Kyoto Music Caravan 2025「弦楽四重奏コンサート 音楽劇「アトリエ王国 旅する王様」」
 |
|
2025年6月1日(日)14:00開演 くろ谷金戒光明寺御影堂
クァルテット・アトリエ(上敷領藍子(ヴァイオリン)、相原瞳(ヴァイオリン)、後藤彩子(ヴィオラ)、佐藤響(チェロ))
グラズノフ/弦楽四重奏のための5つのノヴェレッテより第1楽章「スペイン風」 ファリャ(佐野秀典編)/スペイン舞曲第1番 R=コルサコフ(クライスラー版、佐野秀典編)/シェヘラザード アラブ風 グラズノフ/弦楽四重奏のための5つのノヴェレッテより第2楽章「オリエンタル(東洋)」、第4楽章「ワルツ」、第5楽章「ハンガリー風」、第3楽章「古風な旋律による間奏曲」 ソーラン節(幸松肇篇) 山田耕筰(佐野秀典編)/からたちの花
座席:全席自由
|
「打楽器アンサンブル・コンサート」に続いて、「Kyoto Music Caravan 2025」の「弦楽四重奏コンサート 音楽劇「アトリエ王国 旅する王様」」に行きました。本公演は「Kyoto Music Caravan 2025」の3公演目です。2公演目の「木琴&ギター デュオコンサート」(2025.5.17 元離宮二条城香雲亭)は限定30名で、残念ながら落選しました。
くろ谷金戒光明寺(くろだに こんかいこうみょうじ)には初めて行きました。浄土宗の大本山です(ちなみに総本山は知恩院)。丸太町通りにある市バス「岡崎道」のバス停から徒歩10分で、平安神宮やロームシアター京都に近い。会場の御影堂(みえいどう)は、「Kyoto Music Caravan 2023」でも「バロック室内楽コンサート」(2023.10.1)が開催されました。また、京都市ジュニアオーケストラ「アウトリーチ・コンサート」(2024.10.19)も開催されるなど、クラシックコンサートの開催実績が豊富です。三重塔から京都市街がよく見渡せます。ところで、なぜ「くろ谷」とひらがなで表記するのかは謎です。なお、2012年にNHKの番組「仕事ハッケン伝」で、麒麟の川島明が取り組んだ「紫雲の庭」の「ご縁の道」は、通常は非公開とのことです。残念。
本公演は入場無料で事前申し込みも不要でした。御影堂の前で、特別協賛の洛和会音羽病院が所属する洛和会ヘルスケアシステム公式キャラクターの「らくの助」がお出迎え。暑いのにご苦労様です。御影堂内は土足厳禁で、渡された袋に靴を入れます。中は畳敷きです。さすがに西本願寺御影堂(
五嶋みどりデビュー30周年特別プロジェクト全国ツアー2012)ほどは広くありませんが、開演30分前ですでにかなりの人が集まりました。この日は晴天でしたが、堂内は意外に涼しい。
開演前に、京都コンサートホールプロデューサーの高野裕子が挨拶。続いて、くろ谷金戒光明寺執事長の橋本が「ここは600人入るので、今日は400人くらい。御影堂は昭和9年に焼失したが、昭和19年に寄付によって戦時中に再建された。昭和の名建築とされていて、国の登録文化財である。極彩色のお飾り(瓔珞(ようらく)?)が珍しい。よく響くお堂と言われる」と説明しました。
出演は、クァルテット・アトリエ。弦楽四重奏で、本公演のために結成されたのではなく、「こどもクラシック ミュージックアトリエ」(日本室内楽振興財団と住友生命いずみホールの共催事業)のために結成されて、2024年頃から4人で活動しているようです。
高野が「アトリエ王国は、宮廷音楽家と王様が暮らしている国」と紹介して、4人のメンバーを呼び込み。御影堂の正面に奉納してある法然上人の坐像に一礼してから登場しました。坐像の前にはロウソクも灯っていました。宮廷音楽家アイアイは、ヴァイオリンの上敷領(かみしきりょう)藍子。上敷領は京都コンサートホール第1期登録アーティストです。宮廷音楽家ヒトミンヌは、ヴァイオリンの相原瞳。宮廷音楽家アヤコンヌは、ヴィオラの後藤彩子。最後にアトリエ王国を治める王様のサティは、チェロの佐藤響。金色の冠をかぶって赤いマントを着けて登場しました。佐藤は京都室内合奏団の代表を務めていて、「Kyoto Music Caravan 2023」でも「チェロ四重奏コンサート」(月桂冠大倉記念館)と
「ありがとう沓掛キャンパスコンサート」(京都市立芸術大学沓掛キャンパス講堂)に出演しました。坐像の正面で、左から、第1ヴァイオリン(上敷領)、第2ヴァイオリン(相原)、ヴィオラ(後藤)、チェロ(佐藤)で、チェロ以外の3人は立って演奏しました。
プログラム1曲目は、グラズノフ作曲/弦楽四重奏のための5つのノヴェレッテより第1楽章「スペイン風」。このグラズノフの作品は初期の作品で、「ノヴェレッテ」とは短編小説の意味。あまり演奏されることがないマイナーな作品です。後述するように本公演では楽章の順番を入れ替えて全曲を演奏しました。グラズノフはもともとロシア人なので、あまりスペインらしさは感じません。執事長が説明したように、確かにコンサートホールのように音が豊かに広がります。
高野のナレーションで、サティ役の佐藤とアイアイ役の上敷領がマイクでセリフの掛け合い。佐藤は王様っぽい話し方です。アトリエ王国のお姫さまの婿探しに出かけるとのこと。「音楽劇」というタイトルでしたが、アイアイとサティのセリフだけで、演技はありません。簡単に曲目も紹介しました。
プログラム2曲目は、ファリャ作曲(佐野秀典編)/スペイン舞曲第1番。原曲はオペラ「はかなき人生」で、オーケストラで演奏されます。上敷領は音圧が強めです。カスタネットの伴奏が似合いそうだと思ったら、間奏でサティが本当にカスタネットを演奏。
サティが「婿があまりに情熱的すぎても…」と話して、外国に探しに行くことに。プログラム3曲目は、R=コルサコフ作曲(クライスラー版、佐野秀典編)/シェヘラザード アラブ風。シェヘラザードの第3楽章「若い王子と王女」の編曲です。中間部はピツィカートで演奏。
サティは「色気をふりまくのはどうかなぁー」とお気に召さない様子で、プログラム4曲目は、グラズノフ作曲/弦楽四重奏のための5つのノヴェレッテより第2楽章「オリエンタル(東洋)」。リズミカルな作品。
アイアイが「美しい国に到着した」と話して、プログラム5曲目は、グラズノフ作曲/弦楽四重奏のための5つのノヴェレッテより第4楽章「ワルツ」。続いて、「パプリカをたくさん食べる国」と紹介されて、プログラム6曲目は、グラズノフ作曲/弦楽四重奏のための5つのノヴェレッテより第5楽章「ハンガリー風」。シンコペーションのメロディーが特徴的です。
アイアイが「そろそろお婿さんを決めて欲しい」とサティに頼み、お客さんに「手拍子を」と促すと、唐突にクイーンのウィー・ウィル・ロック・ユー(We Will Rock You)を演奏。プログラムには載っていませんが、石田組のような雰囲気に。
続けて、プログラム7曲目は、グラズノフ作曲/弦楽四重奏のための5つのノヴェレッテより第3楽章「古風な旋律による間奏曲」。息の長いメロディーを繊細に演奏しました。
アイアイが「王様が海を渡る決心をした。最後に日本に来た」と語り、「この国の王子が好きな曲」ということで、プログラム8曲目は、ソーラン節(幸松肇篇)。メンバーが演奏しながら「あーどっこい!の合いの手を入れました。高野が打楽器を演奏しましたが、残念ながらあまりうまくありません。カウベルのように聴こえましたが、上敷領藍子のInstagram(@aiko_violin)によると、鍋を叩いていたようです。
最後に「日本の歌曲」をということで、プログラム9曲目は、山田耕筰作曲(佐野秀典編)/からたちの花。「思い出が花言葉」と紹介されました。心が穏やかになりました。
拍手に応えてアンコール。「日本の歌曲をもう1曲」ということで、曲名は紹介されませんでしたが、おそらく成田為三作曲/浜辺の歌。15:00に終演しました。
終演後に、僧侶の方からシールもらいました。QRコードを読み取ると、くろ谷金戒光明寺のホームページが表示されます。
結果的に世界各国の音楽を紹介するストーリーでしたが、意外にもグラズノフが中心でした。コンサートホールのようなお堂の響きが魅力的でした。紫雲の庭の特別公開の時期にまた来たいです。