルで楽しい。第4楽章も緊密なアンサンブル。シンバルの炸裂が強烈。第1楽章の「運命」の主題が回帰する199小節(Andante)の前でリタルダント。277小節からせき立てるように終わりました。
インバルはふたたび譜面台なしで指揮。上述したようなスコアにないオリジナルの演奏解釈もあって楽しめました。演奏の出来にご満悦のようで、終演後は両手を大きく広げて拍手に応えました。また、コンサートマスターとチェロ奏者と興奮気味に握手して、オーケストラとの絆をアピールしていました。最後も聴衆に手を振りながら退場しました。

インバルと東京都交響楽団と良好な関係が築けているようです。人気も出てきたようで、6月の「マーラー/復活」も即日完売しました。予定ではインバルのプリンシパル・コンダクターの任期は、2011年3月で終了します。これで終わるのはもったいないので、ぜひ続投してほしいです。

(2010.3.23記)


アーク・カラヤン広場 サントリーホール サントリーホール



第5回奏楽堂企画学内公募最優秀企画演奏会「The Composers!〜あたまのなかをのぞいたら〜」 京都市交響楽団第533回定期演奏会