京都コンサートホール大ホール
広上淳一指揮／京都市交響楽団
アリス＝紗良・オット（ピアノ）、富岡明子（メゾ・ソプラノ）
シベリウス／交響詩「フィンランディア」
グリーグ／ピアノ協奏曲
バーンスタイン／交響曲第１番「エレミア」
座席：Ｓ席 １階２５列１９番
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２０１０年７月１７日（土）14:30開演 京都コンサートホール大ホール 広上淳一指揮／京都市交響楽団 シベリウス／交響詩「フィンランディア」 座席：Ｓ席 １階２５列１９番 |
京都市交響楽団の７月定期に、常任指揮者の広上淳一が登場です。独奏１名と独唱１名が登場する豪華なプログラムです。２日後には「大阪特別公演」（ザ・シンフォニーホール）も開催します。プログラムはメイン以外は同じ。大阪ではバーンスタインのかわりにシベリウス「交響曲第２番」が演奏されます。
チケットは、京都コンサートホールのホームページからオンラインで購入しました。クレジットカードで決済できて便利。チケットは演奏会当日にホール前で受け取ります。４月に購入したのですっかり忘れていましたが、いつもの３階席ではなく、今回は１階席。１階席にした理由は忘れてしまいましたが、３階席Ｃブロックが発売対象ではなかったからかと思います。演奏会の１週間前に全席完売しました。
14:10からステージでプレトーク。いつもは広上淳一が１人で登場しますが、今回は広上と京都市交響楽団シニアマネージャーの新井浄の２人で登場。「私１人だとネタ切れしますので」と話しました。広上は「新井主幹」と呼んでいました。この日は祇園祭のクライマックス山鉾巡行が行なわれましたが、「祇園祭の最終日ですが、たくさんお越しいただきありがとうございます」と挨拶。新井が「前半は北欧、後半はアメリカのプログラムです」と紹介しました。ソリスト紹介等は後述します。
プログラム１曲目は、シベリウス作曲／交響詩「フィンランディア」。無理のない鳴らし方で、京響らしい穏やかな演奏。強奏はもっと鳴ってほしいです。ラストもffにしてはやさしい。冒頭の金管楽器はあまり威圧感がありません。もう少し和声の成分がはっきり聴こえてほしいですが、京都コンサートホールでは限界でしょうか。なお、82小節の弦楽器の入りを何人かの奏者が休符を数え間違ったのか早めに入ったようで乱れました。広上と京響は本番でよく事故が起こりますね。
プログラム２曲目は、グリーグ作曲／ピアノ協奏曲。ピアノ独奏は、アリス＝紗良・オット。プレトークでは、「京都で演奏するのは初めて」「お父さんがドイツ人で、お母さんが日本人」「ミュンヘンに在住」「日本語がうまい」と紹介しました。
早足で登場。朱色のドレスでした。今年で22歳ですが、体が細い。腕も驚くほど細くて長い。せわしなく両手を動かして弾きます。鍵盤からではなく、楽器全体から深く響きます。低音に芯があります。打鍵はあまり鋭くなく、粒立ちや打鍵の切れなら、ＮＨＫ交響楽団京都公演のルカーシュ・ヴォンドラーチェクのほうが鮮明に記憶に残っています。なお、第１楽章の途中から、キーンという電子音が継続的に聴こえました。第２楽章が始まるまでには鳴り止みましたが、原因は何だったのでしょうか。
拍手に応えて、アリス＝紗良・オットがアンコール。「フランツ・リストのラ・カンパネラ」と話して、リスト作曲／ラ・カンパネラを演奏。グリーグよりもこちらのほうが断然いい。オープニング・ガラ・コンサート��での上原彩子のような重厚感やスケール感はありませんが、みずみずしい演奏でした。さらにもう１曲。「ショパンの遺作ワルツ」と話して、アンコール２曲目は、ショパン作曲／ワルツ「遺作」（ワルツ第19番イ短調遺作）を演奏。短い曲ですが、弱奏の美しさが楽しめました。
アリス＝紗良・オットの演奏は、グリーグよりもリストやショパンのほうが合っていると思いました。グリーグの協奏曲はもったいない選曲でした。次は他の協奏曲を聴きたいです。カーテンコールは遠慮がちに走って出入りしていました。まだ若いですね。
休憩後のプログラム３曲目は、バーンスタイン作曲／交響曲第１番「エレミア」。メゾ・ソプラノ独唱は、富岡明子。オレンジのドレスで登場。広上の隣のイスに座りました。プレトークで広上は「東京で共演したが、すばらしい音楽家が出てきて感動した」「自信を持って京響に推薦した」と話しました。バーンスタインについては、「晩年に教えを乞うた。大きく見えるが実際は背は低い。160センチくらい」と話しましたが、「あまり背の話はやめましょう」と言って笑わせました。身長についてコンプレックスがあるのでしょうか。ちなみに、広上はバーンスタインを「バーンシュタイン」と発音していました。交響曲第１番「エレミア」については、「25分程度でそんなに長い曲ではないので、お尻は痛くなりません」「第２楽章はサーカスみたいな超絶技巧がある」「アタッカだけど、今日は楽章ごとにゆっくり休みながら演奏します」と話しました。プログラムの解説によると、バーンスタイン34歳のときに作曲されて、これはまだニューヨーク・フィルの副指揮者に就任する前とのこと。「エレミア」とは、ユダヤの預言者の名前のようです。
演奏は完成度が上がって、弦楽器が豊かに響きます。第１楽章「預言」は長いフレーズの不協和音に色彩感があります。第２楽章「冒涜」は変拍子。打楽器も金管楽器も歯切れよく処理。トランペットの高音もよく鳴って、派手に盛り上がります。マレットの代わりにマラカスでティンパニを叩く奏法もありました。第３楽章「哀歌」はメゾ・ソプラノ独唱が加わります。歌詞は旧約聖書でヘブライ語。富岡は巻き舌で歌いながら、両手を広げて堂々と歌いました。オペラ歌手のような風格がありました。バーンスタインの宗教観の表れなのか、不思議な終わり方でした。
演奏終了後に、広上が挨拶。「そうか、マイクを持ってこなきゃいけなかったんだ」と話し笑わせました。スタッフからマイクを受け取った後、「本日、満員御礼でございます」と話しました。「ここでプチセレモニーを」「７月末で京響を卒団するプレーヤーの卒団式を」と話し、首席トランペット奏者の宮村聡の卒団セレモニーが行なわれました。広上は「心から尊敬している」「音楽家の鑑」と紹介しました。宮村が毎回演奏する曲をスコアから手書きで書き写してパート譜を作っていたという驚異的なエピソードも紹介。こうすることで、作曲家の思いを感じ取ったとのこと。これだけ心を込めて演奏会に臨んでいる音楽家は日本中探してもいないでしょう。また、広上と同じく鉄道模型のファンで、「本格的な世界」と賞賛しました。
広上の紹介で、宮村聡が下手から登場。車イスで登場しました。事情を知らなかったのでびっくり。広上は「音楽監督を「務めていたコロンバス交響楽団にも尊敬しているトランペッターがいた。京響には宮村さんがおられた。そういうめぐり合わせがある」。宮村の演奏について「輝かしい芯のある音色」と話しました。
団員から花束贈呈。広上がマイクを近づけて、宮村にコメントを求めましたが、言葉が流暢に話せない様子でした。プログラムでも詳しくは触れられませんでしたが、インターネットの情報によると、2007年３月に脳卒中で倒れられたようです。以降は、京都市交響楽団では演奏されていないようです。
「１曲捧げます」と話して、アンコール。グリーグ作曲／ホルベルク組曲より第４曲「アリア」を演奏。弦楽器のみでの演奏です。すすり泣くようなメロディーが心に重く響きました。宮村の無念が伝わるようで涙を誘う演奏でした。宮村はハンカチで何度も目元を拭っておられました。演奏後は、広上に車イスを押されて退場しました。
終演後に、ホワイエでレセプションが行なわれました。マイクや大きなスピーカーも設置されていて準備万端でしたが、アンコールの余韻を残したかったので、今回は参加しませんでした。京都市交響楽団オフィシャルブログ「今日、京響？」によると、アリス＝紗良・オットと富岡明子のサイン会が行なわれたようです。案内掲示によると、レセプションの写真が「きょうとシティグラフ」に掲載されるようです。
(2010.7.21記)
