Kyoto Music Caravan 2025「金管五重奏コンサート」
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2025年8月11日(祝・月)19:00開演 壬生寺会館2階ホール
池田悠人・藤井虹太郎(トランペット)、鎌田渓志(ホルン)、亀岡航紀(トロンボーン)、北畠真司(テューバ)
J.S.バッハ/協奏曲ニ長調BWV972より第1楽章 ヘンダーソン/ウェル“テンパード”バッハ J.S.バッハ/小フーガ ト短調 ディロレンツォ/ファイア・ダンス アイルランド民謡(ハドソン編)/ダニー・ボーイ コンパネク/キラー・タンゴ ターナー/リコシェ
座席:全席自由
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本公演の会場の壬生寺は、私の自宅から徒歩圏内です。2年前の
Kyoto Music Caravan 2023「サクソフォーン四重奏コンサート」はサクソフォーン四重奏でしたが、今回は金管五重奏です。2年前と同じく「盂蘭盆万灯供養会(うらぼんまんとうくようえ)」(8月9日~16日)に合わせての開催で、期間中は本堂前に約1000灯の灯籠が点灯されます。2年前は18時開演でしたが、まだ空が明るすぎたためか、今回は19時開演になりました。
本公演の出演メンバーがフレッシュかつ豪華です。トランペットの池田悠人は京都市立芸術大学卒業で、関西フィルハーモニー管弦楽団首席トランペット奏者。同じくトランペットの藤井虹太郎(こたろう)は京都市立芸術大学卒業で、NHK交響楽団トランペット奏者。ホルンの鎌田渓志(かまだけいし)は、日本センチュリー交響楽団副首席ホルン奏者。トロンボーンの亀岡航紀は京都市立芸術大学卒業で、関西フィルハーモニー管弦楽団首席トロンボーン奏者。テューバの北畠真司はOsaka Shion Wind Orchestraチューバ奏者です。5人のうち3人が京都市立芸術大学の卒業生ですが、所属しているオーケストラがバラバラなので、本公演のために特別に結成された金管アンサンブルのようです。
本公演は入場無料で事前申し込みも不要でした。会場は壬生寺本堂前の予定でしたが、この日は未明から京都市に大雨警報が発令されるなど雨が降り続いて、京都・保津川花火大会も河川増水のために中止されました。昼間はいったん小康状態でしたが、夕方にまた雨が降ってきたため、16:50にKyoto Music Caravan 2025のX(@KyotoMC2025)で、「雨天のため、会場を壬生寺境内の壬生寺会館2階に変更する」との連絡がありました。北野天満宮の
Kyoto Music Caravan 2025「打楽器アンサンブル・コンサート」に続いて雨天時会場での開催となってしまいました。せっかく野外で演奏できる機会だったのに、ツイていませんね。
壬生寺会館は、壬生寺境内の北側にあり、大念佛堂(狂言堂)の隣で、壬生狂言は壬生寺会館2階の席から鑑賞します(約400人収容)。なお、壬生寺会館の1階には、壬生寺保育園があるようです。
18時に開場。2階ホール内は土足厳禁で、靴袋と傘袋を渡されて入場。ホールにはパイプイスが100脚程度並んでいました。クーラーが効いていて快適です。ステージ中央に仏壇がありました。開場後30分で満席になったため、立ち見に。その立ち見のスペースもなくなったので、京都コンサートホールプロデューサーの高野裕子が「演奏でステージは使わないので、ステージ上で座ってもらって、後ろから見ても構わない」とのアナウンス。スタッフの懸命の連携プレーで何とか誘導。それでも入りきらなかったようで、窓の外の通路から聴いている方もいました。大入りの超満員で、雨の中でも300人近くが集まりました。
Kyoto Music Caravan 2025「弦楽四重奏コンサート 音楽劇「アトリエ王国 旅する王様」」よりは少なかったですが、
Kyoto Music Caravan 2023「サクソフォーン四重奏コンサート」よりは多いでしょうか。
開演前に、高野裕子が挨拶。続いて壬生寺貫主の松浦俊昭(しゅんしょう)が挨拶。「落語は寺が発祥のように、先人も楽しみを学びとっていった」「本堂前の幻想的なライトの下でできればよかったが、この後ろの地蔵は本尊の写しで、普段は見る機会がない」と紹介。なお、京都コンサートホールのオフィシャルブログに、松浦と高野の対談記事が掲載されました。松浦は「当時からお寺は面白いと思ってもらえる場所だったのではないか」と語っています。
メンバーが入場。まずステージ上の仏像に一礼。左からトランペット(池田悠人)、ホルン(鎌田渓志)、テューバ(北畠真司)、トロンボーン(亀岡航紀)、トランペット(藤井虹太郎)の順。テューバ以外は立って演奏しました。藤井はメガネをかけて貫禄があります。
プログラム1曲目は、J.S.バッハ作曲/協奏曲ニ長調BWV972より第1楽章。音量は抑えめだが伸びのある音。トランペットはピッコロトランペットを使用。
曲間で池田がマイクでMC。はじめにメンバー紹介。「プログラム前半はバッハの作品」とのことで、1曲目で演奏した曲は「もともとヴィヴァルディの作品をバッハがチェンバロにアレンジして、それを金管五重奏に編曲した」「バッハは300年前の作品だが、古くさくない」と説明しました。その後も少し専門用語が多めでしたが、丁寧に作品を解説しました。
プログラム2曲目は、ヘンダーソン作曲/ウェル“テンパード”バッハ。池田は「ヘンダーソンは現代作曲家で、バッハの平均律クラヴィーア曲集をジャズ風にアレンジした」とのこと。「Ⅰ.ビバップ・バッハ」は前奏曲第2番をアレンジ。テューバソロやトランペットのトリルがあります。池田は「ビバップジャズは、シンコペーションで音が多い」と解説。「Ⅱ.クール・バッハ」は前奏曲第10番をアレンジ。ピッコロトランペットとフリューゲルホルンに持ち替え。バッハには思えません。池田は「クールジャズは音が少ない」と解説。「Ⅲ.ディキシー・バッハ」はフーガ第2番をアレンジ、グリッサンドやトリルが楽しい。全員で足踏みする部分があります。池田は「ディキシーランドジャズは、マーチに影響される」と解説。
プログラム3曲目は、J.S.バッハ作曲/小フーガ ト短調。池田は「オルガンのための曲。ここはお寺だけど教会にいるような雰囲気にできたら」と紹介。有名なメロディー作品で、トランペットソロから始まって、楽器が加わっていきます。トランペットの藤井が芯のある音でうまい。さすがN響です。
池田が適宜水分補給を呼びかけながら、後半のプログラムへ。プログラム4曲目は、ディロレンツォ作曲/ファイア・ダンス。池田は「ディロレンツォはアメリカのトランペット奏者。技巧の限界が聴ける作品で、一生懸命指を動かすのが見れる」と紹介。確かに連符が連続しますが、トランペットが輝かしい音色でした。
プログラム5曲目は、アイルランド民謡(ハドソン編)/ダニー・ボーイ。池田は「ロンドンデリーの歌に歌詞がついた。5人だけでもオーケストラのような響き」と紹介。伸ばしの音符が多く、確かに和音がよくできています。いいメロディーです。
プログラム6曲目は、コンパネク作曲/キラー・タンゴ。池田は「箸休め的な曲。かっこいいが、演奏するのは大変。キラーとは圧倒的なという意味」と説明。ゆっくりしたテンポで、トランペット×2がハモりでメロディーを演奏。北畠のテューバも安定しています。
プログラム7曲目は、
ターナー作曲/リコシェ。池田が「便宜上最後の曲」「体力が必要なので少し長めに話します」と言って笑わせました。「リコシェとは跳弾という意味で、ターナーはホルンの名手。3つの場面からなる」と紹介。この曲は、
ウエスティ音暦 ー積年の名曲たちーで聴きました。第1楽章「Ricochet」はフラッター奏法があります。第2楽章「Repose」はトランペット以外の和音がきれいにハマりました。第3楽章「Rodeo」は、第1楽章のメロディーが回帰。
池田が「盛り上がっていただけて、演奏してよかったなあと思う」と感想を話して、拍手に応えてアンコール。池田が「みんなで平和について考えたい。反ナチスの白いバラ運動を称えて作曲された」と紹介して、ハドソン作曲/ホワイト・ローズ・エレジーを演奏。亀岡のトロンボーンの音色がホルンのように美しい。
20:10に終演。階段が雨に濡れていて危ないということで、アナウンスにしたがって時差退場。雨は止んでいましたが、大雨警報は翌日の未明にようやく解除されました。
本格的なアンサンブルが無料で聴けてすばらしいコンサートでした。プログラムは一般的に知られていない曲のほうが多く、親しみやすさよりも、金管五重奏の魅力を活かした予想以上に本格的な選曲でした。
これで「Kyoto Music Caravan 2025」は全10公演のうち5公演が終了しました。今回からスタンプラリーの取り組みが始まりましたが、スタンプを集めている人はほとんどいなさそうです。
これから行われる後半の5公演は、いずれの公演も事前申し込みが必要です。「ハープデュオ・コンサート」(2025.10.26 知恩院大方丈鶴の間 ※限定40名)や「オーケストラ&合唱コンサート」(2025.11.23 醍醐寺霊宝館 ※限定250名)に興味がありますが、当選するでしょうか。
なお、壬生寺では8月9日から16日までの盂蘭盆万灯供養会の期間中は、他にも行事が行なわれて、8月9日19時から20時半頃まで壬生六斎念仏講中による「壬生六斎念仏奉納」が本堂前舞台で行なわれました。あいにくの雨でしたが、なんとか実施されました。昨年から女性が初めてメンバーに加わったとのこと。10以上の演目を披露しましたが、「四ツ太鼓」と「獅子舞」が見ごたえがありました。また、12日18時からは「凛と夏の日in京都 君を偲ぶコンサート」が本堂前で開催されました。松原凜子の歌とピアノ伴奏のデュエットで、3000円でした。16日19時からは中堂寺六斎会による「中堂寺六斎念仏奉納」が行なわれました。また、大文字五山の送り火は直前で大雨警報が発令されましたが、予定通り行われました。 お寺の境内でいろいろな行事が行われるのは、地域活性化の観点からもすばらしいことです。