京都ロータリークラブ創立100周年記念チャリティーコンサート


 

2025年8月2日(土)
京都市立芸術大学堀場信吉記念ホール

佐渡裕指揮/京都市立芸術大学音楽学部・大学院管弦楽団
戸上眞里(ヴァイオリン)、豊嶋泰嗣(ヴィオラ)

ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲
チャイコフスキー/交響曲第5番

座席:全席指定 1階9列21番


 
佐渡裕が京都市立芸術大学のオーケストラを指揮しました。京都ロータリークラブの創立100周年を記念した演奏会です。主催は京都ロータリークラブ、京都市立芸術大学。

佐渡裕は、京都市立堀川音楽高校(当時は京都市立堀川高校音楽科)を経て、京都市立芸術大学を1984年に卒業しました。産経新聞のインタビュー記事で、佐渡は「すべて京都市立で、私は京都市民の税金で育った「メード・イン・京都」です」と語っています。なお、同記事では、小学5年生で京都市少年合唱団に入り、小学6年生からフルートを習って、小学校の卒業論文には「指揮者になりたい」と書いたことや、中学生で京都市交響楽団の会員になったこと、大学時代から関西二期会でアシスタントとして働いたことなど、生い立ちが述べられています。京都市立堀川音楽高校のオーケストラには30年ほど前から指導していて、今年も定期演奏会前の7月14日に指導していますが、一方で京都市立芸術大学を指導する機会はほとんどなかったと思われるので、本公演は貴重な機会でした。
 
佐渡裕は、2025年日本国際博覧会アンバサダーを務めていて、大阪・関西万博の開会式(2025.4.12 EXPOホール「シャインハット」)では、フェスティバルファンファーレとして、「そらとみらいと」Part3の「祭りと空と」のShort ver.を指揮しました。兵庫芸術文化センター管弦楽団第156回定期演奏会「佐渡裕 マーラー8番「千人の交響曲」」で初演しましたが、今回の演奏は、大阪交響楽団、Osaka Shion Wind Orchestra、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団の5団体の選抜メンバーで、演奏時間は3分程度でした。
また、翌日の4月13日(日)午前9時からは、「1万人の第九 EXPO2025」(ウォータープラザ及び大屋根リング(南側))で、ベートーヴェン「第九」第4楽章を指揮しました。演奏は兵庫芸術文化センター管弦楽団。合唱は1万人の第九 EXPO2025合唱団で、佐渡の後方を取り囲むように大屋根リング周辺に立ってポンチョを着て歌います。練習は小雨でしたが、本番は雨が止んだとのこと。けっこう小さな子供もいました。オーケストラはテントを立てて演奏。バリトン独唱がはじまる前の208小節からの演奏で、18分ほどの演奏です。独唱もオーケストラもマイクを立てて演奏しました。合唱団の声量はすごいですが、指揮者やオーケストラと合唱団の立ち位置がかなり遠いため、よく縦線がずれないで演奏できたものです。543小節からテンポを落として堂々と演奏。演奏が終わると、打ち上げ花火が上がって、ブラボーと拍手。朝早くからおつかれさまでした。主催者のMBS(毎日放送)のYouTubeチャンネルで視聴できます。空撮などカメラワークが充実した映像です。
 
本公演は、佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2025「歌劇「さまよえるオランダ人」」(2025.7.19~27、7公演)と兵庫芸術文化センター管弦楽団第161回定期演奏会「佐渡裕 戦争レクイエム」(2025.8.8~10)の合間を縫っての出演です。京都市立芸術大学のX (@kyoto_geidai) によると、本公演のリハーサルは、7月31日(木)から開始。練習から堀場信吉記念ホールが使用できるのはいいですね。
 
入場料は無料でしたが、先着350名で、京都市立芸術大学チケット取扱システムから申し込みが必要でした(全席指定)。6月23日(月)10:00から申し込みが開始されましたが、京都新聞の記事によると、わずか3分で定員が埋まったとのこと。キャンセル待ちや立ち見の受付もなかったので、確保できて本当にラッキーでした。セブンイレブンで無料でチケットを発券。 
 
開場中から、緑色の「京都ロータリークラブ」のタスキをかけたスタッフが募金箱を持って立っていました。かなり指揮台に近い座席でした。前京都市長の門川大作が和服姿で来場されていました。余談ですが、京都市長の松井孝治はおられませんでしたが、松井のX(@matsuikoji)によると、「鴨川納涼2025」のオープニングイベントに西脇知事と出席していたようです。なお、読売新聞の記事によると、来場者数は約620人だったようです。
 
開演に先立って、京都ロータリークラブ会長の細見吉行が挨拶。なんと細見美術館の館長です。京都ロータリークラブは1925年に日本で5番目のロータリークラブとして設立されたのことで、現在は200ヶ国以上に発展しているとのこと。ロータリークラブは奉仕の精神のもと活動しているとのことで、「募金箱への金一封をお願いします」と呼びかけました。
 
弦楽器は、左から、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの順。プログラム1曲目は、ワーグナー作曲/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲。佐渡らしくスケールが大きな演奏。この堀場信吉記念ホールは約800席で中規模のホールですが、音量に手加減なし。もっと大きなホールで聴きたいですね。メロディーをよく歌わせましたが、雛壇のティンパニと金管楽器が大きくて、バランスが悪い。
 
舞台転換を利用して、音楽学部長の岡田加津子(作曲専攻教授)があいさつ。京都市立芸術大学の交換留学制度で、京都ロータリークラブから費用の援助を受けていると紹介しました。佐渡裕とは「堀川音楽高校で同期だったので、3年間同じ教室だった」「佐渡くんは休憩になったらフルートを吹いていた」と当時を振り返りました。

プログラム2曲目は、モーツァルト作曲/ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲。独奏者は弦楽専攻教授のデュエットで、ヴァイオリン独奏は戸上眞里。東京フィルハーモニー交響楽団第2ヴァイオリン首席奏者を経て、2023年度から京都市立芸術大学に着任しました。青いドレスで登場。ヴィオラ独奏は豊嶋泰嗣。2010年度から京都市立芸術大学に着任しました。豊嶋は佐渡が芸術監督を務める兵庫芸術文化センター管弦楽団のコンサートマスターを務めているので、佐渡との共演は多い。独奏の二人は指揮の下手側に並んで立ち、左が戸上、右が豊嶋で、二人とも譜面台つきで演奏しました。
指揮台を撤去して、オーケストラは小編成。協奏交響曲という作品名ですが、管楽器はホルン×2とオーボエ×2だけです。オーケストラは音量を落として演奏するので、基礎力を試されます。戸上も豊嶋もトゥッティはオーケストラと一緒に演奏しましたが、これはスコア通りです。 第1楽章のカデンツァは息のあったアンサンブル。豊嶋が好サポートを見せました。第3楽章は、伴奏の弦楽アンサンブルが安定した演奏。この程度の規模のアンサンブルを聴くにはいいホールです。

休憩後のプログラム3曲目は、チャイコフスキー作曲/交響曲第5番京都市交響楽団大阪特別公演で沖澤のどかの名演を聴いたばかりです。緩急や強弱の幅が大きい演奏ですが、音色がギスギスしています。強奏は激情的に鳴らして、オーケストラはのびのびと演奏できていました、
第1楽章の26小節4拍目と28小節4拍目で、チェロとコントラバスがモルトアクセント。スコアではmfでアクセントはついていませんが、すでにダイナミクスが大きい。主部からはアッチェレランド気味に激しく盛り上げて、104小節と105小節はヴァイオリンを向いて、客席へ音を飛ばすように腕を動かしました。188小節からのヴァイオリンはスタッカート気味に短く演奏して、猛烈なアッチェレランド。198小節からのfffは速いテンポで乗り切りました。373小節からゆっくりしたテンポで歌って、テンポの揺れ幅が大きい。445小節からは188小節からと同様に、スタッカート気味に始めて大爆発。487小節からのコーダは最初からテンポアップ。507小節からは少しテンポを落としました。
第2楽章のホルンソロは少し音を外したので惜しい。クラリネットのソロがうまい。99小節から金管楽器のファンファーレが豪快に鳴りました。休みなく第3楽章へ。ヴァイオリンはもう少し柔らかい音色に変えられるとよいでしょう。続けて第4楽章へ。58小節から速いテンポ。148小節からヴァイオリンを目一杯歌わせました。佐渡も煽り気味の指揮で、頑張ってほしいパートを見つめて指揮。172小節からトランペット×2+トロンボーン×3+テューバでよく鳴りました。471小節のフェルマータで、拍手が起こらないように続けて指揮。最後の2小節はリタルダンド気味に締めくくりました。
 
演奏終了後の客席はスタンディングオベーションの大盛り上がり。花束贈呈の後、佐渡がマイクであいさつ。16歳の高校生でフルートユースオーケストラで海外に行ったことなど自身の学生時代を振り返りました。 佐渡裕のInstagram(@yutakasado_official)では、「京都芸大で過ごした4年間はプロの指揮者になる原点でした。楽しいことも、将来の不安で悶々としていたことも、全部含めて宝物です」と記しています。「海外に行くのはめんどくさい。議員などの関係者としゃべらないといけない」と話しましたが、「今住んでいるアパートの隣に、モーツァルトの家がある」などと海外で生活する楽しさも語りました。「ロータリークラブの取り組みに感動した。終演後にロビーで募金箱を持たせてもらう。ここの指揮台に帰ってこれて誇りに思う」と話して、アンコールは、J.シュトラウスⅡ世作曲/雷鳴と電光。シンバル(電光)を強調。トランペットがうまい。
カーテンコールでは、弦楽器の最前列の奏者に、花束から花をちぎって渡すパフォーマンス。コンサートマスターの女子学生を連れて退場。16:20に終演しました。読売新聞の記事で佐渡は「本番が一番「化けた」演奏ができた」と語っています。
 
終演後のロビーでは、佐渡が募金箱を持って募金を呼び掛けました。兵庫芸術文化センター管弦楽団第147回定期演奏会「佐渡裕 マーラー交響曲第9番」の終演後もロビーで募金活動をしていたので、佐渡はこういう取り組みには積極的です。佐渡裕のInstagramによると、約96万円の募金が集まったとのこと。かなりの金額でびっくり。
 
本公演が無料で聴けるとはすばらしいことです。佐渡裕は、ホールの大きさによって指揮を変えることはなく、スーパーキッズ・オーケストラ(佐渡裕とスーパーキッズ・オーケストラ2023)と同様に、全力で向き合っていました。京都新聞の記事でも「演奏はいい音程、いいリズムだけでなく、魂がものすごく大事」と語っていて、気持ちを合わせる重要性を説いたようです。
なお、佐渡裕は、2023年度に就任した新日本フィルハーモニー交響楽団第5代音楽監督の任期が3年間(2030年3月まで)延長されることが発表されました。
 

 

京都市バス「塩小路高倉・京都市立芸術大学前」バス停 当日券の販売はございません 映像モニター(開演前)

(2025.8.15記)

 

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