大阪フィルハーモニー交響楽団第599回定期演奏会
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2026年6月20日(土)15:00開演 フェスティバルホール ロバート・トレヴィーノ指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団 プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第3番 座席:A席 2階2列19番 |
前月の第598回定期演奏会に続いて、6月定期の指揮は、ロバート・トレヴィーノ。メキシコ系アメリカ人で、初めて聴きます。イタリアのRAI国立交響楽団首席客演指揮者を務め、2026年10月からはルーマニアのジョルジュ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任します。初めて聴きます。2日公演の2日目を聴きました。
チケットは、1回券発売初日の1月27日に大フィル・チケットセンターに電話。クレジットカード決済も可能で便利ですが、2年前(第575回定期演奏会)に比べて、郵送料110円が申込者負担になりましたね。大阪フィルハーモニー交響楽団のX(@Osaka_phil)によると、リハーサルは16日(火)からスタート。練習の動画も掲載されました。
14:30から1階席後部メインホワイエでプレトーク・サロン。楽団事務局長の福山修が指揮台に登壇しました。トレヴィーノについて「大フィルへの客演は3回目で、1回目はブラームス「交響曲第2番」、2回目はショスタコーヴィチ「レニングラード」で共演した」と説明しました。調べたところ、初共演は第559回定期演奏会(2022.6.24&25)で、前プロはティエン・チョウ(日本初演)、2回目の共演は第583回定期演奏会(2024.11.22&23)で、前プロはルーストン(日本初演)でした。各曲の解説は後述します。プレトークの後半は「名物の質問コーナー」。「終演後にサイン会があるときとないときがあるのはどういうことか?」の質問には「業者さんの販促」と回答。事務局は関わってなさそうですね、「ラフマニノフの尾高(2026.6.4 ザ・シンフォニーホール特別演奏会 ラフマニノフ・チクルス ~永遠(とわ)の浪漫~ Ⅰ)の感想は?」は「満足していた。交響曲第1番は若書きで言いたいことがたくさんある」などと詳しく語りました。「高齢の指揮者が指揮する際にピンチヒッターは決めているのか?」の質問には、「空いている指揮者のリストアップはするが、出演料が発生するのでオファーまではしない」とのこと。先回りして調査はしているのが意外でした。14:55に終了。
客の入りは9割程度で、先月の第598回定期演奏会よりも多い。ピアノの鍵盤がよく見える座席でした。コンサートマスターは、崔文洙(ソロ・コンサートマスター)。
プログラム1曲目は、プロコフィエフ作曲/ピアノ協奏曲第3番。ピアノ独奏は、アンナ・ゲニューシェネ。福山のプレトークによると、「ゲニューシェネはロシア人だが、リトアニア人のご主人(ルーカス・ゲニューシャス)と結婚して名前が変わった。ゲニューシェネと大フィルは初共演で、ゲニューシェネとトレヴィーノも初共演。トレヴィーノはゲニューシェネについて「音楽に対して率直なところが魅力」と話していた」「とにかくテクニカルな作品だが、ゲニューシェネはあっさり軽々と弾きこなす」と紹介しました。今年は京都市交響楽団が「プロコフィエフの陣~交響曲全曲演奏会」を開催するので、プロコフィエフがちょっとしたブームですが、交響曲で言うと「第1番」と「第2番」の間に作曲されています。演奏会で聴くのは、京都市交響楽団第691回定期演奏会以来です。ゲニューシェネは深緑のズボンで、パジャマみたいに見える服装で登場。体格は大柄です。ゲニューシェネはまだ35歳(1991年生まれ)で、トレヴィーノ(42歳、1984年生まれ)のほうが年上ですが、ゲニューシェネのほうが風格や貫禄があって年上に見えました。
第1楽章冒頭のクラリネットソロが超弱音でスタート。スコアではpですが、pppくらいの音量でした。これはすごい技術です。続く第1ヴァイオリンの透明感がいい。ただし、強奏になると、オーケストラは輪郭がぼやけるので、もう少し解像度を上げて欲しい。また、低音が薄く感じました。ゲニューシェネは弾くアクションが激しく、235小節からの上昇音階のグリッサンド×3は、身体ごと右に倒れ込むように演奏。そのあとの256小節の四分音符×2のアクセントもすごい。第2楽章は、チェロとピアノが活躍する第3変奏が印象に残りました。ゲニューシェネのピアノは高音も音色が明るい。休みなく第3楽章へ。65小節からフルートの上昇下降音型が大暴れ。275小節(Allegro)から速いテンポ。第1ヴァイオリンが頑張ってフルートと合わせていい調和です。最後は弦楽器のアーティキュレーションが見えるようにしてほしいと感じましたが、スコアを見たら全部スタッカートなので無理ですね。
拍手に応えてゲニューシェネがアンコール。タブレットの楽譜を持って登場して、ショスタコーヴィチ作曲/バレエ組曲「黄金時代」より「ポルカ」を演奏。ショパンのような軽やかさに不協和音が混じります、緩急自在な演奏で、心に残るとてもいいアンコールでした。トレヴィーノもチェレスタの席に座って聴いていました。
休憩後のプログラム2曲目は、ショスタコーヴィチ作曲/交響曲第11番「1905年」。プレトークで福山によると、「昨日のプレトーク前に、トレヴィーノから1時間近く講義を受けた」とのこと。トレヴィーノは「ショスタコーヴィチの交響曲は、戦前(体制に賛美)の第1番~第4番、戦中の第5番~第9番、スターリンが亡くなりプレッシャーから解放された第10番~第15番の3つに分けられる」と考えているとのこと。この作品で描かれている「血の日曜日事件は日露戦争中」とのことですが、これは知りませんでした。「戦争をやめて欲しいデモ隊を軍隊が鎮圧した事件で、各楽章にタイトルがついている。4つの楽章はノンストップで、始まったら止まらない。オーケストラの究極の表現力が聴きどころ」「第1楽章「宮殿前広場」にいろんな想いが詰め込まれていて重要な楽章」「第3楽章「永遠の記憶」は犠牲になった方へのレクイエム。歌の交響曲で、旋律が分かりやすい」「第4楽章「警鐘」は民衆の怒りが爆発して、足を踏ん張るくらいの音響」と解説しました。「鐘の音で終わるが、わざと押さえないので、余韻が長い。トレヴィーノはこの中に鎮魂と弔いの気持ちがあると語っていた。余韻を楽しんでいただきたい」とネタバレ。大好きな作品ですが、演奏会では初めて聴きます。
第1楽章「宮殿前広場」は、冒頭から響きの密度が濃くなりました。静寂で透明感がある和音の中に不協和音が混じりますが、弱音でも安定したアンサンブルです。ハープ×2も目立ちます。14小節からティンパニの三連符の動機が全楽章を通じて何回も登場しますが、これは演奏会で視覚的に見るとその頻度がよく分かります。45小節からの高音のホルンがトランペットみたいな音色を演奏(首席ホルン奏者の高橋将純にブラボー!)。その後61小節から音量がアップ。
続けて第2楽章「1月9日」は、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの音符の数が一気に増えて忙しくなります。音色が祭りのような明るさなので、もう少し暗めの音色がふさわしい。397小節からのfffはよく鳴らしました。492小節から539小節まで打楽器4人が同じリズムをpで刻みます。スコアではティンパニと小太鼓と大太鼓の3人ですが、本公演では4人で叩いていて、視覚的に訴えるものが強く、緊張感があります。540小節からピッコロとフルートがパイプオルガンのような響き。安堵したのも束の間、560小節(Allegro)から速いテンポ。ロボットが機械的に進軍するような恐ろしさがあります。694小節からさらに加速。世界最速のテンポではないかと思えるほどの超全力疾走で、このテンポでよく演奏できました。静まった後の775小節からのヴァイオリンの和音とチェレスタが印象に残りました。
続けて第3楽章「永遠の記憶」は、まさにレクイエム。第2楽章から続けて聴くとその思いを強くしました。静かにヴィオラが革命歌「同志は倒れぬ(君達は犠牲となって倒れた)」を演奏。このメロディーは。映画「逃走」のエンドロールでも使われました。チェロとコントラバスのピツィカートが伴奏します。続く121小節からのヴァイオリンで演奏される革命歌「こんにちは、自由よ」も心を打ちました。まだウクライナと戦争しているプーチンに聴かせたい演奏。
続けて第4楽章「警鐘」は、冒頭の金管楽器で演奏される「圧政者らよ、激怒せよ」は普通のテンポですが、その後の弦楽器からは速いテンポで、第2楽章の続きのような演奏。233小節からの「ワルシャワ労働歌」は、コンサートマスターの崔が両足を踏ん張り、身体を上下に揺らしながら演奏をリード。424小節から「圧政者らよ、激怒せよ」のテーマが拡大して低音楽器で演奏されますが、トレヴィーノは片足を上げて気持ちが入った指揮。637小節からのイングリッシュ・ホルンのソロが美しくしみじみ味わい深い。717小節からのバスクラリネットソロと続くクラリネットが大きい(スコアでもff)。778小節から重要な役割を果たすシロフォンがかなり見やすい位置に置かれていて心憎い。798小節からのチャイムは、チャイム(チューブラーベル)と吊るした鉄板を一人づつ演奏(なお、YouTubeで確認すると、カリヨンを使用している演奏もありました)。最後の小節のチャイムの余韻が相当長い。1分くらい続きました。プレトークでネタバレを知っていましたが、それでも長くてびっくりしました。トレヴィーノがここで表現したいことをプレトークで聞いていたので、ちょっと泣けました。なお、楽譜にはフェルマータはなく、他のすべての楽器と同じように休符が書かれているので、スコアを忠実に再現した表現ではなく、トレヴィーノの大胆な解釈です。フライング拍手がなくてすばらしい。17:15に終演。
こんなに個性的な演奏を最初に聴いてしまうとインパクトが強すぎて、次に聴くときにこの曲を大変だなぁと思ってしまうほどの強烈な印象を残しました。首席トランペット奏者の篠﨑孝がすばらしい演奏でした。聴きどころが多く、もっと演奏されるべき作品です。交響曲第7番や第10番に比べて演奏される頻度が少ないのは、全楽章が続けて演奏されるのと、ハープ×2と鐘を手配する必要があるから敬遠されるのでしょうか。京都市交響楽団が来年度の定期演奏会で演奏するので楽しみです(2027.10.15&16 第727回定期演奏会)。
終演後に、2階のエントランスホワイエで、CD購入者を対象に、トレヴィーノのサイン会が行なわれました。せっかくの機会なので、首席客演指揮者を務めるRAI国立交響楽団を指揮したレスピーギ「ローマ三部作」(2022年録音)を購入して参加しました。意外に少なく、20人くらいが並びました。サインと写真撮影と握手で、ファンサービスも温かくてすばらしい。また来て欲しいです。

(2026.7.9記)