京都市交響楽団第679回定期演奏会


  2023年6月23日(金)19:30開演
京都コンサートホール大ホール

エリアス・グランディ指揮/京都市交響楽団
金川真弓(ヴァイオリン)

サン・サーンス/序奏とロンド・カプリチオーソ
バルトーク/管楽器のための協奏曲

座席:S席 3階C2列25番


 
3月の第676回定期演奏会から数えて、4公演連続の京響定期です。6月定期は23日(金)夜と24日(土)昼の2回公演で、23日(金)は「フライデー・ナイト・スペシャル」(休憩なし約1時間プログラム)として開催されました。23日(金)と24日(土)でメインのバルトーク「管弦楽のための協奏曲」は同じでしたが、1曲目は異なり、24日(土)のチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」よりも、23日(金)のサン・サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」のほうが演奏機会が少なく面白そうだったので、第677回定期演奏会「常任指揮者就任披露演奏会」に続いて2回目の「フライデー・ナイト・スペシャル」に行きました。
 
指揮者はエリアス・グランディ。1981年ドイツ生まれで、プログラムのプロフィールには書かれていませんでしたが、ご両親がドイツ人と日本人とのこと。日本で指揮するときは、もっと打ち出したらいいのにと感じます。近畿圏のオーケストラでは、大阪フィルハーモニー交響楽団第563回定期演奏会(2022.11.18~19)を指揮しました。
 
チケットは、京響友の会「チケット会員」の「セレクト・セット会員(Sセット)」の「クーポンID」を、「フライデー・ナイト・スペシャル」で使うともったいないので温存して、いつもの京都コンサートホール・ロームシアター京都Club会員割引で購入しました。
 
仕事帰りに京都コンサートホールに早めに着いたので、1階のカフェコンチェルトで軽食。開演が30分遅いと余裕があります。
19:00からプレトーク。グランディがグレーのスーツで登場。サイモン・ラトルのようなパンチパーマ?の髪型です。ドイツ生まれですが、英語で話しました。「日本語は全然話せない、ゴメンナサイ」とのこと。まだ客席はガラガラで、トークを始めるのに躊躇するほどでした。開演前には増えましたが、平日の19時に北山に来れる人は多数ではなさそうです。2曲を丁寧に紹介して、15分も話しました(詳細は後述)。
コンサートマスターは泉原隆志(コンサートマスター)。オーケストラは通常の配置。客の入りは3割程度でさみしい。
 
プログラム1曲目は、サン・サーンス作曲/序奏とロンド・カプリチオーソ。ヴァイオリン独奏は、金川真弓。金川は広上淳一指揮 京都市交響楽団兵庫公演でメンデルスゾーンを聴きました。
プレトークでグランディは「金川はすばらしいヴァイオリニスト。アレグロはオーケストラの技術を見せつける曲。管弦楽のための協奏曲とは序奏が静かに始まる点に共通性がある」と話しました。金川が赤いドレスで登場。グランディも黒い服に着替えて登場しました。あまり背が高くなく、小柄です。
金川のヴァイオリンはしっとりと歌います。金川もドイツ生まれでベルリンを拠点にしているということもあってか、中間部のヴァイオリンの重音のメロディーがベートーヴェンのように聴こえました。グランディはちょっと変わった指揮で、トゥッティの前で()のように両腕を上に回転させて、指揮台の上でジャンプします。グランディの方向性が金川と京響には合っていて、フランス音楽ですがドイツ音楽のような響き。オーケストラは音量を抑えていましたが、金川の音量があったので、もっと大きくてもよかったでしょう。ラストの2発もグランディは2回ジャンプ。
 
拍手に応えて、金川がアンコール。ガーシュウィン作曲(ハイフェッツ編曲)/サマータイムを弱奏でゆっくりと演奏しました。もともとはヴァイオリンとピアノ伴奏のようですが、ヴァイオリン独奏だけでもじゅうぶんです。カノンも丁寧に演奏。意外な選曲で、心が落ち着くいい演奏でした。編曲がハイフェッツなのは意外でした(アンコール曲はロビーに掲示されました)。
 
プログラム2曲目は、バルトーク作曲/管楽器のための協奏曲。プレトークでグランディは「バルトークは晩年にアメリカに移住して、短い間に作曲した。この作品は、バルトークの作曲家人生だけでなく、20世紀音楽の総まとめ。チャイコフスキーやショスタコーヴィチの交響曲とはまったく違って、いろんな感情を表している。第1楽章は人間の叫びやむなしさで、第二次大戦の影響がある 。第2楽章から第4楽章までは人生のおかしみを表現して、第5楽章は勝利の歌で喜びが爆発して、人生の希望が詰まっている 。各々のセクションがフィーチャーされて前に出てくるので、オーケストラにとっては要求度が高い」と解説しました。
第555回定期演奏会で広上の指揮で聴きましたが、今回のほうが安定感があって技術的にもいい演奏でした。京響のソロがうまいことが証明されました。各楽器の二重奏もよく揃っています。上野博昭(首席フルート奏者)がすごくいい。強奏は京響の総合力で聴かせて、無理なく演奏しました。見通しがよい演奏で、美しく聴かせましたが、あまり細部をデフォルメしないので、グランディはもう少し個性を出してもいいと感じました。
第1楽章「序章」冒頭の弦楽器のトレモロはじっくり聴かせました。29小節からのトランペットはテヌート気味。63小節から75小節までゆっくりテンポアップ。348小節からの金管楽器のファンファーレは、もっとバリバリ言わせてもよかったでしょう。
第2楽章「対の遊び」はパート内の音色がよく揃っています。冒頭のファゴットが表情豊か。伴奏の弦楽器のピツィカートは抑揚がある。90小節からのトランペットは抑えて演奏。123小節からの金管楽器のコラールは、スラーの切れ目をを意識させずに、滑らかに聴かせました。
第3楽章「悲歌」34小節からのティンパニは両手で豪快に叩かれました。74小節からのホルンのcon sord.はおとなしい。86小節からのヴァイオリンもよく鳴りました。106小節からのクラリネットとフルートのスケールは立体感がありました。第4楽章「中断された間奏曲」は京響の長所がうまく引き出されて、第5楽章「終曲」は速いテンポによくついていきました。384小節(ティンパニ2発)の前で間をあけて、また速いテンポ。強奏でも弦楽器がかなり聴こえたので、管楽器はもっと大きくてもよかったでしょう。20:40に終演しました。
終演後にロビーで金川真弓のサイン会が行われるとのこと。今年2月にリリースしたCD「リサイタル」(3,500円)を購入すれば参加できたようですが、もっと早く告知したらいいのに宣伝不足ですね。余談ですが、石上真由子が本公演の2階R3列で、当日券で聴いていたとのこと。
 
エリアス・グランディは、うまくオーケストラをまとめましたが、もう少し個性を出したほうがいいですね。2023シーズンまでハイデルベルク歌劇場およびハイデルベルク・フィルハーモニー管弦楽団の音楽総監督を務めましたが、現在はポストについていない(フリー)のが意外に感じました。本公演の後は、札幌交響楽団を3公演指揮しました(第38回音文協札響稚内定期演奏会(2023.7.1 稚内総合文化センター大ホール)、中川町札幌交響楽団演奏会(2023.7.2 中川町生涯学習センターちゃいむアリーナ)、第539回ほくでんファミリーコンサート(2023.7.4 札幌コンサートホールKitara大ホール)。
 
昨年度から始まって、今年度は6公演に拡大された「フライデー・ナイト・スペシャル」ですが、沖澤のどかが指揮した第677回定期演奏会「常任指揮者就任披露演奏会」に比べると、明らかにお客さんが少ない。土日公演のほうが集客力がありましたが、木曜日から京都コンサートホールで練習ができるようになったので、演奏の精度を上げることを優先したのでしょうか。本公演も演奏はいいのに、お客さんが少ないのはもったいないです。「フライデー・ナイト・スペシャル」を聴きに行くのは今年度は最後になりそうですが、来年度はどうなるでしょうか。
 

ソリストアンコール

 

(2023.7.6記)

 

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