京都新聞トマト倶楽部 京響コンサート ユベール・スダーンのフランス音楽 IN KYOTO


   
      
2008年11月8日(土)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

ユベール・スダーン指揮/京都市交響楽団

ラベル/マ・メール・ロア組曲
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ビゼー/「アルルの女」第1組曲、第2組曲

座席:3階 C−5列25番


東京交響楽団音楽監督のユベール・スダーンが京都新聞トマト倶楽部「京響コンサート」以来、4年ぶりに京都市交響楽団を指揮しました。今回はフランス音楽を集めたプログラムです。スダーンの指揮は、最近ではミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第36回で聴きましたが、東京交響楽団との演奏はベートーヴェンやシューベルトなどドイツ音楽が中心のプログラムなので、フランス音楽が聴けるとはまたとない機会です。スダーンは先週は東京交響楽団を指揮していたので、離日前にもう一振りといった感じでしょう。
京都新聞トマト倶楽部の演奏会は、チケット代の安さが魅力です。全席2,000円というお値打ち価格です。客の入りは6割ほどでした。スダーンが白い上着で登場。

プログラム1曲目は、ラベル作曲/マ・メール・ロア組曲。音量よりも音色の美しさを追求した演奏です。楽器の音色をブレンドさせるのがうまい。弦楽器の音色はヴァイオリンからコントラバスまで楽器の違いを意識させることなく、弦楽器として聴かせます。伴奏も和音をじゅうぶん響かせて表情があります。ただし、大きな音量を要求しないので、強奏ではもっと響いてほしいです。5曲目「妖精の園」のラストもさっぱり鳴りません。東京交響楽団の本拠地のミューザ川崎シンフォニーホールなら立体的に響いたかもしれませんが、京都コンサートホールはあまり響かないので音量不足が気になりました。3階席で聴いたのは失敗でしたね。スダーンは指揮棒なしで指揮。譜面台にスコアは置かれていましたが、まったくめくりませんでした(全曲同じ)。腰を前後左右に動かしながら指揮しました。

プログラム2曲目は、ドビュッシー作曲/牧神の午後への前奏曲。1曲目のラヴェルとまったく同じことが言えるでしょう。弱奏では音量を可能な限り抑えるので、うす味に聴こえてしまいます。清水信貴のフルートは柔らかい音色でした。スダーンは抑揚をやや大きめにつけて、大きな身振りでオーケストラをリードしました。

休憩後のプログラム3曲目は、ビゼー作曲/「アルルの女」第1組曲、第2組曲。演奏会では初めて聴きましたが、サクソフォーンがこんなに活躍するとはびっくりです。CDで聴いているときは気がつきませんでした。スダーンは両腕を広げて回すように指揮しました。「第1組曲」1曲目の「前奏曲」冒頭の弦楽器は、音符を短めにマルカートで演奏。トゥッティとトゥッティ以外で、表情をうまく切り替えます。4曲目「カリヨン(鐘)」は速いテンポ。ホルンを勇ましく鳴らしました。「第2組曲」1曲目の「パストラール」は弦楽器と木管楽器のブレンドがすばらしい。中間部のリズム音型は、胴の長い太鼓を肩からぶら下げて立って、右手に持ったスティックで叩きました。プロヴァンス太鼓という楽器で、ビゼーはスコアでこの楽器を指定しているようです。3曲目「メヌエット」は、フルートの音色が美しい。サクソフォーンの対旋律も聴かせました。トゥッティの弦楽器は軽くてあっさり。重厚感はありません。4曲目「ファランドール」は、リズム音型にプロヴァンス太鼓が再登場。フルートが演奏するファランドールのテンポが速い。なかなか盛り上がりましたが、熱狂的な鳴らし方ではなく、スダーンの音楽作りは崩れませんでした。

拍手に応えてアンコール。スダーンが客席に向かって英語で話した後、「In Japanese?」とコンサートマスターに日本語訳を求めました。コンサートマスターが「路上(旅情?)のモーツァルト」と説明して演奏が始まりました。聞いたことがない曲名でしたが、演奏されたのはオッフェンバック作曲/パリの喜びでした。この曲は京都新聞トマト倶楽部「京響コンサート」でも演奏しています。スダーンが好きな作品なのでしょうか。3曲演奏しました。テンポが速い曲のほうがスダーンの演奏の特徴が生きるようで表情豊かに聴こえます。有名な「天国と地獄」をスダーンは楽しそうに指揮しました。演奏後の表情もご満悦でした。

スダーンの指揮は、東京交響楽団を指揮しているときと大きな違いはありませんでした。ギラギラしない、コテコテしないフランス音楽が聴けました。スダーンの演奏を生かすには、もう少し残響が豊かなホールで聴きたいです。また、3曲とも演奏時間が短く、大曲が聴けなかったのが残念でした。

(2008.11.9記)


京都市交響楽団練習風景見学 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団来日公演