センチュリー豊中名曲シリーズVol.17


   
   
<センチュリー豊中名曲シリーズVol.17 〜プレパフォーマンス&トーク11>

2021年3月27日(土)14:00開演
豊中市立文化芸術センター多目的室

間瀬尚美(マリンバ)、小川和代(ヴァイオリン)、増永雄記(ヴィオラ)、渡邉弾楽(チェロ)

近藤浩平/逆転のボレロ

座席:自由


<センチュリー豊中名曲シリーズVol.17>

2021年3月27日(土)15:00開演
豊中市立文化芸術センター大ホール

川瀬賢太郎指揮/日本センチュリー交響楽団
若林顕(ピアノ)

グリーグ/「ペール・ギュント」組曲第1番
グリーグ/ピアノ協奏曲
ラヴェル/マ・メール・ロワ
ラヴェル/ボレロ

座席:S席 2階2A列17番



日本センチュリー交響楽団が豊中市立文化芸術センターで開催する「センチュリー豊中名曲シリーズ」に初めて行きました。チケットは、センチュリー・ネットチケットから購入し、セブンイレブンで発券できました(手数料が110円かかりました)。

豊中市民会館が老朽化のため2011年に閉館して建て替えられ、2016年10月に同じ場所に豊中市立文化芸術センターが開館しました。こけら落とし記念演奏会は、飯森範親が指揮する日本センチュリー交響楽団が演奏しました。「センチュリー豊中名曲シリーズ」は2017年3月から始まり、年に4公演が開催されています。
豊中市立芸術センターの指定管理者は、日本センチュリー交響楽団が参画する「JTB・日本センチュリー・日本管財・大阪共立グループ」が担っています。日本センチュリー交響楽団は豊中市に本拠を置いていることもあり、2012年に豊中市と「音楽あふれるまちの推進に関する協定」を締結し、「豊中まちなかクラシック」や「世界のしょうない音楽祭」などに取り組んでいます。

豊中市立文化芸術センターの最寄り駅は、豊中駅ではなく曽根駅。めったに使わない阪急宝塚線にひさびさに乗りましたが、曽根駅は普通しか止まらないのに、間違って急行に乗ってしまいました。曽根駅からは徒歩5分です。
ホールの内装は兵庫県立芸術文化センターに似ています。3階に相当する屋上テラスからは、阪急電車や伊丹空港に着陸する飛行機が見えました。なお、1階のコミュニケーションロビーには、健康カフェ「メヌエット」が入居していましたが、3月20日(土)で閉店したとのことです。

曽根駅駅名標 曽根駅 文化芸術センター前交差点から望む ピロティ オープンホワイエ コミュニケーションロビー 屋上テラスと飛行機 屋上テラスと阪急電車



<センチュリー豊中名曲シリーズVol.17 〜プレパフォーマンス&トーク11> 14:00開演 多目的室

センチュリー豊中名曲シリーズでは、開演前に演奏会のテーマに沿った「プレパフォーマンス&トーク」が無料で開催されています。場所は1階の多目的室で、先着80名でした。開場前には長い行列ができ、立ち見も出ました。

はじめにスタッフが「プレコンサート&トークでは、この後の演奏会でオーケストラが演奏する曲からテーマを設定して、現代作曲家による作品を楽しんでいただいている」と趣旨説明。なお、当初の内容から変更されて、「当初は2曲の予定だったが、高木日向子の作品は別の機会(5月のロビーコンサート)で初演予定」とのこと。どうやら高木の作品はグリーグ「朝」をテーマにした作品だったようですが、長くなるので別の機会にしたようです。

今回はラヴェル「ボレロ」にちなんで、近藤浩平作曲/逆転のボレロが初演されました。まず作曲家の近藤がトーク。「ラヴェルのボレロは、オーケストレーションのうまさを自慢したいのが見え見え」と話し、「豆料理ではなく、豆腐だけで料理がこんなにできる 」と料理に例えて説明。「今回の作品は4人編成が条件だったので、10分飽きさせないようにした。ボレロと同様に、同じメロディーが続き、リズムは同じ だが、この作品ではメロディーが重なったり、ハノン、フーガなどの技法は出てくる。英訳のタイトルの「Come-from-behind」は試合に負けているという意味 。打楽器がメロディーで、弦楽器がリズムで、役割が逆転している部分がある。打楽器が弓を使い、弦楽器が楽器を叩く逆転もある。後半はテンポがバラバラになり、そのままボレロに続けられるよう になっている」と解説しました。

奏者が入場。弦楽器は日本センチュリー交響楽団のメンバーで、左から、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ。後ろにマリンバの間瀬尚美。冒頭はマリンバがメロディーを演奏しますが、ラヴェルのボレロと同じメロディーではなく、メロディーが反転されています。このメロディーが繰り返し使われるので、「ボレロ」が原曲だと気がつかないかもしれません。チェロが弓で弦を叩いたり、ヴィオラがピツィカート、弦楽器全員で手で楽器の本体を複雑なリズムで叩いたり。ヴァイオリンとヴィオラは音域が高く、現代音楽らしい響き 。マリンバは一人で演奏するには音域が広い。また、マリンバが弓を下から上に擦る奏法がありました。最後は弦楽器がバラバラなリズムで楽器を手で叩き、消えるように静かに終わりました。
現代音楽の技法を用いたユニークな作品でしたが、もう少しラヴェル「ボレロ」に寄せてもよかったかもしれません。14:25に終演。
なお、近藤浩平は、映画「にしきたショパン」の作曲を担当していて、「両手と左手のためのピアノ協奏曲を作曲しているのは、ラヴェルと私」と自慢げに話しました。

気軽に現代音楽を楽しめるすばらしい企画ですが、4月からは演奏会当日の開催ではなく、事前に収録した映像をYouTubeで配信するとのアナウンスがありました。密を避けるためでしょうか。

多目的室入口



<センチュリー豊中名曲シリーズVol.17> 15:00開演 大ホール

そのまま大ホールへ移動。大ホールは2階構造で、客席数は1344席。2階席の最前列の座席にしましたが、3階席並みに標高が高い。ステージ全体は見渡せますが、もう少し低いほうが好みです。前後の座席の間隔が広く、脚を伸ばしやすいのはいい。今回は前後左右1席空けた配置でした。客の入りは4割程度。

指揮の川瀬賢太郎は、神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第358回を聴きに行く予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で中止になってしまいました。2014年度から神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者を務めていますが、2021年度末で退任します。
団員が入場。入退場はマスクをつけ、演奏中は外しました。コンサートマスターは松浦奈々。

プログラム1曲目は、グリーグ作曲/「ペール・ギュント」組曲第1番。川瀬が登場。体が細い。指揮棒を使わず、両腕を大きく使って指揮します。第1曲「朝」は管楽器は間接音があまりなく、楽器の音がダイレクトに聴こえます。第2曲「オーゼの死」は、弦楽器のみの演奏。ppの抑制された響きがいい。レクイエムのようで、音量の変化の工夫が見られ、細部まで意識が行き届いていました。第3曲「アニトラの踊り」も弦楽器のみ。弦楽器の響きがなめらか。第4曲「山の魔王の宮殿にて」は、 ホルンのゲシュトプを強調。50小節からのトゥッティは、残念ながらヴァイオリンとヴィオラのメロディーが聴こえません。2階席だからでしょうか。ティンパニは54小節からのリズムをはっきり聴かせました。

プログラム2曲目は、グリーグ作曲/ピアノ協奏曲。ピアノ独奏は、若林顕(あきら)。若林は「ピアノで聴く第九」の取り組みに注目していますが、演奏会で聴くのは初めてでした。ピアノがよく響き、ピアノとオーケストラのサウンドがこの曲によくマッチしています。若林と川瀬がアイコンタクトをよくとりました。川瀬はこの曲だけは指揮棒を持って指揮。なお、舞台転換の際にスタッフが二人がかりで、指揮台の後ろについているバーを外しましたが、ステージがあまり広くないからでしょう。
残念なのは、トランペットとトロンボーンの音色が汚いこと。第1楽章の最後は、ティンパニを聴かせて堂々と締めくくりました。第2楽章は弦楽器のアンサンブルが表情豊か。期待以上の出来で、首席指揮者の飯森範親と2015年度から取り組んでいる「ハイドンマラソン」の効果かもしれません。第3楽章353小節からのQuasi Presto(3/4拍子)は速めのテンポ。
拍手に応えて、若林がアンコール。チャイコフスキー作曲/6つの小品よりノクターンを演奏。透明感ある音色が堪能できました。

休憩後のプログラム3曲目は、ラヴェル作曲/マ・メール・ロワ。この曲もトランペットとトロンボーンはいません。響きがスマートで聴きやすい。川瀬が息を吸う音が大きく聴こえました。第3曲「パゴダの女王レドロネット」では、ジュ・ドゥ・タンブルとチェレスタがあまり聴こえませんでした。第5曲「妖精の園」のラストは長く伸ばしました。

プログラム4曲目は、ラヴェル作曲/ボレロ。小太鼓の奏者は、第2ヴァイオリンとヴィオラの間(オーボエの前)に配置。小太鼓は2台置かれていましたが、使われたのは1台でした。速めのテンポでした。管楽器のソロがもう少し精度が高いとよいでしょう。291小節から加わるもう1台の小太鼓は左奥で演奏。川瀬は体を左右によじってひねらすような指揮。ずっと休みだった大太鼓が335小節から一撃。
カーテンコールの後は全員で礼。このまま終演と思ったら、この演奏会を最後に定年で退団するホルン奏者(向井和久)と第1ヴァイオリン奏者(相蘇哲)に、川瀬から花束贈呈のセレモニー。メンバーも立ってみんなで拍手。その後は規制退場が行なわれました。

残念だったのは、客の鑑賞態度がよくないこと。物を落としたり、ガサゴソとしたノイズが耳障りでした。いい演奏だったのにもったいない。
川瀬賢太郎は、神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者、名古屋フィルハーモニー交響楽団正指揮者、オーケストラ・アンサンブル金沢パーマネント・ゲストコンダクター、東京音楽大学作曲指揮専攻(指揮)特任講師を務めていますが、近畿圏のオーケストラを指揮する機会が少ないのが残念。神奈川フィルの常任指揮者を退任したら、機会が増えるでしょうか。

日本センチュリー交響楽団は、2021年4月から首席客演指揮者に久石譲が就任します。記者会見では「日本センチュリー交響楽団は新しい感覚を持っている楽団だと感じた。新感覚の音を一緒に実現させたい」などと抱負を語りました。2021年度の定期演奏会では、自作に加えて、スメラ「チェロ協奏曲」、ベートーヴェン「交響曲第7番」、ペルト、プロコフィエフ「交響曲第7番」を指揮する予定です。また、9月の京都特別演奏会では、メンデルスゾーン「イタリア」を指揮します。

なお、日本センチュリー交響楽団が実施したクラウドファンディングで、目標金額1000万円に対して、約1500万円の寄付を集めました。私は「センチュリー指揮者陣の直筆サイン入り色紙」(限定10名、30,000円)に申し込みました。飯森範親(首席指揮者)、久石譲(首席客演指揮者)、秋山和慶(ミュージックアドバイザー)の直筆サイン入り色紙(支援者の名前入り)で、2021年3月発送予定でしたが、まだ届いていません。

大ホール入口

(2021.4.15記)

Osaka Shion Wind Orchestra第135回定期演奏会 京都市交響楽団スプリング・コンサート