アンサンブルSAKURA第40回定期演奏会


  2023年11月19日(日)13:00開演
浅草公会堂ホール

高石治指揮/アンサンブルSAKURA

シベリウス/フィンランディア
グリーク/組曲「ペール・ギュント」抜粋
シベリウス/交響曲第1番

座席:自由


 
東京芸術劇場マエストロシリーズ 井上道義&読売日本交響楽団の翌日に、アンサンブルSAKURAの定期演奏会に行きました。宇野功芳の“第九”これでもか!? アンサンブルSakura大阪特別公演で宇野功芳が指揮する「第九」を聴いて以来、16年ぶりに聴きます。
アンサンブルSAKURAは1990年に結成されたアマチュアオーケストラで、台東区の根岸コミュニティセンター(鶯谷駅から徒歩3分)が練習拠点です。練習日は、第2と第4日曜日の午後で、練習はすべて高石治が指導しているとのこと。
 
本公演の会場は、浅草公会堂ホール。正式名称は台東区立浅草公会堂で、1977年にオープンしました。この日は晴天の日曜日だったこともあり、雷門や仲見世通りが観光客で身動きが取れないほどの大混雑でした。浅草公会堂正面入口の周りには「スターの手形」があります。「芸能界の振興に貢献した方々の功績をたたえるとともに、大衆芸能ゆかりの地"浅草"のシンボルとして末永く後世に伝えるために、設置しているものです」とのことで、観光名所になっています。音楽の関係者では、古関裕而、鮫島有美子、中田喜直、永六輔、日野皓正、加山雄三、八代亜紀、橋幸夫などの手形があります。
 
本公演のチケットは、全席自由で1,000円。予約フォーム(Googleフォーム)から入力して、入場料は当日支払いでした。ホール入口の受付で、取り置いていただいたチケットを入場料1000円と引き換え。開場は開演30分前で、入場待ちの行列ができましたが、浅草という場所柄なのか年齢層が高い。同じ公会堂でも、日比谷公会堂(日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト2007 コンサート8)と違って、内装が予想以上にきれいでびっくりしましたが、2021年に休館して改修工事を行ない、2022年にリニューアルオープンしたとのこと。クロークはありませんが、コインロッカー(100円)が置かれています。定員は1074名。3階席までありますが、2階席で聴きました。

12:40からプレコンサート。毎回恒例となっているアンサンブルコンサートで、上手の舞台脇の花道で立奏しました。プログラム1曲目は、シューマン作曲/「子供の情景」より見知らぬ国と人々。オーボエとファゴット二人の木管三重奏。ファゴット奏者のMCの後、プログラム2曲目は、シベリウス作曲/フィンランディア讃歌。トランペット×3、トロンボーン×3、テューバの金管七重奏で、演奏会本編1曲目の予習といったところでしょう。
 
プログラムに記載されているメンバーは66名。ほぼ二管編成で、同姓の方が多いのは、ご夫婦でしょうか。客は5割ほどの入り。アマチュアオーケストラとしては多いほうでしょうか。
メンバーが入場して、チューニングの前に「ごあいさつ」ということで、指揮者の高石治がマイクを持って登場して、アマチュアオーケストラについて説明しました。「オーケストラは野球と同じで、高校や大学にありプロもある。われわれは隅田川でやってる草野球と同じ。技術的にもそんなもん」と紹介。「8ヶ月間、月に2回練習した。16回になるが、プロのオーケストラなら1日で演奏できる。お金をもらっておいてなんだが、前もって言い訳をしとかないといけない」と演奏前に異例のアナウンス。「社会人からヴァイオリンをはじめた人もいる」とのことですが、どんな演奏レベルなのかちょっと不安になりました。
 
コンサートミストレスが登場。若い女性で、高石桃子。なんとNHK福島放送局でキャスターを務めています(NHKのホームページでは、髙石桃子と表記されています)。指揮者の高石治とは親子でしょうか。前回の第39回定期演奏会(2023.3.19)では、久石譲「オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」」でナレーションも担当しました。まさに才色兼備です。高石治と高石桃子は握手ではなく、ハイタッチ。
 
高石は日本大学芸術学部音楽科作曲専攻を卒業して、現在は日本大学管弦楽団桂冠指揮者を務めています。アンサンブルSAKURAの定期演奏会は、1991年の第1回から指揮しています。全曲譜面台なしで指揮。
 
プログラム1曲目は、シベリウス作曲/フィンランディア。オーケストラの演奏技術は追い付いていませんが、メンバーが表現したいことは伝わる演奏。金管楽器は音を外すこともありますが、それほどひどい演奏ではありません。高石は右腕一本で指揮することがあり、師事した小林研一郎の指揮に似ています。宇野功芳のような細部のデフォルメやとんでもない解釈はありません。最後の一発は、四分音符で終わりました。
 
プログラム2曲目は、グリーク作曲/組曲「ペール・ギュント」抜粋。第1組曲と第2組曲から3曲ずつの計6曲が演奏されました。1曲目「イングリットの嘆き」は、第1ヴァイオリンの運弓のタイミングが視覚的にも揃っていません。2曲目「朝」に続いて、3曲目「アニトラの踊り」は、ヴァイオリン高音のメロディーが難しいようです。4曲目「ペール・ギュントの帰郷」から第5曲「ソルヴェイグの歌」と第6曲「山の魔王の宮殿にて」まで休みなく演奏。ホルンのゲシュトップ奏法が強烈。50小節(più vivo)からヴァイオリンのメロディーが聴こえません(センチュリー豊中名曲シリーズVol.17京都市交響楽団第657回定期演奏会でも同じ)。
 
休憩後の再開前に、また高石が登場。「プログラムに記載した次回演奏会の曲目(シェヘラザード)を変更する」とのことで、客席から笑いが起こりました。
プログラム3曲目は、シベリウス作曲/交響曲第1番。高石は「アマチュアではめったに演奏しない曲」と紹介しましたが、私も演奏会では初めて聴きました。開演前の挨拶を聞いたときは途中で演奏が止まるかもしれないと思いましたが、ひやひやするような演奏ではなく、もう少しお互いの音を聴いて、強弱記号を意識するとよいでしょう。高石の指揮は聴かせどころが分かりやすい。
第1楽章冒頭のクラリネットソロはブラボー。トランペットとトロンボーンが重々しいので、もっと軽く演奏して欲しいです。390小節(a tempo)からテンポが速い。第2楽章はゴツゴツしているのでもう少しなめらかに。中間部はよく鳴って迫力があります。第3楽章は少しブルックナーに似た響きがしました。第4楽章の冒頭は力が入っています。158小節からのヴァイオリンの十六分音符の速いパッセージがきっちり揃っていて、練習の成果がうかがえます。最後はティンパニがppまで減衰せずに、弦楽器のピツィカートを二発鳴らしました。
 
拍手に応えて、アンコール。シベリウス作曲/カレリア組曲から第3曲「行進曲風に」を演奏。ヴァイオリンの音程が危ない。最後は全員で礼。14:50に終演しました。

なお、この日は当初の計画では「Bunkamuraオフィシャルサプライヤースペシャル 未来の巨匠コンサート2023」(Bunkamuraオーチャードホール)を聴きに行く予定でした。アンドレア・バッティストーニが、首席指揮者を務める東京フィルハーモニー交響楽団を指揮して、二人の「未来の巨匠」(ピアノの五十嵐薫子、ヴァイオリンの村田夏帆)と共演するコンサートでした。500名が無料で招待され、9月に応募フォームから申し込みましたが、残念ながら10月19日に落選のメールが届きました。なお、Bunkamuraは、オーチャードホール以外は、2027年度中(時期未定)まで休館しているようです。
 

台東区立浅草公会堂 スターの手形 古関裕而の手形 鮫島有美子の手形 浅草公会堂ホール入口 プレコンサート 浅草公会堂ホール2階

 

(2023.12.14記)

 

東京芸術劇場マエストロシリーズ 井上道義&読売日本交響楽団 京都市交響楽団第684回定期演奏会