ウエスティ音暦おとごよみ ー積年の名曲たちー


2022年6月4日(土)14:00開演
京都市西文化会館ウエスティホール

京都市立芸術大学音楽学部・大学院音楽研究科 管・打楽専攻生
若林義人(指揮)

〜アンサンブル〜
山澤洋之/色彩舞踊
ランティエ/アンダンテとスケルツェット
フォーブス/4つの小品
アーノルド/3つの船乗りの歌
ターナー/金管五重奏のためのリコシェ

〜吹奏楽〜
リード/音楽祭のプレリュード
福島弘和/百年祭(2012大編成改訂版)
三善晃/深層の祭

座席:全席指定 10列15番



京都市立芸術大学の管・打楽専攻生によるコンサートが開催されました。「ウエスティ音暦おとごよみ」は、2010年度から年2回開催されて、この時期を管・打楽専攻が担当し、11月頃には弦楽専攻が演奏します(ウエスティ音暦おとごよみ 〜弦楽の調和〜を参照)。「積年の名曲たち」とは、どんな作品が演奏されるのか気になるタイトルです。2020年秋の「京都市立芸術大学音楽学部・大学院音楽研究科 管・打楽専攻生による文化会館コンサートI 「ともしび」〜未来へつなぐ音楽のちから〜」と同様に、プログラムは管打アンサンブルと吹奏楽で構成されていました。

入場は無料ですが、事前申込が必要で、5月15日から先着順で受け付け。メールで申し込むと、座席番号付きの「入場整理券」が添付ファイルで返信され、当日印刷して持参します。座席は指定で、自分では選べませんでした。建物入口で検温と消毒。「入場整理券」を受付で見せて、机に置かれたプログラムを自分で取りました。座席の番号は後列から付番されているので、10列は通路のすぐ後ろの席でした。今回は前後左右間隔を空けずに100%の配席だったので、満席にはならず、7割くらいの入りでした。

プログラム1曲目は、打楽器四重奏で、山澤洋之作曲/色彩舞踊。山澤は広島文化学園大学学芸学部音楽学科准教授を務めています。2012年に自らが主宰する打楽器集団「男群(おぐん)」によって初演されました。打楽器の種類が多く、波のような音がする横に細長い楽器(Wave machine)など珍しい楽器も使われて、4人で演奏しているとは思えない色彩感です。
「花緑青(はなろくしょう)」はヴィブラフォンとマリンバがメロディー、リズム系楽器2人が盛り立てます。「東雲色(しののめいろ)」はチャイムとグロッケンシュピールが加わります。「熨斗目花色(のしめはないろ)」はティンパニなどの太鼓系とシロフォンのメロディー。「セイヤ」の掛け声もあって、太鼓集団みたいです。「天鵞絨(びろーど)」に続いて、「団十郎茶(だんじゅうろうちゃ)」では拍子木を使用。レベルが高い演奏で、もう一度聴きたいです。

みんなで打楽器を撤収している間に司会が登場。司会は大学院生が順番に担当しました。なお、現在の沓掛キャンパスにはエレベーターがないので、楽器運搬が大変とのこと。

プログラム2曲目は、サクソフォン四重奏で、ランティエ作曲/アンダンテとスケルツェット。サクソフォン専攻生はサクソフォン専攻生によるアンサンブルコンサート「Saxtation」でおなじみです。左から、ソプラノ、テナー、バリトン、アルトの順。前半の「アンダンテ」はゆったりしたテンポでドビュッシー風。後半の「スケルツェット」は、短いスケルツォの意味で、速いテンポですが、もう少し音圧が高くてもよいでしょう。

プログラム3曲目は、ユーフォニアム・テューバ四重奏で、フォーブス作曲/4つの小品。ユーフォニアム2が左側、テューバ2が対面で向かい合って座りました。低音楽器はモゴモゴしてしまいますが、4人のうち3人が大学院生ということもあってか、期待以上の演奏で表現力も技術力もすばらしい。第2楽章「トッカータ」では大きなミュートを出し入れしました。テンポが速い難曲ですが、明瞭な演奏で聴きどころがある作品です。2021年度から新たな楽器科目(専攻細目)として、ユーフォニアムが新設され、客員教授に外囿祥一郎(東京音楽大学教授)が、非常勤講師に三宅孝典(Osaka Shion Wind Orchestra)が就任しました。今後が楽しみです。

プログラム4曲目は、木管五重奏で、アーノルド作曲/3つの船乗りの歌。左から、フルート、オーボエ、ホルン、ファゴット、クラリネットの順。メロディーが優雅で、合いの手の和音がアーノルドらしい。R.W.スミス「海の男たちの歌」のような激しさはありません。

プログラム5曲目は、金管五重奏で、ターナー作曲/金管五重奏のためのリコシェ。左から、トランペット、ホルン、テューバ、トロンボーン、トランペットの順。最初の楽章の「リコシェ」のメロディーがかっこよくて、左右のトランペットが軽やか。

休憩後の後半は吹奏楽。「京都市立芸術大学シンフォニックウィンドアンサンブル」のネーミングがつきました。プログラムには78名のメンバーが掲載されていますが、全員での演奏ではなく、曲によってメンバーが入れ替わりました。
指揮は非常勤講師の若林義人。龍谷大学吹奏楽部音楽監督・常任指揮者、龍谷シンフォニックバンド主宰、相愛ウィンドオーケストラ指揮者、兵庫大学吹奏楽部アドヴァイザーを務めるほか、最近では活動の幅を広げて、大津シンフォニックバンドの定期演奏会に客演指揮しました。指揮台が搬入され、オーボエのGでチューニング。

プログラム6曲目は、リード作曲/音楽祭のプレリュード。1957年に作曲された、1970年度の全日本吹奏楽コンクール課題曲で、私も演奏したことがあります。ちょっと金管楽器と打楽器が大きかったですが、堂々とした演奏。教授の村上哲があいさつ。「祭の曲ばかりを選曲したのは、規制が多いが明るい兆しが出てきたなかで、音楽で喜怒哀楽を伝えたいから」と説明しました。

プログラム7曲目は、福島弘和作曲/百年祭(2012大編成改訂版)。村上は「大和郡山にある奈良県立城内高校が創立100年目に閉校することになったが、最後の年(2005年)の奈良県の吹奏楽コンクールで審査員としてこの曲を聴いた。部員10人と指揮者の小編成で、生徒と先生の信頼関係や10人の個性が感じられた 。奈良県代表に選ばれて関西大会まで進んだが、自分が所属するなにわオーケストラルウィンズが大編成用に編曲してもらった。京都芸大も70周年を迎えて、来年にはキャンパスが移転する」と話し、プログラムにも書かれた作曲者の言葉「100年の時の流れを噛み締めながら演奏していただければと思います」を紹介しました。初めて聴きましたが、春や卒業式を想起させる作品。冒頭のソロは心がこもっています。

プログラム8曲目は、三善晃作曲/深層の祭。1988年度の全日本吹奏楽コンクールの課題曲Aでした。リズムにキレがあり、さすが音大生の演奏です。

拍手に応えてアンコール。真島俊夫作曲/五月の風を演奏。1997年度の全日本吹奏楽コンクールの課題曲Ⅲでした。6月になりましたが、今の季節にぴったりかもしれません。ラストはトランペットが立奏しました。

若林は髪型を含めて尾高忠明みたいな雰囲気でした。16時に終演。アナウンスにしたがって、ブロックごとに退場しました。
「積年の名曲たち」というタイトルの割には、新しい作品が多かったですが、演奏がよかったので楽しめました。

(2022.6.17記)


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